新・基礎臨床技能シリーズ

医療面接技法と
コミュニケーションのとり方

医療面接技法とコミュニケーションのとり方

■編集 福島 統

定価 3,080円(税込) (本体2,800円+税)
  • B5判  164ページ  2色
  • 2009年7月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-0078-0

マニュアル通りにはいかない医療面接の本質がよくわかる1冊!

臨床実習に臨む学生を主な対象に,医療面接の流れやコミュニケーションのとり方を解説した入門書。コミュニケーションの基礎から臨床実習での患者理解まで幅広い内容を網羅している。今回の改訂にあたり,新規項目として「なぜ医師と患者のコミュニケーションは行き違うのか」「診断するために医療面接をどのように用いるのか」を追加。
今や医師に求められる最重要要素ともいえる,コミュニケーションの本質がよくわかる1冊。


序文

 この本の前身は,2003年に発行された「基礎臨床技能シリーズ 医療面接法とコミュニケーションのとり方」です。いくつもの医学部で教科書として採用していただきましたが,発行後5年間が過ぎ,医学教育モデル・コア・カリキュラムの改定が行われたり,各医学部でのコミュニケーション教育の拡充が図られたりして改訂の時期を迎えました。今回の改訂では,「なぜ医師と患者のコミュニケーションが行き違うのか」(p.20〜)と「診断するために医療面接をどのように用いるのか」(p.42〜)を新しく書き加えました。また,紙面を刷新し,読者に読みやすくしました。
 「医学生に求められるコミュニケーション能力」(p.12〜)では,国内外の医学教育でのコミュニケーション教育の学習目標を比較し,医療面接だけでなく,患者理解(多文化理解)やチームワーキングも学習目標になっていることを説明しています。「なぜ医師と患者のコミュニケーションは行き違うのか」(p.20〜)ではコミュニケーションが,メッセージ,メッセージを送る人,メッセージを受け取る人の3つから成り立っていることから,メッセージを受け取る人の文化,価値観がコミュニケーションの行き違いに関与していることを述べています。「医療面接:どう学んだらいいのか」(p.28〜)では,患者さんという多文化を知らない医学生が医療面接技法を学ぶ時に,技法にばかり目が行きマニュアル症候群になる危険性について注意を喚起しています。「診断するために医療面接をどのように用いるのか」(p.42〜)では,患者さんとの信頼関係を作った後,臨床推論を行う時に,どのように根拠に基づいた医学情報を集めるのかについて解説しています。「医療者としての必要な行動科学の知識」(p.54〜)と「生活習慣病の行動変容についての患者指導・支援法」(p.80〜)では,コミュニケーションを通じて,患者さんの自律性支援を行なうに当たっての原理と実際が事例を中心に説明されています。「医療面接で困難なケース」(p.100〜)は医学生も遭遇する困難なケースの考え方や,さまざまなパーソナリティ特性についても解説しています。「文字によるコミュニケーション」(p.126〜)では,音声ではなく文字でコミュニケーションを取る時の重要注意事項が述べられています。これからの医師は,文書(メールも含めて)でのコミュニケーションが多くなってくるでしょう。「患者さんとコミュニケーションをとるということ」(p.142〜)では,標準模擬患者さんとしての経験が豊富な著者から「to be a doctor」の医学生へのメッセージが含まれています。
 この本にはコミュニケーション,医療面接,患者支援,多文化としての患者理解という軸があります。低学年からのコミュニケーション基礎教育から高学年の臨床実習での患者理解まで広い範囲での内容が含まれています。この本が医学生の皆さんが患者さんから学ぶことを手助けできれば,と考えています。
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目次

