神経眼科をやさしく理解するための

視覚と眼球運動のすべて

視覚と眼球運動のすべて

■編集 若倉 雅登
三村 治

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • B5変型判  280ページ  オールカラー,イラスト220点,写真100点
  • 2007年1月15日刊行
  • ISBN978-4-7583-0717-8

神経眼科を基礎から臨床までやさしく学べる1冊

「神経」は眼科領域の疾患を診るうえで大事な要素であるが,難解な専門用語が多いこと,「神経生理学」「神経内科学」など眼科以外の知識もないと正しく理解できないこと,などからどうしても敬遠しがちである。そこで本書は,「神経眼科」の基礎の中から臨床に直接関わる重要なポイントをあげ,やさしく学べるテキストとして構成した。


序文

 視覚の神経生理,神経病理を扱うのが神経眼科学である。
 良質で快適な視覚を得るため,視覚に関与する眼球,眼球附属器,脳は非常に精緻にして合理的な機構を備えている。網膜,視神経から,視路,視中枢,高次中枢といった視覚に直接関与する視覚神経回路のみならず,眼球運動は,視覚を適切な条件で作動させるのに必須なものであるし,眼瞼,瞳孔,毛様体の運動もそれを補完している。そういう機構に病気が生じれば,「神経眼科的問題」が発生する。そして,その大半は眼科医を受診するから,眼科医は適切な診断を下し,管理,治療を行わなければならない。
 昔の患者は,医師に対して,それが例えあまり適切でなくとも,従順であり,ほとんど異を唱える人はいなかった。近年は,自分の有している疾患や不都合に対して,詳しくかつわかりやすい説明を求める患者が多くなった。そういう方々は,大抵よく勉強していて,医師が口先でおざなりに説明しても納得せず,質問したり,食い下がったり,そして対応によっては,この医師ではだめだと愛想を尽かしてどこかよそに行ってしまう。眼科医は視覚のプロフェッショナルとして,十分な説明ができる実力を備えないと,やっていかれない時代になりつつある。
 神経眼科学は,一般眼科医にはとっつきにくい領域だとよくいわれるが,決して放置しておいてよい特殊な領域ではない。眼科医は必ず毎日,神経眼科的問題を有した患者を診ていると思われるからである。そのことは,眼科医自身が日々の臨床の中で痛切に感じているのではなかろうか。
 眼疾患や,眼球の構造や機能について十分な知識をもっている眼科医は多いのに,視覚の神経生理・病理に造詣の深い先生は少ない。それは多分,研修時代に受けた臨床眼科学の教育の中で,神経眼科の魅力を伝えられる教育者を利用できる機会がなかったためではないだろうか。専門家の欠如のため,研修中に視覚の神経生理・病理を専門的に扱うプログラムが組めなかったり,組めても表面をなでるだけに留まってしまったからではなかろうか。
 本書は,日々の臨床の中で遭遇する「神経眼科的問題」を理解したり,解釈するために必要な知識や考え方を,神経眼科の周辺領域を含めた各領域の専門家にして,優れた教育者でもある方々にできるだけ平易に記述してもらった。これだけの教育スタッフがそろえば,きわめて質の高い,そして理路整然として理解しやすい神経眼科の講義ができると考えられる書き手が選ばれている。その結果,目論見どおり,神経眼科臨床の基礎にあるものを丁寧に解説いただいたお蔭で,視覚のメカニズムの理解を深める内容となり,さらには将来の展望までもが見える一冊となった。一見難しく見える章もあるが,そこにある知識や考え方は,日々の眼科診療と深い結びつきがあることを,各章を熟読することで見つけていただければ,そして神経眼科学が実はとても魅力ある広がりのある領域であることに気付いていただければ,我々は編者としての役割を果たせたことになる。
 イージーなノウハウものがもてはやされる中,このようなじっくり型の神経眼科書の制作を目ざされたメジカルビュー社の吉川みゆき,榊原優子の両氏に敬意を表するとともに,心よりお礼を申し上げたい。

2006年12月
若倉雅登
三村 治
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目次

1.視覚
 眼はカメラに例えられるか?
 眼はなぜ丸い?
 眼球運動がなければ物は見えないの?
2.網膜機構
 光と色を認識する網膜の仕組みとは?
 網膜のon・off機構とは?
 網膜神経節細胞とその役割はなにか?
3. 視覚認知の中枢機構
 外側膝状体は単なる中継点か?
 dorsal streamとventral streamとは?
 Zeki理論とは?
 視覚認知とその異常にはなにがあるか?
4.視覚障害とその克服へのヒント
 網膜,視神経における神経細胞死,神経保護とは?
 網膜,視神経における免疫異常とその治療にはなにがあるか?
 弱視が薬で治るって?
 視覚系の可塑性とその利用にはなにがあるか?
 色覚遺伝子とは?
 ミトコンドリア遺伝子と核遺伝子とは?
 人工網膜とは?
 ロボットと立体視—視覚の情報統合モデルとは?
5.眼位
 眼位を決めるもの,乱すものにはなにがある?
 外眼筋は層も線維も多種類からできているの?
 プリー(pulley)ってなに?
 両眼視の意味するものとは?
 瞳孔,調節,輻湊は精巧に連動しているの?
6.眼球運動
 眼球運動を理解するために必要な脳の機能解剖にはなにがあるか?
 眼球運動の種類と役割にはなにがある?
 前庭動眼反射と眼頭部協調運動とは?
 眼球運動における小脳の役割とは?
 眼振(nystagmus)と振動(oscillation)はなぜ起きる?
7.移植治療
 網膜色素上皮移植とは?
 幹細胞移植とは?
 視神経移植とは?
 羊膜移植とは?
8.新しい臨床神経眼科学
 眼瞼と瞬目の神経眼科,今後の展望は?
 機能別視野と他覚的視野計の応用は発展するか?
 電気生理でどこまでわかるか?
 網膜と視路の(3次元)画像診断の今後の展望は?
 機能的脳画像は,なにをどこまで解明するか?
 化学テロ,環境化学物質,薬物による障害における神経眼科の重要性は?
 神経眼科におけるロービジョン者の残存視機能利用の展望は?
 視覚,聴覚,多感覚システムの統合は発展するか?
 心療神経眼科の黎明はくるか?
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