ガイドラインには載っていない

肝胆膵がんPractical Treatment

肝胆膵がんPractical Treatment

■編集 古瀬 純司
石井 浩
奥坂 拓志
山口 武人
山下 竜也

定価 5,500円(税込) (本体5,000円+税)
  • B5判  256ページ  2色(一部カラー)
  • 2015年3月24日刊行
  • ISBN978-4-7583-0374-3

電子版


肝胆膵がん治療の疑問解決に役立つエキスパートの考え方を満載!

肝胆膵がんの治療においては,ガイドライン通りでは対処できない場面に遭遇し,どう治療すべきか迷うことが少なくない。本書では,ガイドラインだけでは対応できないさまざまな臨床上の疑問に対し,エキスパートはどのように考え,どう治療しているかを解説。合併症がある場合の考え方や,どちらの治療・レジメンを選ぶべきか迷うときの考え方,リスクとベネフィットを考慮した副作用対策・減量の考え方など,エビデンスが少ない部分についてもできるだけ具体的に詳しく解説している。
治療について有用な点・限界がある点を両論併記(pros and cons)し,治療方針を決定するうえで専門医が重視しているポイントがわかるようになっている。新規レジメン・薬剤にも対応。


序文

 がん治療のエビデンスを道に例えると,ガイドラインは多くのエビデンスに裏付けられた幹線道路かもしれません。標識に従って行けば大きな間違いなく目的に到着できます。しかし幹線道路から外れた脇道ではどちらの方向に進めばよいのかわからず,右往左往してしまうことも少なくありません。今回の「ガイドラインには載っていない肝胆膵がんPractical Treatment」は,脇道ではあるが日常診療で数多く遭遇するクリニカルクエスチョンを挙げて,エキスパートに解説していただきました。
 エビデンスが少ないといわれていた肝胆膵がん領域のがん治療も,この数年臨床試験に裏打ちされたエビデンスが集積し,ガイドラインも版を重ねています。化学療法だけみてもエビデンスの進歩は大きいものがあります。進行肝細胞がんではソラフェニブが初めて生存期間を延長しました。膵がんではゲムシタビン+エルロチニブ併用療法,FOLFIRINOX療法,ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法と相次いでゲムシタビン単独治療を超える成績を出しています。日本でもS-1の有効性が報告され,特に膵がん術後補助療法では驚異的な成績が世界に発信されました。胆道がんにおいても第Ⅲ相試験によりゲムシタビン+シスプラチン併用療法という世界共通の標準治療が確立しています。
 しかし,日常診療では対応に苦慮する患者や状況は少なくありません。治療が多様化し,複雑になった分,むしろ増えているかもしれません。今回編集委員が集まって,化学療法を中心に,適応,使い分け,合併症での使用,副作用対策などなど日常診療で困ったこと,迷ったことを挙げたところ,かなりの数になりました。このようなクエスチョンへの回答は,エビデンスがないところに一定の方針を示すのですから,指名されたエキスパートも相当困ったであろうことは想像に難くありません。執筆いただいてからも,編集委員と何度かやり取りをしてやっと完成にこぎつけました。執筆いただいた先生方にはこの場を借りて厚くお礼申し上げます。
 エビデンスレベルが低いとされる「専門家の意見」もこれだけしっかり考慮して検討を重ねれば,きわめて有用な意見になります。そして,これらの情報を肝胆膵がんの診療に携わる医療者みんなで共有できれば,作成に携わった私たちにとって望外の喜びです。本書がガイドラインでは解決できない日常診療の疑問の解決に大いに役立つものと確信しています。

2015年1月
杏林大学医学部内科学腫瘍内科教授
古瀬純司
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目次

Ⅰ 個々の症例を考えるうえでの基本的考え方
①エビデンスの乏しい肝胆膵がん治療の考え方  古瀬純司
 ガイドラインは質の高い臨床試験によって得られるエビデンスに基づいて作られている
 ガイドラインはすべての状態をカバーできているわけではなく,実臨床ではむしろ臨床試験の対象とならない患者が多い
 治療選択の多様化

