腎・泌尿器疾患診療マニュアル

小児から成人まで

腎・泌尿器疾患診療マニュアル

■監修・編集 五十嵐 隆
鈴木 洋通
丸茂 健

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  356ページ  巻頭カラー口絵
  • 2007年11月13日刊行
  • ISBN978-4-7583-0020-9

小児から成人までの腎・泌尿器疾患の診断と治療の基本を網羅。日本医師会生涯教育シリーズの一冊

 本書は日本医師会生涯教育シリーズとして会員に頒布した日本医師会雑誌特別号である。医師会雑誌は一般臨床医を読者対象としており,日常診療で活用できるようテーマを選定している。本書では,一般臨床医が遭遇することが多く,小児から成人まで治療を継続していくことが多い腎疾患を取り上げた。治療の予後を左右するものに疾患の発見時期があり,専門医への紹介を含め,患者の初診を受け持つことが多い一般臨床医にとって腎疾患の幅広い理解は患者のためにも大変重要である。本書は腎・泌尿器疾患治療の専門知識の習得のための教本ではなく,広く腎疾患の病態を知り,より早く腎疾患を発見し,専門医に紹介するための知識を得る書籍である。基本的に一疾患を見開き2頁で解説する構成をとり,短期間で腎・泌尿器疾患を幅広く理解できるものになっている。


序文

監修・編集のことば

 慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)とは慢性的に腎機能が低下している状態を意味する新しい概念です.CKDの概念は2002年に米国で提唱されました.CKDとは尿蛋白が陽性か腎臓に形態学的変化がある場合,あるいは,糸球体濾過値glomerular filtration rate(GFR)が60ml/min以下のいずれかが3カ月以上持続する状態を意味します.わが国では約2,000万人がCKDの状態にあると推定され,現在大きな問題として注目されています.
 CKDが問題にされる理由の第一は,尿蛋白が陽性の場合,陰性に比べて腎機能が2倍以上の早さで低下し末期腎不全に至ることです.また,腎低形成などの形態学的変化があると小児期あるいは成人になってから末期腎不全になる危険が高くなります.わが国の透析患者は既に26万人程になっています.これからも毎年約1万人の割合で透析患者数が増え,2010年には約30万人に達することが予想されています.また,慢性腎不全に対する医療費は全医療費の4.1%を占めています.透析技術の改善はあるものの,透析治療を受けている慢性腎不全患者のQOLには依然として大きな問題があり,頼みとする腎移植も平均で約10年待たなければ受けられない状況です.
 CKDの第二の問題は,CKD患者は保存期腎不全の期間に心筋梗塞など心血管系の病気を発症し,亡くなるリスクが高い点です.保存期腎不全状態が心血管系の動脈硬化を促進するためです.
 現在日本腎臓学会はCKDを国民的医療課題と捉え,国民に対してCKDの実態や危険性,CKDへの対策などを啓発すると共に,医師に対しても積極的な対応をとることを呼びかけています.実際,放置すると末期腎不全に至るIgA腎症には現在積極的な治療法が行われ,治癒する例も増えています.また,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシン受容体阻害薬等の使用により,末期腎不全への進行を延長させることが可能となっています.
 一方,CKDを早期に発見する対策も必要です.わが国では世界に先駆けて学校検尿が法制化され,小児期にIgA腎症などの慢性腎炎を早期に発見し適切な治療が行われています.その結果,小児期に末期腎不全に至るIgA腎症患者が減少しています.CKD対策に蛋白尿のスクリーニングすることは医学的には極めて有効な手段であり,すべての国民に一生涯を通じた検尿(生涯検尿)を推進する運動も必要です.
 本号は腎・泌尿器疾患の基本的な治療や対応について専門外の医師にもわかりやすいガイドブックになるように企画しました.どのような病態あるいは検査所見を示す患者の場合に専門医に送るかなど,実地医家が最も関心の高い点についても記載して戴きました.また,最も重要な点の一つとして,できるだけ公平な立場からEBMに基づいた記述になるように記述には注意していただきました.その結果,本書は腎泌尿器疾患を専門とする内科,小児科,泌尿器科の医師にも有用な内容になっています.
 最後に,お忙しいところを執筆していただいた著者の方々に深くお礼申し上げます.本書がわが国のCKD対策を有効に進めるために少しでも役に立つことを企画者一同が祈念いたします.

