やっとわかった!

拡大経蝶形骨手術

手術のセットアップから閉鎖まで

拡大経蝶形骨手術

■著者 北野 昌彦

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • A4判  164ページ  オールカラー,イラスト200点,写真50点
  • 2013年12月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-1550-0

イラストだからよくわかる! 拡大経蝶形骨手術の決定版,ついに完成

真の「拡大経蝶形骨手術」とは?—頭蓋底正中病変に対する第一選択の術式が,経蝶形骨手術へと変化しつつある現在,従来の狭い術野ではなく,広い(拡大)術野で手術を行うことができれば,その適応も拡大していく。本書は,多くの症例を経験してきた著者が得た,拡大経蝶形骨手術に関するすべてのノウハウを,わかりやすいイラストで解説している。
まず,Ⅰ章とⅡ章で,術前準備やセットアップ,また手術の基本アプローチを紹介。Ⅲ章,Ⅳ章では,本手術の要となる術野拡大のテクニックを,鼻腔周辺の解剖とともに,上方・側方・前方・下方に分け,細かい点まで丁寧に述べている。併せて硬膜閉鎖や髄液漏対策など,本手術特有の事項も紹介している。最後にⅤ章では,代表的疾患への対応を具体的な症例を挙げて解説している。
本書を読めば,拡大経蝶形骨手術に興味のある人は手術をしてみたくなり,すでに行っている人は,本書のコツを明日の手術で試したくなるはずである。


序文

秘伝のレシピを公開!
「やっぱり,拡大経蝶形骨法をしたい!」と思った方へ 
 
 この本では,この20年間に成熟させてきたテクニックを,だれでもすぐに実践できるように伝えたいと考えています。料理のレシピのように,その通りにすれば,だれもが最高の結果を得ることができる手引き書です。これまで秘伝とされていた,スープのレシピを公開したような感じです。もちろん,同じスープでも,作り手で多少味が変わりますが,素人が一から始めることに比べたら,一挙にプロの味に近づくことが可能です。
 過去を振り返りますと,わたしが脳神経外科医を目指した1985年,鞍上進展した下垂体腺腫に対する第一選択の術式は開頭術でした。当時,学会の下垂体腺腫に対するシンポジウムで,重鎮の教授が開頭術の優位性を説いていたのを今でも鮮明に憶えています。この結論は10年を経たずして,手術成績の良さで,経蝶形骨法に軍配が上がりました。最近では,さすがに下垂体腺腫に対して開頭術を第一選択にする方は少なくなりました。それから約30年,鞍結節部髄膜腫や頭蓋咽頭腫では,開頭術を第一選択とする方が多数派です。シンポジウムでは,開頭術か拡大経蝶形骨法かが,ホットなディスカッションになっています。歴史は繰り返されるといいますが,低侵襲性や治療成績から拡大経蝶形骨法が近い将来,鞍結節部髄膜腫や頭蓋咽頭腫の第一選択の術式になると確信しています。
 ところが,最近学会に参加しますと,深刻な問題があることに気づきました。拡大経蝶形骨法の術式に関して,施設間や術者間で,かなりの相違が見られます。極端な例を挙げれば,従来の経蝶形骨法の狭い術野から,内視鏡などを利用して頭蓋咽頭腫などの頭蓋内病変を摘出する方法が,拡大経蝶形骨法として報告されていることも少なくありません。しかし,これは術野を拡大せずに,単なる手術適応の拡大を拡大法と称しているだけです。どうしてもアクロバット的な,ハイリスクな手術にならざるをえません。このような混乱した現状に直面すると,術野を拡大することで,自動的に対処可能な適応疾患が拡大する,本当の拡大経蝶形骨手術の普及が急務と痛感しました。
 この本では,手術のセットアップから閉鎖まで,わたしが実践しているノウハウを詳細に記述しました。イラストを多用することで,多くの方に拡大経蝶形骨法を直感的に理解していただくことを目標にしています。もしかしたら,この本に書かれている内容の一部は,これまでの経験の中で,実践されている方もいらっしゃると思います。すでに実践されている方は,それを再確認できるような,経験の浅い方にとっては,手順に従えばすぐに実践できるような構成にしました。
 この本の内容は,現時点での最良の拡大経蝶形骨手術と考えます。これをマスターして,いままで経験したことのない,新しい世界を開いてください。あなたに合った工夫や変更は,大歓迎です。そのことが,将来のさらなる安全性の向上,適応範囲の拡大などの技術革新・進歩につながると確信しています。頭蓋底正中病変の第一選択の術式として広く普及するまで,あと一歩です。この本によって,ひとりでも多くの方が, 「やっぱり,拡大経蝶形骨法をしたい!」 の気持ちを持っていただけることを祈っております。

2013年12月 
北野昌彦
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目次

Ⅰ 手術の準備とセットアップ
 1 手術室のレイアウト
 2 体位
 3 頭位
 4 術前シミュレーション
 5 ニューロナビゲーション
 6 術中モニタリング
    ◆外眼筋モニター
    ◆視覚誘発電位
 7 内視鏡
 
Ⅱ 基本となるアプローチ
 1 鼻中隔の解剖と粘膜剥離
 2 上口唇下粘膜切開法(Nasal phase)
 3 再手術(Nasal phase)
 4 経鼻孔法(Nasal phase)
 5 Sphenoidal phase
 
Ⅲ 術野拡大のテクニック
 1 鼻腔とその周辺の解剖
 2 上方および上側方への拡大(posterior ethmoidectomy)
 3 側方への拡大(transpterygopalatine fossa approach)
 4 前方への拡大(transcribriform approach)
 5 下方への拡大(transclival approach)
    ◆斜台中部へのアプローチ
    ◆斜台下部へのアプローチ
 
Ⅳ 特殊なテクニックと手術器具
 1 鼻鏡
 2 深部縫合(cable-car knot technique)
 3 フィブリン糊の使用法
 4 静脈性出血のコントロール
 5 Anterior intercavernous sinusの処理
 6 頭蓋底の骨削除(egg-shell drilling technique)
 7 視神経管開放
 8 硬膜切開
 9 硬膜外鞍背削除(transdorsum sellae approach)
 10 Pituitary transposition
 11 剥離操作(sharp dissectionとchopping technique)
 12 Watertightな閉鎖(multiple layer closure)
 13 硬膜閉鎖(double layered fascial patch graft)
 14 脂肪片の圧迫伸展(pressed fat graft)
 15 チタンメッシュプレートの使用法
 16 リン酸カルシウム骨ペーストの使用法
 17 ポンプ制御のspinal drainage
 
Ⅴ 代表的疾患への対応
 1 下垂体腺腫
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
 2 ラトケ嚢胞・くも膜嚢胞
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
 3 海綿静脈洞病変
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
 4 鞍結節部髄膜腫
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
 5 頭蓋咽頭腫
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
 6 脳幹病変
    ◆手術戦略と適応
 7 斜台部病変
    ◆手術戦略と適応
 8 眼窩病変
    ◆手術戦略と適応
    ◆手術手技
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