腰痛 知る診る治す

腰痛 知る診る治す

■編集 清水 克時

定価 9,350円(税込) (本体8,500円+税)
  • B5変型判  208ページ  2色,イラスト180点,写真180点
  • 2008年11月27日刊行
  • ISBN978-4-7583-1029-1

腰痛を知って,診て,治す!

日常診療で多く触れる腰痛であるが,その実態は多用である。痛みを根治し再発を防ぐには原疾患を正しく理解し,ときに保存,ときに手術と適切な対応を採る必要がある。
本書では主な腰痛疾患に対し「知る」「診る」「治す」の観点から,病態の理解・診断・治療の解説を記載している。さらに保存療法の要である「運動療法」「ブロック療法」,専門医への紹介のタイミングを示した「病診連携」,治療の最終手段である「手術療法」についても備えている。腰痛の治療にあたり必ずや力となる1冊である。


序文

 腰痛は日常診療で遭遇する頻度が大変高い疾患である。腰痛の診療には診断,保存療法,手術療法,リハビリテーションとさまざまな段階があるが,腰痛患者は人数が多いため,ひとつの施設でそのすべての段階をまかなうことはむずかしく,診療形態の違いによる医師の役割分担が進んでいる。
 一般的に,開業医は診断と保存療法,一般病院では,保存療法と手術療法,さらに大学病院では高度な診断や手術というように,機能を分担している。これは,限られた医療資源(医療従事者と施設)を有効に使って多くの患者に対処する必要から生まれた機能分化である。この機能分化を束ねるシステムとして病診連携がある。病診連携とは,開業医から病院へ,逆に病院から開業医へ,あるいは病院間で患者を紹介するシステムである。
 腰痛の原因はさまざまであるが,いずれの場合も初診時の診断が重要で,とくに,問診,視診,触診は,診療全体のなかで最も重要といえる。初期の対応は,整形外科医,内科医,外科医などのプライマリーケア医が行う場合が多いが,病診連携を適切に行うためには,診断から保存療法,手術療法に至るまで,全体の流れを見通せる必要がある。本書は,日常診療のなかで行われる腰痛診療に対する正しいアプローチと専門医へ紹介するタイミングを解説した実践書である。
 私が岐阜大学整形外科に着任してから早くも12年が経ち,この間,大学病院,市中病院,開業医のあいだで腰痛診療における良い紹介関係を作ることに努力してきた。医師会,臨床整形外科医会,岐阜大学整形外科同門会の協力を得ながら,診断,保存療法,手術療法の役割分担を意識し,岐阜県では理想的な病診連携システムができあがったと思っている。さらに疾患によっては全国的な病診連携にまで広がり,岐阜県には全国から腰痛患者が紹介されてきている。本書はこのような状況を背景にして岐阜大学整形外科学教室,関連病院,開業医の先生方の共著によりでき上がっている。
 病診連携は腰痛の診療に必要なシステムであるが,患者にとっては複数の施設を回る必要があり,診断から治療までがひとつの施設で完結しないという欠点がある。この欠点を補うのが,診療の役割分担についての十分な説明,十分な診療情報を載せた紹介状,そして紹介先の医師や患者に対する思いやりである。幸い,岐阜市のような地方都市では,整形外科医のコミュニティーはそれほど大きくないので,プライマリーケア医と専門医のface-to-face communication が可能である。インターネットが発達した現代だからこそ,人間的なふれあいが益々重要になってきている。大都会に比べて,face-to-face communicationが得られやすい地方都市だから,理想的な病診連携システムができたのかも知れない。そうです。腰痛診療の病診連携で最も大切なのは,思いやりである。紹介先の医師や看護師の立場,患者の立場を思いやりながら連携するのでなければ,病診連携は「たらい回し」にもなりかねない。連携先の診療形態や,患者の住居地,職場の地理をよく考えて,患者のために最も有効な連携を組もうという思いやりこそ,腰痛診療に必須なものだと考えている。

