NS NOW No.7

低侵襲時代の頭蓋底手術

過度な露出を避けるために

低侵襲時代の頭蓋底手術

■担当編集委員 大畑 建治

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
  • A4判  192ページ  2色一部カラー,イラスト140点,写真90点
  • 2009年7月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-0914-1

低侵襲時代をむかえつつある頭蓋底手術の最前線

頭蓋底外科の治療コンセプトは,従来,病変を広く露出することにより,手術の安全性と根治性を高めることにあった。反面,脳組織にとっては愛護的な頭蓋底手術も,到達経路にある軟部・骨組織,神経,血管に対しては侵襲的であり,審美上の問題,神経血管の副損傷,副損傷への対策,長時間手術の術者への負担などの解決すべき問題はまだ多く残されている。低侵襲手術の時代の現在,頭蓋底外科もその例外ではなく,症例の積み重ねによってより洗練された頭蓋底外科の手技が発展してきている。本書では低侵襲な頭蓋底手術を実践されている先生方に,日頃どのような工夫をされているか,その実際をご紹介いただく。
前半には「基礎知識」として外科解剖,再建方法,治療戦略を取り上げた。メインの「基本的到達法」では,明日の手術にすぐ役立つ実践的手技を中心に,最後の「最近のトピックス」では放射線治療についての最新の治療経験を効果と限界の両面から解説する。

■シリーズ編集委員
寺本 明/新井 一/塩川芳昭/大畑建治


序文

 本書の目的は,患者の長期QOLを向上させることを目的に発展し,そして時代の変遷と共に淘汰され洗練されてきた頭蓋底外科の宝石のような手術手技を,本来の意味での低侵襲手技として若手の脳神経外科医の皆さんに紹介することにあります。
 頭蓋底外科とは,頭蓋底近傍部の病変に対して頭蓋底部を部分的であっても経由して治療する手術方法の一つです。文献上では1世紀以上前に始まり,1960年代には手術用顕微鏡の導入に伴って耳鼻咽喉科医によって飛躍的に発展し,その後,CTやMRIなどの画像診断,微小外科解剖の知識の集積等に伴い,脳神経外科においても急速な進歩を遂げました。その恩恵によりno man's landと言われた海綿静脈洞の病変の手術や錐体斜台部後面の腫瘍の切除など脳神経外科疾患の治療成績は飛躍的に改善してきました。しかし,その半面,侵襲的であるとの印象が持たれ,1990年代中半には副産物としてのkey hole surgeryの概念が萌芽し,定位的放射線手術の発展期を迎えました。侵襲的であったのは頭蓋底外科手術ではなく,対象疾患自身であったことの議論はその疾患の自然経過が不明確であったために深い意味は持ちませんでした。このような種々な変遷を遂げながらも,100年以上に渡る歴史を持つ頭蓋底外科によって生み出された手技は,個々の脳神経外科医の好き嫌いにかかわらず,スタンダードな手術としてすでに浸透し定着しています。眼窩上縁の切離,海綿静脈洞外側硬膜の剥離,前床突起の削除はすでに特別な「頭蓋底外科」の手技ではありません。
 副題である「過度な露出を避けるために」は,すべての脳神経外科手術の永遠の課題の一つです。狭すぎると手術の根治性が下がり,術中トラブルに対応できない等の問題が生じるでしょう。広すぎると周囲組織の副損傷を招きます。病変の露出の程度は各術者の技量と疾病の難易度に応じて決められるべきものであり,本書でのエキスパートの解説を基本にしながら,症例ごとに術者自身が悩む必要があります。斯界のエキスパートによる解説は,過度な露出を避けるためにベテランにも参考になる程の充実した内容になっています。執筆者の方々の熱意にあらためて感謝申し上げます。
 本書が向学心に燃える若き脳神経外科医に熟読され,患者の一生を見据えた長期的な低侵襲治療の一翼を頭蓋底外科が担うことを祈念して序といたします。

2009年7月
大畑建治
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目次

I 基礎知識
 頭蓋底部外科解剖:静脈と膜構造
 ■静脈解剖
   前方到達法
   前外側到達法
   Subtemporal route
 ■知っておきたい膜構造
   中頭蓋窩硬膜構造

 頭蓋底部再建法
 ■頭蓋底再建時の留意点
   硬膜のwater-tightな修復と血流を有する組織による被覆
   血流のよい組織による頭蓋内と鼻副鼻腔の確実な遮断,死腔の充填
   骨組織への確実な皮弁の固定
 ■頭蓋底再建に用いられる局所皮弁
   前方茎骨膜弁
   帽状腱膜弁
   側頭筋骨膜弁
   側頭頭頂筋骨膜弁
 ■頭蓋底再建に用いられる遊離皮弁
   腹直筋皮弁
   前外側大腿皮弁

 頭蓋底悪性腫瘍の手術:良性腫瘍との違い
 ■本術式の特徴
 ■頭蓋底外科における良性腫瘍と悪性腫瘍の治療方針の違い
 ■前外側頭蓋底広範囲一塊切除の手術手技
   術前準備
   手術手技(マクロ操作)
   手術手技(マイクロ操作)
   閉創
 ■合併症
 周術期管理
   術前管理
   術中管理
   術後管理
 
II 基本的到達法
 Bifronto-basal approach
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   開頭
   大脳半球間裂の開放
   閉頭

 Supraorbital approach(eyebrow skin incision)
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技の実際
   閉頭
 ■術後処置

 Orbitozygomatic approach
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技(orbitozygomatic approach)
   閉創
 ■合併症

 Infratemporal fossa approach
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術体位
   手術手技
   閉創

 Middle cranial fossa approach:聴神経腫瘍
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技
   閉創
 ■合併症の予防と対策

 Translabyrinthine approach:聴神経腫瘍
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前の準備,体位等
   手術手技
   後頭蓋窩および術創の閉鎖
 ■術後処置
 ■合併症

 Suboccipital approach:聴神経腫瘍
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技
   閉創
 ■合併症

 Anterior transpetrosal approach
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技
   閉創
 ■合併症

 Combined transpetrosal approach
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   術前準備
   手術手技
   硬膜内の観察
   閉創
 ■合併症

 Transcondylar-lateral approach
 ■特徴
 ■手術手技
   体位
   手術手技
   手術の実際

 Extended transsphenoidal approach
 ■本術式の特徴
 ■手術の手順
   術前の準備
   体位
   頭位
   手術手技
   閉創
 
III 最近のトピックス
 ガンマナイフ治療:聴神経腫瘍
 ■本術式の特徴
 ■手術手技
   ガンマナイフ治療法
 ■治療成績の検討
   対象
   考察
   結論

 ガンマナイフ治療:頭蓋咽頭腫
 ■ガンマナイフ治療の適応と治療の実際
   ガンマナイフ治療の適応
   ガンマナイフ治療の実際
   ガンマナイフ後の経過観察
 ■ガンマナイフの長期治療成績

 ガンマナイフ治療:髄膜腫
 ■本術式の特徴
 ■治療の実際
   頭蓋底髄膜腫
   大きな髄膜腫に対する二期的ガンマナイフ治療
   手術とガンマナイフを組み合わせた治療
   非頭蓋底髄膜腫
   異型・悪性髄膜腫
 ■治療成績

 陽子線治療
 ■特徴
 ■原理
 ■対象疾患,線量計画
   これまでの治療成績
   症例
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