血管内視鏡最新診療ガイド

血管内視鏡最新診療ガイド

■監修 児玉 和久

■編集 平山 篤志

定価 7,150円(税込) (本体6,500円+税)
  • B5変型判  190ページ  オールカラー
  • 2011年2月25日刊行
  • ISBN978-4-7583-0209-8

血管内視鏡の有用性と価値を知り,実臨床で使用するための最適の一冊

血管内視鏡は,進歩の著しい冠動脈領域の検査として,粥腫を直接観察し,治療を活かす方法として評価されている。また,薬剤溶出ステント植え込み後の内膜変化や血栓の有無を評価する方法としても世界的に認められるようになってきている。
本書では,血管内視鏡のエキスパートの先生方による豊富で鮮明な症例写真を掲載し,初学者にも理解できるように平易な記述,検査開始への基本的な知識から,セットアップ,検査手技,得られた所見の評価までを,一部症例を交えながら実践的に解説した書籍である。


序文

刊行にあたって

 人体内部を可視化する画像診断は現代の医療において欠くことのできない貴重な診断法である。心臓血管系においても最も有益な診断,治療の手段として多くの方法が開発され,それぞれ重要な役割を担っている。画像診断の開発,進歩の歴史は約100年,1世紀に及ぶ。この長く困難な歴史は,すでに医療関係者をはじめ多くの人々に語り尽くされているが,その出発点は20世紀の初頭,レントゲンによる放射線の発見である。その後多くの医学,工学上の発見と工夫を経て,1942年クールナンドが心臓カテーテル法を開発した。このカテーテル法の技術は1960年代に入り,遂に冠動脈造影法へと進化することになる。当時はまだ心電図検査や胸部単純レントゲン法の診断に依存していた冠動脈疾患の診断,治療は,たとえ影絵ではあっても血管の狭窄や閉塞が可視化しうる手段を獲得することで,異次元の進歩を遂げることになった。この衝撃的な診断法の出現はその後永きにわたり造影された狭窄度を診断のすべての尺度(ゴールデンスタンダード)とする錯覚を生みだすことになった。
 永い混迷の時期を経て,この錯誤からの解放をもたらしたのは病理学の真摯な研究の積み重であった。すなわち,冠動脈造影法の技術的進歩と普及が進むにつれ,多くの臨床家は狭窄の進行が動脈硬化病変の進行を表し,その帰着点が冠動脈閉塞であるという概念に頑なまでに囚われ,冠血行再建治療の適応を判断する目安として用いるだけに止まらず,冠動脈疾患の重症度すべてを定義するかの如き考えが定着することとなった。これは当時,病理学において提案された多くの画期的な研究成果と少なからぬ齟齬を生じ,心ある研究者からは臨床においてもより地道な研究の在り様を希求する声が上がり,次第に新しい展開を見せることとなった。幸いこの時期には冠動脈造影法のデータが次第に集積されるようになり,心筋梗塞患者の造影検査歴を精査することによって,心筋梗塞発作が必ずしも高度狭窄部位から発症していないことが明らかにされた。
 1990年代に入り新しい冠血管イメージング手段として冠血管内超音波法(IVUS)が開発され,臨床応用が始まり,冠動脈造影法による影絵のもつ限界が次第に明らかにされ,病理学者の主張を臨床でも検証することが可能となった。次いでさらに血管の内腔を直接観察することを可能にした血管内視鏡が開発された。開発にかかわる経緯は既刊「血管内視鏡アトラス」でも詳述したが,約30年以上に及ぶ我々と多くの共同研究者の努力よって,本邦で産声をあげ進化を遂げ,現在血管内視鏡が臨床での使用を認められている世界唯一の国となっていることは周知の通りである。
 内視鏡の利点は「正に百聞は一見に如かず」の例えそのものであり,最初に目にした急性冠症候群の冠動脈内は正に凄惨な大惨事の世界であった。夥しい毒々しい黄褐色の,一部被膜が破綻して内腔をむき出しにしたプラーク,そこに纏わりつく大量の血栓,赤色,白色,それらの入り混じった斑な混合血栓などが血流に煽られ破損しては末梢へ吹き飛ばされ,離断した内膜と思しき断片と混じり合い濁流となって押し流されていくその様は,この世のものとは思えない地獄図を描いていた。「これが心筋梗塞の本態か!」幸運にもその場に立ち会えた同志達は皆一応に息をのみ,目を凝らしてこの惨状を確りと目に焼き付けた。感動の一瞬であった。その後,内視鏡は病理学が解明した研究成果を臨床の現場でも証明する厖大な情報を提供し始め,ごく最近まで頑なに主張され続けた血管造影法による臨床概念を瞬時にして葬去る大変革を成し遂げたと言える。その後も血管内視鏡は,病理学がもつ大きな壁であった生体の血管内に起こる驚異的世界を供覧し続けた。すなわち,無症候性の動脈硬化性の血管内変化が多くの患者で数多く観察されることをはじめ,プラーク内のリピッド量の変化に先行して被膜の変化が鋭敏に起こること,PCI中の血管内構造の詳細な変化,さらにはプラーク性状とその分布と臨床経過,予後との関連など数多くの新しい知見を報告してきた。現在これらの業績は世界でも広く認められ,著名ないくつかの教科書の改訂版にはその成果が新たに書き加えられている。
 2004年に上梓された本邦初の血管内視鏡の入門書「血管内視鏡アトラス」は大変な好評を頂き,即刻完売となった。その後血管内視鏡による研究成果を盛り込んだ新たな内視鏡実用書の発刊を要望する声が続き,それに応えるべく準備を進め,このたび満を持して本書「血管内視鏡最新診療ガイド」を刊行することになった。前書が初期の入門書として主に器材や構造の説明,技術的な要点,画像の提示とその解釈などに重点お置いたが,本書ではその後に得られた新たな医学的情報や診断,治療での活用法,さらには長期治療の効果判定への応用など医療現場で役立つガイドの役を果たすべく腐心した。そのため多くの執筆頂いた先生方には何時もながら大変なご苦労をお願いし,それぞれに立派に練り上げられた草稿を頂いた。この場を借りて深い感謝と尊敬の念を捧げるものである。また発刊にあたり雑事を一手に引き受けてくれた小松 誠先生,的確な助言と編集を担当していただいた平山篤志先生,出版に際し辛抱強く準備し気配りをいただいた,メジカルビュー社編集部吉田富生氏に深い感謝の念を捧げるものである。

