臨床現場で役に立つ

成人の先天性心疾患診療ブック

成人の先天性心疾患診療ブック

■編集 丹羽 公一郎
中澤 誠
赤木 禎治
立野 滋

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5判  296ページ  2色(一部カラー)
  • 2008年5月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-0181-7

成人先天性心疾患診療に役立つ実践的ガイドブック

医療の進歩と共に多くの先天性心疾患患者が成人となり,成人の先天性心疾患患者は現在40万人を超えている。先天性心疾患患者の多くは合併症等のため,成人になっても継続しての診療が必要であるが,成人の先天性心疾患専門医の数は少なく,専門外の先生が診療を行わなければならない状況である。そこで本書は,循環器研修医や一般内科医に向けて,成人先天性心疾患について解説した実際の臨床に役立つガイドブックとして刊行した。
小児期とは異なり,成人の先天性心疾患特有の心の問題や社会保障制度の問題等についても解説しており,実際に患者さんを診療する際に役立つ内容を盛り込んでいる。


序文

 内科,外科の発達の恩恵を受け,多くの先天性心疾患患者が,成人となることが可能となりました。わが国では,すでに40万人以上の成人先天性心疾患患者がいて,増加し続けています。以前は,先天性心疾患といえばこどもの病気でしたが,最近では,成人患者数と小児患者数はほとんど同数になりました。さらに,近い将来,成人患者数は,小児をはるかに凌駕します。すなわち,先天性心疾患は,成人循環器疾患の1分野と考えられます。
 先天性心疾患の手術の多くは根治手術ではなく,合併症,残遺症,続発症を伴います。そして,加齢に伴い,心機能の悪化,不整脈,心不全,突然死,再手術,感染性心内膜炎,妊娠,出産,高血圧,冠動脈異常,非心臓手術などにより病態,罹病率,生命予後が修飾されます。また,就業,保険,結婚,心理的社会的問題など成人特有の問題を抱えます。ほとんどの循環器科では,患者総数は多くはないにしても,一定数の成人先天性心疾患患者の診療を行わなければなりません。さらに,内科疾患の併発のために,内科医を受診することも少なくありません。成人の患者の多くは,小児循環器科医が小児期から継続して診ていることが少なくありませんが,小児期とは異なり前述した多岐な問題を抱えているため,循環器科,内科,心臓血管外科,産科,麻酔科,新生児科,看護師,臨床心理療法師などとのチーム医療が欠かせません。しかし,成人先天性心疾患は新しい分野ですので,この分野を専門としない医師が,成人先天性心疾患の診療をどのように進めていくかについて悩むことが少なくありません。しかし,現況では,この分野を専門とする医師がわずかであるため,循環器研修医や一般内科医向けに,優しく平易に解説した,実際臨床に役立つ実践的な関連成書がないのが現状です。
 本書は,循環器研修医,小児循環器研修医や一般内科医,心臓外科医,産科,麻酔科,看護師,臨床心理士を含む医療スタッフを対象として,診療の現場で役に立つことを目的として,成人先天性心疾患の診療テキストの形で執筆いたしました。患者さんからのQ and Aという形式を取り入れ,患者さんを目の前にしたときにどのように診療し,どのように対応するかを例示いたしました。成人の先天性心疾患に関する診療の実際を平易に解説し,理解していただくとともに,受診した患者の初期治療を行い,必要事項を説明する際のベースとなる書籍として刊行いたしました。成人先天性心疾患に不慣れな医療スタッフに,本分野を知識として理解していただき,実際の臨床に生かしていただけることが執筆者一同の喜びでございます。
 執筆にあたり,多くの患者さんを診療させていただいている経験を参考にさせていただいています。メジカルビュー社の吉田富生さん,平野範子さんそして,文章の校正を手伝っていただいた丹羽淳子先生に深謝致します。

