小児脳神経外科 診療ガイドブック

小児脳神経外科 診療ガイドブック

■編集 新井 一
伊達 裕昭
西本 博

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
  • B5変型判  384ページ  2色(一部カラー),イラスト50点,写真120点
  • 2013年3月19日刊行
  • ISBN978-4-7583-1190-8

「現場の疑問」にズバリ答える! 小児の脳外科診療のポイントを”Clinical Question”形式で解説

小児は成人の縮小版ではない。先天性脳奇形などの疾患,脳が発達段階であることなど,小児特有の問題が多く存在する。さらに頭部と体幹のバランスが悪いため転倒しやすく頭部外傷が起こりやすい。このように小児では扱うべき疾患は多岐にわたる。
本書では,小児脳神経外科で特に扱うことの多い疾患を中心に取り上げ,日常診療の疑問に答えている。各疾患ごとにまず,“Essential”で基礎知識を代表的画像とともに解説し,次に術式の選択法や手術のタイミングなど,現場で判断に苦しむ事項や議論の多い点を“Clinical Question”の形式で解説している。さらに問題形式の“Practice”で知識の整理を行い,専門医試験にも対応できるようになっている。
日々の臨床で治療方針に迷ったときや困ったとき,本書は必ず役に立つ1冊である。


序文

 小児脳神経外科が対象とする疾患は,中枢神経系の先天奇形に始まり,小児に発生する脳腫瘍や脊髄腫瘍,もやもや病などの血管障害,中枢神経系に発生する外傷,てんかんやその他の機能的疾患など,きわめて多岐にわたり,また各分野における知識・技術の発展・進歩はまさに日進月歩の状態であります。本書は,このように広い範囲に及ぶ小児脳神経外科疾患を網羅的に解説しつつも,臨床の現場で求められるcutting edge knowledgeについても十分に触れるという意図で企画されました。したがって,総論では小児脳神経外科における各種治療法の概要を解説し,各論では個々の疾患について最初に基本的事項を示し,次いでいくつかのクリニカル・クエスチョンを設定し,これに答えるという形で構成がなされています。
 クリニカル・クエスチョンの多くは,日常診療のなかでしばしば遭遇する課題・問題であり,またそのいくつかは現時点では明確な答えのないものも含まれています。しかし,そのQ&Aを一読すれば,例え明確な答えのないクエスチョンであっても,goodよりbetter,betterよりbestの答えを知ることができます。読者諸氏が本書を一度手に取れば,その内容が従来の教科書とは一線を画するものであることを理解いただけると確信しています。さらに付言すれば,本書に取り上げられたQ&Aから,私達は小児脳神経外科領域の未解決のテーマを知ることができます。本書に触発され,この未解決のテーマに取り組む若手脳神経外科医が一人でも出現すれば,それは編集者の望外の喜びであります。
 本書の編集の労をともに分かち合った,千葉県こども病院院長の伊達裕昭先生,埼玉県立小児医療センター副病院長の西本 博先生に深謝すると同時に,編集者の意図を理解しすばらしい原稿を執筆いただいた著者の皆様に心より御礼申し上げます。
 本書が臨床の現場で活用され,多くの患者に福音をもたらすことを祈念して,序文の結びといたします。

平成25年2月

編集者を代表して
順天堂大学医学部脳神経外科  新井 一
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目次

Ⅰ 総論
 小児脳神経外科手術(頭蓋,脊椎)の基本  坂本博昭
  水頭症に対するシャント手術
  開頭術
  部位別の手術法
  脊髄・脊椎
  最後に
 
 小児脳腫瘍に対する放射線治療  松村 明,山本哲哉
  放射線治療合併症と正常組織の放射線感受性
  小児脳腫瘍における放射線治療の適応
  合併症の低減
 
 小児脳腫瘍に対する化学療法  柳澤隆昭
  小児脳腫瘍に対する化学療法—何を理解するべきか?
  髄芽腫 medulloblastoma
  テント上未分化神経外胚葉性腫瘍(sPNET)および松果体芽細胞腫 pineoblastoma
  上衣腫 ependymoma
  低悪性度神経膠腫(LGG)
  高悪性度神経膠腫(HGG)
  脳幹グリオーマ brain stem glioma
  非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(AT/RT)
 
 神経内視鏡手術  宮嶋雅一,下地一彰
  第三脳室底開窓術(ETV)
  透明中隔開窓術 septostomy of seputum pellucidum
  脳室内隔壁の開窓
  中脳水道形成術 aqueductal plasty
  脳室カテーテルの設置・抜去
  くも膜囊胞に対する神経内視鏡手術
  脳室内,脳室近傍腫瘍に対する神経内視鏡生検術・摘出術
  おわりに
 
 小児の血管内治療  小宮山雅樹
  対象疾患
  動静脈シャントを伴う疾患と症候
  診断
  治療

 小児脳神経外科疾患の麻酔・鎮静法  川名 信,名和由布子
  脳循環生理
  麻酔薬理
  術前評価
  術前準備
  麻酔管理
  術後管理
  鎮静
  まとめ

