NS NOW No.9

無症候性脳外科疾患の治療戦略

どう捉え,どう解決するか

無症候性脳外科疾患の治療戦略

■担当編集委員 寺本 明

定価 11,000円(税込) (本体10,000円+税)
  • A4判  162ページ  一部カラー,イラスト60点,写真100点
  • 2010年1月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-0916-5

在庫僅少です。


脳ドックで発見される無症候性脳外科疾患に対する治療に即役立つ1冊!

今回は脳ドックで発見される無症候性の脳神経外科疾患を取り上げる。第1章では,ガイドライン,インフォームドコンセント,医療係争事例を取り上げ,脳ドックの現状とそこで疾患が発見されたときの対処について解説する。第2章では無症候性脳血管障害を,第3章では無症候性脳腫瘍を取り上げる。それぞれ特徴的な疾患について,各筆者の治療戦略,トラブルシューティングを豊富な図を用いてわかりやすく解説し,無症候性脳外科疾患の最前線を知ることができる内容となっている。

■シリーズ編集委員
寺本 明/新井 一/塩川芳昭/大畑建治


序文

 近年,画像診断の急速な進歩により,いわゆる無症候性脳外科疾患を診療する機会が著しく増加した。特にMRIの普及による寄与は大きく,更にはその撮像方法の改良によって様々な病態の解明が無侵襲に行えるようになった。
 一方,病変の発見自体は医学的には一見好ましく見えても,受診者(患者)には大きな精神的負担を与えることが少なくない。そもそも発見された病変がどのような自然史をたどるのかがわからないと治療戦略も立てられないわけである。それでもMRIが一般に普及しておよそ20年が経過し,漸くこれらの疾病に関する長期的な予後がある程度見えてきたと考えられる。
 脳ドックで発見される無症候性脳病変といえば,未破裂脳動脈瘤と無症候性脳梗塞・白質病変が2大疾患であるが,本書はその名の通り脳神経外科医を対象としており,特にこのシリーズはArtの部分に焦点を当てているため,手術の対象となりうる疾患を中心に企画した。
 まず第1章では,無症候性脳外科疾患の社会医学的側面を論じて頂いた。この分野を議論するにあたって,日本脳ドック学会のガイドラインは最も重視されなければならないが,1997年に第1版,2003年に第2版が,そして2008年に第3版が発表されている。また,脳ドックの実施に当たって細心の配慮を要するのが受信者に対するインフォームドコンセントである。更に,それが不十分であったり,治療結果が思わしくないと,元来が予防的医療のため医事係争事例になることが多い。
 第2章は,多くの脳外科医の最大関心事である未破裂脳動脈瘤に4篇を割いた。開頭手術と血管内手術のエキスパートの方々にご自分の治療戦略や成績を論じて頂いた。各々お二人の計4名の筆者としたのは,極めて関心の高い疾患であり,異なった考え方がありうることを読者に知ってもらおうと思ったからである。これは頚部内頚動脈狭窄症についても同様である。脳動静脈奇形やもやもや病は,頻度は低いもののその対処については脳外科医として知っておく必要がある。
 第3章は,脳腫瘍を取り上げた。無症候性脳腫瘍といえば,下垂体腫瘍(ラトケ嚢胞などを含む)と髄膜腫である。そのためそれぞれ異なった観点から2編ずつの原稿をお願いした。更に,MRIのT1での低信号病変は,Low grade gliomaなのか無症候性脳梗塞なのかが常に悩ましいところである。最後に,良く遭遇するもののその対処や説明に困る様々な嚢胞性疾患についてもまとめて頂いた。
 以上,本書は無症候性脳外科疾患に関して,現時点で脳外科医が身につけていなければならない知識を総まとめにしたものである。日常遭遇するこれらの疾患の対処に本書が有用な手引きになることを祈念している。

2010年1月
寺本 明
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目次

I 無症候性脳外科疾患の社会医学
無症候性脳外科疾患—脳ドックの視点から
  脳ドックについて
  脳ドックで発見される疾患とその頻度
  脳ドックで発見された疾患に対する対応
インフォームドコンセント
  歴史と法律
  インフォームドコンセント
  無症候の特徴
  結語
無症候性脳外科疾患の医療係争事例—未破裂脳動脈瘤を例に
  判例
  考察
  まとめ