平成20年5月

千葉県循環器病センター成人先天性心疾患診療部部長
丹羽公一郎
全文表示する

目次

Introduction
 小児心疾患とはなにが違うのか  丹羽公一郎
  小児心疾患の成人後の動向
  成人先天性心疾患における問題点
  チーム医療の重要性
 今,なぜ先天性心疾患が注目されるのか  丹羽公一郎
  小児心疾患の成人後の動向
  成人先天性心疾患の頻度
 看護師の役割  水野芳子
  成人先天性心疾患患者の看護
  診療体制のなかでの看護師の役割
I 成人患者を理解するための先天性心疾患の基礎知識
 小児期の先天性心疾患の問題点  丹羽公一郎
  先天性心疾患の病態生理
 先天性心疾患の頻度  立野 滋,丹羽公一郎
  先天性心疾患の頻度
  疾患別頻度
  成人期の先天性心疾患の頻度
  親子での繰り返し頻度
 成人期への移行の問題  丹羽公一郎
  成人先天性心疾患専門医に移行する必要性
  成人先天性心疾患専門医の役割ー循環器小児科医がいつまでみるのか。循環器科医が代わりうるか。誰が経過観察することがよいかー
  思春期の問題点,病気の理解と心内膜炎の予防の実践
  健康保険,医療保険,生命保険
  循環器小児科医から,成人先天性心疾患専門医にどのような時期,どのような場所で移行していくか。transient clinicの実際
  こどもの心臓病をいつ,どのように説明するか
  病院のかかりかた,成人先天性心疾患の専門医,その特徴とは?
 成人期の先天性心疾患の問題点  丹羽公一郎
  成人期に起こる諸問題
  診療施設
  先天性心疾患の社会的自立
II ここが知りたい,成人期の先天性心疾患   立野 滋,丹羽公一郎
 心房中隔欠損症
  手術時期,手術適応(1)
  手術時期,手術適応(2)
  心房細動,脳梗塞
  手術とdevice closure
  部分肺静脈還流異常との合併と手術(高齢者の心房中隔欠損症と部分肺静脈還流異常)
 心室中隔欠損症
  大動脈弁逸脱,閉鎖不全
  手術適応
  自然閉鎖
  術後長期管理,予後
  感染性心内膜炎予防
  運動制限,生活制限
 妊娠出産
  ピル(Ebstein奇形の妊娠出産とピル)
  大動脈弁逸脱と妊娠
  Fontan手術
  川崎病
  性行為
 不整脈
  ペースメーカ
  動悸,頻脈,期外収縮
  Fallot四徴症と心房粗細動,カテーテルアブレーション
  心房中隔欠損症と不整脈
 Fallot四徴症
  妊娠出産
  妊娠出産(大動脈閉鎖不全)
  成人期Fallot四徴症の再手術
  遠隔期死亡
 肺高血圧症
  妊娠
  特発性肺高血圧症と妊娠
  アイゼンメンゲル症候群
 社会生活
  心房中隔欠損症手術の公費負担
  生命保険
 Fontan手術
  遠隔期合併症
  成人期Fontan手術
 感染性心内膜炎
  予防
 カテーテル治療
  施設基準
  動脈管開存症の治療
 遺伝
  遺伝
III 成人期の日常生活の注意点
 成人期の日常生活の注意点  赤木禎治
  就業内容
  レクリエーション
  運転
  運動
  飲酒
  喫煙
  感染性心内膜炎予防
  入浴
  海外に住む場合
  旅行する場合の注意点
  予防接種
  性生活
  妊娠・出産
IV 成人期になると起こることーその頻度,特徴ー
 不整脈  立野 滋,丹羽公一郎
  罹病率
  不整脈の種類
  副伝導路
  重複房室結節・接合部頻拍
  心房性頻拍:心房内リエントリー性頻拍(IART),心房粗動,異所性心房頻拍
  心房細動
  心室頻拍
  洞機能不全
  房室ブロック
 心不全  丹羽公一郎
  概念
  検査所見
  画像診断による心機能評価法
  心不全治療
 チアノーゼと全身系統的合併症  坂崎尚徳
  血液学的異常,出血傾向
