日常診療に活かす老年病ガイドブック 5

骨粗鬆症と骨折予防

骨粗鬆症と骨折予防

■担当編集委員 三木 哲郎

定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
  • B5判  200ページ  2色(一部カラー)
  • 2005年9月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-0280-7

超高齢社会を迎えるわが国の医師必携シリーズ

高齢者特有の症候群など,高齢者特有の特徴をより理解するための本シリーズ。本巻では,高齢者が寝たきりになる大きな原因である「骨粗鬆症」に焦点をあて,そのメカニズム,診断法,最新の治療,そして骨粗鬆症にならないための食事,運動療法について解説し,さらに骨折予防のための筋力トレーニングなどにも触れて解説している。

■シリーズ監修
大内尉義

■シリーズ編集
大内尉義/井藤英喜/三木哲郎/鳥羽研二


序文

 昨今の新聞の見出しは,老後の年金や社会保障問題,少子高齢化による人口減少,介護保険制度改革,国民医療費高騰……などが上位を占めている。これらはいずれも,わが国における急速に進む,予想を超えた超高齢社会の副産物である。この副産物は,いずれも重要な課題であり,政策論争の標的となっている。
 平均年齢が50歳前後であった私たちの先祖にとっては,高齢者の疾患である骨粗鬆症は,疾病としての絶対数は少なく,車を利用していなかった昔のヒトは運動量も多く骨密度の低下も顕著でなかったと考えられる。
 ヒトを人類集団としての歴史(人類史)の観点から,老年病の存在を考えることは重要である。人類史を考えると,約10万年前にアフリカのエチオピア付近で誕生した人類は,直近の約50年前までの大部分の期間は,飢餓,感染症,出血,寒冷,毒物などの身体的ストレスに曝露され,さらに天災・闘争などの精神的ストレスを受けてきた。この期間に生き延びていくのに重要な遺伝子群は,飢餓に対しては血糖などを上げる傾向にある遺伝子,すなわち倹約遺伝子(thrifty gene)である。10万年前から約50年前までは,一般集団での生活習慣病の有病率は皆無であり,ヒトの平均寿命は,この10万年間,子供の養育期間が終了する50歳前後に設定されていた。また,車社会ではなかったため,栄養の偏りさえなかったら骨も丈夫であり,骨粗鬆症や,これに付随する骨折も少なかったと考えられる。
 一方,ヒトの個人としての歴史(個体史)から考えると,約50年前から,衛生・環境・健康の状態も改善され,飽食の時代,車社会になって肥満,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常,動脈硬化などの生活習慣病が急増し,平均寿命も延びてきた。倹約遺伝子の働きが不要となり,逆に不利になってきた状態である。つまり,5000世代(10万年)のうちの2世代(50年)で逆転した現象であり,急速な高齢化による骨粗鬆症・寝たきり患者・認知症の増加に対応できなくなったのが現代社会である。アルツハイマー病や前頭側頭型痴呆などの神経変性疾患の病因解析は終了しておらず,予防法や治療法も確立していない。しかし,骨粗鬆症の病因解明は進んでおり,予防法や治療法も近年大きく変化してきている。いわゆる骨粗鬆症が原因となる病的な骨折や寝たきり状態の予知・予防は可能となった。遺伝的背景を調べ,運動療法と薬物療法を組み合わせて,骨塩量を定期的に測定しながら治療していくことが理想的な医療となる。骨粗鬆症の医療を実践することで,将来の高齢者医療のモデルが構築できるのではないかと考える。
 老化は,一般に神経と血管から進むと考えられるが,家屋で例えれば神経と血管は電気と水道のライフラインであるが,家屋の骨組みである柱は骨や筋肉に例えられる。老化は足からとも表現されるように,柱が機能しないと家屋は崩壊することになる。したがって,骨粗鬆症と骨折の予防は,ヒトが生活していくために最低限必要なものであり,ADL(生活の質)を維持するために必要なものである。本書では,「骨粗鬆症と骨折予防」のテーマで,老年内科学,内分泌内科学,整形外科学,リハビリテーション学,栄養学,医療経済学などの分野から学際的な学問として執筆してもらったが,すべての項目が今後の介護状態への予防・介護の実践や日常診療に役立つことを期待する。

平成17年9月
三木 哲郎
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目次

加齢に伴う骨変化  折茂 肇
骨の構造と機能  酒井昭典
骨リモデリングの分子機構  井上大輔,松本俊夫
骨粗鬆症の成因  池田恭治
骨粗鬆症と骨折の疫学  萩野 浩
骨粗鬆症の遺伝的背景  細井孝之
骨粗鬆症の鑑別診断と分類  浦野友彦
骨粗鬆症の診断  西沢良記,今西康雄
骨粗鬆症と骨代謝マーカー  星野眞二郎,大内尉義
骨密度測定法  福永仁夫,曽根照喜
骨粗鬆症の治療
 薬物療法の概要  小川純人
 エストロゲン  大中佳三,高柳涼一
 ビタミンD3  白木正孝
 カルシトニン  白木正孝
 ビタミンK  金木正夫
 イプリフラボン  細井孝之
 ビスホスホネート  三木隆己,揖場和子
骨粗鬆症と骨折  中村利孝
骨粗鬆症の予防
 運動療法  林 泰史
 食事療法  塚原典子
骨折の予防
 高齢者の筋力トレーニング  久野譜也,坂戸洋子
 ヒッププロテクター  原田 敦,奥泉宏康
骨粗鬆症と骨折の医療経済  太田壽城,原田 敦,奥泉宏康
コラム
 百寿者から学ぶ長生きの秘訣  海老原良典,広瀬信義
 アルツハイマー病の予防の最新情報  浦上克哉
 高齢者の高血圧治療ガイドラインの改革  荻原俊男
 ホルモン補充療法と老年病  大内尉義
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