下垂体の画像診断

下垂体の画像診断

■編集 三木 幸雄
佐藤 典子

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5変型判  256ページ  2色(一部カラー),写真600点
  • 2017年12月1日刊行
  • ISBN978-4-7583-1603-3

下垂体病変の画像診断における決定版! 充実した画像所見と解説によるスペシャリスト必携の書

下垂体腺腫をはじめとする下垂体の画像診断は意外にも臨床の場で必要となることも多く,下垂体病変は若手放射線科医でも遭遇する。また,不妊症や乳汁分泌,末端肥大,副腎皮質ホルモン高値,視神経圧迫による視野狭窄などで受診後,生理検査などとともに画像診断が鑑別の一助となる。しかしながら,いままでに下垂体の画像診断について詳細に記した書籍はない。
本書は,下垂体研究で先んじている日本において,その粋を集めた決定版である。


序文

 下垂体は,全身の大部分の内分泌腺の機能を調節する,内分泌のマスターグランドである。小さな臓器だが,種々の重要な機能を持つと同時に,多くの種類の疾患が生じうる。
 ほとんどの下垂体疾患はMRIで描出が可能であり,診断には,内分泌学的アプローチとともに,MRIが重要な位置を占めている。下垂体疾患の画像所見は多彩であるため,正確な画像診断をするためには豊富な知識が必要であるが,下垂体疾患の画像診断に関する書籍での記載は,頭部画像診断の本の一部や下垂体疾患の内科・外科の本の一部に含まれているのみであった。本書は,下垂体の画像診断に特化した,わが国で最初の書籍となる。
 本書の構成は,まず,下垂体の画像診断に必要な内科的知識・外科的知識・病理学的知識の章を設け,続いて,個々の下垂体疾患の画像診断についての章を設ける構成とした。Common diseaseのみならず,まれな疾患についても詳細な画像所見を記載いただいた。特に大切な疾患については,下垂体を専門とする内分泌内科医・脳神経外科医が求める情報も加え,より詳細な画像診断ができる内容とし,かつ最新の知識もトピックに記載していただいた。また,後葉の高信号の発見,疾患概念の提唱,画像診断法の開発など,下垂体のMRIは,日本が世界をリードしてきた分野の一つであり,要所に科学史的なエピソードも盛り込んで頂いた。その際当事者の一人として,MRIを用いた下垂体研究のパイオニアである藤澤一朗先生に執筆者として参加していただいたことは,大変光栄である。また他の著者の先生方も素晴らしい内容の原稿を書いてくださったので,画像診断医のみならず,内分泌内科・脳神経外科・神経内科・眼科・小児科・耳鼻咽喉科などの診療科医師にも役立つと信じている。
 本書の編集にあたり,下記の方々にご指導・ご協力を頂いた。ここに記して謝意を表す。大畑建治先生(大阪市立大学),富樫かおり先生(京都大学),中本 裕士先生(京都大学),山本 憲先生(京都大学)。また,まれな疾患の多くは,神経放射線ワークショップ,関西NR勉強会,NR懇話会などで提示された先生方にお願いした。これらの症例検討会を運営されている世話人・当番の先生方,ならびに,いつのどの会でどの疾患が提示されたかを教えていただいた下野 太郎先生(大阪市立大学)にも感謝する。3年前に本書を提案くださったメジカルビュー社の伊藤 彩氏,綺麗で見やすいレイアウトに仕上げてくださった同社の中澤 恵氏にも感謝する。
 本書が,下垂体疾患に関わる医師のみならず,患者さん方のお役に立てることを祈念している。

2017年8月
三木 幸雄,佐藤 典子
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目次

■ I 下垂体の画像診断に必要な内分泌内科的知識  島津 章
ホルモン検査
下垂体ホルモン
  成長ホルモン(GH)-インスリン様成長因子‐1(IGF-1)
  プロラクチン(PRL)
  甲状腺刺激ホルモン(TSH)‐甲状腺ホルモン
  副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)-コルチゾール
  性腺刺激ホルモン(LH・FSH)-性ホルモン
  抗利尿ホルモン(ADH)
下垂体腺腫患者の内分泌学的評価
下垂体腺腫の薬物療法

■ Ⅱ 下垂体の画像診断に必要な脳神経外科的知識  後藤剛夫
下垂体腺腫
  術前画像診断
  海綿静脈洞進展
  鞍隔膜上進展
頭蓋咽頭腫
  術前画像診断
  視交叉,第三脳室底との位置関係を考慮した頭蓋咽頭腫の細分類
  細分類別画像と手術難易度

