初めて握る人のための

気管支鏡入門マニュアル

杏林大学呼吸器内科編

気管支鏡入門マニュアル

■監修 滝澤 始

■編集 石井 晴之

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  160ページ  オールカラー,イラスト100点,写真100点
  • 2013年12月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-0370-5

気管支鏡を初めて握る人のための入門書!

気管支鏡は,間質性肺炎の診断や腫瘍性肺病変の確定診断,病原菌の同定など,呼吸器の診断に果たす役割は非常に大きく,また,技術開発の進歩が目覚ましい領域である。本書では,気管支鏡をこれから行おうとする若手呼吸器科医,および研修医を対象に,イラストや写真をメインに目で見て理解できる紙面構成で解説した。本領域で高い医療レベルを誇る杏林大学呼吸器内科の先生方のテクニックとコツが随所に掲載された気管支鏡の入門書である。


序文

監修にあたって

 世に専門書は数多い。気管支鏡の分野でもさまざまな書物が出版されている。しかし,「蘭学事始め」ならぬ「気管支鏡事始め」を目的とした本はあまりないようである。もとより,あなたのすぐ隣に優れた気管支鏡の指導医がいれば,何も思い悩むことはない。気管支鏡を手に持って,教えを請えば良いであろう。しかし,やはり物事にはあらかじめ知っておかなければならない約束事というものがある。
 私が初めて気管支鏡を覗いたのは,いまだ気管支ファイバースコープの時代であり,先端部のレンズを通してでしか画像を見ることはできず,わずかに接眼部に取り付けた重いティーチングスコープによってのみ見学できた。したがって,気軽に見ることは許されず,しばらくは喉頭麻酔の係りをもっぱらやらされた(これも大変重要な役割であることは本文にあるとおりだが)。当時発売されていた町田製作所の気管支樹の模型を作製し,さらに紙粘土と紙でキットには含まれていない大動脈弓や肺動静脈まで作ったのを思い出す(いまだに私の部屋にある)。これを指導医に見せて,さらにその質問に合格したら,初めて気管から先を見る許しが出た。
 その後,気管支鏡検査を毎週2回施行する日々がしばらく続き,気が付くといつの間にか電子スコープになり,細径気管支鏡も導入され,さらに自家蛍光気管支鏡検査や超音波内視鏡が用いられるようになった。日本気管支学会も日本呼吸器内視鏡学会と名称を変え,今や呼吸器イメージングの総合学会となった。しかし,最も基本となる気管支鏡のテクニックは驚くほど昔と変わっていない。まさに「気管支鏡事始め」は今も昔も同じなのである。
 本書は「初めて気管支鏡を握るあなた」の役に立つべく,杏林大学医学部付属病院呼吸器内科で日常行われている気管支鏡検査について,わかりやすく記載したものである。したがって,学会の手引き書「気管支鏡検査を安全に行うために」に必ずしも一致していない記述もある。当科での現在のやり方に自負を持ちつつも,現状にとらわれることなく,常に内外の報告をもとに安全性と確実性の向上を求めて進化することが期待される。本書はそういう意味では,気管支鏡検査キャップの石井晴之講師以下が熱い思いで綴った「最新版マニュアル」と思っていただければと思う。
 気管支鏡検査について患者さんに「辛くないですか?」と尋ねられ,「全然辛くないですよ」と胸を張って答えられる日が早く来るように祈りつつ,本書をすべての患者さんに捧げたい。
 最後に一大学病院の気管支鏡検査の実態を本にするという,ある意味大胆な企画を熱心に推進された株式会社メジカルビュー社 編集部の谷口陽一様に深謝し筆をおく。

2013年12月
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科 教授
滝澤 始
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序文

