定量的冠動脈造影法

計測技術を高めるための7ステップ

定量的冠動脈造影法

■著者 景山 貴洋

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  168ページ  2色
  • 2006年9月15日刊行
  • ISBN978-4-7583-0149-7

定量的冠動脈造影法(QCA)計測の実技を網羅した1冊

定量的冠動脈造影法(QCA)とは,冠動脈造影を用いて冠動脈の径や長さをコンピュータで計測する手法である。冠動脈インターベンション(PCI)における,パルーン,ステントなどのデバイスサイズの決定支援,PCI施行後の評価ツールとして広く普及するようになった。本書は,今後ますます重要となるQCAについて,病変形態,位置,長さの違いに応じた計測の仕方を解説,臨床に役立つ実用書として刊行する。


序文

 定量的冠動脈造影法(Quantitative Coronary Angiography:QCA)は,冠動脈造影像における血管径をコンピュータにより解析する手法であり,近年,発展著しいCAD(Computer-Aided Diagnosis:コンピュータ支援診断)の技術の一つである。
 今から10年程前まで,冠動脈造影像の記録は,主に35mmシネフィルムにされてきた。QCAはシネフィルムを専用プロジェクタにかけ,拡大した画像をQCAシステムに取り込んで,アナログ画像をデジタル画像に変換し解析していた。シネフィルムは解像度に優れており,しばらくはQCAにおいてもゴールデンスタンダードとして使われた。その頃のQCAの主な役割は,冠動脈インターベンション(PCI)を施行した病変部位の経時変化の追跡,ニューデバイスの評価,冠動脈への薬剤効果の評価であった。その後,シネフィルムに記録されていたアナログ画像は,次第にデジタル画像に移行し,ついにはシネフィルムのリプレイスメントが行われた。これらの背景には,画像収集関係のハード技術の進歩により,バイプレーンによるデジタル撮影が1秒間に30コマの撮影を可能にしたこと,また,画像をDICOMという共通フォーマットでCD-Rなどのメディアに記録できるようになったことなどがある。このようにアナログ画像からデジタル画像への変遷は,さらには循環器動画像ネットワークの構築と普及をもたらし,カテーテル室から離れている場所にいても,コンピュータ端末で簡単に画像をみることができるようにもなった。この間,QCAシステムも発展を遂げ,特にデジタル画像や複雑性病変へ適応するためアルゴリズムの改良を進めてきた。現在のQCAシステムは,すべての撮影装置に搭載されるようになり,on lineでの解析を迅速にできるようにもなっている。また,循環器動画像ネットワークの端末でも解析ができるようにもなり活用範囲が広がっている。さらには,新しい撮像デバイスであるフラットパネルディテクター(FPD)の登場は,高画質,歪みのない画像を生み出している。今後,FPDはI.I.に替わる撮像デバイスとしてますます普及すると思われ,QCAの計測精度も向上することが期待される。
 一方,現在のPCIは,シロリムス溶出性ステント(Cypher)の留置が主流になっており,従来のステントと比べて,長いステントを留置することが再狭窄予防につながるといわれている。この点で血管の長さ計測は重要である。血管径や血管長の計測がQCAで迅速に行えるようになった現在,QCAを積極的にPCIに役立てていくことで,少しでも治療のクオリティアップが図れるものと考える。
 本書はQCAの計測技術が高められるように7ステップで構成されている。また,計測をしながらも,疑問点,問題点に応えれるよう,一つの内容を2ページにまとめている。さらに文頭には内容のまとめとして,Key wordを掲載した。 
 第1ステップは撮像デバイスで,I.I.とFPDの特徴が中心に書かれている。第2ステップはデジタル画像の特徴について述べている。マトリックスサイズ,画像処理,DICOM画像がQCAの計測精度にどのように反映されるのかのヒントになると思う。第3ステップのQCAシステムでは,システムの基本構成,アルゴリズム,計測の基本ステップについてまとめ,これからQCAを始めるスタッフにも理解できるようにした。第4ステップはQCAの計測精度である。計測精度を把握しておくことは,計測結果をどのように捉えるか計測者の判断基準になるため重要である。このため本章では,計測精度を求める実験方法から始まり,計測精度の指標となるaccuracyやprecisionの求め方,評価方法を説明し,最後に計測精度に及ぼす因子についてまとめた。第5ステップ以降は,PCI時におけるQCAの活用を意識し実践に主眼をおいた。第5ステップでは,冠動脈造影の基礎技術について述べる。QCAで正確な計測ができるかどうか,その7割は冠動脈造影で決まると考えている。病変部をよく観察できる撮影角度がQCAには必須である。そこで,冠動脈の各部位の至適撮影角度などに触れている。第6ステップでは計測の基本技術に入る。QCAで計測する対象のほとんどは狭窄病変で異常像である。また,QCAで病変部位を画面上に表示させるためには,適切な計測範囲の指定が重要となる。正常な冠動脈像,正常な血管径の変化を知っていると計測範囲の取り方に役立てられる。最後の第7ステップは,計測の応用技術で,著者のQCAへの経験を積み重ねていく過程で得られた知恵を掲載した。PCIにQCAを活用し役立てていくためには,術者の治療戦略を事前に聞き,ステント留置予定の部位や範囲を把握したうえで,計測することがポイントである。こうすると冠動脈造影像の読み方にも磨きがかけられ,有意義な計測結果が提示できると考えている。本書が少しでもQCAスタッフのお役に立てれば幸いである。
 最後に本書の出版を快くお引き受けいただきました,メジカルビュー社,編集部の川村氏,吉田氏,矢部氏に感謝致します。また,QCAの計測結果をPCIに活用し,評価していただきました千葉県循環器病センター循環器科医師の中村精岳氏はじめカテーテルスタッフの方々に深謝申し上げます。

