NS NOW No.5

グリオーマ

その最新知見

グリオーマ

■担当編集委員 寺本 明

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
  • A4判  144ページ  オールカラー,写真80点
  • 2009年1月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-0912-7

グリオーマの研究・臨床の今がわかる一冊

グリオーマは日常臨床でもしばしば遭遇する疾患ではあるが,手術だけでは治療できず,その後の化学療法,免疫療法や放射線療法がとても重要となってくる。現在行われている治療法だけではグリオーマの根治は難しいため,分子生物学的研究や遺伝的研究などの基礎的研究や将来の治療構想が重要となってくる。
本書では,グリオーマの最新知見を「基礎」と「臨床」の二つに大きく分けて解説した。「基礎」では腫瘍の分類から遺伝子解析,分子生物学的研究に関する基礎研究の最新知見を取り上げた。「臨床」では覚醒下手術などの新しい手術から,化学療法,放射線治療の最新治療を取り上げた。またトピックスとして,それぞれの最新の話題も取り上げた。
本書を通読することにより,グリオーマの基礎から臨床までの今を識ることができる。

■シリーズ編集委員
寺本 明/新井 一/塩川芳昭/大畑建治


序文

 通常,グリオーマの教科書は地味で無味乾燥である。脳卒中の外科分野と違って,本文には分子生物学,遺伝学,生化学,免疫学,病理学などの基礎医学的知見が満載される上,手術自体がpicturesqueではないからである。こういう面を何とか払拭しようとして,本書を企画した。ページを繰っていただくと,フルカラーの極めて明快な図版が多くのスペースを埋めている。従来のグリオーマの成書には無い特色の一つである。
 NS Nowは実用書を目指しているため,グリオーマを扱うことには若干議論があった。もちろんグリオーマは日常臨床でもしばしば遭遇する疾患ではあるが,これを成書にしようとすると,どうしても実用書というより学術書の様相を帯びざるを得ない。すなわちグリオーマは手術だけでは解決できず,その後の化学療法,免疫療法や放射線療法が必然的に話題に加わってくる。更には,現在の治療法だけでは根治が難しいため,研究的な治療や近未来の治療構想に言及することになる。そうなると最新のかつ難解な基礎医学的知識が要求されてくるわけである。
 世の中で,難しいことを難しく,易しいことを易しく語ることは当たり前である。本来難しいことを易しく語ることこそが最も大切なことであり,易しいことをことさらに難しく語る人は最悪である。そういう意味で,本書の著者の方々には,難解な事象でも平易に解説いただけるようお願いした次第である。実際の原稿を見ると,これが見事に実現できたものと自負している。
 本書は,グリオーマの最新知見を大きく基礎的な情報と治療上のそれに二分類した。各々を更に,中核となる知見とトピックスとしての話題提供という形でメリハリをつけてみた。一つ一つが興味深い読み物になっていると同時に,本書を通読することにより,グリオーマに関する最新知見にキャッチアップすることができる。
 以上のような経緯から,グリオーマを専門にしている方々はもとより,これまでグリオーマの臨床に関心の低かった方々にもその解説書として活用いただけるものと信じている。

