日本医師会生涯教育シリーズ

高齢者診療マニュアル

高齢者診療マニュアル

■監修・編集 林 泰史
大内 尉義
上島 国利
鳥羽 研二

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  352ページ  2色(一部カラー)
  • 2009年11月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-0032-2

高齢者診療のすべてがわかる一冊

日本医師会生涯教育シリーズ77を単行本化。高齢者診療の基本から実際の症候や疾患への対応,さらに高齢者をとりまく環境など,高齢者診療のすべてがわかる一冊。


序文



 本年7月に発表された「平成20年簡易生命表」によると,日本人の平均寿命は男性が79.29歳,女性は86.05歳で,世界有数の長寿国を誇っている.また,WHOは2000年に健康寿命という概念を発表し,日常的に介護を必要としない自立した生活ができる生存期間の大切さを強調した.日本は健康寿命でも世界一に君臨している.この背景には,世界に冠たる国民皆保険制度があることは言うまでもない.
 日本医師会では1991(平成3)年,日本医師会雑誌生涯教育シリーズの一環として『老人診療マニュアル』を発刊したが,当時,わが国は高齢化社会に入り,高齢者に対する医学や医療のあり方などが大きな社会問題となっていた.あれから約20年の歳月が流れた.高齢者医療は,医学諸分野の著しい発展の下で大きな進歩を遂げている.そして高齢者に対する手術適用の年齢上昇にも寄与した.
 一方,国による長期間の医療費抑制策が高齢者を直撃し,療養病床の削減など,安心・安全な医療を提供したいと願う医療者への向かい風が止まない.日本医師会は,「長生きしてよかった」と思える社会の実現のため,重点課題のひとつとして高齢者医療に取り組んでいる.
 以上のような現況を踏まえ,このたび改めて『高齢者診療マニュアル』を刊行する運びとなったので,是非ご活用いただきたい.
 本書の監修・編集には,本会学術企画委員会委員である林 泰史先生,上島国利先生と,高齢者医療のご専門である大内尉義先生,鳥羽研二先生にご尽力を賜った.監修・編集の先生方,またご執筆いただいた先生方に,深甚の謝意をここに申し上げる.

平成21年10月
日本医師会会長
唐澤祥人
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刊行のことば

 わが国は「超高齢社会」のまっただ中にある.高齢者診療にあたっては,医学的な専門知識のみならず,高齢者の医療・ケアが地域に密着し,そこに基盤を置くことから,各種施設・制度などの利用方法やメディカルスタッフとの協働,さらに介護や終末期医療に至るまでの幅広い知識が求められ,多領域にわたる学際的協力体制を必要とする.
 日本医師会は,生涯教育制度のボトムアップと会員の学習指針に資するため,平成21(2009) 年3月『生涯教育カリキュラム(2009) 』を刊行し,「頻度の高い疾病と傷害,それらの予防,保健と福祉など,健康にかかわる幅広い問題について,わが国の医療体制の中で,適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的視点から提供できる医師としての態度,知識,技能を身につける」ことを一般目標として掲げた.また,行動目標の「臨床問題への対応」では,57の症状・病態を取り上げたが,これらの目標は,まさしく高齢者診療にも当てはまるものと考える.
 本書を学び実践することによって,上記の目標を達成することが可能になるとともに,在宅医療も含めた日常診療の場で,また生涯教育のためのテキストとして皆様の座右の書となるに違いない.
 最後に,監修・編集いただいた林 泰史先生,上島国利先生,大内尉義先生,鳥羽研二先生,ならびにご執筆いただいた諸先生方のご尽力に心より感謝申し上げる.

平成21年10月
日本医師会常任理事(生涯教育担当)
飯沼雅朗
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監修・編集のことば

