頚椎・頚髄のガイドブック

初診から顕微鏡手術まで

頚椎・頚髄のガイドブック

■著者 金 彪

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • B5判  272ページ  2色,イラスト80点,写真120点
  • 2007年3月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-0725-3

頚椎・頚髄疾患を完全ガイドされた1冊

近年,頚椎頚髄の疾患の治療方法は多種多様となり,受診する科まで異なっている。そのようななか,長年にわたり脊椎・脊髄疾患,特に頚椎・頚髄診療を専門に取り組んできた獨協医科大学金教授が,「初診から手術まで」を解説したのが本書である。2000例以上におよぶ手術経験と他施設からの研修医の指導経験をもとに,初診から画像診断,神経学的考察,手術手技までを網羅して,頚椎・頚髄疾患の臨床における必須ポイントを解説。コラムやPointとして著者からの特筆事項も多数掲載した,経験豊かな山岳ガイド(著者)による登山初心者(頚椎疾患に挑む若手医師たち)のためのガイドブックである。


序文

 頚椎ならびに頚髄の外科は,成熟高齢化社会において有病率の高い疾患に対する機能的外科として,ますますその重要性を増している。この領域で信頼される治療力を身に付けることは,社会に貢献するところ大きく,外科医としての充足感・満足度も,非常に大きい。
 著者とそのチームは,過去15年間にわたってこの領域を専門的に手がけてきた。メイヨークリニックでの神経外科レジデントならびにスパイン・フェローとして得たものを基盤に,国内外の神経外科と整形外科の多くの先達の技術を取り入れながら,最も安全で有効であると考える体系を形作ってきた。自らの手の中で15年間,累積約3,000例の経験蓄積を通して鍛錬され,検証されてきたものと自負している。
 この中から,普遍的に通用すると思われる便利な概念や,要領,安全管理,技法を,なるべく多くの整形外科,脳神経外科領域の医師たちに紹介し,実践の役に立てたいと願って本書を企画した。著者は,登山や山スキーを愛好するが,ガイドブックを読むことは,出かける前の準備として有用であるだけでなく,想像力がかきたてられ楽しいものである。多くの若い外科医が,この領域に参入し,訓練を経て,専門医指導医の域に達するまでの行程で,意欲・動機付けに資する本をつくることを目指した。手術をしたい気分,できる気分にさせる良いガイドであったならうれしい。
 機能解剖的考察,病態生理,要領よい神経検査,ならびに画像検査,手術のセットアップ,器械の選択,安全管理のコツ,手技,合理的な術後ケアなど,最新の成果を取り入れつつも,脊椎脊髄外科のクラシックとして長く使っていただけるように工夫した。
 実際,頚椎頚髄外科にとりつこうと思っても,どのように準備して,どのように診察したらいいか,分からないことも多いであろう。
 本書は,さまざまな症例を年250件治療している大学教室サービスの標準マニュアルであり,3,000件で実証された体系でもある。今後も,国内外の進歩をひろく参考にしながら,流行に左右されず,普遍的に確実なものを改良しつつ,あるいは自ら開発して用いていく姿勢は変えないつもりである。
 本書が次の改訂までの一定期間,多くの脳神経外科,整形外科の先生方のお役に立つことを望んでいるところである。
 最後に,我教室の脊髄脊椎外科指導医・専門医,川本俊樹氏,朝来野佳三氏,黒川 龍氏に深く感謝する。彼らの優れた臨床能力と献身がなければ,本書成立の基盤となる経験の蓄積はありえない。
 また国内留学でともに研鑽された,野々垣洋一,三好康之,厚地正道,川崎卓郎,高石吉將,村田英俊,中村歩希,岩田真治,山本慎司の諸氏の努力に感謝する。原稿準備を労力惜しまず支えてくれた教室秘書の秋葉寿美子氏,島田明子氏,そして制作に辛抱強く携わったメジカルビュー社編集部の松原かおる氏,尾高亜希氏にも深く感謝するところである。