II 無症候性脳血管障害
未破裂脳動脈瘤の開頭手術—私の戦略
 ■アウトライン
  未破裂脳動脈瘤の頻度と自然歴
  未破裂脳動脈瘤の特徴
  基本的治療戦略と手術適応
  多発性未破裂脳動脈瘤に対する開頭手術
  術中モニター
  美容的問題について
  術後合併症
 ■広く明るい術野を得るための視野作り
  シルビウス裂の切離
  interhemispheric fissureの切離
 ■脳動脈瘤の部位による特徴と留意点
  前交通動脈瘤
  内頚動脈瘤
  中大脳動脈瘤
  脳底動脈瘤
  末梢前大脳動脈瘤
  椎骨−後下小脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤の開頭手術—トラブルシューティング
 ■アウトライン
 ■トラブルの予防とシューティング方法
  開頭に関わるリスク(硬膜損傷・脳挫傷など)
  アプローチのリスク
  術中破裂
  虚血性合併症(穿通枝・皮質枝・静脈性脳梗塞)
  その他の合併症
未破裂脳動脈瘤の血管内手術—私の戦略
 ■本治療法の特徴
 ■手術手技
  患者管理
  セットアップ
  脳血管撮影装置
  穿刺とガイドカテーテルの誘導
  動脈瘤の評価
  瘤へのアプローチ
  終了のタイミング
  合併症
 ■まとめ〜未破裂瘤の治療の心得
未破裂脳動脈瘤塞栓術—トラブルシューティング
 ■アウトライン
 ■カテーテリゼーションのトラブル
 ■脳動脈瘤塞栓術におけるトラブルシューティング
  脳動脈瘤塞栓術における出血性合併症とその対応
  脳動脈瘤塞栓術における塞栓性合併症とその対応
  コイル自体のトラブル
 ■症例呈示
無症候性頚動脈狭窄症—内膜剥離術
 ■本治療法の特徴
 ■無症候性内頚動脈狭窄症のevidence
 ■術前検査
 ■手術手技
  プラーク性状の評価
  Pseudo occlusionに対するCEA
  冠動脈病変合併症例
頚部内頚動脈狭窄症—ステント留置術
 ■本治療法の特徴
 ■手術手技
  アプローチ(穿刺部位)の決定
  適合するガイディングカテーテル・シースイントロデューシングサーの決定
  ガイディングカテーテルの標的血管への設置
  アンジオガードXPの準備と設置
  pre dilatation
  ステント留置
  post dilatation
  血管造影での確認
  アンジオガードXPの回収
  術後血管造影
  終了
  術後管理
 ■CASのハイリスク
  プラーク性状
  屈曲病変と高度の石灰化
  過灌流症候群の回避
  無症候性頚動脈狭窄に対する頚動脈ステント留置術
  Slow flowとnon flow
脳動静脈奇形・海綿状血管奇形
 ■本治療法の特徴
 ■手術手技−AVM摘出術
  手術適応
  手術手技(マクロ操作)
  手術手技(マイクロ操作)
 ■手術手技−AVMのSRS
  治療適応
  治療手技
 ■手術手技−海綿状血管奇形摘出術
  治療適応
  手術手技
もやもや病
 ■概念と臨床像
 ■症候性もやもや病の治療
 ■無症候性もやもや病の頻度
 ■無症候性もやもや病の自然経過と外科治療の結果
  自然経過
  外科治療の結果
 ■無症候性もやもや病への対処

III 無症候性脳腫瘍
下垂体偶発腫の自然史と治療戦略
 ■アウトライン
 ■下垂体偶発腫の定義
 ■下垂体偶発腫の発生率
 ■下垂体偶発腫の自然史
 ■下垂体偶発腫の手術適応と治療指針
 ■下垂体偶発腫の手術
ラトケ嚢胞の治療
 ■アウトライン
 ■手術適応
 ■手術方法
 ■手術手技
  下向き造袋法(Open sella法)
  上向き造袋法
髄膜腫の自然史と治療戦略—無症候性髄膜腫にいかに対応すべきか?
 ■アウトライン
 ■無症候性髄膜腫の自然史
  無症候性髄膜腫の増大状況
  増大するものの大きさ別増大速度
  無症候性髄膜腫の部位別増大状況
  無症候性と症候性の髄膜腫サイズ比較
 ■無症候性髄膜腫の手術成績
 ■無症候性髄膜腫に対する放射線手術の効果
 ■実際の症例
高齢者の髄膜腫
 ■アウトライン
 ■日本の高齢化社会の特徴と診療における基本姿勢
 ■高齢者無症候性髄膜腫の頻度
 ■高齢者無症候性髄膜腫の自然歴
 ■経過観察に関して
 ■高齢者無症候性髄膜腫の手術
  皮膚軟部組織の菲薄化
  骨の脆弱化
  硬膜と骨の強固な癒着
  脳萎縮
  脳実質のコンプライアンスの低下
  脳動脈硬化
 ■高齢者における術後管理
  高齢者髄膜腫の術後管理の要点
 ■高齢者髄膜腫の手術合併症
グリオーマ様病変—主として,MRI T1低信号病変をどう対処するか
 ■アウトライン
 ■MRI T1
 ■症例提示
頭蓋内嚢胞性疾患
 ■アウトライン
 ■くも膜嚢胞
  発生頻度および部位
  病態
  自然経過および症状
  手術適応と方法
 ■松果体嚢胞
  自然経過および症状
  手術適応と方法
 ■類上皮嚢胞と類皮嚢胞
  類上皮嚢胞の好発部位
  類皮嚢胞の好発部位
  自然経過および症状
  手術適応と方法
 ■その他の頭蓋内嚢胞
  上衣嚢胞(ependymal cyst)
  脈絡叢嚢胞(choroid plexus cyst)
  脈絡裂嚢胞(choroidal fissure cyst)
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