失神を究める

失神を究める

■編集 野原 隆司

定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
  • B5変型判  256ページ  2色(一部カラー)
  • 2009年3月23日刊行
  • ISBN978-4-7583-0191-6

救急を含めた循環器臨床に必要な「失神」の知識がすべてわかる!

失神は日常的に遭遇する症状であると共に,生命に危険をもたらす初期症状ともいえる。また,高齢人口の増加,突然死発生の病態理解,診断学の向上により,さらにその意義を増している。
現在の循環器診療において失神に対しての注目度が高まっている理由としては,日常臨床において生命をきたす基礎心疾患が非常に多岐に渡り,鑑別に際して苦慮することが多いことが挙げられる。
本書では,失神の特徴ごとに病態を理解し,その後,具体的に症例を挙げて治療戦略を解説することにより,1冊で失神についての重要事項が理解できる。また,救急を含めた循環器臨床における最新の治療法を紹介することにより,必須知識が身につく構成となっている。


序文

 日本循環器学会は,循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005-2006年合同研究班報告)報告で“失神の診断・治療ガイドライン”をまとめている[Circulation J 71(suppl IV),2007]。多くのガイドラインは改訂を重ねているが,診断治療の基本にもなるべきものである。エビデンスレベルによりクラス分類を行い,より精度の高い診療を行えるようになっている。失神全体を見渡すと,エビデンスレベルは必ずしもすべてが高いものではないが,日常診療の上で重要な部分を占めることは明瞭である。実際,救急部門の3%近くはこの失神を主訴にしているし,場合によっては患者のQOLの低下,さらには予後を規定するものでもある。ガイドラインに則り診療することが重要な時期になっているが,より多くの経験と,実際的側面を重視した執筆本が欲しかった。
 いみじくも,メジカルビュー社は2002年,2006年にHeart View でこの失神の特別企画を試みている。診る,識る,治すという構造のこの専門刊行物は多くの読者を得て,際立った存在である。同社からこの本の企画が出された。この時期に先見性のある同社の推進力を得て,多くの専門家の協力により失神の実際的な専門書を上梓できることは,臨床を重視した診療を行う身としてはこの上ない幸せである。
 失神は狭義には脳血流の一過性の低下による意識障害と定義されるが,広義には代謝性のものや精神疾患も含まれる。臨床現場,特に救急の現場ではこれらの鑑別はいつも容易に行われるわけではない。失神の40%は原因を明らかにすることが困難とされる。このために,核心にいたる病態生理のまとめと,それらを如何に頭の中で整理統合するかのトレーニングが必要である。多くの臨床例を中心にまとめた理由もここにある。縦割りの,失神そのものを知る行為と,臨床現場での展開,さらには横断的,各論的な失神の症例に学ぶ治療的側面,そして先端医療における遺伝子の情報も織り込んだ。小児部門も重要であるし,現場でのアプローチもつけた。最先端のアブレーション,PCIを含めたカテーテル治療は充実した域にあるが,その反面,生活療法もきわめて重要な側面として捉えた。
 この一冊が救急を含めた臨床現場に置かれ,毎日の診療に活用いただければ,執筆者とともに編集させていただいた著者の望外の喜びとなるものである。

2009年2月
田附興風会医学研究所 北野病院副院長
野原隆司
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目次

I 失神を認識する

失神を認識する 堀 進悟
 失神の定義
 病態生理
 疫学
 予後

II 失神の“特徴”を知る

心原性失神 小林義典
 失神の原因と頻度
 心原性失神の診断
 心原性失神診断における各種検査法
 構造的心疾患ごとの評価すべきポイント

神経性失神
 血管迷走神経性失神 岩瀬 敏
  定義
  発作時の症状
  Bezold-Jarisch反射(ベツォールト−ヤーリッシュ反射)と血管迷走性失神の意義
  血管迷走神経性失神の誘因と経過
  血管迷走神経性失神の治療
  今後の展望

