医療現場のイエローカード

暴言・暴力・セクシャルハラスメント対処法

愛知県医師会の事例調査から

暴言・暴力・セクシャルハラスメント対処法

■編集 愛知県医師会

■監修 妹尾 淑郎
柵木 充明
川原 弘久
牧 靖典

定価 3,850円(税込) (本体3,500円+税)
  • A5判  188ページ  2色
  • 2009年9月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-0031-5

医療現場で実際に起こった諸問題を検証し,適切な「医師-患者」関係を保つための対応策がつまった1冊

近年の医療崩壊の一つにあげられる暴言・暴力/セクシャルハラスメントは,「医師-患者関係」が変化してきていることを物語っている。本書は,そのような世相において,愛知県医師会で実施されたアンケート調査を基に,実際に愛知県医師会で行われている取り組みをまとめたものである。
I章ではアンケート調査結果を全国調査の結果と比較するなど,最近の動向についてを,II章では実際に医師会に寄せられた事例を,「暴言」「暴力」「セクシャルハラスメント」の3つに分けて内容紹介し,問題が起こった際にとられた対処方法や発生要因を述べ,さらにコメントとして,それらの行為が適切であったかどうかを後から検証している。III章では,そういった問題が起こった際にとるべき対応策を様々な角度から検討し,今後に向けた課題を提示している。
どの医療機関でも本書に取り上げられたような事例は経験があると思われる。そのような事例を法律の専門家も交えながら検証した,医療従事者必読の一冊である。


序文

発刊に寄せて
医師患者関係の成熟を目指して
−暴言・暴力・セクシャルハラスメント防止の嚆矢を医療現場から−

 愛知県医師会勤務医部会は2008年に県下の病院に対して暴言・暴力・セクシャルハラスメントのアンケート調査を実施した。この中で直近3年間において暴言・暴力により3名の医療従事者が退職,休業に追い込まれた実態が明らかとなった。近年の,とくに病院の医療崩壊の誘因の一つに暴言・暴力・セクシャルハラスメントが韜晦していることを窺わせる。
 本調査の設問のうち,具体的な事例を報告していただいたが,本書はそのほぼ全例(暴言59事例,暴力36事例,セクシャルハラスメント28事例)を編んだものである。事例のコメントや総括的な部分は愛知県医師会総合政策研究機構のReconstruction Of Community medicine(ROC)プロジェクトの研究員が執筆し,法的なコメントには後藤昭樹弁護士のご支援をいただいた。記して深謝したい。これらの課題はまだまだ十分な社会科学的分析が行われていないこと,医療現場だけでなく,つかみどころのない世相という社会事象上に起こっており,本書もそのうえに成立していることを正直に認め,不備な点,思慮不足などがあるかもしれず,その点は今後の研究に待ちたい。
 それにしても医療の側と患者の側がこのような事態に陥った現況で留意すべきことは,patient(患者)の原義である耐える人が突如キレるという実態の認識と医療の提供側も同様の隘路をもっているという認識の重要性かもしれない。両者とも未成熟としか言いようがない。それにもかかわらず,昨今のこの現象は明らかに社会常識的な度を超えており,医療崩壊誘因の立場からは医療従事者を守る対応の重要性は論を待たない。医療の側が自らの襟を正すことを前提にするにしても,そして患者がたとえ障害をもった個性者,弱者であっても,限度を超えた暴言・暴力・セクシャルハラスメントは人間の尊厳を損なう点において決して許してはならず,医療界がその嚆矢となることを願ってやまない。
 本書はそのような背景を担って出版に漕ぎつけたが,個人名,医療機関名を匿名化して事例を公表,公開することは予め了解を得てあるが,さらに配慮して本質を損なわない範囲において脚色してあることもまたご理解を賜りたい。あらためて本書がこの分野の一里塚となって関係者のお役に立つことを願う。

2009年9月吉日              
愛知県医師会会長
妹尾淑郎
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目次

I章 暴言・暴力・セクシャルハラスメントの動向
総論−予防・発生・対応−
 ● 社会的世相としての世界的,歴史的な兆候において 
暴言・暴力の定義とレベルの提示
 ● 対応の具体策−医療機関の対応方針において− 
 ● 暴言・暴力・セクシャルハラスメントの定義 
 ● アンケート調査に用いた暴言・暴力・セクシャルハラスメントの定義
愛知県医師会における苦情相談センターの立場から
 ● 苦情相談センターの役割 
 ● 医療機関へのフィードバック 
愛知県医師会勤務医部会と全日本病院協会との実態調査から
 ● 実態調査の実施 
 ● 実態調査の結果 

II章 事例
暴言
暴力
セクシャルハラスメント

III章 暴言・暴力・セクシャルハラスメントへの対応
臨床現場における法的な対応
 ● 対応の具体策−犯罪との関係− 
 ● 法的対応の問題点 
対応策の心得
 ● 対応としての倫理的な課題 
 ● 臨床現場における対応の基本的な心得 
 ● 苦情を予見し,覚悟をもって意識した日常診療の対応 
安全文化と信頼文化の相互醸成
 ● 対応の具体策−教育,研修,学習の核心− 
コンシェルジュ,コードホワイト,メディエーター
 ● 対応の具体策−組織・システムのあり方において−
 ● 予防対応としての医療コンシェルジュ
 ● 医療現場対応としてのコードホワイト
 ● 事後対処としてのメディエーター
 ● 今後の課題 
事例を通して学んだこと
 ● 対応過程の経緯中に,暴言・暴力に進展した事例 
 ● 対応過程の経緯中に,暴力を鎮静化させた事例 
今後に向けた検討課題と検証
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