研修医必携!

自治医科大学内科モーニングカンファレンス

スキルアップ73case

自治医科大学内科モーニングカンファレンス

■監修 菅野 健太郎

■編集 湯村 和子

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5判  444ページ  2色(一部カラー)
  • 2010年5月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-0082-7

臨床での診断思考能力の構築に最適な一冊

自治医科大学で行われている内科モーニングカンファレンスにおいて蓄積された症例を通して,教科書では学ぶことのできない内科系各疾患(common disease)の知識を,各科のベーシックな疾患から診断に迷う症例まで,「どのような思考過程を経て,最終的な診断と病態の把握に至るのか」,あるいは「どのような治療指針で望めばよいのか」を判断できるように,診療に即した実践的な内容で解説している。
また,各疾患に対処するうえでのポイントを選び出し,診療の流れに沿った見出しを多く挿入し,確定診断までに,どのようなポイント,キーワードをみながら進んでいくのかを解説している。


序文

 自治医科大学内科学講座では,内科臨床実習(BSL)学生ならびに研修医の教育を目的として,各内科部門が日替わりで症例を検討するモーニングカンファレンスを伝統としている。このカンファレンスでは,典型例のみならず学会発表となるような貴重な症例や,多岐にわたる問題を抱えた症例が紹介され,診断,治療のプロセスが示される。最後にその症例に関連した最新の病態生理や診断・治療法がまとめて解説されるので,オールラウンドな内科臨床能力の向上に寄与している。毎月の司会は,内科学講座に所属する消化器,循環器,呼吸器,神経,内分泌代謝,血液,腎臓,アレルギー・膠原病の各部門のほか,総合診療部,感染症,臨床薬理の教授・准教授が回り持ちで担当している。このような分野横断的な臨床カンファレンスの運営方式は,自治医大内科学講座が,専門疾患についての高度な診療に閉じこもることなく,教育や臨床を連携して行っているひとつの例である。
 湯村教授のご尽力で編集された本症例集は,モーニングカンファレンスで紹介された症例のなかから,新臨床研修制度の内科研修期間中に自ら体験し,基本的な知識を持つべきCommon Diseaseを中心として抜粋したものである。いずれの疾患も主訴をタイトルとして掲げ,続いて症例の臨床諸情報を提示し,診療手順のポイント(症例を読み解くポイント,見逃してはいけないポイント),症例の解説に至るというモーニングカンファレンスのスタイルにそって記載されている。これらはすべて実際に自治医科大学の各内科部門で研修医が担当した症例であり,臨場感のある迫力に満ちた記述が随所にみられる。しかも,豊富な画像や最新の診断基準やガイドラインなどが数多く示されているので,きわめてわかりやすい。病名を各症例のタイトルに使わず,主訴を標題に掲げているのは,得られた臨床情報から鑑別診断や臨床対応を考える訓練を行うためである。読者には,最初の症例提示までの臨床情報から,自分が主治医としてどのように診断や治療を進めていくのかの筋道をまず考えてみることをお勧めする。自分の力で,与えられた臨床情報を整理,統合して考える訓練を行ったうえで,「疾患を読み解くポイント,見逃してはいけないポイント」の項を読むと,症例の理解が格段に深まり,臨床能力が向上していくであろう。また「疾患の解説」の項についても,そこで述べられている記述に満足せず,新しい文献情報を自分で読み込んでいけば,臨床の実力が飛躍的に伸び,一人前の内科専門医のレベルに達するといっても過言ではないだろう。
 内科研修中にモーニングカンファレンス症例に当たると,負荷がかかって大変だという気持ちを持つ研修医もいるようである。しかし,このカンファレンスを担当すれば,症例に関する関連文献を収集し,指導医のガイダンスに従って現実の症例と比較・吟味するというEvidence-based Medicine(EBM)の基本的な修練ができるだけでなく,症例提示や疾患解説のポイントを簡潔かつ的確にまとめ,多数の聴講者の前で限られた時間のなかで要領よく発表するためのプレゼンテーションスキルの向上にも役立つ貴重な経験が得られるのである。本書がスキルアップをうたっている所以である。臨床医として必要なこれらの技能は,従来の学部教育期間中には必ずしも十分に行われていない。しかし,EBMを重視する最近の医療にはこれらのスキルは必須である。将来にわたって専門性の高い知的修練を続けなければなりたたない医師という職業にとって極めて重要な修練であると考えるからこそ,内科学講座が各科共通のモーニングカンファレンスを研修医や臨床実習学生の基本的臨床技能の向上のため続けているのである。本書に共著者として名前の記載されている研修医の方々は,モーニングカンファレンスで,担当した症例をより深く理解するだけでなく,症例発表するという経験を通して,自己の臨床技能の向上に役立ったと感じておられると思う。
 本書は比較的最近の経験症例をまとめているが,原稿集めから出版までに相当の時間が経過したため,本書に記載されている臨床概念や解説が医学の急速な進歩からみて適切ではない可能性も十分ある。校閲も十分行ったつもりであるが,誤りが見逃されている場合もありうる。読者の方々が,本書の疑問点や誤り,新たなエビデンス等について気付かれた場合には,ぜひご指摘いただきたい。また,症例の診断から治療についての考え方に対しても,ご批判や,改善すべき点についてのご提案を数多くお寄せくださることを願っている。
 我々が実際に体験した症例をこのような形でまとめて紹介するに当たっては,内科学会等の指針を参考にしながらも,病院が特定されるため,さらに厳しい基準を用いて個人情報保護に配慮した。
 本書はCommon Diseaseを中心にまとめられているが,より難易度の高い専門的な疾患や特殊な病態など,内科専門医あるいはそれぞれの領域の専門医を志す方々にも十分歯ごたえのある症例も数多く集積されている。これらの貴重な症例についても今後発刊できればと考えている。
 最後に,各症例を執筆された内科各部門の研修医・指導医の方々についてはお名前を掲載してその努力に深謝するとともに,これら多数の熱意あふれる指導医のもとで活発な教育活動(内科救急対応能力を養成する内科必修セミナー,最新のガイドラインを解説するガイドラインセミナー,内科認定医受験のための認定医試験セミナーなど)が講座の垣根を越えて行われている自治医科大学内科学講座に,一人でも多くの方がレジデントとして参加していただくことを希望している。