 神経調節性失神 水牧功一
  神経調節性失神とは
  神経調節性失神の機序
  神経調節性失神の診断 
  神経調節性失神の治療
  症例
  今後の展望

 頸動脈洞過敏症候群 西崎光弘
  病態生理
  診断
  治療
  患者の予後と社会生活
 
 状況失神,入浴,採血 小松かおる,住吉正孝
  状況失神の種類と病態生理
  状況失神の診断と検査
  状況失神の治療
  状況失神患者の予後 
  入浴
  採血

起立性低血圧 高瀬凡平
 起立性低血圧の概念・歴史
 病態生理
 診断と原因疾患
 薬剤性失神と薬剤誘発性起立性低血圧
 薬剤誘発性起立性低血圧を惹起する薬剤について
 治療と予後

脳血管性失神 島津智一,島津邦男
 脳血管性失神
 病態生理
 検査
 治療
 脳循環自動調節能

III 原因究明のための臨床現場での展開

失神に遭遇したら 中村岩男
 失神患者が外来を受診した場合
 目の前で失神患者が発生した場合

年代別,性別での失神のみかた
 幼小児期,若年者 田中英高
  失神の病態について
  小児期における失神の原因疾患
  注意すべき失神の原因疾患の診断
  神経調節性失神(NMS)の概念について
  起立性調節障害(NMSを含む)のサブタイプと病態について
  神経調節性失神の診断について(とくに起立試験について)
  治療 

 成人,高齢者 樋口 聡,三田村秀雄
  加齢に伴う生理機能変化
  失神の原因
  失神診断の進め方
  入院の決定と入院後の精査

解明の進め方 小林洋一
 失神の原因,分類,予後
 検査の進め方
 失神鑑別の各種検査法の特徴と適応,意義

IV 循環器疾患における失神の病態と治療を知る

不整脈 平松茂樹,大江 透
 徐脈性不整脈
 頻脈性不整脈

虚血性心疾患 土井孝浩,木村 剛
 失神発作の機序
 失神発作をきたす虚血性心疾患
 診断
 治療

心筋症 西尾亮介
 心筋症における失神
 心筋症とは
 今後の展望

弁膜症 植山浩二
 代表的な心臓弁膜症の概要
 大動脈弁狭窄
 僧帽弁狭窄
 僧帽弁閉鎖不全
 感染性心内膜炎
 臨床現場で重要な点

小児疾患(先天性を含む) 福原淳示,住友直方
 徐脈性不整脈
 頻脈性不整脈
 先天性心疾患
 先天性心疾患術後不整脈
 冠動脈起始異常
 心筋炎
 川崎病
 心臓震盪(commotio cordis)

大血管疾患(大動脈,肺疾患を含む) 山田典一
 大動脈疾患
 肺循環疾患

脳神経疾患と失神の関連 高橋牧郎,松本禎之
 一過性意識消失(失神を含む)の病態生理
 一過性意識消失の鑑別
 鑑別に必要な検査

失神の生活療法 小松かおる,安田正之,住友正孝
 神経反射に起因する失神
 治療ガイドラインについて
 起立性調節障害に起因する失神
 心疾患に起因する失神

失神の遺伝子異常 蒔田直昌,筒井裕之
 遺伝性不整脈
 心筋症
 今後の展望

突然死の病態と発症予知 池田隆徳
 突然死の病態と特徴
 突然死を予知するための検査法
 突然死を予防するための治療法 

V 救急搬送患者に対するアプローチ

救急搬送患者に対するアプローチ 鈴木 昌
 救急部外来(ED)における失神
 EDにおける失神患者診療の原則
 EDにおける失神の鑑別疾患とその頻度
 EDにおける病歴聴取
 身体診察
 12誘導心電図
 各種検査
 リスク層別化
 EDにおける失神診療のアルゴリズム
 EDにおける患者指導
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