最新 産科麻酔ハンドブック

改訂第2版

最新 産科麻酔ハンドブック

■訳 奥富 俊之

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • A5判  384ページ  2色
  • 2011年2月14日刊行
  • ISBN978-4-7583-1071-0

産科麻酔の世界的権威,ダッタ教授による産科麻酔の実践書の最新訳本。新たな執筆者を2人迎え,内容もより充実!

2007年3月に刊行した訳本“Obstetric Anesthesia Handbook ”の改訂版。産科麻酔における世界的権威ダッタ教授による原本は今回で5回目の改訂となり,もはやこの産科麻酔領域においては,バイブルと言っても過言ではない。
また今回から原本ではダッタ教授だけでなく,新たに2名の執筆者が加わり,前版をアップデートしつつも,より多角的な視点に立った内容となっている。
具体的には,新たに「薬物によらない陣痛緩和」を章として立ち上げるなど,エビデンスの取りにくい補助手段についても言及している。また,前版では1つにまとまっていた「ハイリスクの妊娠」を「母体合併症」と「妊娠に関連した問題点」の2つに分けることにより,より充実した,読みやすい形になっている。
内容は拡充させているが,「ハンドブック」としての機能も保持した実践的な1冊である。


序文

訳者序文

 Datta先生(Sanjay) の「産科麻酔ハンドブック」は1992年に初版が出版され,これまで1995年,2000年,2005年と改訂されてきました。1995年にDatta先生を訪ねてハーバード大学のBrigham and Women’s 病院に行った際にこの本と出会い,Datta先生の温かさ,その一方で産科麻酔に対する飽くなき探究,絶え間ない努力と情熱に触れ,感銘した覚えがあります。当時,わが国でほとんど知られていない産科麻酔という麻酔科の一専門領域のわが国における指南書を求めた結果が,この最高の名著の日本語訳を出版するという形となりました。本書は産科麻酔に必要な最低限の解剖学,病態生理学,薬理学,臨床上の手技,それに伴う諸問題への対応などさまざまな側面を万遍なく網羅しており,他に類を見ない良書であることは間違いありません。その本が,2010年にBhavani Shankar Kodali先生,Scott Segal 先生の二人が加わって改訂されました。第2版および第4版の日本語訳同様,謹んで,この翻訳をSanjay Datta先生に,そして今回改訂に加わったBhavani Shankar Kodali先生,Scott Segal先生に捧げたいと思います。
 産科麻酔学も他の学問同様,日々進歩しており,これらの最新の知識を獲得し,臨床の場で実践するためにはわれわれも努力が必要です。それがひいてはお母さん方が安心できる,そして安全な産科麻酔の提供となります。麻酔医療が介入しないお産も選択の一つかもしれませんが,一方で,出産の高齢化,合併症を抱えた妊娠(高血圧,糖尿病など),生殖補助医療の進歩と,それに伴う多胎の増加,帝王切開率の増加などの近年の出産背景の変化を考えると,周産期医療に携わる人は産科麻酔を避けて通れない時代になってきました。わが国の無痛分娩率はいくつかの先進国と比較すると極めて低いのが現状ですが,徐々にではあるものの確実に希望者は増加しており,それらの希望者には適切な無痛分娩を提供すべきです。そのような意味で,これから産科麻酔を学ぼうとしている医学生,看護学生,研修医,麻酔科医,産科医,看護師,助産師の方々への入門書として本書を活用していただければ幸甚に存じます。
 本書は,産科麻酔ハンドブック(医学書院MYW),最新産科麻酔ハンドブック(メジカルビュー社)でお世話になった方々に加え,今回の改訂第2版では特に,北里大学病院総合周産期母子医療センターの天野完診療教授,および同センターに2010年7月に設立された産科麻酔部門に2010年11月から加わってくれた加藤里絵准教授から,いくつもの助言をいただきました。また出版までの地道な作業を担当いただいた清澤まやさん,矢部涼子さんには大変お世話になりました。ここに深甚なる感謝の意を表したいと思います。

2010年12月
北里大学医学部診療教授(麻酔科学)  
北里大学病院総合周産期母子医療センター産科麻酔部門主任
奥富 俊之
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第5版序文