Ⅱ こんなとき治療をどうするか
①閉塞性黄疸合併例での化学療法のタイミングとマネジメントは?  福冨 晃
 減黄時の化学療法のタイミング
 閉塞性黄疸例に対し注意すべき薬剤とそのマネジメント
②化学療法によるB型肝炎再活性化の病態とポイントは?  池田公史
 B型肝炎の再活性化
 HBV再活性化に対する対応策
③腎障害時での抗がん剤の使い方─適切な適応,減量,モニタリングは?  松浦友一
 投与量
 投与スケジュール
 治療薬物モニタリング(TDM)
④糖尿病患者での抗がん剤の使い方と糖尿病マネジメントをどうするか?  大橋 健
 肝胆膵がんと糖尿病
 糖尿病を見逃さない
 化学療法中の血糖コントロールの目標 ほか
⑤心筋梗塞既往,心不全患者での抗がん剤の使い方とマネジメントは?  吉野秀朗
 化学療法中に心機能に注目しなければならない理由
 治療開始前に心機能異常を検出する方法
 心機能低下例における化学療法薬の使い方
⑥がん患者において,抗血小板薬・抗凝固薬と抗がん剤をどう使うか?  朝倉英策
 血栓症の分類と治療の考え方
 がん患者における抗血小板療法
 がん患者におけるワルファリン治療 ほか
⑦高齢者に対する化学療法の適応と抗がん剤の選択は?  長島文夫
 高齢者のPS評価は困難なことが多い
 投与方法や薬物相互作用を考慮する
 患者本人の意思決定能力が十分でないときどうするか?

Ⅲ 肝細胞がん治療のpractice
①TACE治療中に再発を繰り返す場合,どの時期にソラフェニブを考慮すべきか?  片山和宏
 TACE治療効果が期待しにくい場合
 TACEの反応不良を早めに不応と判断し,ソラフェニブを早期導入する戦略はありか?
②ソラフェニブの適応は,肝機能低下や高齢者に対してどこまで許容されるか?  鈴木英一郎
 肝機能低下例に対する治療
 高齢者のソラフェニブ投与
③ソラフェニブの治療開始投与量は,減量開始がよいのか?  奥山浩之,池田公史
 400mg/日での開始が有用という報告
 800mg/日での開始が有用という報告
 患者ごとの至適な投与量を見出すことが重要である
④ソラフェニブ投与中はどのように血液検査をして経過観察すべきか?  今中和穗
 ソラフェニブ投与中の有害事象
 外来か入院か?
 血液検査項目とスケジュール
⑤有害事象を軽減・対処してソラフェニブ治療を継続するためにはどのようにすべきか?  清水 怜
 手足症候群
 下痢
 疲労 ほか
⑥ソラフェニブ治療中に抗腫瘍効果の評価はどのようにしていくのか?  上嶋一臣,工藤正俊
 各種治療効果判定
 腫瘍マーカー
⑦ソラフェニブ治療の中止は,画像PDもしくは臨床的PDのどちらにするべきか?  葛谷貞二,後藤秀実
 ソラフェニブ治療の中止は画像PDもしくは臨床的PDのどちらにするべきか?
 ソラフェニブ治療における治療効果判定基準による画像PD判定と問題点
 SHARP試験におけるソラフェニブ治療の中止基準は? ほか
⑧ソラフェニブ治療終了後の後治療はどのようにするべきか?  森本 学
 二次治療(全身化学療法)として治験へ参加する選択肢
 PD中止であった場合でもソラフェニブを継続する選択肢
 経動脈治療(肝動注,TACE)を再度行う選択肢
⑨ソラフェニブと他治療との併用療法や根治療法後補助化学療法は行うべきか?  加藤弥菜,稲葉吉隆
 肝切除やRFA後の補助化学療法
 TACEとソラフェニブの併用療法
 肝動注とソラフェニブの併用療法 ほか
⑩2cm乏血性の多発病変はどのように取り扱ったらよいのか?  緑川 泰,高山忠利
 直径2cm以下の乏血性肝がんに対する治療
 早期肝細胞がんの治療成績
 乏血性肝がんの病理診断 ほか
⑪小型3結節で切除やRFAなどの1つの治療のみで治療困難な症例に対する治療はどのようにするのか?  高木治行,山門亨一郎
 存在診断と局在診断
 小型3結節に対するハイブリッド治療
⑫ヨードアレルギー,造影剤アレルギー症例に対してはどのように対応したらよいか?  小尾俊太郎
 造影剤アレルギーの頻度
 造影剤アレルギー患者に対する対応
⑬肝動注化学療法はどのような症例に適応があるか?  大西秀樹,能祖一裕
 肝動注化学療法のキーポイント
 肝動注化学療法の適応
 肝動注化学療法選択の実際 ほか
⑭肝動注化学療法のレジメンとしてはどのようなレジメンが推奨されるのか?  山下竜也
 肝動注化学療法の特徴
 わが国で用いられている主な肝動注化学療法レジメンとその選択
⑮動注リザーバーに関連する副作用とその管理はどのようにするのか?  稲葉吉隆,加藤弥菜,佐藤洋造,山浦秀和
 主な合併症・副作用
 合併症対策
⑯放射線療法はどのような症例にどのように用いるとよいのか?  伊藤芳紀
 原発巣に対する放射線療法
 遠隔転移に対する放射線療法
⑰放射線治療を行うにはどのような方法を選択し,何に注意をして行うべきか?  秋元哲夫
 肝細胞がんにおける放射線治療の方法の選択と注意点

