Dr.さとうの

脳神経外科 臨床ですぐに役立つキーポイント

脳神経外科 臨床ですぐに役立つキーポイント

■著者 佐藤 周三

定価 5,060円(税込) (本体4,600円+税)
  • A5判  256ページ  ハンドブック仕様,イラスト72点,写真76点
  • 2009年5月18日刊行
  • ISBN978-4-7583-0921-9

手術や外来などの臨床現場で役に立つ! より上の脳神経外科医をめざすための1冊

実際の脳神経外科臨床の現場に立ったときに遭遇するさまざまな手術シーンや外来シーンでの落とし穴,また疾患ごとの適応診断の確定や手術手技の基本と応用の活用法など,どのようにしたらスムーズにトラブルなしに進行できるか。教科書を読んだからといって,マニュアル通りに進むとは限らないのが現実である。
ベテラン指導医であった著者が,実地臨床で長年蓄積してきた経験や手術に対する考え方をまとめたキーポイント本。どういうときに失敗に陥りやすいのか,どういう風に行えばスムーズに進むのか。手術後の医局で先輩から受けるアドバイスのようにわかりやすい言葉とイラストでまとめている。本書は,専門医試験に臨む若手医師や専門医取得後のサブスペシャリティーの手術を志す前の脳神経外科医が,心得ておくべき手術に対する基本的な考え方と応用,基礎解剖からさまざまな疾患の対処法を教科書には書かれていないことや指導医の本音をまとめている。より上の脳神経外科医をめざす若手ドクター必携のハンドブック。


序文

 過去32年間,多くの苦い経験をした。そのすべてを書き尽くすことは不可能であるが,他の脳神経外科医にその一部でも伝え教訓としてもらいたいと思ってこの本を書くことにした。成功した症例からは学ぶことは少ないが,うまくいかなかったり手痛い目にあった症例から学ぶことは多かった。本書の中で私が「・・・しないと・・・などの合併症をきたすことがある。」と記したときの大部分は実際に失敗して反省した経験である。このような失敗例を他の脳神経外科医に知ってもらうことは安全に手術を行うために大変重要なことだと考えている。
 脳神経外科医にとっては,ともすれば難しい手術手技に興味を持ちがちであるが,脳神経系の手術は奥深く,単に,知識や技術だけでは解決できないことも多い。本書では一貫して脳神経外科医には,人間性,哲学,教養が重要であると記した。
 この本のある部分は訓練医のために書いた。従来の教科書の解剖についての記載は私にとっても非常にわかりにくく,特に海綿静脈洞周囲,内頚動脈C2〜C4部,頭蓋底,脳神経系の解剖,髄膜に関しては発生から考えた解剖を私なりに解釈して記した。
 レジデント教育の一環として,チーフレジデントになる前の脳神経外科医の手術手技トレーニングを担当する機会があった。手術の数をこなして手術手技を覚えるのではなく,どのようにしたら効率良く,短期間で手術手技の習得,向上が計れるかを考えた。
 脳神経外科医としてはまず始めに,基本的な手術手技を覚えることが必要である。基本的な手術手技を覚えるのは割と早い時期に終えることができる。しかし,その後それぞれの脳神経外科医がどのように伸びるかを決定するのは手術に対するものの考え方のような気がする。脳神経外科医として,将来,様々な手術や臨床の場面に遭遇する可能性があるが,それらは全て習ったものであったり,教えてもらったりしたものとは限らず,むしろ今まで全然経験したことの無いようなことであることが多い。そのような時にどうしたら良いかということは,それまでの臨床で学んだ考え方を基本にして判断しなくてはならない。そのような意味で,本書では手術に対する基本的な考え方を学んでもらおうと思い,その考え方の実例を参考にして記してみた。良い考え方を持てば将来もそれを基盤にして新しい手術手技を習得したり開発したりすることが可能である。基本的な手術手技と手術に対する良い考え方を身に付ければ,将来どのような難しい症例にあたっても対処することが可能となる。
 本書は手術手技の向上を志す脳神経外科医にその一助にでもなればと思い,熟練した脳神経外科医であれば経験的に当然知っているような手術手技のポイント,手術を安全に効率的に行うためにどのようなことに気をつければよいかと普段私が思っている点について書き記した。実際に手術手技を向上させるためには教科書的な手術書を読むことはもちろん必要であるが,先輩の脳神経外科医が自戒をこめて自分自身へぶつぶつとつぶやいているようなことの習得も手術手技の上達のためには重要なのではないかと思っている。このような話は手術が終わった後のくつろぎの時間に,先輩から後輩に語り継がれて来たものであるが,最近では後輩とゆっくり話す機会も少なくなってきたので,このような形で書き記すことにした。
 脳神経外科医に限らず外科的治療を行う者には,どうしたら出来るだけ安全に手術ができるかという考え方や判断力を身に付けて欲しいと思っている。技術的な側面についてもかなりのページを費やして記したが,治療一般に対する心構えについても記したので,脳神経外科医のみならず頭頚部を扱う耳鼻咽喉科医,外科医,血管外科医,形成外科医,神経内科医,口腔外科医にとっても医師としての考え方,診療技術の向上に役立てていただければと願っている。