 リハビリテーション  栗原まな
  小児脳神経外科疾患に対するリハビリテーションの概要
  障害・合併症についての基礎知識
  疾患別の特徴

 シャントシステム  三宅裕治
  シャント治療の歴史
  シャントシステムの現状
  シャントバルブの選択/初期設定の仕方
 
Ⅱ 各論
 先天性水頭症  山崎麻美
  Essentials
  CQ 新生児・乳児期の中脳水道狭窄症の治療は,脳室腹腔短絡術(VPシャント)か,第三脳室底開窓術
  (ETV)か? 
  CQ 先天性水頭症の治療に圧可変式バルブは必要か?—可変式バルブの設定圧の決定と変更のタイミング 
  CQ 低出生体重児の水頭症の管理は?
  CQ VPシャント:前角穿刺 or 後角穿刺?
  CQ シャント合併症の対策
  Practice
 
 二分頭蓋  稲垣隆介
  Essentials
  CQ 二分頭蓋とsinus pericraniiとの鑑別は?
  CQ atretic cephaloceleとは何か?
  CQ 巨大な脳瘤,手術をしない判断は?
  CQ 脳瘤の治療:突出した脳の処理は?
  CQ 前頭蓋底脳瘤の診断と治療は?
  Practice
 
 脊髄髄膜瘤  長嶋達也
  Essentials
  CQ 出生前診断と診断後の家族支援の問題は?
  CQ 海外でのfetal surgeryの現状は?
  CQ 出生後に水頭症を伴っている症例の治療法は?
  CQ Chiari奇形に伴う呼吸障害ーいつまで保存的にみるか?
  CQ 皮膚欠損の大きな症例の手術はどうするか?
  CQ 著明なkyphosisを伴う脊髄髄膜瘤の治療は?
  CQ ラテックスアレルギーとは? その対策は?
  Practice
 
 脊髄脂肪腫  野村貞宏
  Essentials
  CQ 無症候性例に対する手術適応は?
  CQ 手術に際してはどのようなモニタリングが必要か?
  CQ 硬膜形成 dural plastyは積極的に行うのか?
  CQ transitional typeの手術は?
  CQ 術後髄液漏に対する処置は?
  CQ tethered cord syndromeを疑う徴候と手術適応は?
  Practice
 
 Chiari奇形  長坂昌登
  Essentials
  CQ Chiari 1型奇形とChiari 2型奇形の違いは?
  CQ Chiari 1型奇形(脊髄空洞症)の手術適応と手術法は?
  CQ Chiari 2型奇形の手術法は?
  CQ Chiari 2型奇形に合併する脊髄空洞症への対応は?
  CQ 最重症のChiari 2型奇形の管理は?
  Practice
 
 非症候群性頭蓋縫合早期癒合症  赤井卓也
  Essentials
  CQ 手術適応はどのように決めるのか?
  CQ 頭蓋内圧モニタリングの意義は?
  CQ 手術のタイミングは?
  CQ 手術法の選択は?:従来の手術 or 骨延長法 or 内視鏡を用いた低侵襲手術
  CQ 軽度三角頭蓋の手術適応は?
  Practice
 
 症候群性頭蓋縫合早期癒合症(脳神経外科の立場から)  伊藤 進
  Essentials
  CQ 遺伝子診断の意義は?
  CQ 合併する水頭症の管理法は?
  CQ chronic tonsillar herniationの管理法は?
  CQ 手術法は?
  CQ 最重症例の治療法は?
  Practice
 
 症候群性頭蓋縫合早期癒合症(形成外科の立場から)  佐藤兼重,三川信之
  Essentials
  CQ 顎顔面の形成外科的治療時期と手術法は?
  CQ 顎顔面外科の周術期管理の留意点は?
  CQ 上顎骨前方移動術の時期は?
 
 くも膜囊胞  伊藤千秋
  Essentials
  CQ 無症候性例への対応は?
  CQ CT cisternography(CTC)の診断的価値は?
  CQ 治療法は?
  CQ 部位別の治療法は?
  Practice

 髄芽腫  重田裕明
  Essentials
  CQ 手術時に留意すべき点は?
  CQ 標準リスク群average-risk group,高リスク群high-risk groupの標準的治療法は?
  CQ 乳児例で放射線治療を行うのか? 化学療法のみでよいか?
  CQ 初発時播種例の治療はどうするのか?
  CQ 再発例の治療はどうするのか?
  CQ PNETとは何か? 髄芽腫との違いと治療法は?
  Practice
 
 上衣腫  田代 弦
  Essentials
  CQ 手術時に留意すべき点は?
  CQ 放射線治療の果たす役割は?
  CQ 化学療法の果たす役割は?
  CQ 再発例に対する戦略は?
  Practice