Ⅳ 胆道がん治療のpractice
①病理診断へのアプローチ―細胞診?US下生検?ERCP下生検?あるいはEUS-FNAか?  露口利夫
 病理診断が不要な場合とは?
 肝内胆管がん(腫瘤形成型)
 胆管がん(肝門部胆管がん,肝外胆管がん) ほか
②切除可能例での術前ドレナージ法をどうするのか?  清水宏明,宮崎 勝
 切除可能例での術前ドレナージの意義と方法
③肝外胆管狭窄に適したステントの選択と管理は?―ステントの選択と最適な留置法について  花田敬士,平野巨通,岡崎彰仁,泉 良寛
 肝外胆管狭窄に対するステント療法
 SEMS留置のポイント
 SEMSの特性を理解する ほか
④肝門部胆管狭窄に適したステントの選択と管理は?―肝門部狭窄の特殊性を踏まえて河本博文,後藤大輔
 肝門部悪性胆道狭窄の特殊性
 肝門部胆管の解剖
 ステントを挿入する胆管枝の選び方の原則 ほか
⑤GEM+CDDPが適応できない場合の治療は?S-1はどうか?  上野 誠
 GEM+CDDP非適応の理由
 治療
⑥GEM+CDDPはどこまで続けるか?  水野伸匡,山雄健次 131
⑦GEM+CDDPの減量方法と骨髄抑制への適切な対応は?  中村和貴 
⑧GEM+CDDPが適応できないときにGEM単剤はどうか?  春日章良 
 進行胆道がんの標準治療
 全身状態が良好でない症例
 全身性炎症反応が高い症例 ほか
⑨胆道がんでのS-1の位置づけ-適応とその根拠は?  森実千種 
 切除可能胆道がんに対する術前・術後化学療法
 進行・再発胆道がんに対する薬物療法
⑩GEM+CDDPが不応となった後の化学療法はどうするか?  佐々木 隆 
 胆道がんに対する化学療法の現状
 胆道がんに対する二次治療以降の報告
⑪術後補助療法として選択しうるレジメンとその根拠は?  小西 大 
 GEM
 S-1
 GEM+CDDP ほか
⑫術前補助化学療法として選択しうるレジメンとその根拠は?胆道がんのダウンステージによる切除は可能か?  加藤 厚,清水宏明 
 術前補助化学療法として選択しうるレジメンとその根拠は?
 胆道がんのダウンステージによる切除は可能か?
⑬化学療法中の胆管炎・肝膿瘍のマネジメントはどうするか?  川口義明 
 化学療法中の胆管炎・肝膿瘍の診断上のマネジメント
 化学療法中の胆管炎・肝膿瘍の治療上のマネジメント
 化学療法中の胆管炎・肝膿瘍発症時,化学療法はどうするか?