千葉県循環器病センター放射線科上席専門員
景山貴洋
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目次

I−撮像デバイス
 1.X線管の構造
 2.イメージインテンシファイアー(image intensifier:I.I.)
 3.イメージインテンシファイアーの歪みとQCA
 4.TVカメラの特徴
 5.フラットパネルディテクター(flat panel detector:FPD)
 6.FPDのピクセル欠落
II−デジタル画像の特徴
 1.1ピクセル当たりの大きさが重要
 2.デジタル画像のノイズ(image noise)
 3.エッジエンハンス
III−定量的冠動脈造影法のシステム
 1.on line QCAとoff line QCA
 2.血管計測に必要なアルゴリズム1:一次微分と二次微分の加重平均が最も一般的
 3.血管計測に必要なアルゴリズム2:minimum cost algorithmとgradient form transmission algorithm
 4.diameter function
IV−定量的冠動脈造影法の計測精度
 1.計測精度を求める実験方法
 2.計測精度1:accuracyとprecision
 3.QCAシステムの計測精度の変遷
 4.計測精度2:1.5mm未満を過大評価する問題点
 5.QCAの計測精度に影響を及ぼす要因
 6.QCAの精度におけるガイドライン
V−冠動脈造影の基本技術
 1.フレーミングとパンニング
 2.息止めと冠動脈の形態
 3.造影剤のインジェクション
 4.AHAの冠動脈区域分類
 5.AHAの狭窄度分類
 6.冠動脈の撮影角度
 7.冠動脈造影における至適撮影角度
 8.フィルタリングの基本
VI−計測の基本技術
 1.カテーテル・キャリブレーション
 2.0.02mmにこだわる
 3.QCAスタッフの心構え
 4.精度の高いQCAのコツ
 5.病変部にはなにも重複させない
 6.病変部への枝のオーバーラッピング
 7.muscular bridgeによる血管内腔の狭小化
 8.右冠動脈 segment 1の計測の仕方
 9.右冠動脈 segment 2の計測の仕方
10.右冠動脈 segment 3の計測の仕方
11.左主幹部 segment 5の計測の仕方1
12.左主幹部 segment 5の計測の仕方2
13.左前下行枝 segment 6の計測の仕方
14.左前下行枝segment 7の計測の仕方
15.左前下行枝 segment 8の計測の仕方
16.左回旋枝 segment 13遠位部の計測の仕方
17.後側壁枝segment 14の計測の仕方
18.左回旋枝の冠動脈造影上の拡大原因
19.左回旋枝の拡大がQCAに及ぼす影響
VII−計測の応用技術
 1.血管径はproximalからdistalにいくに従い徐々に細くなる
 2.血管径の急な変化は太い血管が分岐する部位に一致している
 3.厳しい狭窄の遠位側の血管は本来の血管径よりも細くなっている
 4.拡張後の病変遠位側の血管径
 5.血管像がペンシル型にみえるときは血管長が短縮していると考える
 6.QCAのデータをPCIに役立てようとするなら,事前に術者に治療計画を教わろう
 7.病変長を計測しステントの長さを決定する
 8.ダイレクトステントではQCAによる血管径の情報が重要
 9.治療計画のクオリティを高める
 10.PCIにおけるQCAの肝は,ステントを留置する範囲のproximal,distalのリファレンス径と血管長の計測である
 11.特にRCAは同じ心位相で解析する
 12.病変部が長軸に撮影されているか(いたか)はバルーンやステントのマーカーの距離を計測することで判定できる
 13.long lesion(20mm以上)に対する血管長の計測では,2方向のCAGを用いる
 14.側枝をマーカーとしたQCA
 15.LAOとRAOで解析する
 16.2方向からの解析でQCAの信頼性を高める
 17.冠動脈瘤の内径計測
製品紹介
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