 小脳星細胞腫  藍原康雄
  Essentials
  CQ cyst wallも摘出すべきか否か?
  CQ 病理組織像と治療方針は? 再発例はどうするか?
  CQ 術後補助療法は必要か?
  Practice
 
 頭蓋咽頭腫  白根礼造
  Essentials
  CQ よりradicalな手術か,よりconservativeな手術か?
  CQ どのような手術法を選択すべきか?
  CQ 内視鏡手術の役割は?
  CQ 再発例への対応は?
  CQ ホルモン補充療法の実際は?
  Practice
 
 視床下部星細胞腫  栗原 淳
  Essentials
  CQ どこまで手術で摘出するのか?
  CQ 放射線治療の果たす役割と適応は?
  CQ 化学療法の果たす役割と化学療法の種類は?
  CQ 悪性変化はきたしうるのか?
  Practice
 
 胚細胞腫瘍  五味 玲
  Essentials
  CQ 病型分類と治療方針は?
  CQ 化学療法と放射線療法はいかにするか?
  CQ 神経内視鏡による生検およびETVの是非は?
  CQ 後遺症への対応と長期follow upは?
  Practice
 
 脳幹グリオーマ  野中雄一郎
  Essentials
  CQ 病型分類と治療方針は?
  CQ 手術適応と手術法は?
  CQ 放射線療法および化学療法の意義は?
  CQ 患者管理と生活支援をどうするか?
  Practice
 
 もやもや病  林 俊哲
  Essentials
  CQ 治療法は?:直接的血行再建術 or 間接的血行再建術
  CQ EMS,リボンフラップなどの追加処置はどう使い分けるか?
  CQ 小児出血発症例への対応は?
  CQ 日常生活,学校生活に対する諸注意は?
  Practice
 
 脳動静脈奇形(Galen大静脈瘤を含む)  新見康成
  Essentials
  CQ 手術適応は?
  CQ 血管内治療の果たす役割は?
  CQ ガンマナイフの果たす役割は?
  CQ 出血例と非出血例での対応の違いは?
  Practice
 
 新生児頭蓋内出血  竹本 理
  Essentials
  CQ 発生機序ごとの治療法は?
  CQ 新生児頭蓋内出血の手術法と周術期管理は?
  Practice
 
 頭蓋骨骨折  下川尚子
  Essentials
  CQ 各種骨折に対する手術適応は?
  CQ growing skull fractureの手術法は?
  CQ 小児における頭蓋形成手術の材料,固定法は?
  Practice
 
 外傷による急性頭蓋内出血  荒木 尚
  Essentials
  CQ どのような症例を経過観察とし,どのような症例を手術するのか?
  CQ 手術法は?(広範囲外減圧術を含む)
  CQ 急性硬膜下血腫の保存治療(バルビタール,脳室ドレナージなど)の実際は?
  CQ 抗痙攣薬の使用は?
  Practice
 
 頭部外傷を伴った児童虐待  三木 保
  Essentials
  CQ 虐待による頭部外傷の特徴と病態,shaken baby syndromeのメカニズムとは?
  CQ shaken baby syndromeとは? 眼底出血の成因は?
  CQ 通常の事故外傷との鑑別はいかにするか? いわゆる中村Ⅰ型は存在するか?
  Practice
 
 虐待への社会的対応  山崎嘉久
  Essentials
  CQ 医師は社会的対応にどのようにかかわるのか?
  Practice
 
 外傷による慢性頭蓋内出血  夫 敬憲
  Essentials
  CQ 小児慢性硬膜下血腫の病態の特徴は?
  CQ 慢性硬膜下血腫または水腫の標準的な治療は?
  CQ 頭囲拡大を伴うくも膜下液貯留の治療適応は?
  Practice
 
 脊髄脊椎損傷  吉藤和久,小柳 泉
  Essentials
  CQ 病型と小児における特殊性は?
  CQ 手術適応と小児での手術法の注意事項は?
  CQ 保存的治療法の小児での注意点は?
  Practice
 
 てんかんに対する外科的治療  菅野秀宣
  Essential
  CQ 小児てんかんの標準的薬物治療は?
  CQ 外科的治療の対象となるてんかんは?
  CQ 小児例ではどのような症例を適応とするのか?
  CQ 手術法は?
  CQ 学校,社会生活への対応をどうするか?
  Practice
 
 痙性麻痺に対する機能的外科  師田信人
  Essentials
  CQ どのような症例を手術するのか? 治療法の選択は?
  CQ 機能的脊髄後根切断術の手術適応と手術の実際は?
  CQ バクロフェン髄注療法の適応は?
  CQ ボツリヌス毒素療法の適応は?
  Practice
 
 小児の頭蓋内感染症  西山健一
  Essentials
  CQ 細菌性髄膜炎に対する外科的対応はどのようなものがあるか?
  CQ 脳膿瘍の手術適応と方法は?
  CQ 硬膜下膿瘍の治療法は?
  CQ シャント感染の治療原則は?
  Practice
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