■ Ⅲ 病理と解剖  井下尚子,福原紀章,西岡 宏,山田正三
総論
  下垂体の解剖
  下垂体近傍腫瘍の概要
  下垂体病変に対する病理学的な検索
下垂体病変各論
  前葉病変の概要
  下垂体腺腫の組織分類の考え方
  下垂体腺腫の構造
  嚢胞を伴いやすい病変
  漏斗・茎部の病変
  下垂体後葉の病変
  その他の間葉系腫瘍
  下垂体の悪性腫瘍
  下垂体の炎症性疾患

■ Ⅳ 画像診断
撮像方法 下垂体のMRI・CT撮像条件   横田悠介,伏見育崇,三木幸雄
 MRI
  撮像装置
  下垂体の解剖学的特徴と疾患
  撮像断面
  撮像に際して注意すべきアーチファクト
  2D 撮像と3D 撮像
  下垂体ダイナミック造影MRI
  拡散強調像
  読影のポイントと注意点
 CT
  概論
  撮像方法
  読影のポイントと注意点
正常像
 前葉  三木幸雄
  解剖・機能/サイズ/信号強度/造影パターン/トルコ鞍空洞症(empty sella)
 後葉① 視床下部-下垂体後葉系のMR画像パターン  藤澤一朗
 後葉② 視床下部-下垂体後葉系のMR画像パターン  佐藤典子
 下垂体柄  里上直衛,三木幸雄
  解剖/径/長さ/信号・造影パターン
 海綿静脈洞  東 美菜子,平井俊範
  定義と位置/形態と壁構造/海綿静脈洞内の脳神経/海綿静脈洞と関連ある静脈路/海綿静脈洞部の内頸動脈とその分枝/画像所見
先天奇形(congenital abnormalities)
 重複下垂体(duplication of the pituitary gland)  藤井裕之,古川理恵子,木村有喜男
 中隔視神経形成異常症(septo-optic dysplasia : SOD)  藤井裕之,古川理恵子,木村有喜男
 カルマン症候群(Kallmann syndrome)  藤井裕之,古川理恵子,木村有喜男
 鞍棘(sellar spine)  藤井裕之,古川理恵子,木村有喜男
腫瘍性疾患(neoplastic diseases)
 下垂体腺腫(pituitary adenoma)  三木幸雄,坂本真一
  microadenoma
  macroadenoma
  産生ホルモン別の留意事項
  macroadenoma における異所性後葉形成
  異所性下垂体腺腫(ectopic pituitary adenoma)
  術後画像診断
 下垂体腺腫の出血・下垂体卒中(hemorrhage in pituitary adenoma and pituitary apoplexy)  坂本真一,三木幸雄
 神経下垂体ジャーミノーマ(胚腫)とその他の胚細胞腫瘍(neurohypophyseal germinoma and other germ cell tumors)  金柿光憲
 頭蓋咽頭腫・ラトケ嚢胞  坂本真一,三木幸雄
  頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)
  ラトケ嚢胞(Rathke cleft cyst)
 下垂体細胞腫(pituicytoma)  立川裕之,三木幸雄
 神経下垂体顆粒細胞腫(granular cell tumor of the neurohypophysis)  雫石 崇
 腺性下垂体紡錘形細胞オンコサイトーマ(spindle cell oncocytoma of the adenohypophysis)  影山咲子,鹿戸将史
 下垂体神経膠腫(pituitary glioma)  井手口怜子,松尾孝之,石丸英樹
 下垂体癌(pituitary carcinoma)  勝部 敬
 下垂体発生悪性リンパ腫(pituitary lymphoma)  藤井裕之,木村有喜男
 トルコ鞍部神経芽腫(neuroblastoma of the sellar region)  樋渡昭雄
 転移性下垂体腫瘍(metastatic pituitary tumor)  前田正幸
 下垂体発生の衝突腫瘍(collision tumors of the sellar region)  松木 充
非腫瘍性疾患(non-neoplastic diseases)
 クモ膜嚢胞(arachnoid cyst)  伏見育崇
 成長ホルモン分泌不全性低身長症(growth hormone deficiency)  藤澤一朗
 下垂体過形成と下垂体外疾患による下垂体腫大を呈する病態(pituitary hyperplasia and pituitary enlargement associated with extrapituitary conditions)  下野太郎
 シーハン症候群(Sheehan syndrome)  鈴木賢一
 金属沈着  藤澤一朗
 ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)  榎園美香子,相田典子
 神経サルコイドーシス(neurosarcoidosis)  森 暢幸
 結核(tuberculosis)  東山 央,西澤光生,鳴海善文
 トルコ鞍部黄色肉芽腫(xanthogranuloma of the sellar region)  外山芳弘
 リンパ球性下垂体炎(lymphocytic hypophysitis:LYH)  中田安浩,佐藤典子
 IgG4関連下垂体炎(IgG4-related hypophysitis)  豊田圭子
 下垂体膿瘍(pituitary abscess)  土井下 怜,三木幸雄
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