2009年4月
佐藤周三
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目次

I. 総論
 1 手術の心構え
  手術の基本的な考え
 2 手術適応
  手術適応の判断/脳幹病変への手術適応/無症候性髄膜腫/無症候性神経膠腫
 3 手術計画
  手術のデザインとは/どのアプローチが良いかという議論/Yasargilの手術
 4 手術時間
  予定時間の判断/長時間手術の予測/予定より時間がかかってしまっているとき
 5 手術体位
  頭部固定/self gravity retraction method
 6 助手をしているときの心構え
  技術向上のために…/術者より早く手術室に入る/手術を指導者として指導する場合
 7 手術機器・器具
  頭部固定器,リトラクター/手術時の手台/リュール/フック/吸引管/ドリル/手袋/microsurgery用のハサミ/microsurgery用の剥離子/microsurgery用の綿
 8 病歴聴取の重要性
  病歴聴取の意義/頭痛の有無/麻痺の有無/症状と時間の関係
 9 手術の合併症・後遺症
  手術の後遺症/合併症を起こしてしまっている患者さんの回診/脳血管障害の合併症/脳腫瘍手術の合併症
 10 外来の注意
  患者さんへの説明/説明のタイミング
 11 手術の練習
  cadaverでの練習/練習方法
 12 リハビリテーション
  リハビリテーションの進行/期間/障害の左右差/五木ひろしをまねる
  
II. 解剖
 1 頭蓋底手術のための臨床解剖
  海綿静脈洞/前床突起周辺と内頚動脈輪周辺の解剖/脳神経系の走行/側頭下硬膜の構造/視神経管のunroofing/動眼神経の異常走行
  
III. 手術手技1
 1 皮膚切開
  前頭側頭開頭の皮切/皮切の考え方/Bigger incision bigger surgeon/皮切のポイント/バーホールの数
 2 開頭
  皮切と側頭筋の切除部位(前頭側頭開頭)/Bridged craniotomy/再開頭が予測される場合
 3 穿頭
  穿頭方法
 4 硬膜切開
  硬膜切開時のメスの使い方/硬膜切開時のハサミの使い方/硬膜切開線の決定/さとうの硬膜切開/蝶形骨縁(sphenoid ridge)の削り方
 5 閉頭
  cranioplasty(頭蓋形成術)/再開頭が予測される場合/硬膜の縫合/皮膚縫合ー埋没縫合
 6 ドリルの使用法
  ドリル使用時の注意/高速ドリルのコツ/ドリルの注意事項/穿頭で思うようにドリルが働かないとき/頭蓋底腫瘍に対する内視鏡的治療
  
IV. 手術手技2
 1 Microsurgery
  disorientationに陥ったとき/リトラクションの考え方/counter tractionの重要性/操作中の注意/手術操作が難しいと思ったとき/迷ったらどうする?/パニックに陥りそうになったら/どうしようもないとき
 2 出血の対処法
  静脈性出血/動脈性出血
 3 器具の使用法
  顕微鏡の方向/顕微鏡の操作法/術中ビデオ/脳べらの使い方
 4 シルビウス溝の剥離
  シルビウス溝剥離の迷い/切り替えの重要さ/シルビウス溝剥離の8つのポイント/シルビウス溝剥離の器具の使用法/前交通動脈瘤における手術方向
 5 Subtemporal approach
  前床突起削除/後床突起削除
 6 Orbitozygomatic approach
  頬骨弓のcracking method/supraorbital nerveの処置/顕微鏡による慢性硬膜下血腫の手術
  