 20数年前に呼吸器内科に興味を持ち,気管支鏡検査の研修を行い始めた頃を思い出す。指導医からの説明やハードカバーの教科書は専門的な内容が多く,気管支鏡検査は独自で勉強するのが難しい研修内容の一つであった。また検査を受けた患者から「苦しかった,もう二度と受けたくない」など悲壮感漂う言葉を耳にすることもあり,研修医にとって敷居の高い検査のイメージがあった。
 実際に気管支鏡検査を修練するには,教科書から学ぶより現場での見学を繰り返し,検査の流れ,必要備品,処置内容を『体で覚えろ』的な研修が多かった。その研修スタイルで必死に気管支鏡の知識を叩き込み,時間はかかったが検査に馴染んできた記憶がある。しかし,呼吸器科入門者が理解しやすく実践的な内容の教科書があれば,もっと早くに気管支鏡検査に馴染めていたのは間違いないだろう。
 私自身が気管支鏡検査を教える立場になって,どのように教育すべきか考える時期があった。気管支鏡検査のポイントを並べたマニュアルを作成したこともあったが,検査中に直接指導した方が明らかに効率の良い教育であることを強く実感したこともあった。それでも入門者からは「気管支鏡検査はどうやって勉強したら良いのですか? お勧めの入門書はありますか?」という声をしばしば耳にした。今回,気管支鏡検査の入門書を刊行することにしたのは,このような思いを持ち続けていたからである。
 本書のコンセプトは,『より実践的な内容』である。内容はイラストを中心に解説し,現場の状況をイメージしやすくした。過去の教科書には記載されていない,現場レベルでの「コツ」を解説したことも本書の特徴である。じっくりと読める適度なボリュームに押さえ,文字の大きさやイラストとのバランスも考慮し,飽きずに読み込めるよう構成している。
 本書の読み方としては,まずは目次を見てもらいたい。それは目次から気管支鏡検査の流れが理解できるからである。その流れに合わせて総論的な内容,各論的な内容と順番に読んでいってほしい。また読者自身が気管支鏡検査を担当する前には,予定の処置を予習・復習のために本書を活用してほしい。気管支鏡検査は侵襲的検査であるからこそ,何度も予習として読みかえすことは大切である。
 気管支鏡検査は呼吸器科にとって,画像所見と病理所見を結びつける貴重な検査である。それゆえ入門者には気管支鏡検査をもっと身近なものに感じてほしい。また呼吸器科医にとって気管支鏡は最も専門性の高い手技であるため,入門者だけではなく指導医にとっても本書が役立つツールになれることを期待している。
 最後に本書の刊行にあたり,何度も何度も当大学病院まで足を運び,夜遅くまで我々に協力してくださったメジカルビュー社の谷口陽一様には心から厚く御礼を申し上げます。

2013年12月
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科 講師
石井晴之
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目次

 気管支鏡検査で使用する主な器具
 気管支鏡で診る代表的な疾患
 
第Ⅰ章 気管支鏡を始めるにあたって
 気管支鏡を始めるあなたへ  滝澤 始
 
第Ⅱ章 気管支鏡を始める前に
 はじめに  石井晴之
 気道系の解剖と構造  皿谷 健
 気管支鏡の構造と基本的操作  檜垣 学
 気管支鏡検査の適応と禁忌  辻本直貴
 胸部CTにおける亜区域気管支の読影  田中康隆
 
第Ⅲ章 術前準備
 はじめに  石井晴之
 説明と同意  倉井大輔
 検査施行前のチェックリスト  蘇原慧伶
 検査室での準備①  佐田 充
 検査室での準備②  西沢知剛
 咽頭および喉頭への局所麻酔  高田佐織
 
第Ⅳ章 実践手技
 スコープ挿入時の注意点  石井晴之
 気管内麻酔の注意点  石井晴之
 観察手技   田村仁樹
 処置手技  小出 卓
 末梢肺野の結節影へのアプローチ
  経気管支肺(腫瘍)生検(透視要)  横山琢磨
  気管支擦過(透視要)  中島 明
  気管支洗浄(透視不要)  肥留川一郎
 末梢肺野のびまん性肺疾患へのアプローチ
  気管支肺胞洗浄(透視不要)  田中康隆
  経気管支肺生検(透視要)  田中康隆
 直視下での病巣アプローチ
  経気管支生検(透視不要)  高田佐織
  経気管支針生検・吸引細胞診(透視不要)  中本啓太郎
 合併症と対処法
  前処置での対処法  小田未来
  スコープ挿入後の手技による合併症  乾 俊哉
 
第Ⅴ章 検査後の管理
 検査終了後の管理  小川ゆかり
 検査報告書および依頼書の作成  石田 学
 看護師との連携,検査後のスコープの取り扱い  種岡貴子
 
豆知識
 気管支鏡の歴史  石井晴之
 気管支鏡検査の医療費  横山琢磨
 気管支体操  石井晴之
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