心臓リズムマネージメントを究める

心臓リズムマネージメントを究める

■編集 奥村 謙

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • B5変型判  482ページ  2色(一部カラー)
  • 2009年7月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-0193-0

デバイスを用いた心臓のリズムマネージメントの実臨床に最適の1冊

ペースメーカなどのデバイスを用いた不整脈・心不全に対する非薬物療法は,近年各社による多彩な機能を加えた機種の開発により,植込み患者の生活の質の向上が可能となった。そしてガイドラインの策定や,各種臨床試験報告での治療の有効性の報告により,益々その重要性は高まっている。また,心室内伝導障害を伴う重症心不全例に対して,心室の非同期的収縮を是正する手段として,心臓再同期療法(CRT)が普及している。
本書では,これらデバイスを用いた心臓のリズムマネージメントにおいて,各疾患・病態において症例の選択と回避,リードシステムやぺーシングモード,ぺーシング部位をどう選択していけばよいのか,心臓再同期療法の選択と評価,人為的ミス回避のための注意点など,実際の症例を交えながら治療戦略について記載いただき,実臨床に有効な1冊となる書籍として刊行する。


序文

 「心臓リズムマネージメント」には,ペーシングにより心拍数(レート)を確保するだけでなく,心室頻拍(VT),心室細動(VF)を検出・治療(除細動)し,さらに心室内伝導障害(IVCD)による収縮不全を両室ペーシングで回復させることも含まれる。ペースメーカ,植込み型除細動器(ICD),心臓再同期療法(CRT),ICD機能を有するCRT(CRT-D)の各デバイスが用いられるが,近年の医用工学,IC工学の発展を背景とするデバイス機能の進歩により,「心臓リズムマネージメント」もほぼ完成に近い形で実施可能となっている。一方,デバイスの進歩と多機能化は治療様式の複雑化につながり,ややもすると各機能を十分に使いこなせなくなるような状況も生じている。さらに各デバイスが適応される疾患,病態もさまざまで,どの機能をどのように適用するのか,その判断も複雑となっている。デバイス診療に当たるすべての医師,コメディカルスタッフはデバイスの各機能を習熟しておかなければならないが,日々進歩するデバイス工学を絶えずアップデートすることは決して容易ではない。しかしながら,患者の利益が最優先される医療においては常に最善の治療を提供すべきであり,各デバイス機能をフルに活用できるよう努めなければならない。
 本書は「心臓リズムマネージメント」を究める上で,その補助,強い味方となればとの思いから企画された。デバイス治療を行う場合,心臓の電気生理学やデバイスの基本的構造,機能は理解しておくべきであり,デバイスが適応となる疾患についても基本的なことは認識しておかなければならない。デバイス治療前後に必要な検査についても同様である。デバイス植込みも標準的手技を用いて実施すべきあろう。編者が最も重要と考えていることは,デバイスの各機能を個々の患者,疾患,病態に応じて活用することであり,そのためにも各病態における治療戦略を把握しておく必要がある。例えば,心房細動(AF)はデバイス治療の対象となる患者にしばしば認められる合併症であるが,AFを有する患者において,ペースメーカ治療はどうすればいいのか,ICD治療で注意すべき点はなにか(不適切作動を避けるにはどうすべきか),CRTの効果を最大限に得るにはどうすればいいのかなど,極めて重要な課題である。実際の患者を目の前にした場合,本書に示された各治療戦略は必ずや読者の役に立つと信じている。本書ではさらにデバイス治療に伴う合併症と対策も記載した。編者が要注意と考える合併症を網羅したつもりである。さらにデバイス患者の社会復帰についても記載した。日本循環器学会では,2008年11月,編者が研究班長となり,デバイス治療を受けた患者の社会復帰等に関するガイドラインを刊行したが,これに基づき注意すべき点を具体的に記載した。この一冊で,各デバイス治療に必要な知識や手技,注意点,適応,合併症等が十分に理解されると思う。
 本書の内容は多岐にわたっており,多くの専門医の方々,デバイス治療を多数手掛けられてきた国内のほぼすべてのマスター達に執筆を依頼した。日常診療等に多忙を極める中,快く引き受けられ,「力作」を執筆いただいたことに心より感謝申し上げたい。本書がより良いデバイス治療に役立つことを願う次第である。