  血栓塞栓症
  腎合併症
  尿酸代謝異常
  ビリルビン代謝異常
  四肢,長官骨の異常
  感染症
 感染性心内膜炎  丹羽公一郎
  心内膜炎の特徴
  予防
  診断
  治療
  菌種が同定されている場合の抗菌薬と使用法(自己弁)
 妊娠出産
  産科的  岩永直子,池田智明
   妊娠前
   妊娠中
   分娩・産褥
  内科的  丹羽公一郎
   妊娠・出産の循環生理:妊娠・出産における母体の変化
   妊娠出産がハイリスクと考えられる疾患
   機械弁置換術後の妊娠時の抗凝固療法
   不整脈
   心不全
 心理社会的問題  白井丈晶
  生理的ストレスの事象
  成人期における社会的問題
  今後の展望
 周術期管理  杉本晃一
  成人先天性心疾患患者の術後の特徴
  循環管理の比較
  血行動態に影響を与える因子
 麻酔  杉森邦夫
  全般的な問題
  心臓手術の麻酔
  カテーテルの麻酔
  出産
 遺伝  市田蕗子
  多因子遺伝性心疾患
  染色体異常症候群
  隣接遺伝子症候群
  責任遺伝子が判明した疾患
 右室機能評価の重要性と実際  青墳裕之,中島弘道
  成人先天性心疾患における右室機能不全の原因および右室機能評価の意義
  成人先天性心疾患における右室機能評価の実際
V 成人期に特徴的な診断法
 病歴  豊田智彦
  病歴聴取のポイント
 症状  豊田智彦
  チアノーゼ
  息切れ,呼吸困難
  浮腫,体重増加
  動悸,脈の不整
  胸痛
  腹痛
  発熱
  頭痛
  関節痛
  出血傾向・喀血
  めまい,立ちくらみ,失神
  過粘稠度症候群
  脳塞栓に伴う症状
  精神神経症状
 診断法
  基本的臨床診断法の比較(どの検査をするかの決定)  豊田智彦
   身体所見
   胸部X線
   心電図
   心エコー図
   血液検査,尿検査
   検査法の選択
  Holter心電図,運動負荷テスト  立野 滋,丹羽公一郎
   Holter心電図
   運動負荷テスト
  CT,MRI,RI  景山貴洋
  心臓カテーテル検査,電気生理学的検査  立野 滋,丹羽公一郎
   心臓カテーテル検査
   心臓電気生理検査(electrophysiological study:EPS)
  胎児診断  川副泰隆,丹羽公一郎
   胎児診断の意義
   胎児well-beingの評価法
   胎児心臓超音波の適応
   胎児心臓超音波検査の方法
VI 成人期の内科治療
 薬物  豊田智彦
  成人先天性心疾患における薬物治療
  心不全に対する薬物療法
  不整脈
  主な不整脈と薬物治療の実際
  抗血小板薬,抗凝固薬
  肺高血圧症の薬物治療
  心外併存症に対する薬物治療
 カテーテル治療
  インターベンション  岡嶋良知
   二次孔型心房中隔欠損症デバイス閉鎖
   動脈管開存症コイル塞栓術
   大動脈縮窄症
   弁・血管に対するカテーテルインターベンション
   経皮的肺動脈弁留置
  アブレーション  立野 滋,丹羽公一郎
   副伝導路
   重複房室結節
   cavo-tricuspid isthmus dependent atrial flutter
   心房内リエントリー性頻拍(intra-atrial reentrant tachycardia:IART)
   異所性心房頻拍
   心室頻拍
   留意点
 ペースメーカ,ICD,心臓再同期治療  鈴木嗣敏
  ペースメーカ
  ICD
  心臓再同期療法(CRT)
VII 成人期の手術治療
 成人期の手術治療  松尾浩三
  成人期の初回心臓手術
  再手術
  手術成績
VIII 多くみられる先天性心疾患
 心室中隔欠損  丹羽公一郎
  解剖学的特徴,初回修復手術,血行動態