2008年10月
清水克時
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目次

・腰痛を知る
 腰痛の診断とは  和田栄二
 ■腰痛は痛みの四重奏
 1 神経障害
 2 慢性疼痛:いわゆる慢性腰下肢痛
 3 脊柱変形:側弯症,後弯症,円背(腰曲がり,頚垂れ)
 4 病理疾患:腫瘍,感染症,炎症,循環障害など
 ■疼痛スペクトル分析による診断
 ■腰痛の診察
  問診/理学所見
 腰痛の画像診断  榮枝裕文
 ■単純X線像から得られる情報
  脊椎骨格部X線像のポイント
  仙腸関節・骨盤・股関節X線像のポイント
 ■CTから得られる情報
  CT画像のポイント
 ■MRIから得られる情報
  MRI画像のポイント
 ■脊髄腔造影から得られる情報
  脊髄腔造影画像のポイント
 ■選択的神経根造影・神経根ブロックから得られる情報
  選択的神経根・神経根ブロック画像のポイント
 ■椎間板造影から得られる情報
  椎間板造影画像のポイント
 ■骨シンチグラフィーから得られる情報
  骨シンチグラフィー画像のポイント
 CASE Library
  CASE 1 脊柱管狭窄症
  CASE 2 椎間板ヘルニア
  CASE 3 脊椎不安定症
  CASE 4 多発性骨髄腫
  CASE 5 化膿性脊椎炎(L2/3)
  CASE 6 強直性脊椎骨増殖症
  CASE 7 腰椎変性側弯症
  CASE 8 L3圧迫骨折後偽関節
 腰痛の病診連携  児玉博隆,清水克時
 ■生活機能病としての腰痛
 ■腰痛診断・治療のアプローチ
  高齢者の腰痛/慢性腰痛症
 ■円滑な病診連携の実際
・腰痛を診る・治す
 腰部脊柱管狭窄症  中村正生
 ■腰部脊柱管狭窄症とは
  馬尾型,混合型/神経根型
 ■診るー症状
  問診/視診(姿勢因子)
 ■診るー検査
  立位負荷試験/神経学的所見/筋力低下
 ■診るー画像診断
  単純X線/MRI/脊髄造影(CTMを含む)/神経根造影
 ■診るー鑑別診断
  血管性間欠跛行(閉塞性動脈硬化症)/脊髄性間欠跛行
  腰椎椎間板ヘルニア/糖尿病性神経障害
 ■治すー保存療法
  薬物療法/装具療法/ブロック療法/理学療法/病診連携
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング/術式適応/心理的ケア
 腰椎椎間板ヘルニア  岩田 淳
 ■腰椎椎間板ヘルニアとは
 ■診るー症状
  視診/問診
 ■診るー検査
  神経学的所見
 ■診るー画像診断
  MRI/CT/単純X線/椎間板造影後CT(CTD)
  神経根造影/画像診断の注意点
 ■診るー鑑別診断
  成人の場合/若年者の場合
 ■治すー保存療法
  安静と装具療法/薬物療法/硬膜外ブロック療法
  骨盤牽引療法/病診連携
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング/術式適応
 腰椎分離症・すべり症  野澤 聡,清水克時
 腰椎分離症
 ■腰椎分離症とは
 ■診るー症状
  初期の分離症/慢性期の分離症
 ■診るー画像診断
  初期の分離症/慢性期の分離症
 ■治すー保存療法
  初期の分離症/慢性期の分離症
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング
 腰椎すべり症
 ■腰椎すべり症とは
 ■診るー症状
 ■診るーすべり評価
 ■治すー保存療法
  薬物療法/装具療法/ブロック療法/病診連携
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング
 転移性脊椎腫瘍  細江英夫
 ■転移性脊椎腫瘍とは
 ■診るー既往歴の確認
  悪性腫瘍の治療歴がある場合/悪性腫瘍の治療歴がない場合
 ■診るー画像診断
  単純X線/MRI,CT,エコー,骨シンチグラフィー
 ■診るー鑑別診断
  原発性脊椎腫瘍/腫瘍類似疾患
  感染症(化膿性脊椎炎,結核性脊椎炎)/骨粗鬆症性骨折
 ■治すー保存療法
  原発巣が判明した場合/原発巣が未治療の場合/疼痛対策
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング/術式適応/不安定性に対する手術適応
  予後予測からみる手術適応/麻痺への手術適応
  病変の広がりからみる手術適応
 脊椎骨髄炎  福田章二
 化膿性脊椎炎
 ■化膿性脊椎炎とは
 ■診るー症状
  発熱/激しい腰背部痛/神経症状
 ■診るー検査
  起炎菌/分類/血液検査
 ■診るー画像診断
  単純X線/MRI
 ■診るー鑑別診断
 ■治すー保存療法
  治療方針/装具療法ー外固定/薬物療法/病診連携
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング/術式適応
 結核性脊椎炎
 ■結核性脊椎炎とは
 ■診るー症状
  発熱/腰痛部位の特徴
 ■診るー検査
  血液検査/単純X線/CT/MRI/その他の検査法
 ■治すー保存療法
  治療方針/化学療法/病診連携
 ■治すー保存から手術へ
  手術へのタイミング/術式適応
 腰痛の運動療法  青木隆明
 ■腰痛に対する運動療法
 ■外来で指導する自動的運動療法
  McKenzieの体操/Williamsの体操/Pheasantの体操
  アメリカ整形外科学会の腰痛運動ガイド
 ■他動的運動療法
  Lumbar-Hip-Knee Position(姿勢を診る)
  筋の短縮・延長・収縮不全・圧痛点のテスト/評価をふまえたオーダー
 ■腰痛に対する運動療法の限界
 腰痛のブロック療法  坂口康道
 ■腰痛に対するブロック療法
 ■硬膜外ブロック
  仙骨硬膜外ブロック/腰部硬膜外ブロック
 ■神経根ブロック
 ■椎間板造影・椎間板注入療法
 腰痛の手術療法  西本博文
 ■腰痛診療における手術療法
  病診連携の心得
 ● 腰部脊柱管狭窄症
 ● 腰椎椎間板ヘルニア
 ● 腰椎分離症
 ● 腰椎すべり症,分離すべり症
 ● 脊椎圧迫骨折,骨粗鬆症性椎体圧潰
 ● 転移性脊椎腫瘍,脊髄腫瘍(馬尾腫瘍)
 ● 化膿性脊椎炎
 ●結核性脊椎炎(脊椎カリエス)

 
Caution
 痛みの四重奏の具体例
 常に“上には上がある”を忘れずに
 T12,L1,L2での落とし穴
 単純X線では判断できないこと
 骨シンチグラフィーの弱点
 高齢者の腰痛と転移性脊椎腫瘍
 腰痛に対する実地診療の心得
 sensory march
 下垂足
 画像による即断は厳禁!
 上位脊椎の病変も忘れずに
 薬物療法の限界
 装具療法の限界
 ブロック療法の限界
 理学療法の限界
 手術効果を過信させることは禁物
 腰椎椎間板ヘルニア診断のポイント
 MRIが第1選択(腰椎椎間板ヘルニア)
 無症候性のヘルニアに注意!
 本症に対する装具療法の注意点
 本症に対する薬物療法の注意点
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