2010年4月
自治医科大学内科学講座主任教授 
菅野健太郎
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目次

I−総合診療部

Case1.発熱・咽頭痛・全身皮疹を主訴として来院した25歳,女性
  疾患解説:伝染性単核球症
Case2.頭痛・嘔吐・食欲不振を主訴として入院,精査加療目的に転院してきた60歳,女性
  疾患解説:癌性髄膜症
Case3.不明熱の精査を希望し転院してきた76歳,男性
  疾患解説:節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型
Case4.虫体排泄を主訴に来院した48歳,男性
  疾患解説:条虫症
Case5.発熱・皮疹を主訴に来院した48歳,男性
  疾患解説:デング熱,デング出血熱
   
II−循環器内科

Case1.弁置換術後,貧血と発熱をきたした70歳,男性
  疾患解説:感染性心内膜炎
Case2.両下腿浮腫を認め,体重の増減を繰り返す67歳,男性
  疾患解説:収縮性心膜炎
Case3.右視力低下,全身倦怠感を生じ高血圧精査目的にて受診した46歳,男性
  疾患解説:高血圧緊急症
Case4.胸部圧迫感を主訴として来院した77歳,男性
  疾患解説:急性前壁心筋梗塞
Case5.下肢疼痛と浮腫をきたした39歳,女性
  疾患解説:深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症
Case6.挙児希望強く,心室期外収縮に対する積極的治療の希望があり,心室期外収縮のアブレーション目的に入院した40歳,女性
  疾患概説:心室期外収縮
Case7.成人期に診断された心房中隔欠損症の 72歳,女性
  疾患解説:心房中隔欠損症
Case8.繰り返す意識消失発作のためてんかんと診断され,心肺停止を生じた33歳,男性
  疾患解説:冠攣縮性狭心症
Case9.激しい頭痛のため加療目的にて入院となった72歳,女性
  疾患解説:右室梗塞