V. 脳血管障害
 1 術前の画像情報
  画像から手術法の判断/画像読み込みのポイント/脳血管撮影のポイント/非定型的部位の出血の場合/原因も考える/皮質下出血における脳血管撮影
 2 くも膜下出血(急性期脳動脈瘤手術に対する術前処置)
  脳血管障害には風林火山/腰椎ドレナージ/脳室ドレナージ
 3 脳動脈瘤に対する手術のポイント
  血管確認のポイント
 4 脳動脈瘤のクリップの選択
  画像を読みきってクリップを選ぶ/SUGITA or Yasargil?はたまた,他のクリップ?/直クリップとバイオネット型クリップ/ミニクリップ/nonblind aneurysm clip/目盛り付き動脈瘤クリップ
 5 術中破裂と合併症
  脳底動脈瘤術中破裂の対処/脳底動脈瘤術後の痴呆/術中脳動脈瘤破裂への対処/マクロ手術時代から学ぶ
 6 脳動脈瘤1 :前交通動脈瘤
  前交通動脈瘤に対するアプローチ側の選択/interhemispheric approachかpterional approachか?/rectal gyrus切除(吸引)について/interhemispheric approach/前交通動脈瘤への到達法/第三脳室底開窓術
 7 脳動脈瘤2 :中大脳動脈瘤
  中大脳動脈瘤の手術戦略/手術のポイント
 8 脳動脈瘤3 :脳底動脈瘤
  脳底動脈瘤に対する前床突起削除の有用性/前床突起の切除(イヤイヤのテクニック)/後床突起の切除/拡大脳血管撮影の有用性
 9 脳動脈瘤4 :その他の動脈瘤
  前交通動脈膝部(A2-A3 junction)動脈瘤に対するアプローチ/解離性椎骨動脈瘤の診断/IC-ophthalmic aneurysm/ophthalmic artery(眼動脈)の解剖/椎骨動脈の手術ーTranscondylar approach
 10 未破裂脳動脈瘤
  未破裂脳動脈瘤の手術適応/手術の危険性/未破裂脳動脈瘤の破裂率の誤解
 11 脳出血
  脳出血の手術適応/被殻出血に対する手術適応/小脳出血に対する手術適応/皮質下出血の手術適応/視床出血,尾状核出血に対する手術適応/定位的血腫吸引術・内視鏡的血腫除去術/高血圧性脳出血の手術適応の考え方/増大する脳出血/脳出血後の水頭症/他疾患に合併した脳出血/下垂体脳卒中
 12 血行再建術1 :STA-MCAバイパス術
  STA-MCAバイパス術の適応/浅側頭動脈の剥離/吻合部は粗く縫う
 13 血行再建術2 :頚動脈内膜剥離術(CEA)
  手術のポイント
 14 もやもや病
  もやもや病に対する血行再建術/細い血管にバイパスする場合
 15 血管奇形
  脳動静脈奇形/海綿状血管腫/静脈性血管腫
  
VI.腫瘍
 1 聴神経腫瘍
  アプローチの選択(suboccipital approach?transpetrosal approach?)/聴神経腫瘍の手術適応/聴神経鞘腫のアプローチ/CP angle tumorの鑑別(髄膜腫か神経鞘腫か?)/経外耳道アプローチ
 2 髄膜腫
  手術適応/髄膜腫の栄養血管/髄膜腫の手術/脳室内髄膜腫/頭蓋底髄膜腫の難易度
 3 難しい腫瘍に対する治療戦略
  良性腫瘍/神経膠腫/Pineal region(松果体部)に対するアプローチ/脳梁の重要性
 4 転移性脳腫瘍
  転移性脳腫瘍の手術適応
 5 放射線療法
  粒子線治療のはじまり/粒子線治療とは
  
VII. 水頭症
 1 水頭症
  手術か保存的療法か?/軽度の水頭症/脳室腹腔シャントか,腰椎腹腔シャントか?/内視鏡的治療
 2 シャント術
  シャント術の心構え/シャント術のデザイン/10分シャント/手術時間減少で感染リスク減少,麻酔が簡略化
  
VIII. 外傷
 1 外傷一般
  blow-out fracture(眼窩底破裂骨折)/慢性硬膜下血腫/外傷性大血管障害/急性期にはCTを繰り返し撮る/Gun shot wound/意識清明期の有無
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