造影検査 マスター・テキスト

造影検査 マスター・テキスト

■編集 新津 守
吉川 宏起

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • B5判  232ページ  2色(一部カラー),写真600点,イラスト100点
  • 2007年4月16日刊行
  • ISBN978-4-7583-0840-3

各種造影剤の基礎・原理から実際の使用方法,臨床まで,造影剤と造影検査を一通りマスターできる入門書!!

画像検査における「造影剤」の有用性は,診断精度向上という面からも極めて高く,臨床の場においても造影検査は必須検査の1つといえる。また,造影剤の種類も多岐に渡り,モダリティーごとに「種類」,「投与方法」,「副作用」などさまざまである。しかし,これだけ臨床の場で多用されている造影剤ではあるが,現場の若手スタッフや医療系の学生は意外とその実情をしっかりと把握している者は少ない。そこで,本書では,各種造影剤の「基礎・原理」から「実際の使用方法」,「臨床例の紹介」まで,一通り造影剤,造影検査をマスターできるよう,簡潔にかつわかりやすくまとめた。さらに,「造影剤の副作用と対処法」についても章を設けて詳説してある。造影剤や造影検査の全体像の把握にもうってつけの入門書である。


序文

画像診断における造影剤の役割

●造影剤とは
 造影剤とは,字のごとく「影を人工的に造る」薬剤である。造影剤の備えるべき条件は,
 1.周囲組織とのX線減弱係数の差が大きいこと。
 2.化学的に安定であり生体に対して副作用が少ないこと。
 3.検査後に速やかに人体から排泄されること。
である。

●造影剤の歴史
 レントゲンのX線発見(1895年)によってスタートしたX線写真の当初の対象は骨であった。それは,レントゲンの最初の写真がレントゲン夫人の手の骨であったことでも明らかであり,骨折や骨奇型の診断に直ちに応用された。このように,カルシウム塩を主体とする骨はそれ自身が天然の「造影剤」であり,X線写真で非常に判別しやすい。一方,「骨」以外の人体の大半は,「空気」を含む肺や管腔臓器を除くと「脂肪」と「水」である。この「水」の中に筋肉や内臓が含まれる。内科的な病気は内臓が主体であり,X線写真ではなかなかこのようすが把握できない。単純X線写真よりもコントラストの優れるCTでも,病変と正常組織の区別は難しい場合が多い。そもそも人体は「骨」「水」「空気」「脂肪」の4種類しかないのである。そこで,内臓を中心に人体をさらによく診たいという要望のもとに出現したのが「造影剤」である。したがって,「水」の中を診るためにはまず「空気」を使うというのは理にかなっており,造影剤として空気を使う「空気造影」は古くから存在した(ただし,消化管造影での二重造影を除くと現在ではほとんど使われていない)。
 空気以外の造影剤,すなわちX線透過性が低くX線写真で陽性に(白く)描出される物質を腸管などの管腔臓器や血管腔へ注入する試みもかなり古く,レントゲンの発見のすぐ翌年には屍体血管内に石膏剤を注入している。20世紀に入って生体への造影剤の応用が開始されたが,最初に実現したのは今日でも使用されている硫酸バリウムの消化管への注入であった。血管内投与を目的としたヨード造影剤も1918年には登場している。その後,本書の各章にあるような多種多様な造影剤が紆余曲折の歴史を経て今日の隆盛に至っている。

●造影剤の現状
 造影剤は,現在の画像医学では日常的に多用されている。CTではその大半が,MRIでも半数近くが造影検査である。血管造影はCTの発展もあり診断目的の造影検査は減少傾向にあるが,治療を目的としたIVR(interventional radiology:血管造影の手技を駆使した治療手技)が市民権を得て,造影剤は日常的に使用されている。また,日本が世界をリードしてきた消化管造影のバリウム検査も,上部消化管は内視鏡が主流になったとはいえ,大腸癌の増加により注腸検査は増加の一途にある。さらに近年では,超音波検査にもマイクロバブルなどの造影剤が導入された。
 造影剤の使用は,その診断精度上からも画像検査に不可欠なものである。転移巣を含めて微小癌の検出には造影剤の使用は必須であり,多血性腫瘍はもちろん,乏血性腫瘍も造影により始めて認識できるものが大半である。この癌の画像診断に関しては,超高齢者社会を迎えるわが国では,今後ますます重要な診断手法となるはずである。

●造影剤の問題点
 このように,臨床で多用されている造影剤であるが,現場の医療従事者をはじめ医療系の学生にとって,その実情はあまりに知られていない。多くの種類の造影剤が市場に出まわり,その使用法も制約の多いものがあり,実際の使用条件は多岐にわたる。ヨード造影剤ひとつをとってみても,水溶性と脂溶性では使用法がまったく異なり,各製剤によっても血管内投与と髄腔内投与の適用が異なる。さらに,ヨード造影剤を中心とした造影剤ショックについては医師のみならず診療放射線技師,看護師など医療従事者は熟知すべきである。しかし,現場での訓練,大学での教育はあまりに手薄,遅れているのが現状である。