平成19年10月
監修・編集
五十嵐 隆,鈴木洋通,丸茂 茂
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目次

カラー口絵    
 腎の構造と機能   
 腎・尿路系の解剖:男性,女性  天野 俊康 
 腎の病理  井上 勉 
 検査画像  渡辺 裕輔 
 腎の異常−1.尿沈渣・結晶  油野 友二 
 腎の異常−2.結石  宮澤 克人,鈴木 孝治 
    
I.はじめに    
  このマニュアルの使用法  鈴木 洋通
  腎・尿路を理解するために必要な知識  丸茂 健
    
II.総論    
 1.腎・泌尿器疾患の早期発見に向けて   
  わが国における慢性腎臓病(CKD)対策  松尾 清一,玉井 宏史
  学校検尿が果たす役割と問題点  村上 睦美
  腎・泌尿器系腫瘍の早期発見の進歩  堀江 重郎
 2.主要症候・検査から診断へのアプローチ   
  尿異常とは[成人]  坂爪 実,下条 文武
  尿異常とは[小児]  香美 祥二
  身体徴候・検査から腎・尿路系疾患を見つけ出す   
  血尿[成人]  飯野 靖彦
  血尿[小児]  丸山 健一
  蛋白尿[成人]  井上 勉,鈴木 洋通
  蛋白尿[小児]  白髪 宏司
  尿糖[成人]  吉田 英昭,浦 信行
  尿糖[小児]  門脇 弘子
  浮腫[成人]  猿田 享男
  浮腫[小児]  芦田 明,玉井 浩
  高血圧[成人]  鈴木 洋通
  高血圧[小児]  秋岡 祐子
  乏尿・尿閉[成人]  篠原 信雄
  乏尿・尿閉[小児]  石原 正行,伊藤 雄平
  多尿・頻尿[成人]  小瀧 慶長,中西 健
  多尿・頻尿[小児]  星井 桜子
  腹痛・腰痛[成人]  比企 能之
  腹痛・腰痛[小児]  里村 憲一
  貧血[成人]  別所 正美
  貧血[小児]  石原 正行,藤枝 幹也
  血清クレアチニン値・尿素窒素・推算糸球体濾過量の異常[成人]  今井 圓裕
  血清クレアチニン値・尿素窒素の異常[小児]  中西 浩一,吉川 徳茂
  尿酸値の異常[成人]  大野 岩男,細谷 龍男
  尿酸値の異常[小児]  神田 祥一郎
  PSAと腫瘍マーカー   伊藤 一人
  β2-ミクログロブリン,α1-ミクログロブリン,NAG,シスタチンC[成人]  今井 圓裕
  β2-ミクログロブリン,α1-ミクログロブリン,NAG[小児]  川村 尚久
  微量アルブミン尿  鈴木 洋通
  身体徴候・検査から腎・尿路系疾患を見つけ出す−電解質異常   
  Na, Clの異常[成人]  前川 愛,冨田 公夫
  Na, Clの異常[小児]  佐々木 聡
  Kの異常[成人]  林 松彦
  Kの異常[小児]  塚原 宏一
  Caの異常[成人]  宮本 賢一,伊藤 美紀子
  Caの異常[小児]  田中 弘之
  Pの異常[成人]  宮本 賢一,伊藤 美紀子
  Pの異常[小児]  道上 敏美
  身体徴候・検査から腎・尿路系疾患を見つけ出す−画像診断   
  画像診断から腎・泌尿器疾患を診る  冨田 善彦
  超音波,CT,シンチグラフィ,MRI  渡辺 裕輔
 3.腎・泌尿器の救急疾患とその対応   
  内科−腎疾患の救急とは  鈴木 洋通
  小児科  坂井 智行,石倉 健司
  泌尿器科  秋野 裕信
 4.尿検査異常を有する人への生活指導   
  成人  原 茂子
  小児  岡田 満
 5.腎臓専門医への紹介のタイミング   
  成人  今井 裕一,西川 和裕
  小児  山本 威久
 6.いつ透析を考えるか   
  成人  斎藤 明
  小児  服部 新三郎
 7.わが国における腎移植治療の現状と問題点   
  成人  高橋 公太
  小児  本田 雅敬
 8.小児科から内科,泌尿器科へのキャリーオーバー  瀧 正史 
    
