新 目でみる循環器病シリーズ 9

心不全

診断・治療・管理

心不全

■編集 堀 正二

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5判  242ページ  2色(一部カラー)
  • 2006年4月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-0131-2

現時点での心不全の疫学から患者管理までを凝縮した1冊

人口の高齢化ならびにわが国の生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加により,慢性心不全患者は増加の一途を辿り,今後さらに増加していくと予想される。
本書では,疫学からみたわが国の心不全患者の実態から,病態・病態診断のための検査・薬物療法から心臓移植までの治療の現状および,患者の外来・在宅管理まで,現時点での心不全診療のポイントをコラム等をまじえ,わかりやすく解説いただいた。


序文

 心不全患者は,現在わが国に100万人存在すると推定されるが,あらゆる心臓病の終末像であるため,心臓病の発症が減少しないかぎり,心不全患者は増加の一途をたどると考えられる。とくに,虚血性心疾患が増加しているため虚血性心不全が増加することは間違いない。心不全は,急性心不全と慢性心不全に大別されるが,いずれもその病態の理解には,心筋の細胞レベルにおける興奮−収縮関連(ECカップリング)のメカニズムから興奮伝播および収縮に伴う細胞内情報伝達機構などの心筋収縮−弛緩の生理を知る必要がある。心不全の原因となる心筋障害は,圧負荷や虚血,酸化ストレスなど負荷因子に対する代償機序が障害因子となることが明らかにされ,心筋不全進展のメカニズムが解明されつつある。最近注目されている拡張不全の病態もマクロからミクロのレベルで解明が行われつつあり,治療法も近いうちに確立されるものと期待されている。一方,心不全の病態診断技術も進み,心臓カテーテル検査のように侵襲的診断法から,心エコー,RI,CT,MRIのように動画像解析技術が長足の進歩を遂げている。心不全は心臓のリモデリングに対する形態学的診断と,収縮−拡張機能の機能的診断が重要であり,CTやMRIのモダリティが,心エコー検査の欠点を補い,高精度,高品質の画像から詳細な機能解析が可能となりつつある。また,心不全ではBNPが生化学マーカとして盛んに利用されるようになってきたが,心筋の性状変化を反映するいくつかのマーカも開発されつつあり今後の発展が期待される。心不全の薬物療法は,心筋保護に重点を置いて,ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬が第一選択薬として確立され予後改善効果が実証されているが,収縮能をサポートするためには,補助循環や両心室同期ぺーシングのような非薬物治療に期待が寄せられている。心室リモデリングを外科的に修復する左室形成術も重症心不全の治療に広く行われるようになり,心不全の管理も内科と外科が共同して行う時代となってきた。最後の砦としての心臓移植は,世界で年間3,000例あまり実施されているが,わが国はドナー不足が大きな障壁となって思うように進んでいない。しかし,心臓移植実施施設も拡大され,今後,治療の選択肢の一つに加えられるようになるのは間違いない。
 これらの心不全の診断・治療・管理の最新の進歩を図解を駆使してできるだけビジュアルに読者の理解を容易にしたのが本企画の特徴である。以前の目でみる循環器病シリーズの改訂版として,紙面を刷新した本書がお役に立てば幸いである。
平成18年3月

大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
堀 正二
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目次

I—心不全の病態を識る  
 不全心におけるE-CカップリングとCa動態  矢野雅文
 不全心筋の電気生理  辻 幸臣, 児玉逸雄
 心筋収縮における細胞内情報伝達とその異常  吉川 勉
 心筋収縮不全と心筋エネルギー代謝  後藤葉一
 心筋肥大と破綻のメカニズム  彦惣俊吾,大津欣也
 心不全における神経体液性因子  蔦本尚慶,堀江 稔
 拡張機能不全  山本一博,真野敏昭,坂田泰史,堀 正二
II—心不全の病態診断のための検査  
 心臓カテーテル検査による血行動態の診断  永田 剛,甲斐久史,今泉 勉
 心エコー図法による血行動態・リモデリングの診断  合田亜希子,増山 理
 心不全の画像診断の現況(RI/CT/MRI)  東野 博,望月輝一
 生化学マーカーによる重症度診断  小板橋俊美,和泉 徹
 運動耐容能と身体活動指標  長山雅俊,伊東春樹
III—心不全を治す  
 急性心不全の薬物療法  清野精彦,高野照夫
 急性心不全の非薬物療法(IABP,PCPS,LVAD)  中谷武嗣
 不整脈に対する非薬物療法(ペースメーカ・ICD)  佐藤俊明
 慢性心不全の薬物療法  大草知子,松崎益徳
 重症心不全に対する両室同期ペーシング治療  松田直樹
 重症心不全に対する左室形成  許 俊鋭
 心臓移植の現状  白倉良太
 心不全に対する再生療法  上山知己,王 英正,松原弘明
IV—心不全の疫学と予後  
 慢性期心不全の疫学と予後  筒井裕之
 心不全患者の管理  瀬川郁夫
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