認知症の脳画像診断

早期検出と鑑別をめざして

認知症の脳画像診断

■編集 西村 恒彦
武田 雅俊

■編集協力 松田 博史
伊藤 健吾

定価 8,800円(税込) (本体8,000円+税)
  • B5変型判  184ページ  オールカラー,写真200点
  • 2015年9月14日刊行
  • ISBN978-4-7583-1584-5

認知症の画像診断における「早期検出」,「鑑別診断」,「将来展望」を一望できる1冊!

認知症の画像診断は,早期検出および鑑別診断上からも必ず不可欠なものとなってきている。そこで本書は,「早期検出」,「鑑別診断」,「将来展望」を3本柱として構成し,臨床における画像診断の現状と今後期待される発展について一望できるようコンパクトにまとめている。
認知症の早期検出では,とくに日常診療で用いられているMRI,脳血流SPECTの実際と客観的評価法(VSRADや3D-SSP)につき詳述。また,最近話題となっているMCIクリニックにおける画像診断を用いた診断・治療戦略についても項目を設けている。
認知症の鑑別診断では,変性性疾患に加え正常圧水頭症,血管性認知症,糖尿病性認知症などについて,最近のMRI/SPECTにおける知見についても詳述。将来展望として現実のものとなりつつあるアミロイドPETなどの分子イメージングが果たす役割につき別項として解説している。
認知症の画像診断を必要とする放射線核医学関係者のみならず,神経内科,精神科,脳神経外科に加え一般内科医にとっても,折に触れ参考にしていただける1冊である。


序文

 2001年に西村・武田編集による 「アルツハイマー型痴呆の画像診断」 を出版してから十数年が経過する。この間に痴呆は「 認知症」 と改称され,高齢化社会の到来とともに認知症患者は著しく増加している。認知症に関しては,単なる医科学のみならず介護・福祉などの社会医学あるいは医療経済効果なども考慮した多岐にわたるアプローチが必要である。画像診断に関しても,この一連の流れの中でその位置づけを明確にしていくことが重要である。
 したがって,認知症の画像診断において大切なことは,その早期検出や鑑別診断に加え,治療効果や予後判定に役立つことが期待されている。現時点では,MRIなどの形態診断法に加え,脳血流SPECTなどの機能画像診断法が役立っている。今後,抗認知症薬などの創薬,あるいは治療効果の判定に活用できるバイオマーカを用いた新しい画像診断法である分子イメージングに対し大きな期待がもたれている。たとえば,ADNI研究(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)の推進は,まさに認知症における画像診断の役割が重要であることに他ならない。
 本書はこのような背景をもとに企画したものであり,各種認知症の概念,臨床,画像診断法(MRI/SPECT)の現状,鑑別診断に加え,将来展望として分子イメージング(アミロイドPETなど)の役割にも力を注ぎ構成されている。本書は,認知症あるいはその画像診断の分野において第一線で活躍されている先生方に執筆をお願いして出来上がったものであり,実際のノウハウから最近の進歩まで集大成された内容となっている。したがって, 「認知症の脳画像診断」 の成書としては国内外でも類い稀な書籍であり,読者諸兄に十分に満足していただけるものと自負している。
 放射線,核医学科など画像診断関連の医師・技師の先生方や精神科,神経内科,脳神経外科を始め広く認知症の臨床に興味をもつ先生方,さらには認知症に関係する多くの分野の先生方のお役に立つことができれば望外の喜びである。

2015年8月
西村恒彦
武田雅俊
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目次

1 認知症の画像診断 ━早期検出━
 認知症の診断
   早期診断の必要性
     社会的生活機能と認知症
     脳の老化と認知症
     早期診断の重要性
     認知症対応についての重要な視点
   画像診断の必要性
     各種画像診断の現状
     MRI/SPECTによる認知症の画像診断 
     新しい画像診断法
     脳画像診断の役割

 認知症の臨床
   臨床症状と診断基準
     認知症の診断基準
     アルツハイマー病の臨床症状
     アルツハイマー病の診断基準
     MCIの診断基準
     その他の認知症性疾患の診断基準
       前頭側頭型認知症(FTD)
       レビー小体型認知症(DLB)
       脳血管性認知症 
   評価スケール
     質問式認知機能評価
     観察式認知機能全般評価
     日常生活機能評価
   治療法の進歩
     薬物治療
       AChE阻害薬
       部分的NMDA受容体阻害薬
       AD以外の認知症に対する治療薬
     疾患修正療法
       アミロイドに対する免疫療法
       アミロイドに対するセクレターゼ阻害薬
       アミロイド凝集阻害薬
       タウ蛋白に対するリン酸化阻害薬
       タウ重合阻害薬
       タウ蛋白に対する免疫療法
       その他

