基礎臨床技能シリーズ 5

身体診察と基本手技

身体診察と基本手技

■編集 倉本 秋

定価 3,740円(税込) (本体3,400円+税)
  • B5判  232ページ  2色(一部カラー)
  • 2005年3月23日刊行
  • ISBN978-4-7583-0054-4

臨床実習に望む学生が身に付けるべき基本的な技能や知識を確実にマスター出来るようにまとめられた実践書

医学教育の見直しに伴い,診療参加型臨床実習が推奨されている昨今の状況を鑑み,臨床実習に臨む前に3,4年の医学生が身に付けておくべき基礎的な臨床技能や,必ず知っておかなければならない知識を,わかりやすくまとめられた文章と豊富な図を用いて,一から確実にマスター出来るように解説することを趣旨とした実践書。
項目はモデル・コア・カリキュラムに準じ,CBT,OSCEを意識した内容としている。
本文は学生に教えるときのようにわかりやすい表現を用いて書かれており,本文文頭に「Be able to」として,その項目でマスターしておかなければならない事項を2〜5項目箇条書きでまとめてある。また,診察の手順などは,学生が実際に行う流れが理解しやすいよう執筆されている。
手技についてはイラストまたは写真で提示し,学生が具体的なイメージを持つことができるようになっている
OSCEでのコツ・ポイント,注意点をSide Memoとして記載している。
教科書にはあまり書かれていないことで,臨床現場で学生や研修医に口頭で教えるようなコツや注意点,あるいは個人的に練習出来る方法を,Adviceとして囲み記事となっている。


序文

 冷たく暗い外来診察室で,スチーム暖房に手をかざしながら,「診察前にはこのように手を温めなくてはいけない。聴診器も同じだよ。手や聴診器の冷たさは,時には冬も夏もないから注意しないといけないよ」と教えてくれた医師がいた。あれはちょうど30年前のことになる。5年生がポリクリと呼ばれる外来診療を見せてもらい,6年生がBST(Bed Side Teaching:当時はlearningとは言われていなかった)病棟で入院患者さんを見せていただく時間割(これもカリキュラムとはほど遠い,「時間割」だけだった)から考えると,ポリクリの1場面と思われる。学生には「武内の内科診断学」や「沖中の内科診断学」を学ぶ慣例あったし,教官側にも基本的身体診察技能を教えるスタンスがあった。
 基本的身体診察を医学生の学びの中から奪ったものは何だったのだろうか。おそらく2つの要因をあげることができる。一つは超音波検査,CT,MRIといった診療機器の進歩である。30年前,レントゲンと心電図,そしてシンチグラムくらいしか診断の術はなかったといっていい。診療機器の進歩は,「診察しなくても分かる」という幻想を振りまいた。いま一つは医科大学,あるいは医学部の新設である。教育技法,とくに当時の教育技法は,口伝というか,徒弟制度のなかで伝承される伝統芸であった。突然出現した新設大学のポスト増によって,伝承システムの中断が起きてしまった。
 いま,基本的身体診察の教育システムが,まったく新しい形で復活しようとしている。それが共用試験のOSCEである。しかしながら本書は,共用試験OSCEをクリアするために作られたものではない。身体診察の基本を修得し,解決すべき疑問点に気づき,継続的に身体診察のあり方を考えてもらうために編集した。例えばみなさんには,外科研修中に,下肢静脈瘤の手術のために入院してきた患者さんの乳癌を見つけるような医師になっていただきたい。さらに身体診察のあり方を考えながら,明日には,1年,2年下の医師の卵に,基本的身体診察を教えられるように努力して欲しいと願っている。
 主訴と経過をうかがって,「分かりました。検査をしてみましょう」という診療では,患者さんは満たされることはない。主訴と経過の中に込められた患者さんの思いに気づこうとすることと,あなたの目や手を使ったコミュニケーションによってはじめて,患者・医師関係はレンガを積み始めることができる。著者のみなさんの熱意は,その第一歩をお手伝いできると信じている。
 