 進捗する高齢社会において,多くの診療時間を高齢患者に費やしておられる臨床医の先生方にとって,小児科診療が特徴的で独立しているように,高齢者診療が高齢患者特有の病態に合わせて展開されることが望まれている.
 高齢患者特有の病態として,1つには生理機能の低下,体組成の変化などにより疾病の呈する症状が非典型的であり,特有な薬物動態を示すことが挙げられる.2つ目には免疫機能や侵害からの回復機能の低下により,多彩な病像を呈する重複疾患に罹病しやすいことが,3つ目には精神機能や身体機能の低下を伴い,容易に要介護状態や終末期状態に移行しやすいことが挙げられる.これらの病態への対応に加えて,高齢患者個人の人生観を重視した包括的対応と,さまざまな社会資源・制度の活用とを視野に入れて診療にあたらなければならない点が,高齢者診療の特徴といえる.
 高齢者特有の病態に基いた診療に関して造詣の深い先生方に執筆していただいた今回の『高齢者診療マニュアル』では,まず,高齢者診療で代表的な7項目をカラー口絵として掲載,続いて高齢患者の診療にあたっての基礎知識11項目を解説していただき,さらに高齢者疾患の診察の7つのポイントや高齢患者にみられる主要な29症候について述べていただいた.高齢者の主要疾患の診療の進め方の章では,老年病の特徴の説明から始まって,14の診療科の高齢者疾患についての総論や代表的な高齢者疾患について病態・治療の特徴を記述していただき,その後は応急処置を要する高齢者疾患,代表的な4領域のリハビリテーション医療の内容,高齢者を支援する制度や社会資源について記述していただいた.臨床医の先生方がその場の関心に応じて,本誌の該当箇所を紐解いていただければ直ちに診療に役立つようになっている.
 日本医師会が前回の『老人診療マニュアル』を刊行して以来20年弱の間に,ますます高い年齢層の高齢者が増え,社会の制度も大きく変わったために,新たな高齢者診療の指針が求められていた.本誌の刊行によって全国の臨床医の先生方が,高齢患者特有の病態に基づき効果的な診療をされることを通して,わが国の高齢者に高い生活の質のまま健康長寿を保っていただくことができるであろう.そのことが国民の医療に対する信頼のさらなる高揚に資するものと考える.

平成21年10月
監修・編集者を代表して
林 泰史
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目次

カラー口絵
 老年症候群  鳥羽研二
 高齢者への服薬指導の実際  大野能之,鈴木洋史
 薬物間相互作用の危険性  大野能之,鈴木洋史
 脳血管障害の画像・症状  竹川英宏,平田幸一
 認知症の画像診断  鳥羽研二
 高齢者のうつ  木村真人
 骨粗鬆症と骨折  林 泰史

序  唐澤祥人
刊行のことば  飯沼雅朗
監修・編集のことば  林 泰史
監修・編集・執筆者紹介
 
I.高齢者診療にあたっての基礎知識
 老化とは  白澤卓二
 老化の機序とその制御  白澤卓二,清水孝彦
 最近の高齢者・高齢患者の動向  柴田 博
 老年症候群とは  神崎恒一
 廃用症候群  飛松好子
 運動器不安定症  星野雄一
 高齢者への薬物療法とその特色  秋下雅弘
 高齢者における食事・栄養の特徴と非経口的栄養療法  須藤紀子
 高齢者における運動の効果  鈴木隆雄
 高齢者における性差  三村 將
 高齢者の心理  大森健一
 
II.高齢者の診察の進め方—身体的特徴からポイントとコツ—
 高齢者の身体的特徴  大庭建三,中野博司
 医療面接,診察のポイントとコツ  岩本俊彦
 高齢者とのコミュニケーションの取り方  大友英一
 高齢者総合的機能評価(CGA)の使い方とチームアプローチ  西永正典
 検査基準値・異常値のみかた  下方浩史
 認知機能の評価尺度  本間 昭
 高齢者の栄養状態の判定法  葛谷雅文
 
III.高齢者にみられる主要症候—その特徴から診断まで—
 発熱  高柳涼一
 胸痛  江頭正人
 咳嗽・喀痰  矢内 勝
 呼吸困難  大類 孝,海老原 覚
 誤嚥・むせ  横山通夫,才藤栄一
 便秘  五十嵐雅哉
 食欲不振・嘔吐  若月芳雄
 味覚障害  川口陽子
 やせ・体重減少  荒木 厚
 浮腫  大西浩文,島本和明
 脱水  小林義雄
 熱中症  井上慎一郎
 貧血  村井善郎
 頭痛  柴田 護,鈴木則宏
 手足のしびれ  谷 将之
 めまい  石井正則
 言語障害  河村 満
 せん妄・意識障害  中村 純
 行動異常  黒田重利
 抑うつ状態  越野好文
 不眠  内山 真
 起立・歩行障害(運動麻痺)  徳岡健太郎,北川泰久
 振戦・不随意運動  山本暢朋,稲田俊也
 腰痛・背部痛  菊地臣一
 関節痛  遠藤直人
 身長短縮・円背  林 泰史
 筋肉量減少・筋力低下  大荷満生
 下腿の腫れ(深部静脈血栓症)  田中秀和,丹野 亮
 排尿障害・尿失禁  武田正之
 