III−消化器・肝臓内科

Case1.食道静脈瘤上に発生した重複早期食道癌を有する65歳,男性
  疾患解説:早期食道癌
Case2.黒色便,めまいで救急来院した60歳代,男性
  疾患解説:出血性胃潰瘍
Case3.腹痛,血便で受診した57歳,男性
  疾患解説:腸管出血性大腸炎(O-157),溶血性尿毒症症候群(HUS)
Case4.慢性の下痢を主訴に受診した54歳,女性
  疾患解説:腸管アミロイドーシス
Case5.血便を主訴に来院した61歳,男性
  疾患解説:大腸憩室出血
Case6.家族歴を有するC型慢性肝炎の30歳,女性
  疾患解説:C型慢性肝炎
Case7.急性肝炎を発症した20歳,女性
  疾患解説:自己免疫性肝炎
Case8.外側区域肝表面に存在する肝腫瘤の69歳,男性
  疾患解説:肝細胞癌
Case9.右季肋部痛を主訴に来院した65歳,男性
  疾患解説:胆管結石および胆管炎
Case 10.飲酒後に上腹部痛が出現した50歳,男性
  疾患解説:急性膵炎
Case 11.膵嚢胞経過観察中に結節性病変が出現した57歳,男性
  疾患解説:膵管内乳頭粘液性腫瘍

IV−呼吸器内科

Case1.他院にて気管支拡張症と診断された68歳,女性
  疾患解説:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
Case2.両肺に多発性の結節陰影を認めた25歳,女性
  疾患解説:肺動静脈瘻
Case3.けいれん発作後に呼吸困難,両側浸潤影が出現した47歳,女性
  疾患解説:神経原性肺水腫
Case4.胸部CTにて両肺にびまん性の小粒状影を認めた55歳,男性
  疾患解説:粟粒結核
Case5.羞明・霧視を自覚し胸部X線異常を指摘された24歳,男性
  疾患解説:サルコイドーシス
Case6.階段の昇降で呼吸困難を感じるようになった48歳,男性
  疾患解説:特発性間質性肺炎
Case7.発熱,胸痛を主訴に救急車にて来院した59歳,女性
  疾患解説:胸膜炎・膿胸
Case8.湿性咳嗽,鼻炎,中耳炎の73歳,女性
  疾患解説:Wegener肉芽腫
Case 9.慢性咳嗽を主訴とした65歳,男性
 疾患解説:小細胞肺癌

V−神経内科

Case1.頭痛,嘔吐,口部自動症で発症した側頭葉てんかんの17歳,男性
  疾患解説:側頭葉てんかん
Case2.物の名前が出てこないことを主訴に受診した65歳,女性
  疾患解説:認知症
Case3.間欠的な四肢のしびれ,疼痛を認めた75歳,女性
  疾患解説:糖尿病神経障害
Case4.インフルエンザ感染後に四肢筋力低下としびれ感をきたした30代,男性
  疾患解説: Guillain-Barre症候群
Case5.右手の不随意運動が出現するようになり,歩行も困難となった73歳,男性
  疾患解説:Creutzfeldt-Jakob病−特に孤発性CJDについて−
Case6.めまいで初発し,失見当識が出現してきた60歳,男性
  疾患解説:単純ヘルペス脳炎
Case7.夜間起床時に左片麻痺をきたした78歳,男性
  疾患解説:血行力学的機序による脳梗塞(watershed infarction)
Case 8.ステロイド投与中に頭痛,嘔吐,意識障害を呈した60代,男性
  疾患解説:細菌性髄膜炎
Case 9.進行性の筋力低下の後に呼吸不全が出現した50代,男性
  疾患解説:筋萎縮性側索硬化症
Case 10.左上下肢の脱力をきたし救急車で来院した60歳,男性
  疾患解説:脳梗塞におけるt-PA経静脈投与血栓溶解療法

