Revision TKAの基本手技

人工膝関節再置換術

確かな機能の再建をめざして

人工膝関節再置換術

■編集 勝呂  徹

定価 13,200円(税込) (本体12,000円+税)
  • B5変型判  216ページ  上製,オールカラー,イラスト163点,写真203点
  • 2009年5月18日刊行
  • ISBN978-4-7583-1031-4

TKAの再置換術に取り組むドクターに必要不可欠な一冊

再置換術では,インプラントの抜去により生じる骨欠損をいかに最少限に留めるか,骨欠損をいかに修復させて新たなインプラント挿入・固定の土台を再建するか,アライメントと軟部組織バランスをいかに再度獲得するかなど,さまざまな工夫と労力が要求される。本書ではこれらを一つずつ取り上げ,手技の手順や操作のポイントをイラストで理解できるように構成されている。何が手技のポイントか? それが一目でわかるように,本文では〈Revision TECHNIQUE〉〈Revision TROUBLE SHOOTING〉として,イラストでは〈POINT〉として表記されているので,瞬時に的確に把握することができる。さらに再置換術に伴う合併症の解説と対策,再置換術でのインプラントの選択法,初回TKAから再置換術に至った症例の経過を画像でコンパクトにまとめた「画像でみる再置換術」など,より高い機能回復を得るための再置換術に取り組むドクターに必要不可欠な一冊である。


序文

 現在,人工膝関節置換術(初回TKA)は年間約5万件が行われている。それらが3年,5年,10年を経ることにより,人工関節に何らかの障害(弛み,感染,骨折など)を生じるようになり,現在,人工膝関節再置換術(再置換術)の適応となる患者が増加してきている。初回TKAの約5%が再置換術の適応となる時代が始まっている。再置換術は,初回TKAの手術を多数経験した医師だからこそ行える手術であり,初回TKAの手技を習得している医師でなければ良い結果を得ることは困難である。熟練した医師であっても実際の現場では苦労をしているのが現状であろう。
 再置換術と初回TKAの最大の相違は,再置換術が大腿骨側と脛骨側にすでに挿入されているインプラントを抜去することから始まるという点である。過去にしっかり固定された人工関節に弛み,感染,骨折などの障害が生じたために抜去するわけであるが,そのために膝関節は初回TKAの際とかなり異なった状況に置かれている。1.膝関節を展開する際にも,軟部組織の拘縮などにより展開しにくくなっているため,皮切にも工夫が必要になる。2.人工関節を抜去する際,多くの場合は骨セメントが使用されているため,できる限り骨に損傷を与えることなく人工関節を取り出し,骨セメントを取り除く作業には慎重さと多くの労力が要求される。3.細心の注意をはらいながら人工関節を抜去しても,そこには骨欠損が生じる。その欠損部位をしっかりと修復しなければ再び人工関節を挿入・固定することはできない。4.人工関節が再度良好な機能を得るための重要なポイントは,初回TKAと同様で〈アライメントの獲得〉と〈軟部組織バランスの獲得〉である。そしてこの2つを再び獲得するために高度なテクニックが要求されるのである。
 本書では,手術で行われる操作を一つずつ取り上げ,手技の手順やポイントをダイナミックに表現されたイラストで理解できるように構成されている。〈Revision TECHNIQUE〉〈Revision TROUBLE SHOOTING〉を随所に掲載しているので,ポイントの把握に役立てていただきたい。
 本書がこれから再置換術に携わろうとされている医師の方々,すでに苦労しながら取り組んでいらっしゃる医師の方々のための実践書となれば幸いである。

2009年1月
勝呂 徹
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目次

再置換術の現状と今後
 日本における人工膝関節再置換術の現状  勝呂 徹
  日本と海外における人工膝関節再置換術の現状
  再置換術増加の原因
   患者因子
   外的因子
  再置換術の実際
   適応決定のポイント
   インプラントによる問題と再置換
   再置換術時のポイント
  インフォームドコンセント
  今後の展望
   
再置換術のための診断
 TKA後のpainful kneeの分類と種類  松田秀一
  TKA後のpainful kneeの分類
   治療計画を立てるためのポイント
  painful kneeの種類
   疼痛出現の時期
   疼痛の種類と誘因
   
 臨床所見からみた適応  松田秀一
  歩行状態
   歩行状態をよく観察する
  視診
   下肢の外観,肢位を観察する
  触診
   熱感,腫脹,感覚障害の有無を診察する
   圧痛部位,疼痛の再現性を確認する
  可動域および筋力
   自動および他動可動域の計測,膝関節周囲の筋力評価を行う
  不安定性
  伸展機構の障害
   膝蓋骨の可動性,可動時痛について診察する
   伸展機構における圧痛の有無,膝蓋骨のトラッキングを調べる
  血液検査所見
  膝関節以外の原因の探索
   
 画像所見からみた適応  松田秀一
  X線所見
   膝関節正面像
   膝関節側面像
   軸写像(skyline view)
   ストレスX線像
  シンチグラフィー
   Technetium Tc 99m phoshate
   Gallium 67 citrate
   Indium-111-labelled leukocyte
  CTスキャン
  MRI
  PET
   