III.各論    
 1.腎尿路の形成異常   
  水腎症(腎盂尿管移行部狭窄)  島田 憲次,松本 富美
  膀胱尿管逆流  谷風 三郎
  重複尿管,尿管異所開口,尿管瘤  大橋 正和
  後部尿道弁  宍戸 清一郎,浅沼 宏
 2.ネフローゼ症候群   
  微小変化型ネフローゼ症候群[成人]  新田 孝作
  膜性腎症[成人]  今井 裕一,山田 晴生
  膜性増殖性糸球体腎炎[成人]  玉井 宏史,松尾 清一
  巣状分節状糸球体硬化症[成人]  宮崎 正信,河野 茂
  先天性ネフローゼ症候群[小児]  服部 元史
  微小変化型ネフローゼ症候群[小児]  竹村 司
  ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群[小児]  飯島 一誠
 3.感染症関連糸球体腎炎   
  溶連菌感染後急性糸球体腎炎  高橋 和浩
  MRSA関連腎症  荒川 洋,山縣 邦弘
  肝炎ウイルス関連腎症  山辺 英彰
  HIV関連腎症  山辺 英彰
  腸管出血性大腸菌感染後の溶血性尿毒症症候群  川村 尚久
  エルシニア感染症による急性腎不全  金子 一成
  アデノウイルス感染症による腎尿路障害  鈴木 順造
 4.慢性糸球体腎炎   
  IgA腎症[成人]  富野 康日己
  IgA腎症[小児]  吉川 徳茂
  IgA腎症以外の増殖性糸球体腎炎  鈴木 穂孝,渡辺 毅
 5.急速進行性糸球体腎炎   
  ANCA関連腎症  吉田 雅治
  Goodpasture症候群  有村 義宏
  血管炎に関連する急速進行性糸球体腎炎  吉田 雅治
 6.二次性糸球体腎炎   
  紫斑病性腎炎[成人]  高市 憲明
  紫斑病性腎炎[小児]  高橋 昌里
  ループス腎炎  中林 公正,本田 恒雄
  その他の膠原病に伴う腎症  中林 公正,池谷 紀子
  糖尿病性腎症  片岡 仁美,槇野 博史
  Fabry病に伴う腎症  大野 岩男,細谷 龍男
  アミロイド腎症  近藤 大介,下条 文武
  チアノーゼ腎症  生駒 雅昭
  骨髄移植後の腎症  中尾 俊之
 7.間質性腎炎   
  tubulointerstitial nephritis with uveitis syndrome(TINU症候群)  大友 義之
  薬剤性間質性腎炎  岡田 浩一
 8.遺伝性腎症   
  菲薄基底膜症候群  川崎 幸彦
  Alport症候群  仲里 仁史
  爪膝蓋骨症候群  北中 幸子
  ネフロン癆  渡辺 徹
  リポ蛋白糸球体症  斉藤 喬雄
  ミトコンドリア異常症  和田 尚弘
  補体調節因子障害による腎症  高木 信明,服部 益治
  familial TTP(シュールマン症候群,vWF断裂酵素の異常)  眞岡 知央,望月 俊雄
 9.尿細管機能異常症   
  Fanconi症候群  郭 義胤
  Lowe症候群  水沢 慵一
  Dent病  岡田 満
  腎性低尿酸血症  大田 敏之,坂野 堯
  腎尿細管性アシドーシス  五十嵐 隆
  Bartter症候群  譜久山 滋
  Gitelman症候群  林 松彦
  偽性低アルドステロン症 I 型  関根 孝司
  腎性尿崩症  根東 義明
  nephrogenic syndrome of inappropriate antidiuresis  粟津 緑
 10.Munchausen syndrome(ほら吹き男爵症候群)とMunchausen syndrome by proxy   
  Munchausen syndrome  中村 玲,土井 俊夫
  Munchausen syndrome by proxy  都築 一夫
 11.嚢胞性腎疾患   
  常染色体優性多嚢胞腎  奴田原 紀久雄,東原 英二
  常染色体劣性多嚢胞腎  石倉 健司
  髄質嚢胞腎  中西 浩一,吉川 徳茂
  multicystic dysplastic kidney(多嚢胞性異形成腎)  新村 文男
  結節性硬化症  乳原 善文,曽川 陽子
 12.尿路感染症   
  細菌性尿路感染症:腎盂腎炎  平岡 政弘
  細菌性尿路感染症:膀胱炎  荒川 創一
  急性巣状細菌性腎炎  松山 健
  アレルギー性膀胱炎  松村 治
  前立腺炎  山本 新吾
 13.尿路結石   
  シュウ酸カルシウム結石  諸角 誠人,山田 拓己
  リン酸カルシウム結石  戸澤 啓一
  尿酸結石  正井 基之
  その他の代謝性尿路結石症  宮澤 克人,鈴木 孝治
 14.その他の泌尿器疾患   
  前立腺肥大症  内田 豊昭
  急性陰嚢症  大東 貴志
  腎尿路の外傷  中島 洋介
  神経因性膀胱  多田 実
  高齢者の排尿障害:男性の排尿困難  柿崎 秀宏
  高齢者の排尿障害:女性の尿失禁  加藤 久美子,村瀬 達良
  高齢女性の性器脱  関口 由紀
 15.悪性腫瘍   
  腎癌  宮尾 則臣,内田 耕介
  膀胱癌  鳶巣 賢一
  前立腺癌  赤倉 功一郎
  精巣腫瘍  三木 恒治,中村 晃和
 16.腎と関係の深い高血圧   
  腎血管性高血圧[成人]  伊藤 貞嘉
  腎血管性高血圧[小児]  内山 聖
  腎血管性高血圧[放射線科]  大杉 圭,谷本 伸弘
  遺伝子異常の明らかとなった高血圧症  梅村 敏
 17.薬剤と腎   
  薬剤によって引き起こされる腎障害  山田 明
  腎機能が低下したときの薬の使い方  石﨑高志
 18.急性腎不全   
  成人-内科  菱田 明
  成人-泌尿器科(腎後性腎不全を中心に)  市丸 直嗣,高原 史郎
  小児  亀井 宏一,飯島 一誠
 19.慢性腎不全   
  成人  佐中 孜
  小児  上村 治
    
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