新 目でみる循環器病シリーズ 14

成人先天性心疾患

成人先天性心疾患

■編集 丹羽 公一郎
中澤 誠

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • B5判  420ページ  2色(一部カラー)
  • 2005年9月16日刊行
  • ISBN978-4-7583-0136-7

今後の循環器の大きな一分野となることが予想される成人先天性心疾患のバイブル

外科治療の進歩や内科管理の向上により,小児先天性心疾患患者の多くが成人を迎えるようになった。これに比例し,成人となった小児心疾患患者,すわなち成人先天性心疾患患者数は,近年飛躍的に増加し,循環器のなかにおいても非常に大きな分野となっていているのが現状である。
しかしながら,成人先天性心疾患患者を診療・経過管理する施設はわが国ではいまだ十分ではなく,これらの患者がどの診療科に受診すべきか迷うことも多く,小児循環器科医のみならず,循環器科医の関与が非常に重要な時代となってきている。
本書では,成人先天性心疾患診療に必要な基礎知識から,各種疾患の診断・治療までをわかりやすく解説し,即,実際の診療に役立てられる内容とした。


序文

 内科,外科の発達の恩恵を受け,多くの先天性心疾患患者が,成人となることが可能となり,わが国では,すでに40万人以上の成人患者がいます。先天性心疾患は,生産児の約1%に発生するため,日本では年間12,000人あまりが生まれ,そのうち95%の1万人以上が成人します。したがって,今後,成人先天性心疾患患者数は5%の割合で増加し続けます。1980年頃は,先天性心疾患といえば,子供の病気でしたが,2000年には,成人患者数と小児患者数はほとんど同数になりました。さらに,2020年には,成人患者数は小児を遙かに凌駕して,先天性心疾患というと成人の病気とみなされると予想されます。すなわち,先天性心疾患は,すでに成人循環器疾患の1領域と考えられます。
 先天性心疾患患者は,成人しても主に循環器科小児科医が継続して診ていますが,循環器科医が経過観察している場合も少なくありません。今のところ,循環器科医のこの分野への関心は高くはありません。しかし,患者数の増加,加齢の進行,さらに,後天性心疾患と同様に心不全,不整脈が問題となることが多いため,近い将来,この分野は,循環器科医の興味を引くことは疑いがありません。小児の未手術チアノーゼ型先天性心疾患は減少していますが,成人では一定数存在し,系統的多臓器異常に対する医療が必要です。複雑心奇形術後の成人患者も増加しています。先天性心疾患手術の多くは根治手術ではなく,合併症,残遺症,続発症を伴います。そして,加齢に伴い,心機能の悪化,不整脈,心不全,突然死,再手術,感染性心内膜炎,妊娠,出産,高血圧,冠動脈異常,非心臓手術などにより病態,罹病率,生命予後が修飾されます。また,就業,保険,結婚,心理的社会的問題,喫煙など成人特有の問題を抱えます。このため,先天性心疾患の多くは,成人後も循環器小児科だけでなく,循環器科,心臓血管外科,麻酔科,産科,内科などのチームでの診療を必要とします。本書は,これらの成人先天性心疾患にみられる問題点,特徴,長期予後,診療体制などについて,蓄積されているデータと最新の知見をもとに,この分野の専門医師が執筆いたしました。各章は,独立した内容で記述されておりますが,通読することにより,成人先天性心疾患の最新の知識,現在の動向,今後の方向性について把握していただければ幸いです。
 執筆にあたり,多くの患者さんの経験から恩恵を受けています。序文を書いていただいた,UCLA Adult Congenital Heart Disease CenterのJoseph K Perloff先生に深甚の謝意を表します。応援して頂いた立野 滋先生をはじめとする同僚の先生方,医療関係者,Royal Brompton Hospital Adult CHD UnitのMichael A Gatzoulis先生,メジカルビュー社の吉田さん,文章の校正をお願いした丹羽淳子先生に深謝致します。

平成17年8月
千葉県循環器病センター小児科部長
丹羽公一郎
東京女子医科大学循環器小児科教授
中澤 誠
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目次

