DVDで動きがわかる

モーション解剖アトラス 上肢・体幹

モーション解剖アトラス 上肢・体幹

■編著 青木 光広

■著者 和田 卓郎
射場 浩介

定価 27,500円(税込) (本体25,000円+税)
  • i_dvd.jpg
  • B5判  136ページ  上製,オールカラー,イラスト112点,写真86点,DVD-Video付き
  • 2008年5月23日刊行
  • ISBN978-4-7583-1026-0

書籍で理解,動画で納得。わが国初の上肢・体幹モーションアトラス

札幌医大第二解剖学教室で製作された「新鮮解剖体を用いたバーチュアル解剖アトラス」をDVDに収録し,上肢の手術時のアプローチ,また種々の組織の「動き」をみながらリハビリテーション,運動療法などを行う方法を学ぶためのアトラスである。
実際に解剖学の講義などにおいて解剖体を目にすることはあっても,その解剖体を使って「どこをどう動かすとどうなるか」ということを学ぶ機会は少ないと思われる。またそういうニーズが発生するのは学生のときではなく,卒業後,現場に出てからではないだろうか。通常の医学教育に用いられている解剖学図譜に,身体器官の「動き」という動的側面を加味し,同時に器官の内面からその動態を明らかにすることにより,個々の器官の機能的側面を詳細に分かりやすく表現することができる。
書籍では上肢の解剖について説明し,さらには実際の臨床への知識の応用が図れるような内容となっている。動画に収載した各クリップごとに「ベストモーション」画像を大きく掲載,さらに「エクストラモーション」画像とそれぞれの画像に連動したシェーマで,動画の内容を詳しく解説する。そして各クリップで扱った部位の解剖,機能解剖,また臨床への応用についても詳説。単なるビデオ解説書にとどまらない「上肢アトラス」として満足できる内容である。


序文

緒言

札幌医大保健医療学部基礎理学療法学科 
准教授 青木光広

 モーション解剖アトラスの作成にあたり,10体余の未固定献体の上肢解剖所見を動画に収録した。早期献体に同意され献体頂いた白菊会会員ご本人と,お許しいただいたご遺族の崇高な志に,この場より深甚なる敬意と感謝の気持ちを表します。
 ギリシャ文化のHippocrates (B.C. 460-377)時代を経て,ローマ時代にGalenus(A.D. 130-201)が古代医学を集大成し,解剖学と生理学の発達に先駆的役割を果たした。解剖学的所見を明瞭な解剖図として著したのは,ルネサンス時代のLeonardo da Vinci (1454-1519)である。続いて近代化解剖学の生みの親といわれるAndears Vesalius (1514-1564)が,観察された所見をDe corporis humani fabrica libri septemに著した。Bartolomeo Eustachio(1513-1574)は解剖図集Tubular anantomicaeを著し,交感神経の詳細な解剖図を紹介した。その後,顕微鏡の普及により組織学的研究が加わり,多くの解剖学者が活躍した。
 現代の医療系教育機関では解剖を学習する際に,解剖学図譜が用いられている。これは,模式図と解剖学実習による実際の観察で行われる基本的学習手段を補佐し,知識の整理と記憶に重要な役割を担っている。本邦での代表的な解剖学図譜に,森 於兎が著した解剖学がある。優れた著作であり,特に西が描いた図譜は正確さと美しさで他の図譜の追随を許さない。 一方,海外に目を向けると,優れた解剖学図譜が出版されている。広く普及している図譜のうち,Gray's Anatomyは1858年,英国で出版され,詳細な内容が収録されるとともに,版を重ねて解剖学図譜の教本となっている。また,北米では1943年にGrant's Atlas of Anatomyが出版され,図譜の鮮明さと単純さが特徴であり,それぞれの図譜に説明を加える形式で編集されている。さらに,1953年に米国のNetterはClinical Symposiaを著し,その色彩豊かな図譜と同時に描かれた神経,血管,筋肉,骨格が医療系学生に広く受け入れられ,愛用されている。また後2者は,図譜を多用することにより解剖実習で得られる所見を半立体的に表現している。
