循環器診療 ザ・ベーシック

急性冠症候群

知識を習得し,実践で活かす最強のメソッド

急性冠症候群

■編集 阿古 潤哉

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  212ページ  オールカラー,写真200点
  • 2018年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1441-1

身につけた知識を実臨床でどれだけ活かせているのか?どのような根拠があり,どのような結果となるのか?その答えがみつかる超実践シリーズ!「急性冠症候群」を究める1冊

若手から中堅の循環器内科医を対象に,基礎固めおよび実臨床でのスキルアップを目指す本シリーズ。(循環器内科医が知っておくべき知識とそれをどのように実践に活かすのかを具体的に解説したシリーズ。)各疾患,各検査の知識は有しているが,いざ実臨床の場面ではその知識をどのように使いこなせばいいのかわからない。実臨床での経験の根拠がわからない。そんな場面を想定し,各項目を「基礎知識 Knowledge」と「実践 Practice」にわけて解説。各項にリンク機能を付け,「基礎知識」がどのような場面で役に立つのか,実臨床での経験がどのような根拠に裏付けられているのかが目でみて理解できる構成となっている。
本巻は「急性冠症候群」の基礎知識,ケース別解説をスペシャリストが徹底解説。若手医師が苦手とする心臓解剖の知識も盛り込んだ循環器内科医必携の1冊。

■シリーズ編集主幹
筒井裕之


序文

刊行にあたって

 循環器疾患には多様な疾患が含まれますが,主要なものとしては虚血性心疾患,不整脈,心不全,弁膜症,先天性心疾患,肺高血圧症などがあります。このような循環器疾患の診療において,病歴や身体所見,さらに心電図や胸部X線が必須であることはいうまでもありませんが,心エコー,CT,MRIなど心血管イメージングの進歩は目覚しく,これらマルチモダリティを組み合わせて効率よく診断し,治療を進めることが求められています。
 このような背景をふまえ,「循環器診療ザ・ベーシックシリーズ」を企画いたしました。主要な循環器疾患を網羅し,基礎知識とそれを使いこなすための実臨床での考え方やテクニックを学びとる実践的なシリーズです。疾患や検査の知識は有しているが,いざ実臨床の場面ではその知識をどのように使いこなせばいいのかわからない。そんな場面を想定して, 各項目を「基礎知識 Knowledge」と「実践Practice」にわけています。「基礎知識」ではイラストや画像を用い疾患や検査をわかりやすく解説しています。「実践」では「基礎知識」で身につけた知識を使って目の前にいる患者さんのどこに注目して診たらいいのか,治療方針はどう考えたらいいのか等を解説しています。さらに,「基礎知識」の内容を「実践」の症例とリンクできるようにし,さらに「実践」の症例に遭遇したときに必要な「基礎知識」がすぐに見つけられるよう,構成を工夫しています。
 また,画像診断には心血管系の解剖に関する知識が欠かせませんが,「解剖がわかる」では医師が苦手になりやすい心臓解剖の知識を織り交ぜ,診断に必要な解剖が理解できるようにしています。さらに,「200字でまとめるKey Sentence」,「CheckPoint」,「上達へのコツ」で押さえておくべきポイントを箇条書きで端的に解説しています。
 本シリーズが,循環器専門医の先生方はもちろん,循環器専門医を目指す若手医師の循環器診療におけるベーシックテキストとして広く活用いただければ幸いです。