2004年10月 倉本 秋
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目次

身体診察
 身体診察とは  山崎洋次
  身体診察の概念 
   用語としての身体診察
   身体診察の意義
   コア・カリキュラムにおける身体診察の位置づけ
  身体検査の実態 
   身体診察の際のマナー
   視診・触診・打診・聴診
 頭頸部診察  阿部好文
  診察時の配慮 
  頭部の診察 
  頸部の診察 
 胸部診察  磯部光章
  診察を始める前に 
  呼吸器の診察 
   前胸部
   背部
  心臓の診察
 腹部診察  倉本 秋
  診察の基本 
  視診→聴診→打診→触診 
   視診
   聴診
   打診
   触診
 神経系の診察  大野良三
  診察の基本 
  診察の手順 
   脳神経系の診察(座位)
   上肢の運動系の診察(座位)
   起立・歩行の観察(座位から立位へ)
   臥位での検査(立位から臥位へ)
   感覚系の検査(臥位)
   反射(臥位)
   腱膜刺激徴候
   認知機能の検査
 バイタルサインの診かた  瀬尾宏美
  診察の基本 
  脈拍,血圧,呼吸,体温 
   脈拍
   血圧(上肢)
   血圧(下肢)
   呼吸
   体温
 四肢神経と筋肉の診察  中間季雄,星野雄一
  診察の基本 
   医療面接の基本
   視診の基本
   触診の基本
  診察の実際 
   上肢の診察
   下肢の診察
 脈管の診察  松尾 汎
  脈管診察の基本 
   sterategyを組み立てる
  視て,触れて,打って,聴く 
   視診
   触診・打診
   聴診
 乳房と腋窩の診察  明石定子
  診察の基本 
  視診 
  触診 
 直腸・肛門の診察  倉本 秋,味村俊樹
  診察の基本
   診察の準備 
  シミュレーターで学ぶ 
  シミュレーターから実際の診察へ 
   適切な診察体位
   まず視診 
   直腸指診 
   肛門鏡検査 
   診察の終わりに
系統的診察
 系統的診察  吉野範秀,倉本 秋
  診察項目選択のstrategy
 実際の症例と診察手順
   考えながら診察する疾患・病態
   必須診察項目のなかでも
   選択診察項目を選ぶ理由
   診察の順序は
    症例1
    症例2
    症例3
    症例4
救命救急処置   
 救命救急処置  西山謹吾
  Chain of Survival(救命の連鎖) 
  一次救命処置(basic life support:BLS) 
   心肺蘇生の流れ
   Primary ABCDの手順
   人と物が集まったら
   治すのは患者さん! モニターを治療するのではない!
基本手技
 [小外科手技]
 手洗いからガウンテクニックまで  平出 敦
  手術室に入る準備 
  術前の手洗い 
  ガウン・テクニック
  閉鎖法による手袋装着
 縫合ができるようになろう  平出 敦
  患者さんへの配慮 
  手袋の装着 
  消毒 
  縫合 
  ドレッシング 
  抜糸 
 [注射と処置]
 創の消毒とガーゼ交換を覚えよう  平出 敦
  創の消毒とガーゼ交換の重要性 
  ガーゼ交換の方法 
 採血を身に付けよう  味村俊樹
  静脈採血 
  動脈採血 
 胃管の挿入・抜去ができるようになろう  味村俊樹
  胃管の挿入 
  胃管の抜去 
 注射の種類,特徴と刺入部位を覚えよう  味村俊樹
  注射の種類 
  注射の特徴と刺入部位
   皮内注射
   皮下注射
   筋肉内注射
   静脈内注射
   点滴静脈内注射
   中心静脈内注射 
 [基本検査手技]  
 心電図記録を適切に記録しよう  原 武史,山科 章
  心電図の意義 
  検査の準備
   心電図の各種設定
  体位
   誘導の付け方
  心電図の記録
   ノイズの対策
  さらなる理解のために 
 尿検査ができるようになろう  武内世生
  尿検査の種類 
  尿採取にあたっての注意 
  尿の外観 
  尿検査試験紙による検査 
  沈渣の顕微鏡的検査 
 末梢血塗抹標本の作製ができるようになろう  武内世生
  使用器具の準備 
  採血 
  塗抹方法 
 微生物学検査の検体採取を覚えよう  武内世生
  検体採取時の一般的注意点 
  各種検体の採取法と注意点 
 妊娠反応ができるようになろう  武内世生
  原理 
  採尿    
  検査    
  注意    
 クロスマッチができるようになろう  武内世生   
  原理    
  血液の調整    
  主試験    
  副試験    
  判定    
  クロスマッチの限界
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