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第7回 ゼロから始める千夜術野物語 第一夜

三木さん
「術野ですか……ついに」
ワタシ
「術野です。ついに」
そう,術野なのです。今回より当企画はついに「術野イラスト」という名の大海に漕ぎ出します。
術野イラストといえばまさにメディカルイラストの花形! アメフトでいうならクォーターバック,オーケストラでいうならコンサートマスター,マクドナルドでいうならソーセージエッグマフィンですよ!(個人の感想です)
メディカルイラストといえば,窮極,術野を描くことに尽きるのではないでしょうか。
以前にお話を伺わせていただいた先生も自分がやった手術は全部術野をイラストにして残して,それが上達につながったっておっしゃってましたし。たぶんあの先生美術5ですけど。
三木さん
「なるほど,この企画の本丸が術野イラストだということはなんとなくわかりました」
ワタシ
「そうです。行き着く先としては『術野イラストですら楽して描ける(といいなあ)』を提示したい。まあ物は試しですので,今回はこちらの手術動画をご用意しました」

人工股関節全置換術〜(猫型ロボット的なアレ)

三木さん
「THAですか。骨切りだったり人工関節の設置だったり,やることの多い手術をもってきましたね」
ワタシ
「詳細は京セラ様のホームページをみていただくとして,はい,手術件数も多く術野も大きいこの手術を題材としました。あとY本さんが整形外科担当なので素材の準備が楽で」
そんな楽屋事情はさておいて,今回この人工股関節全置換術からピックアップしたのはこのシーン。
ワタシ
「大腿骨にステムを入れるためのラスピング……の準備のためのドリリングのところですね。京セラ様のホームページにあるイラストの,真ん中のやつ。これのやや手前といった具合」
Y本さん
「動画で続けてみているから僕らはいいですけど,ここだけ切り出すとなにがなんだかわかりづらいですね」
ワタシ
「いいんだよ読んでくださってる(といいな)先生はプロなんだから」
三木さん
「専門とかそういうのがあるのでは……」
このままこの場面をイラストにするのもいいのですが,先生方の手術イラストを拝見するとある程度前後が描いてあることが多いんですね。
並んだイラストの中に手術の進行を落とし込んであるというか。
ワタシ
「なのでここから逆算して,動画にはなかった『大腿骨頭を切除するシーン』も描いてみましょう。そうすれば手術開始からの経過がよりわかりやすくなります。京セラ様のホームページにあるイラストの最初のやつのところですね
Y本さん
「京セラ酷使がひどい」
三木さん
「この手術だと側臥位ですよね……」(サラサラ)

ワタシ
「お、ほら美術5がなんの迷いもなく描きはじめましたよ。美術2も続いてください」
Y本さん
「描けないから美術2なんだよなあ……あれ,三木さん紙2枚重ねてます?」
三木さん
「え,ああ,はい。こうすると下書きの線が尖りすぎなくなるので」
ワタシ
「そういうところやぞ美術5」

ワタシ
「こういいうのでいいんですよこういうので」
三木さん
「はあ……おやY本さん,ちょっと苦戦気味ですか?」
Y本さん
「なんかかたちがうまいこと取れないですね」

三木さん
「大腿骨が主役なのは間違いないんですが,それを大きく描きすぎたせいで全体のバランスを難しくしてしまっていますね。こういう術野のイラストでは絶対に動かない線から先に決めてしまうのも1つの手です」
ワタシ
「絶対に動かない線というと」
三木さん
「例えば身体のラインを先に描いてしまいます。そこに収まるように骨盤を置くとサイズ感が整いますよ。この構図だとお尻をしっかり描いてあげるといいです」
Y本さん
「尻から……こうかな」

ワタシ
「おお,打てば響くようだ。新人Oさんを出禁にした甲斐がある」
Y本さん
「また出禁だったんですか」
三木さん
「かたちがとれたら,続きはこれまでと同じです。いっぱい線を引き,いい線を選んでほかを消し,これを繰り返しながらベストを探りましょう」
Y本さん
「はい……あー,なんだか自分でもいい感じに思えてきました」
三木さん
「思えてきましたか。いいかたちになりましたか」
Y本さん
「はい!」
三木さん
じゃあ消しましょう

え。
ワタシ
「け,消すってどの線をですか。もうかなりいい感じじゃないですかこれ」
Y本さん
「そうです,いい線ですようちの子」
三木さん
「いえ,線ではなく大腿骨全部です。だって骨頭の骨切りするためには大腿骨を脱臼させて頚部がみえるようにしますよね? 今描いてるこれ正常解剖じゃないですか」

三木さん
「なのでその『いい感じ』になった大腿骨のイメージを残したまま,いったん消します。で,脱臼させた向きとかたちでもう一度描きましょう。慣れれば最初からこの構図でかけるようになります。さ,消してください。寛臼骨もみえるようにするといいですね」
ワタシ
「いいですねじゃないんですよ。あの,Y本さん今回この線取るために結構な苦心をですね」
ワタシ
「そ,そ……そういうところやぞ美術5!

つづき(第8回)は11月20日公開予定です。