びまん性冠動脈病変の臨床

基本的病態理解から治療の選択・実際

びまん性冠動脈病変の臨床

■監修 清水 幸宏

■編集 高梨 秀一郎

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  150ページ  2色(一部カラー)
  • 2010年10月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-0207-4

びまん性冠動脈病変治療を行うための必須の1冊

治療が非常にやっかいであり,内科的治療であるPCI,外科的治療であるCABG,血管形成術など,それぞれの治療法に関しても一長一短がある。本書では,びまん性冠動脈病変の治療に際して理解するべき病変の特徴,基本的な病態の理解から,診断に必要な検査と画像上の特徴,外科治療かカテーテルか治療方法の適応と選択の考え方について,本領域のエキスパートの先生方に解説していただいた実践書である。カテーテル,外科治療の手技等については,術中写真,イラストを用い,わかりやすく解説している。


序文

 冠動脈硬化病変に対する侵襲的治療の歴史は冠動脈バイパス術(CABG)に始まり,カテーテルインターベンション治療(PCI)の進化とともに変遷を遂げ,われわれ循環器医の冠動脈硬化病変治療に対する考え方を大きく変えてきた。そしてここ数年,PCIの新しいデバイスが次々に登場し,もはやCABGでなければ治せないといった病変は存在しないとさえいわれるようになった。
 しかし,PCIもCABGも基本的には限局した冠動脈病変に威力を発揮する治療法であり,いずれも単純な病変を修復,あるいはその部位を飛び越え新しいバイパスを作成することを目的としている。このことは,薬剤溶出ステント(DES)が登場して以降も同様である。
 では,びまん性病変にはどう対処するか?最近,SYNTAX試験により,冠動脈病変がより複雑になればなるほど,PCIに比べ,CABGの優位性は高まることがわかった。このことは,distal protectionがCABGの大きな特徴として強調されることや,一期的完全血行再建が可能であることがCABGの利点としてよくあげられることからも支持される。びまん性病変を治療するにあたり,特に左前下行枝(LAD)の完全血行再建は患者の生命予後を決定的に左右するという点でより重要な意味をもち,単に病変部の末梢にバイパスすることではなく細かい中隔枝や対角枝を含めた広範囲の血流再開でなければならないはずである。そのためには,本書で解説されている内膜剥離術(EA)は冠動脈外科医にとっては重要な手技であり,必ず身につけておくべき基本技術になってくるであろう。今日distal protectionの考え方が強調されればされるほど,より高い質の完全血行再建を遂行することがわれわれ外科医の存在意義を問われるテーマとなってきたといっても過言ではない。このことはPCIにかかわる内科医にとっても大きな意味をもつことになる。今後PCIのデバイスがさらに進化するなか,びまん性病変を的確に理解し適切な薬物治療や侵襲的治療を行うことが局所治療といわれるPCIの基本概念を覆す鍵になるかもしれないのである。
 しかし,冠動脈のびまん性病変の治療について,内外をみわたしても実際の臨床に則してまとめられた書籍はみあたらない。筆者は,長年この分野の外科治療にかかわり活躍されている清水幸宏先生の御指導のもと,内膜剥離術やlong onlay patch吻合法などを行ってきた。師から受け継いだ治療法を広い視点から見直し,冠動脈の侵襲的治療の新しい方向が模索できればとの思いで本書を企画するに至った。
 今回,執筆をお願いした先生方は,本書を企画するにあたり以前より筆者の中では依頼を決めていた方々である。もちろん日本の第一線で活躍されている先生方であることは説明するまでもない。研究や診療に多忙を極めておられるなか,卓越した臨床実績と最新の知見に基づいた玉稿をお寄せいただいたことに心より感謝申し上げるとともに,本書の実現にあたり実務を担当してくれた共著者でもある当院の福井寿啓医師,メジカルビュー社の吉田富生氏に心から御礼申し上げる。
 本書が冠動脈治療に日夜奔走し,この分野で医学の発展に多大の貢献をしている最前線の治療者に役立つことを願ってやまない。

平成22年9月
榊原記念病院心臓血管外科部長
高梨秀一郎
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目次

1.Introduction  清水幸宏
2.びまん冠動脈病変を知る  高見澤 格,住吉徹哉
3.びまん性冠動脈病変の病理学的特徴  成子隆彦,上田真喜子
4.血管造影上の特徴  伊藤 彰
5.びまん性冠動脈病変の画像診断  
   1 IVUS  小谷順一
   2 OCT  志手淳也
   3 CT  岸 智,田辺健吾
6.びまん性冠動脈病変の臨床上の特徴  宮内克己
   −重症虚血性心筋症患者の臨床上の特徴(合併疾患の頻度)−  
7.治療選択をどう考えるか  浅野竜太
8.びまん性冠動脈病変に対するカテーテル治療  中村 淳
9.びまん性冠動脈病変の外科治療  
   1 onlay patch grafting  福井寿啓,高梨秀一郎
   2 endarterectomy  福井寿啓,高梨秀一郎
10.びまん性冠動脈病変の術後管理  真鍋 晋
11.びまん性冠動脈病変に対する外科治療の遠隔成績  福井寿啓
12.虚血性心疾患に対する心血管再生治療の現状と未来  久保正幸,李 桃生,濱野公一
索引
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