頚動脈ステント留置術

Carotid Artery Stenting(CAS)のすべて

頚動脈ステント留置術

■編集 中原 一郎

■監修 滝 和郎

定価 9,350円(税込) (本体8,500円+税)
  • B5判  320ページ  2色(一部カラー),写真250点
  • 2008年5月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-0183-1

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頚動脈ステント留置術:基本から応用まで手技のすべてのポイントをおさえた実践書

頚動脈ステント留置術(CAS)は,心疾患・糖尿病など全身疾患を有する患者や高齢者・高位病変・再狭窄・対側閉塞を伴うなど,いくつかの合併疾患によって頚動脈内膜剥離術(CEA)施行が難しい症例に対して行われていたが,いわゆる外科的なCEAに対する低侵襲手術として行われていたのが実状である。現在は機材の進歩と経験豊かな指導者の増加により,その成績は飛躍的に向上してきた。通常の症例においてもCEAに代わって,頚部頚動脈狭窄症の標準的血行再建治療となりつつある。この度2008年4月に保険認可となり,低侵襲手術である本法は高齢化社会,頚動脈狭窄病変患者の増加という背景よりニーズは高まっている。
本書では,本法のエキスパートなる指導者たちが実際に行う繊細なCAS 手技を示すとともに,脳血管内治療の専門医をめざすドクターはもちろん,これからCASを学ぶ若手脳神経外科医および脳血管外科医に必須習得事項を解説していただいた。CAS におけるすべての知識を誌面にて展開していただき,CASを行う際の必須の書となるように刊行する。


序文

 1997年1月に,京都大学脳神経外科において,菊池晴彦先生(京都大学名誉教授,国立循環器病センター名誉総長,神戸市立医療センター中央市民病院院長)のご指導のもとで,滝和郎先生(三重大学脳神経外科教授),坂井信幸先生(神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科部長)とともに頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting ; CAS)の第1例目を行ってからすでに11年余りが経過した。この間お二人の先生方とともに本邦におけるCASの普及,発展に微力を注いできた。ステントを用いない頸動脈PTAはすでに1992年頃から着手しており,当時から遠位あるいは近位プロテクション法の開発や臨床応用に携わっていた。一方でPTAのみでは十分な拡張が得られず,しばしば動脈解離がみられ,また再狭窄を来すことに限界も感じていた。冠動脈や四肢動脈におけるステントの普及を背景に,頸動脈病変に対するCASの導入に至り,その絶大な効果に深く感銘したのである。
 当初はステントでプラークを圧着することによって遠位塞栓は起こりにくいのではないかと思っていたが,症例を重ね,ほどなくそれが誤りであることに気づいた。PTAの時期に行っていたプロテクションの必要性を再度認識し,お二人の先生方とともにプロテクションの普及に腐心した。当時海外でもまだCASにおけるプロテクションはほとんど行われていなかったが,私どもがバルーンプロテクションをルーチンに行うようになってほどなく,米国を中心にフィルタープロテクションが開発された。血流の一時遮断を要しないことから循環器科医が治療の多くを担う海外であっという間にフィルターが席巻した。ステントも当初のballoon expandable typeからself-expanding typeにかわり,国内でも2つのステントの臨床治験が行われ,時を経てようやくこのほどCASの保険承認に至ったのである。おそるおそるはじめたころを振り返ると,国内で年間数千例が行われ脳血管内治療の一大分野に成長したCASの現況に隔世の感がある。新しい治療,新しい医療技術の開発,発展,さらには学問として成熟の過程を身近で感じることができたのは貴重な経験であった。
 折しもこのような節目の時期にメジカルビュー社からCASに関する成書の刊行のお話をいただいた。ようやく保険承認となったところであり,新しいデバイスを用いた治療成績や問題点はこれから関連学会で討議されることになるし,すでに諸外国で用いられているものの本邦では未だ用いることのできないデバイスも数多くあり,これらのすべてを網羅するのは難しい。しかし保険承認をきっかけに本格的にCASに取り組まれる脳神経血管内治療専門医もおられるであろうし,またこれから専門医を志す若い方々,脳神経外科医や脳卒中内科医でCASに興味をお持ちの方々,あるいは第一線病院でCASやその周術期管理に携わる看護師や診療放射線技師の方々に,本邦での現時点での「CASのすべて」を学んでいただける書を企画した。基礎編と手術手技編との2部構成とし,基礎編ではCASに関わる解剖,脳循環にはじまりインフォームドコンセントに至るまでを,手術手技編ではスタンダードな症例,特異な症例について治療の実際を,イラストや画像をふんだんに用いて解説した判りやすいものとなっている。分担執筆は各分野で最先端の研究成果を挙げている方々や多くの臨床経験をお持ちの新進気鋭の方々を中心にお願いしたところ快くお引き受けいただいた。新しい治療であるため,執筆者によって多少考え方や立場の異なるところに気づかれるかもしれないが,敢えて統一はしていない。新しいデバイスをもとにした今後の治療成績を含めて今後適時その時点でのコンセンサスや知見を追加しながら改訂していきたい。CASの標準的教科書として,CASの今後の普及,発展とともに歩んでいくことができればと考えている。
 最後に,本書の全体を通してご監修をいただいた恩師,滝和郎先生にこれまでのご指導に対する御礼もこめて深く感謝申し上げる次第である。