I−成人先天性心疾患診療に必要な基礎知識
 成人でみられる先天性心疾患の頻度  (丹羽公一郎)
 自然歴・術後歴
  加齢による病理学的特徴  (西川俊郎)
  不整脈と罹病率,突然死  (立野 滋,丹羽公一郎)
  心不全  (丹羽公一郎,中澤 誠)
  チアノーゼ型先天性心疾患にみられる全身多臓器異常  (丹羽公一郎)
  感染性心内膜炎  (丹羽公一郎)
  神経学的合併症  (岡田芳和,堀 智勝)
  修復術後の遺残症,続発症,合併症  (丹羽公一郎)
  肺高血圧  (佐地 勉)
 診断
  よく認められる症状と病態  (塚野真也)
  診断
    臨床診断法  (丹羽公一郎)
    心エコー:経胸壁エコー  (青墳裕之)
    心エコー:成人先天性心疾患における経食道心エコー検査の意義  (石塚尚子)
    運動負荷テスト  (稲井 慶)
    CT,MRI,RI  (近藤千里)
    心臓カテーテル検査,電気生理検査  (立野 滋,丹羽公一郎)
 内科治療
  薬物治療
    心不全  (豊田智彦)
    不整脈  (立野 滋,丹羽公一郎)
  非薬物治療
    インターベンション  (赤木禎治)
    カテーテルアブレーション  (立野 滋,旗 義仁)
    ペースメーカ  (立野 滋,丹羽公一郎)
    side memo:自動車等の運転に関して  (立野 滋,丹羽公一郎)
    ICD  (高橋一浩)
 妊娠出産    
  妊娠出産管理,避妊,人工妊娠中絶  (松田義雄,三谷 穣)
  妊娠出産の循環生理と疾患別特徴  (丹羽公一郎)
  胎児診断(適応,新生児未熟児診療のかかわり)  (川滝元良,豊島勝昭,康井制洋)
 疫学と遺伝  (中澤 誠)
 心理社会的問題
  保険,結婚,就業,病気に対する理解,病気告知時期  (坂崎尚徳)
  精神心理的問題  (太田真弓)
 手術
  成人期の初回心臓手術,再手術,人工材料の選択,予後,周術期管理  (松尾浩三)
  成人先天性心疾患に合併する不整脈の外科治療  (新田 隆)
  心肺移植  (福嶌教偉)
  非心臓手術  (丹羽公一郎)
  麻酔(心臓手術,非心臓手術,出産)  (小山 薫,照井克生)
 診療体制  (丹羽公一郎)
 成人先天性心疾患関連各種HP
II−各論(疾患)
 多くみられる先天性心疾患
  非チアノーゼ型先天性心疾患
   心室中隔欠損  (城尾邦隆)
   心房中隔欠損  (小林義典,新 博次)
   房室中隔欠損不完全型  (高橋長裕)
   動脈管開存  (河田政明)
   右室流出路狭窄(肺動脈弁狭窄閉鎖不全,右室二腔症)  (姫野和家子)
   大動脈二尖弁  (久米輝善,吉田 清)
   大動脈縮窄  (丹羽公一郎)
   コラム:成人先天性心疾患の大動脈拡張  (丹羽公一郎)
   Ebstein奇形  (丹羽公一郎)
   Valsalva洞動脈瘤  (豊田智彦)
   修正大血管転位  (丹羽公一郎)
   冠動脈異常:先天性  (百々秀心)
   冠動脈異常:川崎病  (赤木禎治)
   Marfan症候群  (中谷 敏)
   弁膜疾患術後遠隔期(人工材料:人工弁,生体弁など)  (松尾浩三)
  チアノーゼ型先天性心疾患修復術後  
   完全大血管転位  (中西敏雄)
   Fallot四徴  (丹羽公一郎)
   心外導管を用いた手術後,extra-conduit repair  (立野 滋,丹羽公一郎)
   Fontan手術後  (丹羽公一郎,中澤 誠)
   その他のチアノーゼ型先天性心疾患  (丹羽公一郎)
  非修復チアノーゼ型先天性心疾患の特徴
   肺血流減少性チアノーゼ型先天性心疾患  (丹羽公一郎)
   Eisenmenger症候群  (丹羽公一郎)
   肺高血圧,Eisenmenger症候群:治療  (佐地 勉)        
 老年期にみられる先天性心疾患  (千田宏司)
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