超低出生体重児

新しい管理指針

改訂3版

超低出生体重児

■編集 仁志田 博司
楠田 聡

定価 6,600円(税込) (本体6,000円+税)
  • B5判  240ページ  2色
  • 2006年1月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-0533-4

超低出生体重児の管理のすべてがわかる本

1994年10月刊行「超未熟児−その実践的医療と管理」,続いて1999年7月刊行「改訂版 超未熟児−超低出生体重児の管理指針」の改訂3版である。
新生児医療において常に最先端に位置し他をリードしてきた東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門の先生方を中心とした執筆陣と,今回の改訂からは新教授楠田 聡先生にも編集に参画いただいて,現在のわが国において最も信頼のできる管理指針としてまとめられている。当センターは本年創立20周年を迎え,これまでのデータを新たに解析して本書に示している。
本改訂では,コメディカルの読者が相当数いることを踏まえて,看護関連の章を独立させさらに充実させた。また,モノクロ印刷から2色刷への変更も行った。


序文

改訂3版にあたって

 わが国の新生児医療は1980年代に人工サーファクタント療法やHFOの導入などの医療技術面の進歩に加え,全国にNICUが整備されるなど急激な進歩と変遷がみられ,それまでの医療レベルでは新生児医療の主要な対象となりえなかった,出生体重1,000g未満の児が次第にその重要性を増してきた。さらに,これまで実験的医療(experimental medicine)といわれるほど暗中模索の医療を受けていた,そのような超未熟児とよばれていた児に関してもサイエンスが導入され,人に伝えることができるような学問的な内容が蓄積されてきた。1994年に本書の初版が「超未熟児」のタイトルで初めて世に出たのは,そのような時代背景からであった。
 その初版の「超未熟児」を「超低出生体重児」と名を変えた改訂第2版が1999年に新しい知見を加えて上梓された。さらなる改訂の動機は,単に5年の月日が流れた以上に,ある程度の確立をみた近年の新生児医療のなかで,最も大きな変革を示したのが超低出生体重児医療であったからである。超低出生体重児に特化した本邦唯一の専門書と認知されている本書は,それを受けて改訂されるべき責務を負っていると考えられた。
 この数年の超低出生体重児医療は,わが国において出生体重290gと世界で最も小さな未熟児(280g)に近い児の生存が報告されているごとく,これまでよりさらに未熟な24週未満およびさらにより小さな500g未満の児が,多くのNICUにおいて,例外としてではなく日常的に治療の対象とされるようになってきた。かつてわれわれは,超低出生体重児はその未熟性から,これまでの未熟児の知識や経験のみでは理解の度合いを超えていたのでETとよんでいたが,さらにこれまでのETとよばれたグループを超えた範疇の,超超未熟児ともよべる早産児が医療のなかに取り込まれるようになった。
 その対応には医学的な内容もさることながら,成育限界を視野に置いた考察が不可欠である。しかし,鶏と卵の話のようであるが,成育限界の適切な理解のためには超低出生体重児の医学的知識と臨床データが不可欠なのである。本改訂3版の医学的内容に関しては,楠田 聡東京女子医科大学教授が新しく編集責任者に参加し,各章においてこれまでと異なったいくつかのポイントが書き加えられている。それらのなかで,NOによる呼吸管理,一過性副腎不全に対するステロイド療法,RSV感染予防,およびディベロプメンタルケア関連の記載が新しい内容といえるであろう。また,より未熟な24週未満の最新の臨床データも,新しい情報として重要となっている。
 すでにわが国の新生児医療は世界一のレベルとなっており,世界で最も権威あるゴードンアベリーの新生児の教科書(Avery's Neonatology, Pathophysiology & Management of the Newborn 6版)の本文中(481ページ)に東京女子医大の超低出生体重児の治療成績が引用されている。アメリカの教科書に,文献に引用されるレベルを超えて,本文中にわが国の日常的な臨床データが記載されることは,これまでは考えられなかったことである。その主たる理由は,わが国の超低出生体重児医療が西欧諸国に比して一段優れているからに他ならない。
 東京女子医大の超低出生体重児の治療成績は,確かに1984年に開設されてからしばらくの間,全国平均を大きく上回っていたが,現在においてはわが国の多くのNICUが東京女子医大より良い成績をあげている。その成果に少しながらも本書が貢献しているとするならば,われわれ一同の望外の喜びとするところである。後に続く若い人々がさらに本書の質と内容を高めていくことが期待されているところから,本書に対する忌憚のない意見や訂正を編者宛に寄せていただければ幸いである。

2006年1月
仁志田博司
東京女子医科大学母子総合医療センター
所長・教授
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目次