2017年8月
九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授
筒井裕之

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序 文

 急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は,患者数も多く,しかも生命予後に大きく関わるという点から臨床的に重要な疾患の1つである。20世紀半ばから始まった冠動脈疾患集中治療室(CCU)の導入や急性期再灌流療法の確立により急性期の予後は改善したとはいえ,現在でも高い死亡率を伴う疾患であることには変わりがない。心電図を含む検査所見に明らかな異常が認められないこともあるため,ときには病歴のみから診断しなければならないこともあるなど,臨床医にとっては厄介な病態の1つである。
 それまでの急性心筋梗塞症,不安定狭心症といった症状からの分類から離れ,Valentin Fusterが提唱したACSの概念は,しかしここ数年の医学の進歩に伴い新たな進展をみせている。病理学的な診断でしかなかったplaque erosionやcalcified noduleなどは,光断層干渉法(optical coherence tomography:OCT)などの血管内イメージングの進歩により,臨床的にもその場での診断が可能となってきた。これら病理の異なるACSに対しては,異なったアプローチや治療法が可能であるかもしれない可能性が示唆されている。特に,plaque erosionに対するアプローチは,今後のACS診療の流れを大きく変えるかもしれない力をもっていると考える。冠動脈解離やspasmなどでもACSは生じうる。新たなメカニズムが解明されるにつれ,また,上記と同様,血管内イメージングなどの発達に伴い治療法にも変化がみられてきている。
 ACSは治療に関してもコントロバーシがある。ステント血栓症はどのように予防すればよいのか,また治療すればよいのか。多枝疾患患者の治療はculprit lesionのみとするのか,あるいはその他の枝も治療したほうがよいのか。Slow flow/no-reflowをいかに予防し,いかに治療するのか。日常臨床で遭遇するこれらの疑問も,多くの臨床試験が次々に出されて知識の整理が必要とされる部分であろう。
 本書では,ACSの発症機序からその治療法に至るまでをさまざまな側面からエキスパートの執筆者に解説いただいた。現在はACSとしてひとまとめにされているが,その一言には入りきらないくらいの病態があり,また問題点があることがおわかりになっていただけると思う。本書が読者のACSに対する考え方を少しでも深めて,しかも移り変わりつつあるACSの概念をご理解いただくことができるようであれば望外の幸せである。

2018年8月
北里大学医学部循環器内科学教授
阿古潤哉
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目次

■Plaque rupture (坂倉建一)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
 【実践 Practice】
  Case 1( 60歳代,女性)/Case 2(60歳代,男性)/Case 3(50歳代,男性)

■Calcified nodule, plaque erosion (樋熊拓未)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
  予後
 【実践 Practice】
  Case 1( 60歳代,男性)/Case 2(20歳代,男性)/Case 3(80歳代,男性)

■ステント血栓症(Stent thrombosis) (下浜孝郎)
 【基礎知識 Knowledge】
  定義
  発生頻度
  発生機序
  ガイドライン
  冠動脈疾患合併症例の非心臓手術
 【実践 Practice】
  Case 1( 50歳代,男性)/Case 2(70歳代,男性)/Case 3(60歳代,男性)

■特発性冠動脈解離(中村日出彦,工藤顕仁,山田康太,西山直希,石川哲也,田口 功)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
  予後
 【実践 Practice】
  Case 1( 50歳代,女性)/Case 2(10歳代前半,女性)/Case 3(50歳代,女性)

■冠攣縮(Spasm) (石井正将,坂本憲治,海北幸一,辻田賢一)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
  予後
 【実践 Practice】
  Case 1( 50歳代,男性)/Case 2(60歳代,男性)/Case 3(50歳代,男性)

■多枝疾患ST上昇型心筋梗塞患者の治療 (中川義久)
 【基礎知識 Knowledge】
  STEMI治療におけるprimary PCI
  多枝疾患患者へのPCI戦略
  海外における治療成績
  日本人における治療成績
  心原性ショック症例への対応
  治療戦略による得失の比較
 【実践 Practice】
  Case 1( 50歳代,男性)/Case 2(70歳代,女性)/Case 3(80歳代後半,女性)

■心電図診断 (小菅雅美)
 【基礎知識 Knowledge】
  心電図診断の注意点・ポイント
  ACSの心電図所見による分類
  異常ST上昇の診断
  Case 1( 80歳代,男性)/Case 2(70歳代,女性)/Case 3(60歳代,男性)

■ST上昇型心筋梗塞 (南 尚賢)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
  機械的合併症
 【実践 Practice】
  Case 1(60歳代,男性)/Case 2(70歳代,男性)/Case 3(70歳代,男性)

■非ST上昇型心筋梗塞 (齋藤佑一,小林欣夫)
 【基礎知識 Knowledge】
  診断
  治療
  予後
 【実践 Practice】
  Case 1( 70歳代,男性)/Case 2(80歳代,女性)/Case 3(50歳代,男性)

■Slow flow/no-reflow (山本裕貞,上妻 謙)
 【基礎知識 Knowledge】
  機序
  診断
  治療
 【実践 Practice】
  Case 1(70歳代,男性)/Case 2(60歳代,男性)
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