心臓CTを活かす新しい冠動脈疾患診断戦略

こういう症例に活用する

心臓CTを活かす新しい冠動脈疾患診断戦略

■監修 児玉 和久
栗林 幸夫

■編集 平山 篤志
小室 一成
上田 恭敬
小松  誠

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5判  276ページ  一部カラー
  • 2010年2月19日刊行
  • ISBN978-4-7583-0197-8

心臓CTを実臨床に活用するための必須の一冊

本格的に導入されてからわずか3年ほどの間に64列CTが爆発的に普及した背景には,冠動脈の器質的病変診断において,カテーテルによる冠動脈造影検査(CAG)と比較し,患者にとって明らかに侵襲が少なく,医療コストが節約できるなどいくつかの長所がある。一方で,臨床の現場ではどのような患者・疾患・病態に,どのようにCTを活用したらよいのか戸惑いの声も聞かれる。
本書では,低被ばく,低侵襲のCT時代を見据え,実際の臨床で遭遇することの多いであろう提示症例を通して,非侵襲的に冠動脈をMDCTで行う新しい治療戦略を,諸検査との比較や文献的考察を交えて解説する。また,将来的にトピックになるであろう融合画像という新しい臨床応用の方法であるSPECT / CTの臨床活用についても提示した。


序文

 64列CTが本格的に導入されてからわずか3年ほどの間に起こった爆発的な普及には目を瞠る。冠動脈の器質的病変を診断において,カテーテルによる冠動脈造影検査(coronary angiography:CAG)と比較し,患者さんにとって明らかに侵襲が少なく,医療コストが節約できるなどいくつかの長所がその普及の背景にある。しかしいかに優れた長所も十分な知識や技術の裏づけと,使う人の高度な倫理観がなければ,むしろ患者さんへの余剰な負担と害をもたらす。これはすべての医療行為に共通のものであり,普遍的な事実である。さらにまたこの数年,多くの心臓CTに関する入門書や手引書が矢継ぎ早に刊行され,これらの出版物が,若手,中堅の心臓専門医を中心とした多くの医療従事者達の研鑽に大いに役立ち,知識や技術の急速な進歩とともに急速な普及を促してきた。
 しかしこの急速な展開は,医療現場で急ぎ改善を要する種々の問題点や今後のさらなる発展を促すために検討していくべき課題をさらに明確にしつつある。今回の出版にあたり,これらの状況に十分に配慮するとともに,CAGより大幅に減量が期待されている造影剤量の決め方や被ばく線量,これまで標準化されている従来の画像診断法との関連,それらの検討を通じて認識される新たな病態の考え方,さらには治療戦略の立て方と医療経済への貢献など,重要なポイントを中心に幅広い視点に立って構成(企画)されている。その趣旨のもとに,昨年刊行した「Q&Aでやさしく学ぶ心臓CT」に引き続き,循環器と放射線の基礎から臨床領域にいたる幅広い最新の知見を基に,われわれが臨床現場で直接役立てられるよう,具体的な症例を中心に解説することで,理解がよりしやすくする工夫を凝らした。本書が臨床現場で十分に活用され,さらに進化した心臓CTの発展に寄与することを願っている。

平成22年 元旦
大阪警察病院名誉院長・日本大学客員教授・尼崎中央病院循環器科顧問
児玉和久
全文表示する

目次

I スクリーニングとしての虚血性心疾患診断の展望
 低侵襲時代の心臓CT—もっと適応は拡大する—  小松 誠
 症例1 安静時の心電図異常に対し低侵襲CTで冠動脈疾患を否定しえた症例
 心臓CT撮影のおさらい  倉田 聖,望月輝一
 症例2 健診で心電図異常を認めたメタボリック症候群の症例
 画像・画質のチェックを欠かさない  鎌田照哲
 症例3 完全左脚ブロックに対し虚血性心疾患を否定しえた症例
 完全左脚ブロックの虚血性心疾患診断における問題点  小松 誠
 症例4 V1,2のR波増高に対し後壁心筋梗塞を疑い心臓CTを行った症例
 β遮断薬は必要か?いらないのか?  宮地和明
 症例5 人間ドックの心電図でIII, aVFでQ波であり陳旧性心筋梗塞を疑ったが虚血性心疾患を除外した症例
 心臓CTの診断精度,限界はどこにあるのか  栗林幸夫
 心臓CTによる被ばく量の減少と展望  宮地和明
 
II ハイリスク症例,心不全合併症例
 ステント再狭窄の現状  石原正治 
 症例6 ステント留置3年後の胸痛増悪に対しCTで病変を同定し,さらにPCI1年後フォローアップをCTで行った症例 
 遠隔期にステントをIVUSでどのように評価するのか  川野太郎,高山忠輝,平山篤志 
 症例7 冠危険因子を複数有し冠動脈疾患の既往あるも,脳梗塞後で運動負荷が施行できない症例
 薬物負荷試験と心臓CTの精度の比較  竹花一哉 
 症例8 低左心機能の原因精査で,心臓CTで虚血性心筋症を否定しえた症例
 心臓CT撮影:低左心機能症例の問題点  今井敦子 
 症例9 無症候性の左主幹部病変を認めた冠動脈ハイリスク症例
 糖尿病患者における冠動脈バイパス術の問題点  土井 潔,夜久 均 
 症例10 心臓CTで著明な石灰化のためドブタミン負荷エコーを行い薬物治療の方針とした症例
 石灰化スコアと冠動脈疾患  吉岡邦浩 
 症例11 膠原病性心筋症による慢性心不全で虚血性心疾患のrule outを行った症例
 心筋はどこまでCTで評価できるか  東野 博 
 症例12 心房細動を合併した急性心不全慢性期に虚血性心疾患の評価を行った症例
 心房細動症例で良い画像をめざす  鎌田照哲 
 症例13 非心臓手術直後に心室細動を起こし心臓CTを施行した症例
 
