新しい血圧測定と脈波解析マニュアル

新しい血圧測定と脈波解析マニュアル

■監修 小澤 利男

■編集 臨床血圧脈波研究会

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5変型判  256ページ  2色
  • 2008年6月19日刊行
  • ISBN978-4-7583-0355-2

中心動脈,PWV,ABIなど,新しい臓器障害のパラメータの理論と実際をわかりやすく解説

2007年ESH-ESC高血圧ガイドラインにおいて,臓器障害の新たな評価項目としてPWV(脈波伝播速度),ABI(足関節/上腕血圧比)が採用された。本書は,このPWV,ABIを初め,新しいパラメータである中心血圧やAI(Augmentation Index)について,基礎から臨床への応用までわかりやすく解説したマニュアルである。基礎編では,PWV,AIとは何かといった理論やその測定法を,応用編では,治療効果判定や生活習慣の改善チェックなど,臨床でどのように応用できるかを解説しており,これ一冊で新しい血圧測定と脈波解析が理解できる内容となっている。


序文

 高血圧は最も多い慢性疾患であり,放置すれば脳卒中,心筋梗塞,腎不全,大動脈瘤など,さまざまな合併症を起こすことが知られています。このため欧米でもわが国でも高血圧診療指針がほぼ4年ごとに改版されて,高血圧学会から出版されています。
 最近,ヨーロッパ高血圧学会と心臓学会が協調して,2007年版の高血圧管理ガイドラインを発表しました。そこには多くの研究実績を踏まえ,2003年版の倍くらいの内容の情報が掲載されています。特に注目すべきは,心血管リスクに関して新しい因子が出されていることです。
 高血圧管理では,単に血圧値の高さのみでなく,心血管リスクを評価することが大切です。リスク因子として血圧値では,高齢者の脈圧が評価対象となりました。そのほかの因子として,年齢,喫煙,脂質代謝異常,血糖値,肥満,家族歴などと糖尿病があります。
 高血圧では,無症候性臓器障害を評価することも必要です。それは強力なリスク因子であるとともに,脳,心,腎,血管などの高血圧性臓器障害のマーカーともなります。2003年版では,そこに心肥大(LVH),頸動脈内膜中膜肥厚(IMT),腎不全,微量アルブミン尿などがみられましたが,2007版には新たに脈波伝播速度(PWV)と足関節/上腕血圧比(ABI)が加わりました。すなわち頸動脈−大腿動脈PWV>12m/secとABI<0.9という2つの基準が,無症候性血管障害を表し,かつ強力なリスク因子となることが,多くの研究成果から実証されたのです。
 幸いにしてわが国のオムロンコーリンの機器form PWV/ABI(R)は,この両者を簡単に同時測定できます。本機器の上腕−足首PWV(baPWV)は,現在国内で広く用いられています。またそれは大動脈PWVとよい相関を示しています。
 さらに2007年版ガイドラインでは,中心動脈圧,AI(augmentation index)にも言及されています。PWVとは違った意味で,これらが将来のリスク因子となることは充分予測できます。
 中心動脈とは,上行大動脈,総頸動脈など,直接心臓の駆出インパクトを受ける動脈を指します。そこの形態と機能の変化が,今高血圧専門医から熱い視線を浴びています。それが血管の老化,スティフネス,脈波反射などの原点になります。しかし,一般にはこうした中心動脈のパラメータや脈圧は,まだなじみが薄いように思えます。また計測しても,その意義がよく理解されていないようにも感ぜられます。
 本書はこの観点に立って,脈波解析から動脈スティフネス,中心動脈圧,脈波反射,ABIなどの理論と実際を分かりやすく解説したマニュアルであります。編集は,臨床血圧脈波研究会の世話人が当たり,この面で造詣が深い専門医が執筆しました。
 本書が実地臨床はもとより,検診,予防医学,人間ドックなどの面にわたって広く活用されれば,筆者らの望外の幸いであります。