 私たちはSanjay Datta医師とともに,ここに産科麻酔ハンドブック第5版を出版することをとても光栄に思います。よき師のかつての学生,そして現在の同僚として,私たちは,この名著であり,また広く読まれている本に,産科麻酔科医の常に進化する面を反映させるため,最新情報を加えました。この教科書が最初に書かれた20年近く前の頃,すわなち,オンライン検索の手段,ダウンロード可能な論文,検索可能な教科書がどこでも遍く利用できる以前の時代に思いを巡らすと驚かざるをえません。初期の版は,主としてDatta医師個人の臨床現場,文献,教育ファイルなどから体をなしてきました。多くの人が,もともとのハンドブックに示された深く広範囲に及ぶ彼の智慧から恩恵を受けてきました。そして今度は私たちが,世界中の次世代の研修医,研究仲間,産科麻酔科医などの人々に彼の仕事を伝える手助けをする名誉が与えられました。もともとの単一著者による著作というコンパクトな体裁を保ちつつ,私たちは,いくつかの新しい資料を加え,いくつかの章を利用しやすいように再編し,参考文献を更新し,図と付録を改訂するようにしました。私たち同様,読者が臨床の実践においてこれがとても有用であること感じてくれることを切に願っています。

Scott Segal, MD
Bhavani Shankar Kodali, MD
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第1版序文

 学究的な麻酔科医の主たる“生き甲斐”の一つは,研修医や研究仲間との相互交流の機会です。彼らはほとんどが,賢く,精力的で,よく働きます。私の職業人生の上で,このような特別な集団の人間と付き合えたことは喜びであり,彼らの産科麻酔に対する情熱はこの企画を進めていく上での礎となっています。
 妊婦はさまざまな面で彼女達が妊娠していない時とは異なっています。彼女達の期待,要求,欲求に応えるべく産科麻酔は意欲をかき立てられ,それらを満たそうとしています。基本的に,この本は研修医のみならず研究仲間を鼓舞しようとするレベルでそれらの側面を扱っています。
 この本は19章からなり,母体の生理学,周産期薬理学,さらには異なった手技における麻酔法などさまざまな側面に言及しています。私の望みは,それらを簡潔に完成させることです。可能性のある多くの問題点に言及しながら麻酔法の論点について議論することに努力してきました。 
 この本が研修医,研究仲間,そして同世代の人々に有用で刺激的であることを切に願っています。最後に,この小型本の定期的な改訂をすることで,内容を常に最新なものに保ち,その時代の関心事または議論中のトピックスに触れることができます。
 私は,この企画がその人なしには成しえなかった人々に感謝の意を示したいと思います。Knapp医師に対しては,産科麻酔の法医学の側面に関して説得力のある意見を語ってくれたことに感謝します。他の人には成しえない編集協力をしてくれたMs. Vehring には特別に感謝したいと思います。最後に,Ms. Racke には彼女の図解に対して,Ms. Russoと Ms. Spelling には秘書としての援助をしてもらったことに感謝します。

Sanjay Datta, MD, F.F.A.R.C.S.(Eng)
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目次

1章 妊娠,分娩,産後の母体の生理的変化 
 血液学的変化
 心循環系の変化
 呼吸系の変化
 胃腸系の変化
 腎臓系の変化
 中枢および末梢神経系の変化
 内分泌系の変化
 筋骨格筋系の変化
 皮膚系の変化
 乳房組織の変化
 眼の変化

2章 局所麻酔薬の薬理 
 化学
 物理化学的特性
 局所麻酔薬活性に影響する他の因子 
  容積と濃度/血管収縮薬の添加/注入部位/重炭酸/局所麻酔薬の混合:クロロプロカインと他の薬剤/妊娠/温度
 局所麻酔薬の毒性 
  全身毒性:CNS/全身毒性:心循環系/末梢の神経毒性/胎児に対する副作用

3章 周産期の薬理学  
 一般原則 
 母体 
  投与部位/エピネフリンの添加/母体の分布容積とクリアランス/子宮胎盤血流/母体での蛋白結合/母体のpHと薬剤のpKa
 胎盤 
  移行面積と拡散距離/薬物の分子量と立体原子配列/薬物の蛋白結合と脂溶性/薬物の代謝
 胎児 
  取り込み/分布/胎児の肝臓/臍帯静脈血濃度の段階的希釈/胎児循環のさまざまな右左シャント
 まとめ 

