図説 新 肩の臨床

図説 新 肩の臨床

■編集 高岸 憲二

定価 22,000円(税込) (本体20,000円+税)
  • B5変型判  308ページ  2色+カラー,上製,イラスト280点,写真150点
  • 2006年5月23日刊行
  • ISBN978-4-7583-0637-9

在庫僅少です。


肩の構造から臨床の実際までが理解できるビジュアルな成書

肩に関する基礎(発生,機能解剖,病態)から診断,治療までのすべてが網羅されている。教科書ともなりうる多くの情報が平易な文章で解説されているとともに,ビジュアルでも理解できるようにイラスト・写真が豊富に掲載されている。肩の構造から臨床の実際までを把握するためには欠かせない1冊である。


序文

 現在,MRIや関節鏡など診断技術の進歩ならび鏡視下手術や手術器具の進歩により,肩関節外科は大いに発展しつつあります。しかし,1950年代初めまでは“忘れられた関節forgotten joint”と呼ばれ,他の関節に比べて著しく研究が遅れ,研究者も多くありませんでした。この傾向は世界各国共通であり,わが国も例外ではありませんでした。その原因の一つとして,わが国においては曖昧模糊とした概念である「五十肩」の存在があげられます。40歳代以降の肩関節痛患者は,その多くが四十肩や五十肩と診断され,そのうち痛みはなくなるものとして医師は原因追求を怠り,治療に熱心ではなく,患者もそのまま治るだろうと納得して帰っていくことが多かったと推測されます。お隣り,韓国の肩関節外科医からも「中年以降の肩関節痛に対していわゆる五十肩と同様な俗名があり,その診断名が下されると患者は安心して帰っていくので困るのだ」と聞いたことがあります。
 私は昭和50年九州大学を卒業した後,西尾教授が主宰されていた整形外科学教室に入局しました。当時九大病院整形外科では股関節手術が週10例前後行われていたのに対して肩関節手術は1年間でわずか数例で,肩関節を専門にしている医師もおられませんでした。1978年西尾教授の許可を得て,ニューヨークのコロンビア大学整形外科(New York Orthopaedic Hospital)で肩関節外科の世界的権威であったNeer教授の下,visiting shoulder fellowとして1年間肩関節外科を勉強させていただきました。腱板断裂修復術,変形性関節症や関節リウマチに対する人工肩関節置換術,反復性肩関節脱臼に対するmodified capsular shift法,multidirectional shoulder instabilityに対するcapsular shift法などが週に4〜5例行われており,こんなに多くの肩関節疾患患者がいるのだと驚いたことを記憶しています。日本に戻り,世界で最も設立が古い日本肩関節学会に入れていただき,現在のわが国における肩関節外科隆盛の基礎を築いた多くの素晴らしい諸先輩から叱咤激励されつつ,肩関節外科医として今日まで育てていただきました。
 このたび幸いにもメジカルビュー社から「図説 新 肩の臨床」の監修をする機会を与えられました。現今までの成書は,私どもの世代が教えを受けた第1世代の諸先輩が中心となり執筆されましたが,本書では,現在,わが国の肩関節外科を担っている第2世代以降,日本肩関節学会幹事の諸先生を中心として執筆を依頼しました。従来の成書に比べ少しでも新しい情報をお届けできれば,監修者としてこれに勝る幸せはありません。
 最後になりましたが,日常診療のお忙しいなか執筆を快く引き受けていただいた著者の皆様,終始暖かできめ細かいご配慮を頂いたメジカルビュー社の松原かおる氏に心から感謝いたします。

2006年4月
高岸憲二
全文表示する

目次

1 肩関節および肩甲帯の基礎 
 肩関節および肩甲帯の発生,解剖,機能  (伊藤博元)
  ●肩関節の発生
   出生後の発達
  ●肩関節の解剖
   肩関節・肩甲帯
   肩の骨
   肩の運動と関節
   肩甲帯の筋群
   滑液包
   神経,血管の分布
  ●肩甲帯の機能解剖的バイオメカニクス
2 診断法総論 
 