 近年のKinesiologyの発達,高速ビデオなどの記録媒体の進歩により,特にスポーツなどの運動パフォーマンスが詳細に観察されている。それらにより明らかになった身体運動は,図譜と動画を用いて著わされ,一例を挙げるとBhenkeのKinetic Anatomyとして出版されている 。この流れに従い,我々は解剖学図譜に身体器官の動きという機能的側面を加味し,それぞれの器官の解剖学的意義をより詳細にかつ立体的に表現できるモーション解剖アトラスの作成を決意した。その際に重要な点は,頭部や脊柱,胸郭,内臓および四肢が全て温存され,物理特性が正常に近い未固定遺体標本を用いることである。著者は,2004年より解剖学第二講座,村上 弦前教授のもとで生体力学研究を開始し,未固定標本を扱い始めた。その際に,モーション解剖アトラスの編集・発刊を想起させた出来事がある。それは,私が担当したある講演会の後,本学理事長である今井浩三先生より「学術講演には動画を用いて表現する時代です」とアドバイスを受けたことである。そこで,動画を有効にしかも明瞭に示すために,ハイビジョン画像で表現するアトラスを作成するという考えに至った。
 本書の目的は,未固定解剖体を用いて躯幹および四肢を詳細に観察し,ハイビジョン動画を用いて筋および腱,靱帯,関節包,神経の動きを鮮明に表現する解剖アトラスを提供することである。通常の解剖学図譜に,身体器官の動きという動的側面を加味し,その動態を明らかにすることにより個々の器官の機能的側面を詳細に判りやすく表現することができる。モーション解剖アトラスの名前にふさわしく,スクリーン上であるいは卓上でそのバーチュアルな動画ページをめくることにより,新鮮解剖体を手元において観察しているのと同様な実体験を可能とする。このアトラスはいわゆる系統解剖実習時のシミュレーションとして用いられ,さらにはイメージトレーニングを通して近い将来,臨床実習で行われる内視鏡検査を容易にすることができると考えている。 
 肩関節および肘関節,前腕の動画の収録に当たり,われわれは胸郭上肢標本(trans-thoracic specimen)を用いた。この標本は体幹を垂直に固定しているため,両上肢が下垂し自由な可動性を持つ事が可能であり,投球などの上肢のスポーツ動作を再現できる。胸郭上肢標本で再現された上肢の動態を実際のスポーツ動作に重ねることにより,スポーツ障害の理解と治療に貢献すると考えられる。またこの標本は,上肢の末梢神経を本来のままの緊張度で観察する事が可能であり,entrapment neuropathyの動態を観察するためにも適している。
 細かい点の表現は従来の解剖図譜にはとても及ばないが,繊細なハイビジョン動画は,それを補って余りある多くの情報を与えてくれる。本書・DVDを読まれる医療関係者の方々,特に手の外科医,理学療法士,hand therapist,スポーツトレーナーは,本アトラスを繰り返し観察することにより,上肢の解剖学をさらに深く立体的に理解することができると期待している。このアトラスは不十分な点が多くあり,まだまだ未完の状態であると考えている。アトラスを使用され,至らない点や工夫すべき点をご指摘頂きたい。
 終わりに,このモーション解剖アトラスを使用する際のヒントを述べたい。はじめに,このDVDを学部教育に供覧する時期であるが,学生が解剖体に接し始めた解剖実習開始まもなくの時点が適当であると考えている。卒後教育,大学院教育にはいつでも使用が可能である。副教科書と指定するには高額であるため,教育施設で購入し,図書館での閲覧や講義に使用するのが良いと思う。個人により見える部位が異なるので,DVDは複数名で閲覧すると効果的である。今回実施した動画撮影では,それぞれの観察部位と方向が臨床家の視点で選定されている。映像に映し出される部位に発生する病理所見を肉眼的に想起していただきたい。
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目次