VI−腎臓内科

Case1.水様性下痢と尿量の減少を主訴として来院した54歳,男性
  疾患解説:急性腎不全
Case2.意識消失発作とけいれんが出現した高血圧の19歳,女性
  疾患解説:腎血管性高血圧
Case3.感冒のたびに肉眼的血尿をきたした31歳,女性
  疾患解説:IgA腎症
Case4.下腿浮腫の71歳,女性
  疾患解説:ネフローゼ症候群
Case5.家族性の腎不全を呈した31歳,女性
  疾患解説:常染色体優性多発性嚢胞腎
Case6.血尿,微熱,末梢神経障害を呈した76歳,女性
  疾患解説:急速進行性糸球体腎炎(顕微鏡的多発性血管炎)
Case7.皮疹・腹痛・血尿を呈した37歳,男性
  疾患解説:紫斑病性腎炎

VII−血液科

Case1.妊娠中に血小板減少をきたした31歳,女性
  疾患解説:急性骨髄性白血病
Case2.汎血球現象が進行した76歳,男性
  疾患解説:骨髄異形成症候群 
Case3.右頚部リンパ節腫脹,体重減少を訴えた72歳,男性
  疾患解説:Hodgkinリンパ腫
Case4.感冒症状から,口腔内出血,鼻出血が出現した70歳,男性
  疾患解説:特発性血小板減少性紫斑病
Case5.皮疹とリンパ節腫大,末梢血中に異常リンパ球を認めた50歳,女性
  疾患解説:成人T細胞性白血病
Case6.腰痛と白血球増加を呈した56歳,女性
  疾患解説:急性リンパ性白血病

VIII−内分泌代謝科

Case1.上腹部痛を主訴に受診した17歳,女性
疾患解説:劇症1型糖尿病
Case2.意識障害で救急搬送された69歳,女性
  疾患解説:高浸透圧高血糖症候群
Case3.口渇,多尿,体重減少を主訴に来院した62歳,男性
  疾患解説:糖尿病(二次性糖尿病)
Case4.下肢末端の肥大を主訴に来院した65歳,男性
  疾患解説:先端巨大症
Case5.四肢麻痺で受診した27歳,男性
  疾患解説:Basedow病
Case6.前頚部腫脹で来院した46歳,女性
  疾患解説:慢性甲状腺炎(橋本病)
Case7.副腎偶発腫を認めた51歳,女性
  疾患解説:サブクリニカルCushing症候群
Case8.高血圧を認める35歳,男性
  疾患解説:原発性アルドステロン症

IX−アレルギー・リウマチ科

Case1.霧視,発熱を主訴に受診した43歳,男性
  疾患解説:ベーチェット病
Case2.咽頭痛,関節痛,発熱を主訴に来院した30歳,女性
  疾患解説:成人Still病
Case3.顔面および四肢のむくみを主訴に来院した22歳,女性
  疾患解説:全身性エリテマトーデス
Case4.全身の関節痛を主訴に受診した39歳,女性
  疾患解説:関節リウマチ
Case5.頭痛,血球減少を伴った47歳,女性
  疾患解説:全身性強皮症
Case6.発熱,肩周囲・後頚部・腰背部の痛みと体のこわばりが突然出現した60歳,男性
  疾患解説:リウマチ性多発筋痛症
Case7.嚥下困難を主訴として来院した64歳,男性
  疾患解説:悪性腫瘍随伴皮膚筋炎
Case8.微熱を主訴に来院した71歳,女性
  疾患解説:側頭動脈炎

Appendix:検査基準値一覧(自治医科大学附属病院)
編集にあたって
索引
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