 アルツハイマー型認知症のMRI診断
   MRIの実際
     脳体積測定法の変遷
     Voxel-based morphometry
     MRIによる脳機能測定
   MRIによる海馬委縮の評価(VSRAD®)
     画像確認
     ファイル変換
     ボクセル等大化
     線形変換・トリミング
     高信号値抑制
     組織分割
     解剖学的標準化
     健常者との比較
     形態逆変換
   アルツハイマー型認知症のMRI

 アルツハイマー型認知症の脳血流SPECT(IMP)診断
   SPECTの実際
     加齢による脳血流分布変化
     脳血流SPECT製剤
     SPECT画像評価と形態画像診断
   SPECTの統計学的画像処理(3D-SSP)
     統計学的画像処理
     認知症における病型分類
   アルツハイマー型認知症のSPECT画像
     典型的,非典型的なADの脳血流分布
     他疾患の合併,複合病理
   アルツハイマー型認知症のSPECTによる治療効果の判定
     認知症診断における画像検査の役割
     アルツハイマー型認知症治療薬
       コリンエステラーゼ阻害薬
       NMDA受容体拮抗薬−メマンチン−
     治療効果判定の方法論−SPECT統計画像のpitfall−
       統計画像の再現性
       最大値参照法

 MCIクリニックにおける診断・治療戦略
   MCIの診断・治療戦略
     MCIの診断基準の変遷
     当院における診断基準
     当院の診療の流れ
     MCIの治療戦略
     症例
     展望
   MCIにおけるMRI/SPECTの役割
     MCI検査としての画像検査の役割
     形態画像検査(MRI)
     機能画像(脳血流SPECT)
     MCI症例における海馬萎縮の程度と脳血流SPECT検査の比較

2 認知症の画像診断 ━鑑別診断━
 変性性疾患との鑑別
   概念
     プリオン病
     amyloidopathy
     tauropathy
     TDP-43 proteinopathy
     α synucleinopathy
     ポリグルタミン病
   臨床的特徴からの鑑別
     レビー小体型認知症(DLB)
     前頭側頭葉型認知症(FTD)
     進行性核上性麻痺(PSP)
     大脳皮質基底核変性症(CBD)
     嗜銀顆粒性認知症(AGD)
     神経原線維変化優位型老年期認知症(SD-NFT)
     ハンチントン病
   変性性疾患・その他の疾患におけるMRI/SPECT
     レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB) 
     前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)
       前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)
       意味性認知症(semantic dementia:SD)
       進行性非流暢性失語(progressive non-fl uent aphasia:PA,PNFA)
     嗜銀顆粒性認知症(argyrophilic grain dementia:AGD)
     進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)
     皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)
     ハンチントン症
     多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)
       MSA-C,オリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA)
       MSA-P,線条体黒質変性症(striatonigral degeneration:SND)

 特発性正常圧水頭症
   iNPHの診断基準 
   iNPHの臨床症状
   iNPHの頭部MRI所見
   先天性,および小児期の病態形成による成人期発症の水頭症
   asymptomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI(AVIM)
   iNPHの脳血流SPECT所見

 血管性認知症
   臨床的特徴
   MRI/SPECT
     MRI
     SPECT画像所見の特徴
     血管性認知症診断の問題点

 糖尿病性認知症
   糖尿病性認知症の概念と臨床的特徴
   糖尿病患者の脳画像
     脳萎縮と大脳白質病変
     脳血流代謝画像
   糖尿病性認知症の脳画像
     MRI
     脳血流SPECT
     アミロイドPET(11 C-PiB PET)

3 認知症の画像診断 ━将来展望━
 認知症の新しい画像診断
   神経伝達機能イメージング(FP-CIT):ADとDLBの鑑別を中心に
     ドパミン神経経路イメージングの各種リガンド
     FP-CIT SPECTの臨床活用
       FP-CIT使用時の留意点
       FP-CIT SPECTの評価方法
       DLB早期診断補助ツールとしての活用
       DLB臨床症状との関連性
   糖代謝イメージング(FDG-PET)
     18 F-FDGと脳ブドウ糖代謝
     アルツハイマー病診断における糖代謝イメージングの位置付け
     正常脳およびアルツハイマー病におけるFDG-PET所見
     アルツハイマー病と非アルツハイマー型認知症との鑑別
     軽度認知障害に対するFDG-PET
     前臨床期(preclinical AD)のFDG-PET
   分子イメージング(アミロイドPET)
     アミロイドPET診断薬
     アミロイドPET診断原理
     アミロイドPET読影判定法
     アミロイドPETの研究開発への応用
     アミロイドPETの日常臨床への応用
   タウPETイメージングによる認知症研究の新展開
     タウタンパク質とタウオパチー
     タウPETイメージング技術の開発
     [11 C]PBB3-PETイメージング 
     今後の展望
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