Ⅴ 膵がん治療のpractice
①病理診断へのアプローチ―CT・USガイド下生検かEUS-FNAか?細胞診か組織診か?FNAができない場合どうするか?  山口武人 
 EUS-FNA
 CT・USガイド下かEUS-FNAか?
 細胞診か組織診か? ほか
②悪性胆道狭窄を伴う切除不能膵がんに対する最適なドレナージ法は?金 俊文,真口宏介 
 経乳頭的アプローチ
 そのほかのアプローチ
③FOLFIRINOX:腎機能低下例での適応はどこまで可能か?―若年,PS良好,ステントなし,腎機能だけ少し悪い患者に選択するか?  大野 泉 
④FOLFIRINOX:糖尿病を有する転移性膵がんへの適応はどこまで可能か?  小林 智 
 血糖値上昇
 易感染性
 糖尿病合併症
⑤FOLFIRINOX:胆管ドレナージ例での適応は?  齋藤 圭,伊佐山浩通 
 胆管ドレナージ例におけるFOLFIRINOXの安全性
 胆管ドレナージ例におけるFOLFIRINOXの適応
 胆管ドレナージ例における注意点
⑥FOLFIRINOX:副作用マネジメント―下痢への対応,G-CSFの使用のタイミングは?戸髙明子 
 下痢
 G-CSFの使用について
⑦FOLFIRINOXのmodifyの考え方―どの薬剤を,どう減量するか?  尾阪将人 
 Modifiedレジメンが必要か?そのメリットは?
 どのようにModifyするのか?その根拠は?
⑧FOLFIRINOXとGEM+nab-PTXの使い分け―使い分けのポイントは何か?  井岡達也 
 有効性からみた比較
 安全性からみた比較
⑨FOLFIRINOXとGEM+nab-PTXの末梢神経障害への対応―いつ,どのような対応が必要か?篠崎英司 
 L-OHPおよびnab-PTXによる末梢神経障害の特徴
 治療戦略と神経障害
 末梢神経障害に対する支持療法
⑩GEM+エルロチニブの効果が期待できる適応と使い方は?  高橋秀明 
 GEM+エルロチニブの治療効果
 バイオマーカー
 間質性肺炎に対する注意 ほか
⑪GEM+エルロチニブ:皮疹のマネジメント―リスクとベネフィットを考慮した効果判定や治療継続をどうするか?  庄 雅之,浅田秀夫,中島祥介 
 G2以上の皮疹が出現した場合に治療を継続すべきか?
 皮疹の適切なマネジメントは?
 皮疹が出現しない場合に,治療を継続すべきか?
⑫局所進行膵がんに対する化学療法の適応と治療選択肢は?―FOLFIRINOX ? GEM+nab-PTX?そのほか?  上野 誠 
 局所進行膵がんとは
 化学療法の選択肢について
⑬化学放射線療法の位置づけは?―どんな症例にどのタイミングで使うか?  水野伸匡,山雄健次 
 局所進行膵がんに対するCRT
 LPACに対する今後の治療開発
 BR膵がんに対するCRT
⑭化学放射線療法の具体的な治療法は?―どんなレジメンがよいのか?エビデンスはあるのか?  須藤研太郎 
 S-1併用放射線療法
 GEM併用放射線療法
 対象患者の選択について
⑮二次治療以降の適応と治療法は?  上野秀樹 202
⑯有望な術前補助療法は?―化学療法単独か?化学放射線療法か?それとも……?  高橋秀典,秋田裕史,石川 治 
 膵がんに対する術前補助療法の臨床的意義
 術前化学療法 vs. 術前化学放射線療法
⑰S-1術後補助化学療法中・直後の再発例はどうするか?  梶浦新也,細川 歩,杉山敏郎 
 膵がん術後のS-1補助化学療法中・直後の再発例の治療
⑱膵がんのダウンステージによる切除は可能か?  柳本泰明,里井壯平,權 雅憲 
 ダウンステージングによる切除手術の意義・成績
 切除手術のタイミング
 メリットとデメリット
⑲重粒子線治療は有用か?局所制御は切除術に匹敵するか?  山田 滋 
 重粒子線治療の特徴
 重粒子線治療の適応
 局所進行膵がんに対する重粒子線治療 ほか

Ⅵ 神経内分泌腫瘍のpractice
①膵神経内分泌腫瘍に対するTACEの位置づけ  奥山浩之 
 肝転移を有するNETの治療選択
 TA(C)Eの適応
 方法 ほか
②膵神経内分泌腫瘍に対する局所療法(切除もしくはRFA)の位置づけは?  大塚隆生,木村英世,田中雅夫 
 原発病変
 肝転移病変
③切除不能膵神経内分泌腫瘍に対して,エベロリムスとスニチニブはどう使い分けるか?  藤山 隆,五十嵐久人,伊藤鉄英 
 エベロリムス
 スニチニブ
 治療適応と選択 ほか
④エベロリムスの間質性肺炎をどうマネージするか?  齋藤好信,弦間昭彦 
 エベロリムスによる間質性肺炎の特徴
エベロリムスを投与する前に
 間質性肺炎の診断上の注意点 ほか
⑤スニチニブの特徴的副作用のマネジメントをどうするか?―肝障害と甲状腺機能低下   高橋秀明 
 スニチニブの代謝と投与法
 スニチニブによる肝障害
スニチニブによる甲状腺機能低下症
⑥スニチニブの心機能への注意点とモニタリングをどうするか?  吉野秀朗 
 心機能のモニタリングをどうするか?
 心血管系副作用の発症リスクと対応
 スニチニブによる心不全発症のメカニズム
⑦肝胆膵低分化神経内分泌がんの治療選択をどうするか?  森実千種 
 一次治療
 二次治療
⑧膵低分化型神経内分泌がんに分子標的治療薬は使えるか?  五十嵐久人,伊藤鉄英 
 膵低分化神経内分泌がんの治療
 膵PDNECに対する分子標的治療薬
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