4章 薬物の相互作用と産科麻酔  
 母体適応で用いられる薬剤 
  抗菌薬/抗痙攣薬/酵素誘導/交感神経遮断薬と交感神経刺激薬/抗喘息薬/コルチコステロイド/ヒスタミン(H2)受容体遮断薬/向精神薬/抗真菌薬
 分娩と出産に用いられる薬剤 
  子宮収縮抑制薬/降圧薬/子宮収縮薬/局所麻酔薬/麻薬
 胎児適応で用いられる薬剤 

5章 子宮胎盤血流  
 子宮胎盤血流の測定 
 子宮胎盤循環の臨床的な意義 
  胎盤を介したガス交換
 子宮胎盤血流を変える因子 
  子宮収縮/痛みとストレス/区域麻酔/病的な状態/薬理活性物質
 まとめ 

6章 分娩,出産の痛み,陣痛の痛み尺度  
 陣痛の痛み尺度 

7章 薬物によらない陣痛の緩和  
 催眠療法 
 精神鎮痛法 
  自然分娩/精神予防法
 Leboyer法 
 鍼 
 経皮的電気的神経刺激(TENS) 
 アロマセラピー 
 接触とマッサージ 
 母体の運動と体位変換 
 水中出産 
 まとめ 

8章 全身薬物投与と吸入麻酔薬による陣痛の緩和  
 オピオイド 
  モルヒネ/メペリジン/フェンタニル/レミフェンタニル
 鎮痛薬/精神安定薬 
  バルビツレート類/フェノチアジン系/ベンゾジアゼピン系
 解離性薬物 
 健忘薬 
 精神遮断薬 
 作動性拮抗薬(拮抗性麻薬) 
 吸入鎮痛法 

9章 区域鎮痛法/区域麻酔法による陣痛の緩和  
 硬膜外鎮痛法 
  硬膜外腔の解剖/硬膜外腔の内容/作用部位/方法/硬膜外鎮痛の方法
 起こりうるブロック関連の問題点 
  不完全な会陰鎮痛/非対称的な知覚神経ブロック/鎮痛効果の漸減/強い運動神経ブロック/まだらのブロック(まだら効き)/その他/脊髄くも膜下麻酔
 持続脊髄くも膜下麻酔 
 脊髄くも膜下硬膜外併用法(CSE) 
 区域麻酔薬投与後のモニタリング 
 禁忌 
 区域麻酔の合併症 
  放散痛/偶発的硬膜穿刺/偶発的硬膜穿刺後の頭痛の治療/硬膜下注入/広範囲硬膜外鎮痛/偶発的血管内注入/メトヘモグロビン血症/硬膜外カテーテルの損傷/シバリング/ホルネル症候群/腰痛/重大な神経学的合併症
 その他の区域麻酔 
  仙骨麻酔/傍頸管ブロック/腰部交感神経ブロック/陰部神経ブロック
 まとめ 

10章 分娩と児に対する硬膜外鎮痛の影響  
 硬膜外鎮痛と分娩経過 
  方法論上の問題/ブロックの開始/分娩の持続時間/経腟器械分娩(鉗子,吸引)/帝王切開術/患者満足度と新生児予後
 硬膜外鎮痛が母体体温と新生児に及ぼす影響 
 硬膜外麻酔と授乳 
 まとめ 

11章 胎児のモニタリング  
 分娩前のモニタリング 
  バイオフィジカル・プロファイル/ノンストレステスト(NST)/コントラクション・ストレス(オキシトシン・チャレンジ)テスト/ドップラーを用いた血流計測/胎児肺成熟の評価
 子宮収縮モニタリング 
 胎児心拍数のモニタリング 
  心拍数基線/基線細変動/胎児心拍パターン(周期的変化)
 他の方法 
  胎児の児頭血採血/胎児パルスオキシメータ
 麻酔管理に対する意義 