2008年5月
中原一郎
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目次

[基礎編]
  頚動脈の脳血管解剖と脳循環  北川直毅
   ■頚動脈分岐部の外科解剖
   ■頚部血管解剖
   ■大動脈弓の解剖
   ■脳循環生理
  頚動脈狭窄症の症候と診断  山上 宏
   ■頚動脈狭窄症と虚血性脳血管障害
   ■頚動脈狭窄症の診断
  CASに用いる器材,材料  当麻直樹
   ■アクセスのための器材
   ■遠位塞栓を防ぐための器材
   ■病変を拡張するための器材
   ■その他の器材
  CASの適応と禁忌  吉村紳一
   ■頚動脈狭窄症に対する外科的治療:CEA
   ■CASに関する登録研究
   ■CASとCEAとのランダム化試験
   ■CASの適応と禁忌
  CASの基本手技  中原一郎
   ■シースイントロデューサーの挿入
   ■ガイディングカテーテルの留置
   ■病変計測とデバイスの選択
   ■プロテクションの方法と選択
   ■拡張手技−前拡張・ステント留置・後拡張
   ■プロテクション処理,確認撮影およびシース抜去
  CASの周術期管理  大田 元
   ■術前
   ■術中
   ■術後
   ■リスクファクターの管理
   ■抗血小板薬・抗凝固薬について
  CASの合併症  広畑 優ほか
   ■CAS術で経験する可能性のある合併症
   ■血管拡張後の過灌流症候群
  CAS後の再狭窄  清末一路
   ■再狭窄の頻度と危険因子
   ■再狭窄の発生機序
   ■再狭窄の予防
   ■再狭窄に対する治療
  CASのインフォームドコンセント  東 登志夫
   ■インフォームドコンセントとは
   ■患者さんへの十分な説明について
   ■説明,同意文書の作成のポイント
   ■頚動脈ステント留置術についての説明
[クリニカルパス]
  CASのクリニカルパス  岩室康司
   ■術前
   ■術後
   ■クリニカルパスの実際
[手術手技編]
 スタンダード症例
  Angioguard XPとPercuSurge GuradWire  中原一郎
   ■Angioguard XP
   ■PercuSerge GuradWire
  Parodi antiembolic system  当麻直樹
   ■proximal protection
   ■proximal protectionの利点・欠点と適応
   ■proximal protectionの手術の実際
  double protection  朝倉文夫
   ■ICA&ECA double protectionの必要性
   ■実際の手技
   ■成績
 特異症例への対応
  ソフトプラーク(ステント内逸脱例)  梶川隆一郎ほか
   ■CAS術中に生じるステント内逸脱:In-stent protrusion
   ■手技の実際
  屈曲病変  広畑 優ほか
   ■distal protection systemの通過困難例
   ■手術の実際
   ■stent delivery systemの通過困難例
   ■屈曲病変でのステントの留置部位
  急性期(floating thrombus)  津浦光晴
   ■浮遊血栓を伴う狭窄病変の治療適応と時期
   ■血管内治療の方法
   ■実際の手技
   ■浮遊血栓を伴う狭窄病変の治療成績
   ■浮遊血栓を伴う狭窄病変に対する治療の合併症と問題点
   ■浮遊血栓を伴う狭窄病変に対する頚動脈ステント留置術の将来展望
  偽閉塞例  岩室康司
   ■手術の実際
   ■症例
   ■治療手技
  石灰化病変  松本省二
   ■石灰化病変での注意事項
   ■症例
   ■画像所見
   ■手術の実際
  tandem lesion例  東 登志夫
   ■手術の実際
  アクセスルート  北川直毅
   ■治療前の検査
   ■経上腕アプローチ
   ■頚動脈直接穿刺法
  完全閉塞 津浦光晴
   ■完全閉塞病変に対する血管内治療の適応
   ■血管内治療の方法
   ■実際の手技
   ■完全閉塞に対する頚動脈ステント留置術の治療成績
   ■完全閉塞に対する頚動脈ステント留置術の合併症と問題点
   ■完全閉塞に対する頚動脈ステント留置術の将来展望
  再狭窄治療例  清末一路
   ■in-stent restenosis
   ■Stent-Edge Restenosis
   ■早期再狭窄または亜急性ステント血栓症
  対側閉塞例  広畑 優ほか
   ■対側内頚動脈閉塞を伴った頚部内頚動脈高度狭窄症に対するCEA
   ■対側内頚動脈閉塞を伴った頚部内頚動脈高度狭窄症に対するCAS
   ■手術の実際
[付録]
 頚動脈ステント留置術実施基準
[Focus Lecture]
 3T-MRIによる血管壁評価への期待  安陪等思,広畑 優 
 VH-IVUS  山田清文,吉村紳一 
 近赤外線分光法(NIRS)による脳内酸素飽和度測定  松本省二 
 CASにおける看護管理  中島ゆかり 
 Debris study  大田 元 
 MRI diffusion study  朝倉文夫 
 MRIプラークイメージ  吉田和道 
 経口腔頚部血管超音波検査法(TOCU)  卯田 健,矢坂正弘 
 心血管合併症のある症例での頚動脈ステント  岩室康司
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