  小児期,成人期の経過,問題点
  自然閉鎖
  検査
  治療(内科外科)
  経過観察(心内膜炎予防,妊娠出産,運動の可否)
  長期予後
 心房中隔欠損  赤木禎治,谷口 学
  解剖学的特徴,成人期の問題点
  検査所見と治療適応
  カテーテル治療
 房室中隔欠損  百々秀心,磯田貴義
  解剖学的特徴と病態
  治療・修復手術
  検査(胸部X線,心電図,エコー,その他)
  心電図
  心エコー
  心臓カテーテルおよび造影
  経過,予後
  妊娠,出産
 動脈管開存  川副泰隆,丹羽公一郎
  解剖学的特徴,初回修復手術と血行動態
  小児期,成人期の経過,問題点
  身体所見,検査所見
  治療(内科的管理)
  治療(外科的管理)
  経過観察・長期予後
 左室流出路狭窄,閉鎖不全  塚野真也
  左室流出路狭窄
  大動脈弁狭窄
  病態生理と血行動態,症状
  身体所見と検査
  治療
  経過観察
  予後
  大動脈弁下狭窄
  病態生理と血行動態,症状
  小児期から成人期の経過,問題点
  治療
  大動脈弁上狭窄
  Williams症候群
  大動脈閉鎖不全
 Ebstein奇形,三尖弁狭窄閉鎖不全  高橋長裕
  解剖学的特徴,初回修復手術と血行動態
  小児期,成人期の経過,問題点
  身体所見,検査所見
  治療
  経過観察
  長期予後
 大動脈縮窄および大動脈拡張性疾患  丹羽公一郎,立野 滋,松尾浩三
  解剖学的特徴,初回修復手術,血行動態
  縮窄修復手術
  小児期,成人期の経過,問題点
  検査
  治療
  経過観察
  長期予後
  先天性心疾患の大動脈拡張
 修正大血管転位  池田亜希
  解剖学的特徴と病態
  初回修復術と血行動態
  小児期,成人期の経過,問題点
  身体所見,検査所見
  画像検査
  機能検査
  治療(内科,外科)
  経過観察
  長期予後
 Fallot四徴症,右室流出路狭窄  立野 滋,丹羽公一郎
  Fallot四徴症
  身体所見,検査所見
  治療
  経過観察
  長期予後
  右室流出路狭窄
  治療
  経過観察
  長期予後
 Eisenmenger症候群,肺高血圧  坂崎尚徳
  概念
  分類
  病態
  検査
  治療
 川崎病冠動脈瘤  赤木禎治
  川崎病の心血管合併症
  心血管合併症の自然歴,長期予後
  冠動脈病変の血管機能
  成人期の管理
  成人期冠動脈病変に対する治療
 完全大血管転位  丹羽公一郎,立野 滋,松尾浩三
  解剖学的特徴,初回修復手術と血行動態
  小児期,成人期の経過,問題点
  身体所見,検査所見
  治療
  遠隔期の治療介入
  経過観察
  長期予後
 Fontan手術後  高橋一浩
  ヒトの正常な血液循環とFontan手術が適応になる単心室循環
  Fontan手術
  Fontan循環の問題点
  具体的な問題点
  検査
  治療法
  Fontan再手術revision/conversion
 僧帽弁逸脱,閉鎖不全  豊田智彦
  概念
  成因・解剖
  頻度・自然歴
  症状
  身体所見・検査所見
  胸部X線
  心エコー
  治療
IX 社会保障制度,給付制度
 社会保障制度,給付制度  水野芳子
  概要
  医療費の公費負担および給付制度
  各種手当て,税金の免除など
  障害年金
  介護保険
X 患者さんに有用な,先天性心疾患の情報
 患者さんに有用な,先天性心疾患の情報  立野 滋,豊田智彦,丹羽公一郎
  成人先天性心疾患診療の現状と問題点
  成人先天線心疾患外来設置病院
  病院の賢いかかり方
  成人先天性心疾患研究会
  ホームページ
  成人先天性心疾患セミナー
  海外の学会組織,団体
全文表示する

関連する
オススメ書籍