 本書は以上を踏まえて,CT,血管造影などのヨード造影剤,MR用造影剤,消化管造影剤(バリウム),および超音波造影剤(マイクロバブル)の各章に,原理(開発の歴史を含む),実際の使用方法,および臨床例の紹介を含んだ造影剤全般の入門書を目指すものである。

新津 守
吉川宏起
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目次

Chapter 1 X線造影剤
 ■□ ヨード造影剤
 1 原理(開発の歴史含む)
  ●原理
  ●開発の歴史
  ●基本構造
  ●物理化学的性状
  ●体内動態
 2 実際の使用方法
  □1 水溶性ヨード造影剤【血管内投与】
   ●造影CT
   ●血管造影
   ●尿路造影
  □2 水溶性ヨード造影剤【その他】
   ●消化管透視
   ●胆嚢胆管造影
   ●脊髄造影
   ●関節造影
  □3 油性ヨード造影剤【肝動脈塞栓療法】
 3 臨床例の紹介
  ●はじめに
  ●肝腫瘤
  ●腎腫瘤
  ●胆管,膵管の拡張
  ●リンパ節
  ●おわりに
 ■□ 消化管造影剤(バリウム)
 1 原理(開発の歴史含む)
  ●開発の歴史
  ●原理
  ●体内動態
 2 実際の使用方法
 3 臨床例の紹介
  ●下咽頭癌
  ●食道癌
  ●胃癌
  ●クローン病
  ●大腸癌
  ●その他の症例
Chapter 2 MRI用造影剤
 ■□ ガドリニウム(Gd)造影剤
 1 原理(開発の歴史含む)
  □1 MRIの原理
   ●MRIの原理
   ●MRIの画像
  □2 MRI用造影剤の原理【ガドリニウム造影剤】
   ●ガドリニウム系造影剤の基礎
   ●ガドリニウム系造影剤の基本構造
   ●ガドリニウム系造影剤の基礎
   ●ガドリニウム系造影剤の造影効果
   ●ガドリニウム系造影剤の物理化学的性状
   ●ガドリニウム系造影剤の体内動態
 2 実際の使用方法
   ●検査の流れ
   ●MRI検査時の確認事項と留意事項
   ●MRI検査時の準備事項
   ●ガドリニウム造影剤
   ●静脈内投与
 3 臨床例の紹介
   ●髄膜腫(meningioma)
   ●神経鞘腫(schwannoma)
   ●聴神経腫瘍(acoustic neurinoma)
   ●下垂体腺腫(pituitary adenoma)
   ●血管芽細胞腫(hemangioblastoma)
   ●転移性脳腫瘍(metastatic brain tumor)
   ●多発性硬化症(multiple sclerosis)
   ●海綿状血管腫(肝臓)〔cavernous hemangioma (liver)〕
   ●血管腫(軟部)〔hemangioma (soft tissue)〕
 ■□鉄(Fe)造影剤
 1 原理(開発の歴史含む)
  □1 MRI用造影剤【超常磁性酸化鉄粒子】
   ●原理(開発の歴史含む)
  □2 MRI用造影剤【経口消化管造影剤】
   ●原理(開発の歴史含む)
 2 実際の使用方法
  □1 MRI造影剤【超常磁性酸化鉄粒子】
   ●血管内投与
  □2 MRI用造影剤【経口投与】
   ●経口投与
 3 臨床例の紹介
   ●肝細胞癌
   ●高分化型肝細胞癌
   ●過形成結節
   ●転移性肝癌
   ●胆管細胞癌
   ●肝血管腫
   ●限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)
   ●肝嚢胞
Chapter 3 超音波造影剤
 ■□ 超音波診断用造影剤
 1 原理(開発の歴史含む)
   ●原理(開発の歴史含む)
 2 実際の使用方法
 3 臨床例の紹介
   ●肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)
   ●転移性肝癌(liver metastases)
   ●肝血管腫(hepatic hemangioma)
Chapter 4 造影検査時の副作用と対処法
 1 造影検査時の副作用
   ●ヨード造影剤
   ●Gd造影剤
   ●MRI用肝臓造影剤(鉄造影剤)
   ●超音波造影剤
 2 副作用対処法
   ●適応検査
   ●造影検査前に把握すべき情報
   ●副作用の種類
   ●遅発型性副作用と対処法
   ●副作用発現時の対処法
   ●適切な救急設備,救急カート
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