 肩関節・肩甲帯の診察と評価  (皆川洋至/井樋栄二) 
   診察の進め方と評価の実際
   問診
   視診
   触診
   運動診
   疾患に応じた徒手検査
 補助診断法  (筒井廣明/荻野利彦/橋本 卓) 
  ●X線検査  (筒井廣明)
   形態診断
   機能撮影
  ●関節・滑液包造影  (筒井廣明)
   肩関節穿刺法
   関節造影
   肩峰下滑液包造影 
  ●超音波検査  (筒井廣明) 
  ●CTスキャン  (筒井廣明) 
   CT関節造影 
   三次元CT 
  ●MRI  (筒井廣明) 
   腱板断裂 
   肩甲上ガングリオン 
   MR関節造影(direct法) 
  ●電気生理学的検査  (荻野利彦) 
   筋電図 
   神経伝導検査 
  ●肩関節鏡検査  (筒井廣明)
   肩峰下滑液包鏡視 
   関節包鏡視 
  ●関節液検査  (筒井廣明) 
  ●病理組織学的検査  (橋本 卓)
   肩関節病変の病理検索の方法
   腱板断裂
3 治療法総論 
 ●手術療法
 麻酔法  (小幡英章/須藤 亮) 
  ●全身麻酔  (小幡英章)
   術前診察
   麻酔の準備
   全身麻酔の導入
   気管挿管から麻酔の維持
   全身麻酔の終了と気管チューブの抜管
  ●硬膜外麻酔  (小幡英章)
   穿刺法 
   薬剤投与法 
  ●ブロック  (小幡英章) 
   肩甲上神経ブロック 
   その他のブロック 
  ●術後疼痛管理  (須藤 亮) 
 進入路  (黒川正夫/畑 幸彦/末永直樹/名越 充/橋詰博行) 
  ●肩甲骨への進入路  (黒川正夫) 
   肩甲棘への進入 
   棘下・棘上窩への進入 
   肩甲下窩への進入 
   肩甲骨外側縁への進入 
  ●鎖骨周囲への進入路  (畑 幸彦) 
   肩鎖関節への進入 
   鎖骨への進入 
   胸鎖関節への進入
  ●肩関節への進入路  (末永直樹) 
   前方進入法(anterior approach)
   後方進入法(posterior approach)
   上方進入法(superior approach)(第2肩関節への進入<腱板断裂含む>)
  ●肩周辺の神経への進入路  (名越 充/橋詰博行)
   副神経への進入
   肩甲上神経への進入
   腋窩神経への進入
 関節鏡  (岡村健司) 
  ●代表的疾患に対する基本手技
   肩峰下インピンジメント症候群に対する肩峰下除圧術
   腱板断裂に対する腱板縫合術
   外傷性前方不安定症(初回,反復性脱臼)に対する鏡視下Bankart修復術
   上方関節唇断裂(SLAP lesion)に対する関節唇縫合術
   非外傷性肩不安定症(不安定肩)に対する関節包shrinkage 
   拘縮肩に対する関節包切離術 
 ●保存療法 
 薬物療法  (原 正文)    
  非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
  副腎皮質ステロイド剤
  ヒアルロン酸ナトリウム
  抗菌薬
 リハビリテーション  (原 正文/宮ノ原章吾) 
  ●治療手技 
  関節可動域運動
  筋力維持増強運動
  物理療法
  ●代表的疾患におけるリハビリテーション 
  腱板断裂
  肩関節拘縮
  野球肩
  動揺肩
4 疾患・外傷  
 肩関節周囲の先天奇形  (佐野博高/落合達宏/佐藤克巳/小松田辰郎)  
  ●骨系統疾患の鑑別 
  ●疾患各論 
   先天性肩甲骨高位症 
   先天性鎖骨偽関節症 
   鎖骨・頭蓋骨異形成症 