2011年 元旦
大阪警察病院名誉院長・尼崎中央病院心臓血管センター長
児玉和久
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目次

第1章 血管内視鏡の手技と臨床
 1.血管内視鏡の基本をおさえる:原理と構造  荒井恒憲
 2.どのような場面に用いるか  市川 稔,三嶋正芳
 3.血管内視鏡に向く血管,向かない血管  高山忠輝,廣 高史,齋藤 穎,平山篤志
 4.冠動脈での位置情報の把握と記録  松岡 宏
 5.血流維持型  
  準備と手順  松尾浩志
  ピットフォールとコツ  上田恭敬
  PCI前に観察するときの注意点  福島聖二
  吸引カテーテルを用いた手技  川上秀生
  よく見えないときの対策1 :カテーテルの進め方について  上田恭敬
  よく見えないときの対策2 :フラッシュについて  岩田幸代,林 孝俊
 6.データの管理術−大切なデータを逃さないために−  小松 誠,今井敦子,大原知樹,吉田純一,児玉和久

第2章  血管内視鏡でみる冠動脈プラークの基礎
 1.黄色プラーク,血栓と予後  上田恭敬
 2.病理所見との対比  羽尾裕之,高木洋介,植田初江
 3.色調の意義と評価  
  半定量的評価  小谷順一
  LCH空間によるデジタル評価  上田恭敬

第3章  病態を把握する
 1.不安定プラークとは  池田善彦,由谷親夫
 2.急性冠症候群と不安定プラーク  平山篤志
 3.無症候性プラーク破綻  廣 高史
 4.冠動脈硬化症  川野太郎
 5.異型狭心症  高山忠輝,廣 高史,齋藤 穎,平山篤志
 6.その他の冠動脈の評価  小松 誠,児玉和久
 7.冠動脈バイパスグラフトの評価  川上秀生
 8.内視鏡が病態把握に有用であった症例集  
  症例1 :急性冠症候群,遅発性ステント血栓症  青野 潤
  症例2 :血管内視鏡で動脈硬化病変を確定診断しえた70歳代後半,女性  今井敦子,大原知樹,小松 誠,吉田純一,武輪光彦,児玉和久
  症例3 :閉塞部位とculpritが異なると考えられた症例  小松 誠,児玉和久

第4章  診断に活かす−他のモダリティとの比較も含めて
 1.他の画像診断との使い分けと診断戦略  松野俊介,矢嶋純二
 2.急性冠症候群  高山忠輝,廣 高史,齋藤 穎,平山篤志
 3.Vulnerable patients  小松 誠,児玉和久
 4.安定型狭心症  渡辺浩毅
 5.内視鏡の所見でどのように診断するか−症例を基にした診断の進め方  
  症例1 :再現性のない労作時の動悸を主訴に受診した75歳,女性  上田恭敬
  症例2 :血管内視鏡により慢性閉塞性病変と考えられた,70歳代,男性  小松 誠,児玉和久
  症例3 :Vulnerable plaqueの同定に血管内視鏡が有用であった60歳代,男性  今井敦子,小松 誠,児玉和久

第5章  治療への応用
 1.Coronary intervention  
  Riskの評価1 :slow flowを予測できるか  石原正治
  Riskの評価2 :再狭窄を予測できるか  松野俊介,矢嶋純二
  ステント治療1 :BMSとDESの比較  高山忠輝,廣 高史,齋藤 穎,平山篤志
  ステント治療2 :DES留置後短期的評価  石原正治
  ステント治療3 :DES留置後中期的評価  粟田政樹
  DESの問題点1 :ステント血栓症  粟田政樹
  DESの問題点2 :内膜の不安定化  松野俊介,矢嶋純二
 2.薬剤治療の評価  
  抗血小板薬  上田恭敬
  抗動脈硬化薬−スタチンの内視鏡での評価  平山篤志

索引
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