I 超低出生体重児の管理の基本  
 1 超低出生体重児の医学的重要性 
  超低出生体重児とは
  超低出生体重児の疫学的データとその歴史的変遷
  NICUにおける超低出生体重児の占める重要度
  超低出生体重児の周産期医療における重要性
 2 超低出生体重児管理の原則 
  未熟性と医学的問題
  非侵襲性(non-invasive)管理の重要性
  周産期医療の重要
  チーム医療の重要性
  トータル医療の重要性
  超低出生体重児管理におけるその他のポイント
 3 超低出生体重児医療における倫理的対応 
  超低出生体重児における倫理的問題(成育限界)
  成育限界を考えるうえでのポイント
  実際上の倫理的判断
  成育限界を定めておくことの意義
  現在の日本における成育限界
  成育限界を論じる基本的な考え方
 4 超低出生体重児の出生前管理 
  産科統計からみた超低出生体重児の管理法の問題点
  管理の実際
 5 超低出生体重児の出生時管理 
  超低出生体重児の出生時管理における基本的な考え方
  出生前の備え
  出生時管理の実際
  蘇生の倫理
II 超低出生体重児の急性期の管理  
 1  一般管理 
  保温
  水電解質管理
  栄養管理
  感染防御
  黄疸管理
  皮膚の管理
  母子関係
  モニタリング
 2 呼吸器系の異常とその管理 
  超低出生体重児の呼吸器の特徴
  出生後早期の呼吸障害
  HFOの使用法と功罪
  Nasal CPAP(nasal directional positive airway pressure)の使用法
  人工呼吸換気療法の合併症
 3 循環器系の異常とその管理 
  超低出生体重児の循環器の特徴
  超低出生体重児における循環器疾患の管理
 4 中枢神経系の異常とその管理 
  白質病変
  血管病変
  灰白質病変
 5 消化器系の異常とその管理 
  消化器系の発達
  壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis;NEC)
  メコニウム病(meconium disease;MD)
  胆汁うっ滞
  bacterial translocation(BT)
  超早期授乳
 6 血液系の異常とその管理 
  血液系の異常とその管理
  輪血の施行と合併症
 7 感染症の管理 
  超低出生体重児における感染症の重要性
  超低出生体重児の感染症の特徴
  超低出生体重児の感染症の病像:各論
  超低出生体重児の感染症の診断
  超低出生体重児の感染症の治療
  超低出生体重児の感染症の予防
 8 新生児TSS様発疹症(NTED)の管理 
  新生児TSS様発疹症とは
  新生児TSS様発疹症の臨床像・診断
  新生児TSS様発疹症の治療
  新生児TSS様発疹症の予後・気道損傷
  新生児TSS様発疹症の免疫学
 9 未熟児網膜症(ROP)の管理 
  病態と病因
  眼底検査と開始時期
  眼底検査
  病期分類
  ROPの予防のための酸素管理
  ROPの治療
 10 高度lUGRの超低出生体重児にみられる問題とその管理 
  超低出生体重児IUGRの頻度および母体合併症
  超低出生体重児lUGRの胎児期の病態
  超低出生体重児IUGRの臨床的特徴
  超低出生体重児IUGRの長期予後
  超低出生体重児IUGRの新生児管理の実際
III 超低出生体重児の慢性期の管理  
 1 呼吸管理 
  無呼吸発作
  慢性肺疾患(chronic lung disease;CLD)
 2 循環管理 
  慢性期の動脈管開存症
  低循環血液量
  急性期離脱後の低血圧
 3 栄養管理 
  経腸栄養の確立
  合併症
  慢性期の栄養管理の実際
  栄養管理の評価
  経腸栄養管理の実際
 4 ステロイド療法 
 5 退院前検査 
  (1)MRI
  検査の実施
  MRI撮像条件と正常所見
  神経傷害とMRI所見
  (2)聴力検査
  新生児聴覚スクリーニングの方法
  聴覚スクリーニングの実施時期
  聴覚スクリーニング後のフォローアップ
 6 重症RSV感染の予防 
IV 長期フォローアップと予後  
 1 フォローアップ体制 
  フォローアップの意義と目的
  フォローアップチームと連携体制
  当部門におけるフォローアップ
  フォローアップ健診の時期
  フォローアップ健診の内容
  発育および発達の評価
  当部門で実施している低出生体重児への支援
 2 超低出生体重児の予後 
  超低出生体重児のフォローアップと予後
  超低出生体重児の死亡率
  超低出生体重児における神経学的障害
  超低出生体重児の身体発育
  超低出生体重児の知能発達
  超低出生体重児の学童期の予後:学習障害,行動の問題
 3 東京女子医大母子センターにおける超低出生体重児のデータ 
V 超低出生体重児の看護  
 1 超低出生体重児の看護 
  出生時の看護
  呼吸管理
  体温管理
  感染防止
  栄養
  ファミリーケア
 2 長期入院の児と家族のケア 
  赤ちゃんと両親の出会い
  親子の関係性を育む
  赤ちゃんの専門家は両親
  心理的・社会的に困難なケース
 3 個別的発達促進ケア(ディベロプメンタルケア)の概念 
  ディベロプメンタルケアとは
  ディベロプメンタルケアの学問的背景
  デベロプメンタルケアの実際
  ディベロプメンタルケアのもたらす効果
 4 NICU環境の整備 
  音環境
  光環境
  ケアパターンの調整
 5 カンガルーケアの実際 
  カンガルーケアとは
  カンガルーケアの効果
  カンガルーケアの実際
  注意点
  家族へのアプローチ
  家族の声
  NICUスタッフとして
 6 ディベロプメンタルケアとしてのポジショニングと感覚運動経験の実際 
  ポジショニング
  超低出生体重児の感覚運動経験の実際
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