2007年2月
金  彪
全文表示する

目次

診察法:要領よく全貌をとらえるTIPS  
 自覚症状-頚椎症性脊髄症,神経根症を有する訴え 
  痛み1:筋骨格系由来の痛みと脊髄由来の関連痛との鑑別
  痛み2:上肢における放散痛
  痛み3:頚部痛に対する手術の効果−関連痛の可能性
  痛み4:関連痛としての頚部痛の自然経過
  頚髄症に特徴的な自覚症状
 他覚所見-診察の手順 
  まず,診察室に入ってくる歩容をみよう
  深部腱反射は問診と同時にチェックする
  手指の動きから局在レベルを推察する−運動機能,筋力テスト
  知覚所見のチェックポイント
 【参考資料】脊髄神経学所見チャート 
画像検査:何をオーダーするのか,何をみるのか  
 単純X線写真 
  まずはアライメントのチェック
  不安定性のチェック
  脊柱管狭窄症の有無の確認
  骨棘突出の確認
  頭蓋頚椎移行部のチェック
  外傷症例でのチェックポイント
 MRI 
  MRIのオーダー法
  MRIのチェックポイント
  snake eye sign
 CT 
  CT矢状断でのチェックポイント
  CTの軸状断の撮り方
  CT軸状断のチェックポイント
 脊髄造影CT(CT myelography ; CTM) 
  CTMの意義・必要性
  CTMのオーダー法
  CTMの禁忌
 血管撮影 
病態把握と適応診断  
 神経学的考察事項 
  機能的分節の物理的な位置(高位)
  脊髄における伝導路の要約
  伝導路障害と脊髄分節性障害
  神経根と椎間孔
  痛みの原因となる圧迫の発生場所
  神経根支配のバリエーション
 鑑別診断-注意すべき疾患 
  手根管症候群
  腕神経叢の病変
  若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)
  その他の疾患群
 手術適応と時期 
  手術適応の時期−神経細胞脱落の観点から
  神経病理学的な論理に基づいた適応判断−まとめ
  適応決定における最重要因子とは?
  自覚症状なし,あるいは軽い症状の場合の適応
  高齢者の手術適応の判断
  適応判断術式選択に影響する病態の把握
  術者のもつリスクとは?−手術のリスクの提示
術式選択:手術を始める前に  
 前方手術か,後方手術か 
  前方手術か後方手術かの選択基準
  前方手術
  後方手術
 固定術か,非固定術か 
  固定を行う適応基準−不安定性とアライメント異常,脊髄圧迫
  固定術のデメリットの認識
  固定法の種類と技法の要点
  非固定術の有用性
 instrumentation 
  instrumentationの種類
  instrumentationの選択法
手術器具:安全に効率よく手術を行うために  
 手術用顕微鏡について:光学的特性と選び方-優れた顕微鏡とは 
  光学系のデザインと特性
  基本的光学性能
  スタンドのデザインと特性
  ユーザーインターフェイスとしてのフットスイッチ
 頚椎後方,前方手術に用いるリトラクター-デザイン意図と効用 
  頚椎前方手術用のリトラクター
  頚椎後方手術用のリトラクター
手術の実際:基本的手術を完全マスター  
 頚椎後方手術の準備 
  手術体位
  セットアップの実際
 頚椎後方手術の実際 
  アプローチ
  減圧操作−安全な器具の使い方
  人工棘突起を用いた再建
  閉創
 頚椎後方手術の術後の管理 
  術後の固定:カラーとクラビクルバンド
  後方手術のクリニカルパス
  退院後のフォローアップ
 頚椎前方手術の準備 
  手術体位
  セットアップの実際
 頚椎前方手術の実際1−単椎間の実際 
  手術アプローチ
  開創−リトラクターの導入
  皮質終版ならびに海綿状骨の削除
  椎間固定のコンストラクト−トライアルインプラントの挿入
  良好な固定アライメントの確認
  マイクロサージャリー:骨棘の削除と減圧
  神経根・硬膜周辺の露出
  HAインプラントを椎間に挿入,嵌合させる
  閉創
 頚椎前方手術の実際2−多椎体切除,多椎体固定の手術 
  手術の準備
  手術の実際
 頚椎前方手術の術後の管理 
  気管食道への影響−「痰がのどにからむ」訴えに要注意
  術後の食事指導
  前方手術のクリニカルパス
  多椎間固定の術後管理
 椎間孔拡大術の実際 
  椎間孔拡大術とは
  前側方からの椎間孔拡大
  前側方からの椎間孔拡大術の実際
  閉創
  椎間孔拡大術の術後管理
 椎弓下ワイヤリング(sublaminal wiring)固定-頭蓋頚椎移行部の後方固定術の実際 
  上位頚椎・頭蓋移行部固定術
  頭蓋頚椎移行部固定の術前準備・セットアップ
  頭蓋頚椎移行部固定の実際
  頭蓋頚椎移行部固定の術後管理
各論:診断から治療まで  
 脊柱管狭窄症 
  病態・診断のポイント
  手術:適応と応用
 椎間板ヘルニア 
  病態と治療時期選択のポイント
  手術:術式選択とテクニック
 後縦靱帯骨化症(OPLL) 
  病態・診断のポイント
  手術:術式選択の考え方とテクニック
  手術の重要な留意点
 変形性頚椎症 
  病態と治療方針の考え方
  手術:適応とテクニック
 頭蓋頚椎移行部疾患 
  病態・診断のポイント
  手術:適応,術式選択,テクニック
 髄内腫瘍 
  病態・診断・適応・手術の時期
  手術:機能解剖的考察とテクニック
  脊髄生検
 髄外腫瘍−神経鞘腫を中心に 
  髄外腫瘍のさまざまな病態
  手術の基本方針と考察事項
  病態部位による特徴と診断のポイント
  検査上の注意−脊髄造影の危険
  手術の計画とテクニック
  髄膜腫
 転移性腫瘍 
  転移の病態生理
  治療法と術式適応
  椎体形成術の適応と実際
  放射線治療の役割
 脊髄空洞症 
  病態・診断のポイント
  手術:適応と術前検討
  大後頭孔へのアプローチと手術の実際
  術後:管理と経過
合併症:減らすためにたいせつなことは  
 合併症 
  合併症の背景
  合併症を減らす工夫
  合併症統計の実際
  インフォームド・コンセント
  全身的合併症の発生率