肩関節  
 CLIP1 体幹前面と背面の筋群をみる 
  大胸筋と三角筋の動きをみる
  前鋸筋の起始部と停止部をみる
  三角筋を側面よりみる
  僧帽筋と三角筋後部をみる
  肩甲挙筋をみる
  小胸筋と鎖骨下筋および前鋸筋をみる
  共同腱(上腕二頭筋短頭,烏口腕筋)をみる
  上腕三頭筋長頭と大円筋および外側腋窩隙をみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP2 肩鎖関節・肩関節の構造と腱板筋をみる 
  烏口肩峰アーチと上腕骨大結節をみる
  棘上筋と棘上筋腱をみる
  棘下筋と小円筋をみる
  小円筋をみる
  肩甲下筋と烏口下滑液包をみる
  肩鎖関節・肩関節の骨・関節構造
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  肩腱板筋の構造
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP3 烏口上腕靱帯,肩甲上腕靱帯,後方関節包をみる 
  烏口上腕靱帯をみる
  烏口上腕靱帯と腱板疎部をみる
  肩関節前方関節包と肩甲上腕靱帯をみる
  肩関節後方関節包をみる
  烏口上腕靱帯,肩甲上腕靱帯,前方関節包,後方関節包の構造
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP4 肋鎖間隙上下部での筋群と鎖骨および腕神経叢をみる 
  投球肢位での肩関節前面の筋・神経をみる
  鎖骨上・下部の腕神経叢をみる
  外側腋窩隙と腋窩神経をみる
  鎖骨顆部の腕神経叢をみる
  鎖骨上窩での肩甲上神経をみる
  肩甲棘基部での肩甲上神経をみる
  神経の解剖,筋肉の解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP5 鎖骨上窩での筋群と鎖骨および腕神経叢をみる 
  前斜角筋,中斜角筋,後斜角筋と腕神経叢をみる
  腕神経叢と第1肋骨および鎖骨下動静脈をみる
  腕神経叢と肩甲帯下制をみる
  Edenテスト
  Wrightテスト
  投球加速相
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP6 肩関節と上腕の前後面に存在する筋群をみる 
  三角筋,小円筋,大円筋,広背筋と上腕三頭筋長頭をみる
  上腕三頭筋長頭・外側頭・内側頭をみる
  上腕二頭筋長頭・短頭と烏口腕筋をみる
  上腕二頭筋,上腕筋,腕橈骨筋,円回内筋をみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  anatomical words and phrases【肩関節】
肘関節  
 CLIP7 前腕外側および深部に存在する伸筋群をみる 
  腕橈骨筋,長・短橈側手根伸筋,総指伸筋,尺側手根伸筋をみる
  長・短橈側手根伸筋,回外筋,回内筋,尺側手根屈筋と後骨間神経をみる
  短橈側手根伸筋,回外筋,円回内筋と後骨間神経をみる
  肘部管での尺骨神経をみる
  解剖,機能解剖および臨床への応用
 CLIP8 肘関節の関節包,靱帯,前腕骨間膜をみる 
  肘関節外側側副靱帯と輪状靱帯をみる
  肘関節後方関節包をみる
  肘関節前方関節包をみる
  肘関節内側側副靱帯をみる
  前腕骨間膜をみる
  肘関節外側側副靱帯,輪状靱帯と腕尺関節をみる
  肘関節外側支持機構
  解剖,機能解剖と臨床への応用
  肘関節内側支持機構
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP9 肘関節から前腕の正中神経,尺骨神経,橈骨神経をみる 
  肘関節での正中神経と屈筋群をみる
  前腕掌側での正中神経と屈筋群をみる
  前腕尺側での尺骨神経と屈筋群をみる
  肘関節橈側での橈骨神経をみる
  正中神経(C6-T1)
  解剖
  支配筋
  感覚支配
  臨床への応用
  尺骨神経(C8+T1)
  解剖,支配筋,感覚支配,臨床への応用
  橈骨神経(C5-T1)
  解剖,臨床への応用
  anatomical words and phrases【肘関節】
前腕の筋  
 CLIP10 前腕屈筋群をみる 
  浅指屈筋と手根管をみる
  長掌筋をみる
  長母指屈筋と浅指屈筋をみる
  深指屈筋と手根管をみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP11 前腕伸筋群をみる 
  総指伸筋,固有示指伸筋と固有小指伸筋をみる
  尺側手根伸筋をみる
  総指伸筋と短・長橈側手根伸筋をみる
  長母指伸筋をみる
  短母指伸筋をみる
  長母指外転筋をみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  anatomical words and phrases【前腕の筋】
手・手関節  
 CLIP12 指屈筋腱,腱鞘をみる 
  浅指屈筋腱と腱紐,腱交叉をみる
  指屈筋腱靱帯性腱鞘をみる
  深指屈筋腱と腱紐をみる
  屈筋腱靱帯性腱鞘と腱の浮き上がりをみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP13 母指球筋,小指球筋をみる 
  母指球筋をみる
  母指内転筋をみる
  小指球筋をみる
  方形回内筋をみる
  母指球筋
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  小指球筋
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  手関節掌側の筋
 CLIP14 掌背側骨間筋,虫様筋,伸筋をみる 
  虫様筋と側索をみる
  掌・背側骨間筋をみる
  指伸筋腱,指背腱膜と中央索をみる
  示指伸筋腱と第1背側骨間筋をみる
  解剖,機能解剖,臨床への応用
 CLIP15 手関節と手関節包をみる 
  手関節背側の靱帯をみる
  手関節掌側の靱帯をみる
  手関節尺側の靱帯をみる
  手関節背側から橈側の靱帯をみる
  手関節橈側の靱帯をみる
  解剖,機能解剖および臨床への応用
 CLIP16 遠位橈尺関節と三角線維軟骨複合体をみる 
  遠位等尺関節を背側よりみる
  遠位等尺関節を掌側よりみる
  遠位等尺関節を側面よりみる
  遠位等尺関節尺側部を掌側よりみる
  解剖,機能解剖および臨床への応用
  anatomical words and phrases【手・手関節】
手指  
 CLIP17 母指CM関節をみる 
  母指CM関節を背側よりみる
  母指CM関節を掌側よりみる
  母指CM関節を橈側よりみる
  母指CM関節と舟状骨の動きをみる
  解剖,機能解剖および臨床への応用
 CLIP18 PIP関節側副靱帯,虫様筋をみる 
  PIP関節の指背腱膜と中央索,側索をみる
  母指内転筋と虫様筋をみる
  深指屈筋腱と虫様筋をみる
  PIP関節主・副側副靱帯をみる
  PIP関節
  解剖
  虫様筋
  解剖,機能解剖,臨床への応用
  手背腱膜
  解剖,機能解剖
  側索
  解剖
  anatomical words and phrases【手指】
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