IV.高齢者主要疾患の診療の進め方
 老年病の特徴  大内尉義
 循環器疾患
  循環器疾患の特徴  大内尉義
  虚血性心疾患  原田和昌
  不整脈  山下武志
  心不全  矢部敏和,土居義典
  心筋症  矢部敏和,土居義典
  高血圧  楽木宏実
  動脈硬化  横手幸太郎
  大動脈瘤・大動脈解離  横手幸太郎
 呼吸器疾患
  呼吸器疾患の特徴  長瀬隆英
  肺炎  海老原 覚
  肺がん  山本 寛
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)  山本 寛
  結核  四元秀毅
  気管支喘息  長瀬隆英
  睡眠時無呼吸症候群  山本 寛
 消化器疾患
  消化器疾患の特徴  黒岩厚二郎
  消化器がん  黒岩厚二郎
  消化性潰瘍  黒岩厚二郎
  肝炎・肝硬変  若月芳雄
  胆石症・胆嚢炎  木村 理
  虚血性腸疾患  木村 理
 内分泌・代謝疾患
  内分泌・代謝疾患の特徴  井藤英喜
  糖尿病  山田祐一郎
  甲状腺疾患  橋爪潔志
  脂質異常症・メタボリックシンドローム  荒井秀典
 血液疾患
  血液疾患の特徴  今村雅寛
  貧血  堤 久
  白血病・骨髄異形成症候群  今村雅寛
  悪性リンパ腫  今村雅寛
  汎発性血管内凝固症候群  菊川昌幸,岩本俊彦
  多発性骨髄腫  若杉恵介,村井善郎
 感染症  今村圭文,河野 茂
 精神・神経疾患
  精神・神経疾患の特徴  朝田 隆
  認知症小阪憲司
  脳血管障害  塩崎一昌,平安良雄
  パーキンソン病  水野美邦
  うつ病  門司 晃,神庭重信
 骨・関節疾患
  骨・関節疾患の特徴−ロコモティブシンドローム−  中村耕三
  骨粗鬆症  中村利孝
  変形性関節症  豊島良太
  腰部脊柱管狭窄症  穴水依人
  骨折  糸満盛憲
 腎・泌尿器疾患
  腎・泌尿器疾患の特徴  鳥羽研二
  腎不全(急性・慢性)  藤井秀毅,深川雅史
  前立腺肥大症  岡村菊夫
  前立腺がん  岡村菊夫
  尿路感染症  上山 裕,堀江重郎
 婦人科疾患
  婦人科疾患の特徴  荒川敦志,杉浦真弓
  骨盤臓器脱(性器脱)  島田 誠
  萎縮性腟炎  太田博明,石谷 健
 眼科疾患
  眼科疾患の特徴  本庄 恵,沼賀二郎
  白内障  赤星隆幸
  緑内障  寺崎浩子
 耳鼻咽喉科疾患
  耳鼻咽喉科疾患の特徴  木村百合香
  加齢性難聴  小川 郁
 皮膚疾患
  皮膚疾患の特徴−見落としやすい皮膚症状−  西岡 清
  褥瘡  磯貝善蔵
 歯科・口腔疾患  植田耕一郎
 
V.高齢者への応急処置・救急疾患とその対策
 誤飲・誤嚥  武原 格
 転倒・転落・骨折  原田 敦
 脳血管障害  大槻俊輔,松本昌泰
 失神・けいれん  和田一丸,兼子 直
 急性心筋梗塞  原田和昌
 肺血栓塞栓症  西村直樹
 急性腹症  森 秀明
 入浴事故  高橋龍太郎
 
VI.高齢者のリハビリテーション
 脳血管障害  澁谷健一郎,古市照人
 運動器疾患  芳賀信彦
 心筋梗塞  窪薗琢郎,鄭 忠和
 呼吸器疾患  須藤英一
 
VII.高齢者の支援とその制度
 高齢者のQOL  松林公蔵
 高齢者の退院支援  永田智子,村嶋幸代
 在宅医療  黒岩卓夫
 ターミナルケア  平川仁尚
 介護保険制度  筒井孝子
 後期高齢者医療(長寿医療)制度  遠藤英俊,三浦久幸
 成年後見制度  斎藤正彦
 高齢者虐待への対応  高崎絹子
 
セルフ・アセスメント
 高齢者診療に関する参考図書一覧
 
コラム
 高齢男性の「性」  久末伸一,塚本泰司
 健康寿命  村井淳志
 百寿者のライフスタイル  新井康通,広瀬信義
 高齢者の自殺  本橋 豊
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