□医学生に求められるコミュニケーション能力  福島 統
 医学教育でのコミュニケーション教育の学習目標
  日本:医学教育モデル・コア・カリキュラム(2007年改訂)より抜粋/アメリカ:MSOPでのコミュニケーション教育の目標(アメリカ医科大学協会,1988年)より抜粋/英国:Tomorrow’s Doctorsでのコミュニケーション教育の目標(GMC,2002年)より抜粋
 コミュニケーション・スキル
 質問のしかたと受け答え
 コミュニケーションとは,「人から学ぶ」ためのもの
□なぜ医師と患者のコミュニケーションは行き違うのか  野呂幾久子
 なぜ医師のコミュニケーション能力が重視されるのでしょうか
 医師と患者さんのコミュニケーションはどのように行われているのでしょうか
 医師と患者さんのコミュニケーションはどこで行き違うのでしょうか
  1 記号化と解読化で起こる行き違い/2 送信で起こる行き違い/3 受信で起こる行き違い
 医師と患者さんのコミュニケーションはなぜ行き違いが起こりやすいのでしょうか
   1 患者さんは多様である/2 医師と患者さんの間に情報の非対称性があること/3 患者さんが健康上,心理上の問題を抱えていること
□ 医療面接:どう学んだらいいのか  川﨑 勝
 医療面接の入門の入門
 医学生に要求される能力の分類
 学生の適応戦略
  無手勝流/マニュアル依存症候群
 面接開始以前
 患者さんを目の前にして
 「相手の立場に立つ」とは
  ロールプレイをしてみよう/ロールプレイを有意義なものにするには/まとめ
 医療面接をもっと知りたい人のために
□ 診断するために医療面接をどのように用いるのか  阿部好文
 医療面接の進め方
 医師中心の面接
  Location(部位)/Quality(性状)/Quantity(重症度)/Timing(時間的経過)/Setting(状況)/Factors(修飾因子)/Associated manifestations(随伴症候)
 診断ツールとなる医療面接の仕方
  臨床推論の進め方/罹患率・検査前確率/感度,特異度/尤度比/除外診断とpertinent negative
 エビデンスに基づく面接アプローチ—虫垂炎を例に
□ 医療者としての必要な行動科学の知識  坂根直樹
 ポイントだけ話そう
 患者さんを責めないようにしよう
 患者さんの「抵抗」を知ろう
 安易に不安を取り除かないようにしよう
 メリットを強調しすぎないようにしよう
 患者さんの「自信」を高めよう
 患者さんの「変化ステージ」をみきわめよう
 できそうなことから始めよう(目標設定)
 記録をつけてもらおう
 刺激を減らす工夫をしよう
 社会技術訓練
 患者さんと上手に情報交換しよう
 語呂合わせで覚えてもらおう(エピソード記憶)
 患者さんに自立してもらおう
 まとめ
□生活習慣病の行動変容についての患者指導・支援法  松島雅人
 生活習慣病の重要性
 医療面接の3つの軸
  原則はラポールの確立/三番目の軸 患者教育には行動科学のスキルが重要
 行動科学,行動医学の基礎知識
  行動変容のための面接の基礎知識/面接方法
□医療面接で困難なケース  狩野力八郎
 発想を変えましょうー困難なケースとは患者-医師関係の問題です
 関与しながら観察しようー困難なケースへの対応のポイント
  「困難」を予測する/「困難」を探求する価値のある問題と読み替える/
  患者さんの「言い分」「主張」「態度」の妥当性を認める/「困難」を相互関係の脈絡で理解する/指導医や仲間に相談する/小さな目標を考える/ロールプレイで困難な状況を体験する
 困難さを内省するための基礎的概念を知る
  「受診の動機」を理解しよう/「自家製の病気」を理解しよう/「面接目標」を明確化しようー
  目標は医療面接の羅針盤です/「病気への逃避」と「疾病利得」の意味を読み替えてみよう/「自己破壊の心理」(治癒を望まない無意識的心理)を理解しよう/「対象喪失」と「喪の仕事」,抑うつの心理を理解しよう/失敗や間違いを認めようー「ほどよい面接」をめざして
 しばしば経験する困難なケースについて考える
  パーソナリティ特性/身体的異常のない身体的訴え/医学生にとって困難な場合
□文字によるコミュニケーション  野呂幾久子
 文字によるコミュニケーションとは
 顔の見えないコミュニケーション
 文字コミュニケーションは一方向・硬直的になりがち
 読み手にわかりやすい表現をするための3つのポイント
 見やすい表現にしよう
 正しい表現にしよう
  文体/表記/語彙/文法
 簡潔な表現にしよう
 メールでのコミュニケーション
 まとめ
□ 患者さんとコミュニケーションをとるということ  佐伯晴子
 医師をめざすあなたへ—医学の目的は社会に還元すること
 患者さんとはだれでしょう?—人は必ず死ぬ
 私にとってのあなたの存在とは?—相互関係
 あなたは私の話を聴いてくれますか?—ナラティブの実現
 私のことは私が決めます—インフォームド・コンセント
 あなたがいてくれてよかった—誰かが見ている
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