2009年1月
寺本 明
全文表示する

目次

I グリオーマの基礎
新しいWHO分類
 グリオーマの分類
 WHO2007における主な変更点
 新しい腫瘍型について
 おわりに
腫瘍発生の遺伝子解析
 細胞外−細胞内シグナル伝達
  Ras/MAPK経路
  PI3K/AKT経路
 細胞周期調節機構
  p53経路
  RB経路
 染色体異常とグリオーマの発生
 血管新生
 浸潤,細胞接着
 miRNAによる新たな遺伝子発現制御機構
 グリオーマの起源と腫瘍幹細胞
分子生物学の展開
 分子細胞生物学からみたグリオーマ研究のトピックス
 エネルギー代謝からみた癌細胞の細胞死制御
  Warburg効果とその謎
  癌細胞におけるWarburg効果の意義
  グリオーマ治療の新たな標的としてのWarburg効果
 Autophagic cell deathとグリオーマ
  Autophagic cell deathとは?
  グリオーマとautophagic cell death
  Autophagic cell death研究の課題
トピックス 研究をめぐる話題
腫瘍抗原とマーカ
 正常中枢神経系の免疫学的環境
 腫瘍抗原
  cancer-testis(CT)抗原
  組織特異的抗原
  変異抗原
 T細胞に認識されるグリオーマ抗原とマーカー
 抗体に認識されるグリオーマ抗原とマーカー
 神経幹細胞とグリオーママーカー
遺伝性グリオーマ
 遺伝病としてのグリオーマ
 遺伝性疾患に関連して脳腫瘍の発生が確認されている代表的疾患
  結節性硬化症(tuberous sclerosis)
  神経線維腫症(neurofibromatosis;NF)
  von Hippel-Lindau病
  Li-Fraumeni症候群
  Cowden症候群
  Turcot症候群
腫瘍内在幹細胞
 腫瘍内在幹細胞と腫瘍の増殖
 グリオブラストーマの治療
  放射線療法
  薬物療法−薬剤抵抗性
 幹細胞研究の進歩と新規治療法の開発
腫瘍内アポトーシス−グリオーマにおける細胞死
 アポトーシス(programmed cell death type I)とは何か
 グリオーマにおける抗アポトーシス機構の解明と治療成績向上のための試み
グリオーマの遺伝子解析と遺伝子診断
 遺伝子解析と診断
 1p/19q欠失(loss)
 MGMTのメチル化(methylation)
 EGFRの遺伝子増幅と変異
II グリオーマの治療
覚醒下手術
 本術式の特徴
 術前日までの準備
  脳機能検査
  脳機能画像診断
 手術手技
  手術室内のレイアウト
  手術体位
  局所麻酔・頭位固定
  モニタリングのための準備
  挿管
  開頭
  マッピング
  痙攣発作予防策と出現時の対処
  腫瘍摘出
  閉頭
 術後管理
術中生理学的モニタリング
 特徴
 術前準備
 運動誘発電位モニタリングの実際
新しい化学療法
 標準治療
 ニトロソウレアとTMZはどちらが優れているのか?
 TMZを使って治療した後,再発したらどうすれば良いのか?
今後の遺伝子治療
 グリオーマに関する最近の知見
  テモゾロミド
  癌幹細胞
 グリオーマに関する遺伝子治療の現状
  自殺遺伝子治療
  細胞融解療法(ウイルス療法,Oncolytic virus therapy)
  免疫遺伝子治療
 今後の遺伝子治療のあり方
  科学的妥当性
  倫理的妥当性
  社会的妥当性
定位放射線手術:ガンマナイフ治療佐藤憲市,福岡誠二
 本治療の特徴
 治療戦略
  ガンマナイフ定位放射線手術を行うタイミングは?
  ターゲットをどこにするか?
  境界線量:Marginal doseは?
  放射線壊死について
 ガンマナイフ後に腫瘍の再増大をきたした場合
遺伝子発現と予後
 特徴
 グリオーマの遺伝子異常
 DNA マイクロアレイ
 悪性グリオーマ増殖に関与する遺伝子発現
 悪性グリオーマの遺伝子発現プロファイルと予後
トピックス 治療をめぐる話題
術中MRI
 21世紀の外科手術と術中MRI
 術中MRIの有用性と問題点
  摘出コントロール
  アップデートナビゲーション
  合併症予防
  手術時間増加
  手術手技制限
  導入と維持の費用負担
 術中MRIの最先端技術と今後の展望
  特殊画像撮影
  術中MRIの方向性
 今後の展望
蛍光ガイド下手術
 全摘出を目指す理論的根拠
 5-ALA蛍光は何を意味するのか
 ALA蛍光ガイド下手術の実際
  5-ALA投与方法
  5-ALAの安全性の確保
 腫瘍境界領域における腫瘍蛍光性と病理組織との関係
 腫瘍摘出の基本戦略
  Fence post法
  non-eloquent areaでの摘出
  eloquent areaでの摘出
遺伝子導入幹細胞を用いた悪性グリオーマの治療
 幹細胞の腫瘍追尾能
 治療遺伝子の選択
 問題点と今後の展望
強度変調放射線治療(IMRT)
 概念・定義
 IMRTの原理
 IMRTの照射方法
 IMRTの手順
 IMRTにおけるQA
 IMRTの臨床−グリオーマへのIMRT
 IMRTの展望と課題
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
 ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy;BNCT)とは
  原理
  中性子線源
  ホウ素化合物
  線量と治療成績
  治療の実際
 ホウ素中性子捕捉療法の進歩
  熱外中性子の利用
  シミュレーションシステムの開発
  18F-BPA PETの開発
  ホウ素化合物の併用
  X線併用による治療効果の上乗せ
 今後の展望
  加速器中性子線源の開発
  新規ホウ素化合物の開発
全文表示する

関連する
オススメ書籍