12章 帝王切開術の麻酔  
 区域麻酔 
  脊髄くも膜下麻酔(脊髄くも膜下ブロック)/硬膜外麻酔
 帝王切開術における脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の違い 
 脊髄くも膜下硬膜外併用(CSE)法 
 全身麻酔 
  全身麻酔の合併症/気道確保困難が予想される場合の区域麻酔と全身麻酔の選択/児に対する全身麻酔の影響/母体の術中覚醒/帝王切開術に対する全身麻酔のまとめ
 帝王切開術中の空気塞栓 
 術後鎮痛 
  静脈内投与法/脊髄幹麻酔
 結論 

13章 新生児蘇生   
 子宮外生活に対する生理的適応 
  心循環系/呼吸系/体温調節
 新生児蘇生の一般的原則 
 新生児の評価:Apgarスコア 
 新生児蘇生の各ステップ 
  気道/呼吸/循環/薬物治療
 新生児に呼吸の問題を生じる稀な疾患 
  鼻:後鼻孔閉鎖/上気道閉鎖/喉頭の奇形/気管の奇形/横隔膜ヘルニア/気胸
 結論 

14章 ハイリスクの妊娠:母体合併症   
 内分泌疾患 
  糖尿病/甲状腺機能亢進症/褐色細胞腫
 心疾患 
 呼吸器系の問題 
  気管支喘息/嚢胞性線維症
 神経学的な問題 
  対麻痺/脳血管障害/多発性硬化症/空間占拠性病変(脳腫瘍)/てんかん/重症筋無力症
 腎疾患 
  生理学的な変化/麻酔管理
 血液疾患 
  鎌状赤血球症/特発性血小板減少症/Von Willebrand病
 凝固亢進状態 
  プロテインCとプロテインS欠損,リン脂質とカルジオリピン抗体/第V因子Leiden変異
 自己免疫疾患 
  関節リウマチ/全身性エリテマトーデス
 母親の薬物依存症(乱用) 
  アルコール/アンフェタミン/コカイン
 感染症 
  性器ヘルペス/ヒト免疫不全ウィルス感染症
 精神疾患 
  臨床的意義
 悪性高熱症 
  麻酔管理
 肥満 
  麻酔管理
 まとめ 

15章 ハイリスクの妊娠:妊娠に関連した問題点  
 母体に関連した問題 
  分娩前の出血/産褥期の出血/帝王切開術後経腟分娩(VBAC)(いわゆる帝王切開術後試験分娩;TOLAC)/妊娠高血圧症候群/妊娠中の塞栓症
 胎児に関連した問題 
  切迫早産/過期産/骨盤位/多胎/胎児機能不全(胎児の安全が保証できない状態)/子宮内胎児死亡
 輸血関連の問題(新しい輸血プロトコール) 
  遺伝子組み換え第VII因子(rF VII a)
 まとめ 

16章 分娩以外の産科的処置  
 頸管縫縮術 
  麻酔法の選択/縫縮糸抜糸
 頸管拡張と排出(D&E,子宮内容除去術(D&C)) 
  麻酔法の選択
 産褥期の卵管結紮 
  卵管結紮の時期/麻酔法/術後鎮痛

17章 妊娠中の非産科手術の麻酔  
 母体の安全 
 胎児の健康状態 
  麻酔薬の一時的曝露/麻酔薬の慢性曝露/胎児に対する麻酔薬の影響
 妊娠の継続 
  一般的および特殊な勧告
 子宮内手術 

18章 生殖補助医療  
 体外受精の過程 
 麻酔薬の体外受精の過程への影響 
  プロポフォールとチオペンタール/亜酸化窒素/吸入麻酔薬/局所麻酔薬/オピオイド,ベンゾジアゼピン系,ケタミン/制吐薬
 超音波ガイド下経腟的卵母細胞採取に対する麻酔方法 
 体外受精の合併症 
  卵巣過剰刺激症候群(OHSS)/他の合併症

19章 母体死亡率と罹病率  

付 録  
 A 産科における区域麻酔に対するガイドライン 
 B 産科麻酔の実践ガイドライン−産科麻酔に関する米国麻酔科学会作業部会による最新報告− 
  方法論 
  周術期の産科麻酔の定義/ガイドラインの目的/焦点/適応/作業部会のメンバーおよび顧問医師/証拠の有効性と重み/ガイドライン
  方法と分析 
 C 産科における麻酔管理に対する最適目標 

索 引
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