III 急性冠症候群早期発見のための心臓CT
 心臓CTを活用する急性冠症候群へのストラテジー —病歴からどのように急性冠症候群を疑うか—  松本直也 
 症例14 検査所見正常であるも症状から急性冠症候群を疑い心臓CTで診断に至った症例
 vulnerable plaqueとはなにか?  川野太郎,高山忠輝,平山篤志 
 血管内視鏡でみる不安定プラーク  上田恭敬
 症例15 冠動脈プラークを慎重にフォローし,冠動脈形成術を行った症例
 不安定プラークは心臓CTでどこまでわかるか  小松 誠 
 症例16 症状から急性冠症候群を疑い,緊急CTによりこれを否定しえた症例
 どういった症例に緊急でCTを行うのがよいのか  今井敦子 
 症例17 非典型的な胸痛で来院した心電図上急性冠症候群を疑う若年男性
 IVUSでみる不安定プラーク  川野太郎,高山忠輝,平山篤志 
 症例18 異型狭心症としてフォロー中に胸痛悪化を認め心臓CTで器質的狭窄の進行を否定した症例
 異型狭心症の血管内超音波(IVUS),血管内視鏡(CAS)所見  松岡 宏 
 症例19 起始異常を合併した虚血性心疾患の症例
 冠動脈起始異常とカテーテルの選択  土井 修 
 
IV 心臓血管外科術前術後の心臓CT
 症例20 冠動脈バイパス術3ヵ月後の心臓CTでグラフト閉塞を早期発見した症例
 心臓外科領域にとっての心臓CT  榊 雅之 
 症例21 冠動脈バイパス術後のグラフト造影拒否に対して心臓CTでグラフトの評価を行った症例
 症例22 冠動脈バイパス術後に脳梗塞を起こした患者のグラフト開存の確認
 症例23 解離性大動脈瘤術前の冠動脈評価を行った症例
 治療を念頭に置いた大動脈解離の診断ポイント  吉野秀朗 
 症例24 解離性大動脈瘤を指摘し,同時に冠動脈評価を行った症例
 大動脈解離のCT  新沼廣幸 
 症例25 陳旧姓心筋梗塞+不安定狭心症で心臓外科に直接紹介した症例
 術前情報として心臓CTに何を求めるか:冠動脈CTとSPECTデータを用いた融合画像の有用性  落 雅美 
 症例26 グラフトの拡張と狭窄で手術方針を検討した症例
 症例27 腎障害を伴う心移植後のフォローに心臓CTを使用した症例
 
V 開業医にとっての心臓CT
 循環器の開業医と心臓CT施行施設はどのように連携すればよいのか  小松 誠 
 症例28 心臓CTによる事前の血管構築の把握がPCI手技の参考になったsingle coronaryの症例
 循環器専門カテーテルクリニックの心臓CTの活用法  大原知樹 
 症例29 心臓CTにて左主幹部から#6と#11にかけて著しい石灰化と主幹分岐部に高度狭窄を疑い,冠動脈バイパス術を念頭に置き至急に対応した症例
 症例30 メタボリック症候群に対する運動療法中に胸痛が出現,狭心症が疑われた患者のライフスタイルに合わせて治療選択しえた症例
 心臓CTの情報をどのように診療に役立てるか  中川純一 
 
VI SPECT/CT融合画像の展望
 症例31 責任血管が側枝であることを詳細に同定しえた症例
 融合画像作成時の基本と注意点について  藤沢康雄 
 症例32 右冠動脈と左回旋枝に狭窄を認め,下壁の虚血に対する責任血管の同定が困難であった症例
 融合画像をどのようにPCIに役立てることができるか  西尾まゆ 
 症例33 下壁梗塞に右冠動脈のみならず左回旋枝の関与が明らかとなった症例
 SPECTの評価法,ピットフォール  竹花一哉 
 症例34 高度石灰化のため狭窄度不明な病変を認めた症例
 石灰化のアーチファクトをどう扱うか  小松 誠 
 症例35 左前下行枝・対角枝にステント留置後でありSPECTで前壁に虚血が出現した症例
 心臓CTによるステント評価の現在と今後  陣崎雅弘,栗林幸夫 
 症例36 冠動脈バイパス術後の虚血部位の判定1
 CTで心筋灌流を評価する  城戸輝仁 
 症例37 冠動脈バイパス術後の虚血部位の判定2
 症例38 虚血・梗塞領域と狭窄血管還流域が一致しない症例
 
最後に
 心臓CTを臨機応変に撮影する  小松 誠 
 
症例執筆
 症例1〜27  小松 誠,今井敦子
 症例28,29  大原知樹
 症例30  中川純一
 症例31〜38  西尾まゆ
全文表示する