眼科インストラクションコース 14

トラベクレクトミー完全マスター

トラベクレクトミー完全マスター

■担当編集委員 谷原 秀信

定価 10,450円(税込) (本体9,500円+税)
  • A4変型判  184ページ  オールカラー
  • 2008年1月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-0727-7

手術適応から術後管理まで,安全確実なトラベクレクトミーのコツとポイントをマスターしよう!

緑内障手術の1つである「線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」の標準的術式について手術の理論と実践,コツや工夫,術後管理までを,オールカラーで解説。図表に”どこを見たらいいか”,がわかる「ふきだし」形式の説明も記載し,わかりやすく構成した。


序文

 緑内障濾過手術の歴史を紐解くと,虹彩切除術に始まって,多彩な古典的(全層)濾過手術を経て,現在も普及している近代的(部分)濾過手術へと発展した。近代的濾過手術は,強膜弁を作製し,濾過量を制限することで,過剰濾過に伴う合併症を軽減した。また補完療法として,ステロイド薬の術後点眼や5-フルオロウラシルやマイトマイシンCなどの増殖抑制薬の併用に加えて,レーザー切糸術や眼球マッサージなどを組み合わせることで,手術効果の定量性と確実性が格段に向上した。さらに,より安全性を増強するために,ビスコカナロストミーや非穿孔性トラベクレクトミー,深部強膜切除術などの多彩な術式が開発され喧伝されたが,その後,長期成績の限界が明らかになるとともに,その適応は限定され,その治療効果についての認識も,現在ではかなりトーンダウンしたものになった。したがって現状では,トラベクレクトミーは,依然として,緑内障手術の中核的役割に位置づけられている。これらの濾過手術の変遷は,安全性と治療(眼圧下降)効果の至適なバランスを追求して,推進されてきたともいえる。われわれは,より安全で確実な手術を追い求めてきたのである。トラベクレクトミーという現在の標準的術式は,功罪のバランスを鑑みて納得できる選択肢ではあるが,視機能を脅かすさまざまな合併症を伴い,眼圧再上昇のリスクを常に有するために,理想的な緑内障手術とみなすには,あまりにも問題が多い。
 本書籍は,「トラベクレクトミー完全マスター」と命名されたが,内容はその名称通りである。緑内障手術にこれから取り組もうとする初心者,あるいは若干の経験を有して,手術手順は危なげなく遂行できるが,起こりうる合併症やトラブルのすべてに対応するには不安がある中堅サージャンを読者対象として想定している。前述のごとく,緑内障手術につきまとうさまざまなリスクを可能な限り最小化し,生じたトラブルに対して,迅速かつ適切に対処するためには,起こりうる事象とトラブルシューティングの具体策をあらかじめ承知しておくことが不可欠である。敵(緑内障手術の合併症)を知り,己(術者としての技量と経験)を知ることで,リスクを最小化できる。
 本書籍では,トラベクレクトミーの標準的術式について,術前処置から,強膜弁作製,MMCの塗布,強角膜ブロック切除,周辺虹彩切除術,強膜縫合,結膜縫合に至るまで,手術の理論と実践,コツと工夫が豊富な写真やシェーマを活用して,わかりやすく記載されている。また術後管理として,レーザー抜糸術や眼球マッサージ,過剰濾過や眼圧歳上昇,感染,悪性緑内障などの多彩な合併症に対する対策を述べている。編集者の希望は,本書籍を読むことで,1人でも多く,安全な緑内障手術が遂行できる術者が育つことであり,自分の手術手技を少しでも安全で確実なものに改良していただくことである。
 緑内障手術についてあえて最後に附言するならば,診療の現場で最も重要なポイントは,自分の技量を省みて,安全にコントロールできる範囲に止まる勇気である。誰しもが,サージャンとしての経験と技量に限界を有している。自らの技量で及ばないと承知したときに,より熟練した専門医に診療を委ねる見識は,手術に携わる人間にとって,最も基本的なモラルである。

2007年12月
谷原秀信
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目次

序 トラベクレクトミーの今

適応と術前説明

手術手技 コツと落とし穴
 術前処置
 どこを術野に選ぶのか?
 麻酔と牽引糸 どこまで必要か?
 結膜切開はこうする!
   円蓋部基底(fornix-based)
   輪部基底(limbal-based)
   [Advice]結膜裂傷の術中・術後の修復
   [Advice]再手術時の結膜癒着瘢痕の処理
   [Topics]どちらが有利か? 円蓋部基底と輪部基底の比較検証
   [Topics]羊膜移植の応用
 強膜弁の作製はこうする!
   切開予定線の止血凝固と切開デザインの選択,切開テクニック
   層間分離と血管断面の止血
   [Advice]強膜弁のひどい裂傷とその対策
   [Topics]インプラントの特徴とトラベクレクトミー併用の利点を理解しよう
 マイトマイシンCの塗布
   MMC溶液の濃度と塗布方法・時間
   MMCの洗浄
   [Advice]前房水が漏出してくる場合のMMC塗布と代用強膜弁
   [Topics]濾過胞再建術におけるMMCの使用
   [Topics]MMCと強膜壊死
 強角膜ブロック切除
   カミソリ刃による切除はこうする
   [Advice]無硝子体・無水晶体眼での注意と対処
   [Advice]駆逐性出血・水晶体脱出の恐怖!
   [Topics]非穿孔性トラベクレクトミー(NPT)の限界と現在の適応 否定的な意見
   [Topics]非穿孔性トラベクレクトミー(NPT)の限界と現在の適応 肯定的な意見
 周辺虹彩切除術
   虹彩の把持と切開
   [Advice]血管新生緑内障(NVG)の虹彩に対する工夫〜出血を制御しよう〜
   [Advice]切除部位からの出血が止まらない!
 強膜縫合
   縫合の手技とデザイン
   前房・眼圧の術中回復
   [Advice]乱視予防のコツとは?工夫とは?
 結膜縫合
   縫合の針と糸の選択
   縫合の手技
    円蓋部基底 房水流出のないきれいな縫合を目指そう!
    輪部基底
   房水漏出を防ぐには
   [Topics]結膜に余裕がない狭い瞼裂の眼での工夫
 トラベクレクトミー終了時にこれを確認しよう

術後管理
 術翌日の診察ではここに注意しておこう!
 術後の眼圧管理の工夫
 結膜抜糸はいつ,どんな風にするのか?
 タイミングを逃すな!レーザー切糸術
 眼球マッサージの実際
 術後早期トラブルへの対処は?浅前房,脈絡膜剥離への対処—結膜を大事に扱おう—
 濾過胞再建のテクニック ニードリングと観血的手術
 低眼圧黄斑症のメカニズムと対処策
 低眼圧に対する自家血注入のコツと落とし穴,そして限界
 低眼圧に対する観血的手術と房水漏出に対する濾過胞再建術
 感染症の恐怖と対策!
 角膜乱視による遷延性視力低下
 悪性緑内障(房水動態異常)とその治療 対策を怠らず,恐れず!
 巨大濾過胞・overhanging blebなどの濾過胞形状異常,dellenなどの眼表面異常
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