平成21年6月
弘前大学大学院医学研究科循環呼吸腎臓内科学教授
奥村 謙
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目次

I デバイス治療に必要な基礎知識
 心臓リズムの電気生理学
 デバイスの基本構造とぺーシングモード・ペースメーカコード
 術者の要件・施設基準と治療コスト
 
II デバイスが適用される疾患・病態の基礎知識
 洞不全症候群
 房室ブロックと脚枝ブロック
 神経調節性失神・頸動脈洞症候群,その他
 器質的心疾患に伴う心室頻拍・心室細動
 特発性心室細動・Brugada症候群・先天性QT延長症候群,その他
 心不全(伝導障害と非同期収縮)
 心臓突然死
 
III デバイス治療に必要な検査と解釈法
 心臓電気生理検査(EPS)
 心臓再同期療法のための心エコー法
 原因疾患(心疾患・全身性疾患)の診断のための検査
 
IV デバイス植込みの手技と注意点
 経静脈リード挿入法とペースメーカ植込みの実際
 ICD植込みの実際
 CRT・CRT-D植込みの実際
 デバイス交換法とリード追加法
 
V デバイス植込み後の各検査所見の読み方
 ペースメーカ心電図
 ICDチェック:プログラマーデータの読み方
 CRT・CRT-Dチェック:プログラマーデータの読み方
 
VI デバイスの選択と機能の活用
 ペースメーカ:ペーシングモードをどう選択するか,ペーシング部位をどこにするか
 ICD:single chamber ICDかdual chamber ICDか,そのメリットは?
 ICD:頻拍検出アルゴリズムの設定法(複雑より単純がいいか?)
 ICD:ショック治療と抗頻拍ぺーシング治療の使い分け
 CRT(CRT-D):ぺーシング部位,ぺーシング法,設定
 
VII ガイドラインをデバイス治療に活用する
 ペースメーカの適応
 ICD,CRT(CRT-D)の適応
 
VIII 各病態に対する治療戦略:標準治療から応用治療,高度(複雑)治療まで
 洞不全症候群に対するペースメーカ治療
 完全および高度房室ブロックに対するペースメーカ治療
 一過性および間歇性房室ブロックに対するペースメーカ治療
 心房細動を伴う洞不全症候群に対するペースメーカ治療
 心房細動を伴う房室ブロックに対するペースメーカ治療
 心機能低下を伴う洞不全症候群に対するペースメーカ治療
 心機能低下を伴う房室ブロックに対するペースメーカ治療
 徐脈性心房細動に対するペースメーカ治療
 正常心機能例におけるICD治療
 心機能低下例に対するICDの適応:薬物治療をどう併用するか
 心室頻拍・心室細動頻発例に対するICD治療
 心室細動・上室性不整脈合併例に対するICD治療
 突然死一次予防法としてのICD治療
 CRT-DかCRT-Pか,薬物療法をどう併用するか
 心房細動・上室性不整脈合併例に対する心臓再同期療法
 心房細動合併例に対する心臓再同期療法:房室ブロック作成術(房室接合部アブレーション)の適応について
 ペースメーカからCRTへのアップグレード
 小児のデバイス治療
 
IX 合併症の予防と対応:未然に防ぐにはどうするか,起きた場合の対応はどうするか
 リード挿入・デバイス植込みの手技に伴う合併症
 リードの移動
 ぺーシング不全
 センシング不全
 横隔膜・横隔神経刺激
 リード断線・損傷とデバイス不全
 デバイスとリード感染
 ペースメーカ症候群
 ペースメーカ依存性頻拍(pacemaker-mediated tachycardia)
 ICD不適切作動
 ICD頻回作動(ICD storm)
 心室再同期療法の催不整脈作用
 心理的問題
 
X デバイス患者の社会復帰
 ペースメーカクリニックではなにが大切か
 日常生活で遭遇しやすい電磁干渉:対策はなにか
 就学での注意点:学業,体育,課外活動,専門学校
 就労での注意点:知っておくべき労働基準法と労働安全衛生法
 自動車運転:法令では原則許可なのか,原則禁止なのか
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