Point 
 頚の痛みは手術適応とならない?
 NCSS−頚椎症性脊髄症スコア
 Pinprick test : infection controlへの心配り
 MRIにおける脊髄内のT2信号変化の意義
 頚椎症性脊髄症の特徴的な訴え,症状
 手術適応判断基準
 頚椎症性脊髄症−インフォームド・コンセント
 ハイドロキシアパタイトによる固定
 道具の工夫1:リトラクターのかけ方
 道具の工夫2:マイクロ鋭匙
 硬膜外静脈叢からの出血した場合
 骨癒合とよい移植骨片の重要性
Column 
 脊髄と脊椎の高位のズレ
 Pancoast腫瘍を見逃さないために
 電気生理学的診断はどのようなときに必要か?
 偽の局在レベル
 MRIの要注意点
 伝導路機能局在と中心性脊髄損傷,sacral sparing,Brown-Sequard症候群
 椎間板と損傷神経根のレベル
 手術後の強いしびれ感
 症状の出にくい脊髄症
 袖と肩とわき−共通硬膜管(common dural sac)と神経根(root slecre)
 脊髄圧迫循環不全,灰白質病変T2信号延長,異常知覚,筋萎縮
 後方手術:C2の椎弓形成術のコツ
 不安定性頚椎と固定の選択
 優れた手術用双眼鏡のメリット−顕微鏡との比較
 one-hand sliding suture:頼りになる糸結び
 ハイドロキシアパタイト製のインプラント
 神経鞘腫のバニッシングテューマ(vanishing tumor)
全文表示する