平成20年5月
臨床血圧脈波研究会代表 小澤利男
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目次

基礎編
 I.理論
  1 中心動脈と末梢動脈の構造と機能の相違  小澤利男
  2 中心動脈と末梢動脈の血圧脈波の相違  高沢謙二
  3 PWVとは何か?そのスティフネスとの関連  吉田雅伸/冨山博史/山科 章
  4 脈波反射,AIおよび中心血圧とは何か  高沢謙二
  5 血圧測定法について:コロトコフ法,オシロメトリック法,トノメトリ法  島田和幸
  6 動脈スティフネスに関する用語解説  増田善昭
  7 脈圧の意味するもの  小澤利男
  8 加齢とPWVならびにAIとの関係  小原克彦
  9 PWVとAI:関連と相違  南 順一/阿部麗子/大野絵里
  10 動脈内皮機能とスティフネスの関係  東 幸仁
  11 ABIについて:その生理と正常値  山田治広/冨山博史/山科 章
  12 骨動脈脈波から中心血圧を求める法  会沢 彰
  13 PWVとAIに対する性,身長,脈拍数,血圧の影響  小原克彦
  14 心機能と動脈スティフネスとの関連  橋本潤一郎
  15 baPWVの原理と大動脈PWVとの関連  冨山博史/山科 章
  16 さまざまな区間のPWVの意義  庄司哲雄/西沢良記
  17 動脈硬化の遺伝的要因  田原康玄/小原克彦/三木哲郎
  18 中心血圧の理論  高沢謙二
  19 心機能STIの理論  沢山俊民
 II.測定法
  1 動脈スティフネスの測定法(全身的,局所的)  小原克彦
  2 PWV測定時の注意点  山科 章
  3 橈骨動脈脈波記録と中心血圧,AI算出上の注意点  高沢謙二
  4 年齢・血圧値がPWVに及ぼす影響および血管年齢  冨山博史/山科 章
  5 ABIの測定法と正常値  山田治広/冨山博史/山科 章
  6 ABI低値の際のbaPWVの解釈  吉田雅伸/冨山博史/山科 章
  7 心機能STIの測定法と解釈  沢山俊民
  8 頸動脈脈波測定法と異常頸動脈脈波  沢山俊民
応用編
 Ⅰ.PWVおよび中心血圧(AI)の臨床への応用
  1 リスク因子と臓器障害マーカー  安田久代/河野雄平
  2 高齢者診療における動脈スティフネス  小原克彦
  3 小児,若年者への応用  池谷敏郎/池谷優子
  4 高血圧診療への応用  橋本潤一郎
  5 糖尿病診療への応用  三田智也/河盛隆造
  6 軽度腎機能低下例における応用  宗像正徳
  7 慢性腎不全(透析を含む)への応用  鈴木洋通/竹中恒夫
  8 脂質代謝異常への応用  三田智也/河盛隆造
  9 メタボリックシンドロームとPWV  冨山博史/山科 章
  10 睡眠時無呼吸への応用  椎名一紀/冨山博史/山科 章
  11 PWVおよび中心血圧(AI)の心不全への応用  福冨基城/宮下 洋
  12 閉塞性動脈硬化  松尾 汎
  13 脳血管障害  志水元洋/苅尾七臣
  14 婦人科における応用  林貢一郎/宮地元彦
 II.PWVおよび中心血圧(AI)からみた予防医学と生活習慣
  1 喫煙,アルコールおよび嗜好のPWVへの影響  松本知沙/冨山博史/山科 章
  2 運動の効果  家光素行/宮地元彦
  3 高Na食と低Na食  河野雄平/安田久代
  4 さまざまな栄養食との関係  田中弘文
  5 肥満対策への応用  篠原加代
  6 検診への応用  石川智史/橋本潤一郎/今井 潤
  7 人間ドックへの応用  松本(原田)早苗/武田和夫
  8 脳ドックへの応用  池田 憲/岩村明彦/樫原英俊/細沢健一/汐碇 優/阿南耕三/田村政紀
 III.PWVおよび中心血圧(AI)の死亡と心血管疾患発症の予測能と介入効果
  1 PWVの予後予測能  冨山博史/山科 章
  2 中心血圧,AIの予後予測能  橋本潤一郎
  3 ABIの予測能  後藤広昌/三田智也/河盛隆造
  4 各種降圧薬のPWV・AIへの効果  森本 聡
  5 脂質代謝改善薬のPWV・AIへの効果  市原淳弘
  6 抗糖尿病薬のPWV・AIへの効果  三田智也/河盛隆造
  7 血管拡張薬のPWV・AIへの効果  小島太郎/大内尉義
  8 ホルモンのPWV・AIへの効果  山田容子/大内尉義
製品紹介     
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