   軟骨無形成症
   多発性骨端異形成症
   骨幹端軟骨異形成症
   骨形成不全症
 上腕骨近位部骨折  (玉井和哉) 
 肩甲骨の疾患・外傷  (佐藤克巳) 
  ●骨折
   肩甲骨骨折
  ●肩甲骨脱臼
  ●弾発肩甲骨
 鎖骨の疾患・外傷  (衛藤正雄) 
   骨折
   鎖骨遠位端骨融解症
 肩鎖関節疾患  (森澤佳三) 
   脱臼
   変形性肩鎖関節症
   外傷後鎖骨遠位端骨溶解症
 胸鎖関節疾患  (大沢敏久/高岸憲二)  
  ●概念
  ●胸肋鎖異常骨化症(steruno-costo-clavicular hyperostosis)
  ●胸鎖関節外傷性脱臼
   前方脱臼
   後方脱臼
   反復性脱臼
   非外傷性脱臼
 肩関節不安定症  (柴田陽三) 
   脱臼
   反復性脱臼
   習慣性後方亜脱臼
   いわゆる動揺肩
   随意性肩関節脱臼
 肩関節の変性疾患  (小川清久) 
   五十肩(adhesive capsulitis, primary frozen shoulder)
   石灰沈着性腱炎
   変性性関節症(arthrosis deformans, osteoarthritis osteoarthrosis) , 骨関節症
   上腕骨頭壊死(osteonecrosis, aseptic necrosis, avascular necrosis, ischemic necrosis)
   神経病性関節症(neuropathic arthropathy, Charcot joint, neurotrophic joint)
 肩関節炎など  (杉原隆之/中川照彦) 
   関節リウマチ
   胸肋鎖骨肥厚症
 腱板傷害  (熊谷 純)  
   インピンジメント症候群
   腱板断裂
   腱板疎部損傷
 上腕二頭筋長頭腱と上方関節唇障害  (井手淳二)
   上方関節唇損傷
   上腕二頭筋長頭腱断裂・脱臼
 筋の障害  (丸山 公) 
   三角筋拘縮症
   肩周囲筋の断裂
 末梢神経障害  (荻野利彦) 
   胸郭出口症候群
   腕神経叢麻痺
   発症機序の異なる腕神経叢麻痺
   分娩麻痺
   リュックサック麻痺
   副神経麻痺
   長胸神経麻痺
   腋窩神経麻痺
   肩甲上神経麻痺
   神経痛性筋萎縮症
   肩手症候群(反射性交感神経性ジストロフィー)
 スポーツ障害  (森澤 豊)  
  ●投球障害肩
   リトルリ−グショルダー
   肩峰下インピンジメント症候群
   腱板損傷
   SLAP病変
   Bennett病変
   肩甲上神経障害
  ●水泳肩
 感染  (宮崎義雄/米田 稔)  
   化膿性肩関節炎
   感染した人工関節
   結核性関節炎
   肩関節周辺の骨髄炎
 腫瘍  (岩本幸英) 
  ●肩関節周辺に発生する骨腫瘍
   発生頻度
   上腕骨発生骨腫瘍
   肩甲骨発生骨腫瘍
   鎖骨発生骨腫瘍
   臨床症状
   画像診断
   治療方針
   癌の骨転移に対する治療方針
  ●肩関節周辺に発生する軟部腫瘍
   良性軟部腫瘍
   悪性軟部腫瘍
 小児の骨折  (山中 芳) 
  ●鎖骨中央部外傷
   鎖骨骨折
  ●鎖骨近位部外傷
   鎖骨近位骨端離開
   胸鎖関節脱臼
  ●鎖骨遠位端外傷
   鎖骨遠位端骨折および肩鎖関節脱臼
  ●上腕骨近位骨端離開および骨折
   リトルリーグショルダー
  ●肩甲骨骨折
  ●外傷性肩関節脱臼
  ●分娩時の外傷
   分娩時鎖骨骨折
   分娩時上腕骨近位骨端離開
全文表示する