Medical Illustration 画力ゼロから始めるメディカルイラスト生活Medical Illustration 画力ゼロから始めるメディカルイラスト生活

第12回 ゼロから始める時短イラストへの挑戦 わが征くは美術2の大海篇

ワタシ
「事故の多い生涯を送って来ました」
Y本さん
「そんな太宰はやだなあ」
さていろいろと事故の多かったような前回記事ですが,最後が三木さんの綺麗な線画でまとまったのでよしとします。
大事なのは読後感ですよ読後感。

ワタシ
「よしじゃあ塗っていきましょう。1時間での完成が目標で,2人とも線画に45分くらいかけてますので残り15分です」
Y本さん
「迷ってると骨も塗り終わらなさそうですね。三木さんなにかアドバイスとかいただけますか?」
三木さん
「時短で塗るにはポイントだけ塗ることです。あとはぼかしてもいい。今回一番みせたいのはトンネルの部分ですよね。ほかはそれっぽければいいです。べったり色を置く必要はない。ハイライトもいりません。みてもらいたいところに目が行くように塗りましょう」
ぼかしてもいい。それっぽければいい。
なんて勇気の湧く言葉でしょうか。これからの人生でイラストを描くたびに思い出したい。

三木さん
「そして塗りながら線画の気になる箇所をなおしていきます」
Y本さん
「それありなんだ」
三木さん
「ありです。パッとわかりやすい絵というのは理屈のあっている絵です。辻褄が合っていればそれなりにみえます。合わせていきましょう」
ワタシ
「その言葉,額縁に入れて飾りたい」
三木さん
「わかりやすい上達のポイントは光源を意識して影をつけることです。濃い・中段・明るい,の3段階で影をつけて塗るだけで違いますよ。凝った絵というのはこの塗りが5段階とか10段階のグラディエーションになっていることなんです」

光源といわれるとなんかややこしいですが,影の暗さを3段階にする,というのは指針がわかりやすい。
Y本さん,これは美術2という影を落としたわれわれへの光明ですよ(ちょっと上手いことをいった顔)。

三木さん
「手術は実際には強力なライトを当てているんで影は出ませんよね? でもこれはイラストなんで陰影をつけていいんです。絵のなかの一番明るいところと一番暗いところを決めて立体感を出してきましょう」
Y本さん
「ついにイラストならではの意義がプロの口から」
ワタシ
「説得力がすごい。今度『写真でいいじゃん』っていわれたらこう返すようにしよう」
三木さん
「最後に具体的なテクニックをちょっと。大腿骨内顆の影を濃くして,大腿骨孔の縁も濃くします。こうしてから孔の入口付近に陰影をつけると上に抜けていくような孔にみえますよ。ほかは塗りすぎないようにすれば,ほらこのとおり」



ワタシ
「Y本さん,このクオリティで1時間。これはもうアリでは?」
Y本さん
「われながらアリだと思います」
ワタシ
「ふっ……ついにたどり着いてしまったようですね。美術2の向こう側ってやつによ……」
三木さん
「それは普通に美術3なのでは?
ワタシ
「……」
Y本さん
「……」
ワタシ
「……やはり上達してしまっていたか」
Y本さん
「……地味な経験値の上積みが」
三木さん
「いいことですよね?」
かくして「画力ゼロだけど楽してメディカルイラストが描けるようになりたい」を標榜した本企画は,
「楽なりに必要なポイントを学習した結果,その経験で画力が上がる」
という結末に至りました。

いや,でも多少の楽はできたはずだ! そのはずですよねえY本さん!
Y本さん
「このまま描かないでいると3カ月くらいでなにもかも忘れそうなんで,その場合の損得は微妙っすかね」
三木さん
「いやキープしましょうよ」
おしまい
本連載は今回が最終回となります。ご高覧ありがとうございました。
すべてのあまり苦労せずにメディカルイラストを描きたい美術2に幸あらんことを祈念します。