ペースメーカ・ICD・CRT/CRT-D

トラブルシューティングからメンタルケアまで

ペースメーカ・ICD・CRT/CRT-D

■編集 奥村 謙

定価 7,480円(税込) (本体6,800円+税)
  • B5判  292ページ  2色(一部カラー)
  • 2012年2月20日刊行
  • ISBN978-4-7583-0216-6

植込みデバイスに対するトラブル回避,起こってしまった場合の対策からフォローアップ,メンタルケアまで,植込みデバイスを扱う医師の必読書

植込みデバイス[ペースメーカ,植込み型除細動器(ICD),心臓再同期療法(CRT), CRTにICD機能を付加したCRT-D]の開発と普及は著しい。わが国の高齢社会の発展,肥満・ストレス・過労などに伴い,不整脈や心不全などの循環器疾患患者はますます増加し,デバイス治療適応患者もさらに増加することが予測される。しかし,植込み患者数が増えるにつれ,その増加率を上回る勢いで各種トラブルが増加していることも報告されている。
そこで,デバイスの小型化・多機能化や,植込み治療自体が以前より容易になってきている現在において,トラブルをいかに回避し,実際に起こってしまった場合,どのような段階を踏んで,いかに対処するかをポイントを押さえて解説する書籍として刊行した。また,患者にとって人工物が体内に植え込まれることは大きな不安であることには違いないため,インフォームドコンセントの重要性や,退院後のメンタルケアについても項目を取り上げ解説した。


序文

 あらゆる治療法(薬)について言えることであるが,有用性という「光」に相当する部分があれば,副作用や合併症,不具合などの「陰」に相当する部分も同時に存在する。不整脈(頻脈および徐脈)の診療についてみると,近年の医用工学の進歩を背景とし,とくにペースメーカ,植込み型除細動器(ICD),心臓再同期療法(CRT)の植込み型デバイス治療は目覚ましい発展,普及を遂げ,患者のQOLを向上し,生命予後を改善してきた(光)。一方,患者は恐らく一生涯にわたって体内に異物としての金属デバイスを保有することとなり,身体的のみならず精神・情緒的に,さらに社会活動においても何らかの問題を抱えるリスクがある(陰)。医療の実践においては,「光」の部分を最大限に活用すると同時に,「陰」の部分を予知し,最小限にとどめる工夫を施す必要があり,努力が求められる。より適切で不具合の少ないデバイス医療を実践するためには,デバイスが適用される個々の例の背景に応じ,デバイスとチャンバーの選択,植込み法の工夫,リード固定部位の選択,ペーシングモードの設定,頻拍検出と治療法の設定など,きめ細かな配慮が必要となるのである。さらに植込み後はデバイス機能のみでなく,患者の身体的,精神・情緒的,社会的ケアも必要となる。ペースメーカの場合はリードインピーダンスや電池残量などのデバイス機能のフォローだけで十分なことが多いが,ICDの場合は治療(ショック)発生が患者に大きな苦痛を与える結果となり,これが原因となって患者は新たな悩みを抱えることともなりうる。あらゆるデバイス治療は何らかの日常生活,社会活動の制限を受ける可能性があることも認識しておくべきであろう。
 本書はペースメーカ,ICD,CRT治療の実践において発生が予測される合併症やトラブルとその回避策,生じた場合の対応策を,「術前および術中編」と「術後編」に分けて,デバイス治療の経験が豊富なエキスパートに解説をお願いした。さらにインフォームドコンセント,メンタルケアをどう実践するかについても術前に実施すべき事項,退院後の指導,フォローアップに分けて記載した。これらの多くは2008年の日本循環器学会「ペースメーカ,ICD,CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン」に記載されているが,実際の臨床でどのように適用していくか,本書では具体的に記載した。本書が植込み型デバイス診療において,適応を中心とするガイドラインとは別の側面から診療の支援となることを期待したい。
 最後になるが,診療,研究,教育等に多忙な日々を送られているなか,執筆を快諾いただいた不整脈エキスパートの各先生に対し,詳細かつ具体的に解説いただき,心より感謝申し上げたい。

2012年1月
弘前大学大学院医学研究科
循環呼吸腎臓内科学教授
奥村 謙
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目次

第I章 心臓植込みデバイスのトラブルシューティング

術前編:術中・術後のトラブル予防のための方策
1. 病態からみたデバイス・チャンバー・リード部位の選択
 デバイス選択:患者に最も適切なデバイスを個々のケースで考える 佐々木真吾,奥村 謙
 ペースメーカ:チャンバーとリード部位の選択 荻ノ沢泰司,河野律子,安部治彦
 ICD・CRT/CRT-D:チャンバーとリード部位の選択 三好史人,小林洋一
2. 術前検査:トラブル回避のための必須の検査はなにか 森田典成,小林義典
3. クリニカルパスの活用:スムーズな植込み術達成のためのトゥール 堀内大輔,奥村 謙

術中・術後編:起こりうる合併症・トラブルと対策
1. トラブルを回避するための植込みテクニック
 ペースメーカ植込み術 橋本 徹
 ICD植込み術 大森裕也
 CRT/CRT-D植込み術 吉田幸彦
2. 術中の合併症・トラブルと対策
気胸・血胸 森本大成
 横隔膜・横隔神経刺激 深水誠二,田辺康弘,櫻田春水
 リード穿孔(心タンポナーデ) 大友 潔
3. 術後早期の合併症・トラブルと対策
 出血(血腫) 大和田真玄,奥村 謙
 感染 鈴木 敦,真中哲之,志賀 剛
 皮膚の圧迫壊死 岩佐 篤
 リード離脱・移動 野田 崇
 不整脈 福田浩二
4. フォローアップ中のトラブルと対策
 ペーシング不全とセンシング不全 松本万夫
 リード断線・コーティング損傷:早期診断と対策法 榎本典浩,相良耕一
 ペースメーカ依存性頻拍:プログラミングの工夫 家坂義人
 ペースメーカ症候群:定義,症候と予防策 八木哲夫
 ICD不適切作動:プログラミングの工夫 江島浩一郎
 ICDショック作動:ATPの活用 佐々木真吾
 ICD頻回作動:薬物治療とアブレーションの役割 栗田隆志
 不具合リードの抜去法:新しい技術の応用 合屋雅彦

第II章 インフォームドコンセント・フォローアップ・メンタルケア

説明すべき事項(インフォームドコンセント)
1. 日常生活で生じうる制約
 電磁干渉:携帯電話からIH器具まで 中島 博
 スポーツ,旅行,結婚生活 水牧功一
 薬剤:必要な薬剤と注意すべき薬剤 林 英守,中里祐二
2. 自動車運転:失神の有無と一次予防/二次予防 渡辺重行
3. 就学:学校生活での注意事項 金丸 浩,住友直方
4. 就労とデバイス装着者とのかかわり 河野律子,荻ノ沢泰司,長友敏寿,安部治彦

退院時指導
1. デバイスの設定の説明:患者が理解しておくべき事項 久次米真吾,野呂眞人,杉 薫
2. ICD作動への対応:ショックの症状と作動後の対応 横山泰廣
3. 患者家族への指導 梅村 純
4. メンタルケア:具体的事例とコンサルトのタイミング 鈴木 豪,志賀 剛,萩原誠久

フォローアップ
1. デバイスクリニック:チェック内容と確認すべき事項 阿部芳久
2. 遠隔モニタリング:臨床上の有用性はなにか,患者のメリットはなにか 鈴木 均,竹石恭知
3. 外来で確認すべき事項:症状,診察所見,検査所見でなにに注意するか 庭野慎一
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