書籍詳細
股関節の基礎から臨床まで,図説形式でわかりやすく解説した整形外科医必携の書
図説 股関節の臨床
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編集 糸満 盛憲 - 定価 19,440円(税込)(本体 18,000 円+税)
- B5変型判 264ページ 上製,カラー/2色
- 2004年3月29日刊行
- ISBN978-4-7583-0619-5
- 内容紹介
- 股関節の発生,解剖・機能解剖などの基礎から,検査,診断,治療までの臨床を漏れなく網羅し,1册にまとめたテキスト。カラー頁と2色ページで構成し,イラスト,シェーマ,写真を豊富に掲載した,図説形式の書籍。股関節の診療に従事する整形外科医必須の書。
- 先天性股関節脱臼,股関節結核などが多かったわが国の整形外科学の歴史は,股関節外科を中心として動いてきたといっても過言ではありません。このようなことから「股関節を制する者は整形外科を制する」とまで言われてきました。
一方,1960年代から登場した人工関節・人工骨頭置換術は,一定の研修を修めた整形外科医にとってスタンダードの手術になって定着してきました。高齢者や関節リウマチなどの疾患に対して人工関節・人工骨頭置換術のもたらした福音は,20世紀整形外科学の進歩のなかでも特筆すべきものであることは論を待たないところです。しかし,このような状況のなかで,若年者の変形性股関節症,特発性大腿骨頭壊死症にまで人工関節の適応が拡大されています。人工関節置換術は,誰がやっても短期的には無痛の可動性を有する関節として機能しますが,長期的には弛みや感染といった重篤な術後合併症が大きな問題であり,若年者に行われた人工関節置換術の早期の再置換術の必要性が高まっていることは,憂うべきことであります。
わが国の股関節外科の歴史においては,きわめて緻密な臨床的研究と基礎的研究から,生体の修復能力を引き出す骨切り術を中心とした,種々の優れた治療法が開発されてきました。しかし,骨切り術はマニュアルどおりにやれば良いといった人工関節手術とは大きく異なります。すなわち,個々の患者にとって最も適した術式の選択,患者ごとの詳細な検討,身体所見と画像検査所見から綿密な術前計画を要するだけでなく,手技的にもかなりの習熟を要し,リハビリテーションにおいても個々に異なったプログラムが必要となり,人工関節置換術に比べると長期の入院を要することなど,「手のかかる」治療法であることは否めません。
九州大学では神中正一教授によって取り入れられた観血的手法が,天児民和教授によって発展させられ,西尾篤人教授,杉岡洋一教授,北里大学の初代教授として赴任された山本真教授によって,多くの術式の工夫がなされ,関節温存を目指した骨切り術を中心とする独特の股関節外科が展開されてきました。
私は股関節外科を志してすでに30年が経過しましたが,このたびメジカルビュ一社からの依頼により,このような流れのなかで教育を受けてきた仲間で「図説 股関節の臨床」を執筆することになりました。偉大な先達のご意志が十分に表現できたとはとても思えませんが,ここに上梓する運びとなりました。また,ご執筆頂いた先生方には,いろいろと注文をつけたり,私の一存で原稿に手を加えたりさせて頂きましたが,快くお受け頂き感謝しています。
本書が,整形外科診療に携わる先生方の日常診療に少しでもお役に立てれば,私たち執筆者一同の望外の幸せであります。
最後になりましたが,とくに出版にあたって最後までご面倒をおかけしましたメジカルビュ一社の皆様方に心から感謝申し上げます。
2004年3月
北里大学整形外科
糸満盛憲
- 1 発生と機能解剖
股関節の発生 内藤正俊
滑膜性関節の発生
股関節の発生
股関節の解剖・機能解剖 糸満盛憲
股関節の機能
体表から触知できる骨性ランドマーク
関節軟骨
関節包,靱帯,滑膜,関節唇
股関節の筋群
股関節の血管と神経
股関節のバイオメカニクス 森田真史
バイオメカニクスの基礎
骨・関節の構造と機械的性質
股関節のバイオメカニクス
骨粗鬆症と頚部骨折
ヒッププロテクターによる頚部骨折の予防
2 検査法,診断法
臨床症状からみた鑑別診断 神宮司誠也
疼痛
変形
股関節の診察法 高平尚伸
主訴,問診
視診
触診
聴診
嗅診
徒手検査(下肢長,可動域,筋力)
画像診断および補助診断 占部 憲
単純X線写真
ストレスX線写真
断層X線写真
CT
磁気共鳴画像(MRI;magnetic resonance imaging)
シンチグラフィ
関節造影
関節鏡検査
超音波検査
細菌学的検査
関節液検査
病理組織検査
3 治療法
薬物療法 神宮司誠也
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
副腎皮質ステロイド剤
抗菌剤
装具療法 神宮司誠也
股関節装具
免荷装具および義足
リハビリテーション 横山一彦
●運動療法
関節可動域(ROM;range of motion)訓練
筋力増強訓練
●歩行訓練
股関節の進入法 糸満盛憲
Smith-Petersen 進入法
Watson-Jones進入法
Transgluteal approach(Bauer進入法)
大転子切離による進入法(transtrochanteric approach)
後方および後外側進入法
股関節の骨切り術−骨盤側の骨切り術 重松正森
寛骨臼移動術
Chiari骨盤骨切り術
Salter骨盤骨切り術
Pemberton骨盤骨切り術
股関節の骨切り術−大腿骨側の骨切り術 糸満盛憲
内反(減捻)骨切り術
外反骨切り術
大腿骨頭(前方・後方)回転骨切り術(杉岡式)
人工関節全置換術,人工骨頭置換術,再置換術 内藤正俊
初回人工股関節置換術の適応
人工股関節再置換術の適応
手術進入法
初回人工股関節置換術の注意点
無菌性弛みに対する人工股関節再置換術
感染した人工股関節に対する再置換術
術中の人工股関節の評価
後療法
4 疾患/外傷
先天性疾患,発育障害,骨系統疾患 窪田秀明
先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全
多発性骨端異形成症
軟骨無形成症
先天性内反股
Arthrogryposis(関節拘縮症)
脳性麻痺に伴う股関節障害
股関節周囲の外傷
股関節周囲のスポーツ外傷 新藤正輝
裂離骨折
疲労骨折
外傷性股関節脱臼
寛骨臼骨折
大腿骨頚部骨折 南澤育雄
大腿骨転子部骨折 南澤育雄
大腿骨転子下骨折 南澤育雄
変性疾患 首藤敏秀
変形性股関節症
神経病性関節症
壊死性疾患 重松正森
Perthes病(Legg-Calve-Perthes病)
特発性大腿骨頭壊死症
症侯性大腿骨頭壊死症
炎症性疾患
●感染性関節炎 高平尚伸
化膿性股関節炎
結核性股関節炎
真菌性股関節炎
●非感染性疾患 内藤正俊
関節リウマチ
強直性脊椎炎
滑膜性骨軟骨腫症
色素性絨毛結節性滑膜炎
股関節およびその周辺の腫瘍 那須野秀二
良性骨腫瘍
悪性骨腫瘍
その他の疾患 神宮司誠也
股関節部の滑液包炎(bursitis around hip joint)
弾発股(snapping hip)
股関節周囲石灰沈着症(chondrocalcinosis around the hip joint)
5 股関節手術の合併症
股関節手術の合併症 高平尚伸
深部静脈血栓症
肺塞栓症
脂肪塞栓症候群
血管神経損傷
感染人工股関節