 再置換の適応とタイミング  松田秀一
  コンポーネントの弛み,破損
  不安定性
   内反・外反の不安定性
   前方・後方の不安定性
  伸展機構の障害
   膝蓋骨亜脱臼
   膝蓋骨非置換
   パテラクランクシンドローム
  摩耗,osteolysis
  感染
  可動域の不良
   術後リハビリ不足による拘縮
   拘縮による可動域制限
   
 術前計画  松田秀一
  初回TKAと異なる点
   良好な固定を目指す
   脛骨を先に再建
  手術手順と計画
   皮切
   深部の展開
   コンポーネントの抜去
   脛骨コンポーネントの設置
   大腿骨コンポーネントの回旋位置およびサイズ
   大腿骨コンポーネントの位置(近位ー遠位位置)
   膝蓋骨
  ステム固定はセメントかセメントレスか
  部分的な再置換はあり得るか
   インサートのみ置換
   大腿骨コンポーネントのみ置換
   脛骨コンポーネントのみ置換
   膝蓋骨コンポーネントの置換
   
再置換術の手技
 膝関節の展開  高井信朗
  皮切
  膝関節の展開
   quadriceps(rectus)snip
   quadriceps turn-down
   脛骨粗面骨切り
   
 人工関節の抜去法  宮崎芳安
  ポリエチレンインサートの抜去
  大腿骨インプラントの抜去
  脛骨インプラントの抜去
  膝蓋骨インプラントの抜去
   
 骨欠損に対する手技  中村卓司
  骨欠損の主な原因
  形態からみる骨欠損
   central defect
   peripheral defect
  分類からみる骨欠損
  単純X線像からみる骨欠損
  骨欠損の対処法
   大腿骨の骨欠損
   脛骨の骨欠損
   
 アライメントの再建法  野崎博之
  アライメント不良が与える影響
  アライメント異常の種類と再建法
  大腿骨コンポーネントのアライメントの再建
   内・外反アライメント
   回旋アライメント
   屈曲・伸展アライメント
   近位・遠位のアライメント(joint line)
   内・外側の設置位置
   前後の設置位置
  脛骨コンポーネントのアライメントの再建
   脛骨コンポーネントの回旋アライメント
  延長ステムとアライメント不良,位置異常
   延長ステム
   アライメント不良
  コンポーネントのアライメントと伸展・屈曲ギャップ
   屈曲ギャップがきつく,伸展ギャップが弛い膝
   屈曲ギャップは適正だが,完全伸展できない膝
   屈曲ギャップが弛く,伸展ギャップがきつい膝
   
 軟部組織靱帯バランスの再獲得法  鈴木昌彦
  術前評価,術前計画
  バランスの再獲得法
   内反・外反の安定性
   伸展・屈曲ギャップバランス
   回旋の安定性
   
 インプラントの固定法  津村暢宏
  ステム固定法の選択肢
   セメントステム
   プレスフィットステム
  セメント固定法
  膝蓋骨の再置換
   膝蓋骨の厚みが10mm以上の場合
   膝蓋骨の厚みが10mm以下の場合
   
 インプラントの機種の選択  勝呂 徹
  再置換術のインプラントに必要な条件
  機能不全に対する機種の選択
   ポリエチレンインサートの摩耗,破損に対する機種の対応
   靱帯機能不全に対する機種の選択基準
  インプラント固定法の選択
   
再置換術に伴う合併症対策
 ポリエチレン(PE)の摩耗(UHMWPE;超高分子量ポリエチレン)  土田豊実
  摩耗の原因
  PEの特徴
  摩耗の実際
   Ram extrusion molded,Eo滅菌PE(77歳,女性)
   Direct compression molded,Eo滅菌PE(68歳,女性)
   Ram extrusion molded 酸素下γ線滅菌PE(70歳,女性)
   Ram extrusion molded 酸素下γ線滅菌PE(67歳,女性)
  摩耗による再置換時の処置
   PEの入れ替え
  PEの改良
   
 弛み  衛藤義人
  弛みの原因
   osteolysis
   患者側の問題
   インプラントの要因
   コンポーネントデザイン
   バックサイドウエアー
   大腿骨コンポーネントの形状の粗さ
   手術手技
  弛みの実際
  弛みに対する再置換時の処置
   手術創の展開法
   骨欠損に対する処置
   インプラントの固定法
  弛みの予防法
   摩耗やosteolysisの計測
   
 感染症  木村正一
  感染のタイプと治療法
   感染の3タイプ
   遅発性感染
  感染を誘発する原因
  再置換術後感染の実際
   症例
  再置換術後感染に対する処置
   遅発性感染以外の場合
   遅発性感染の場合,掻爬,洗浄で治癒できなかった場合
  再置換術後感染の予防法
   
 骨折  長嶺隆二
  骨折を引き起こす原因
  術中の操作順に起こりうる骨折
  再置換術中骨折の処置と予防法
   関節展開時の脛骨粗面膝蓋腱付着部の剥離骨折
   コンポーネントを抜去する際の顆部骨折
   脛骨関節面展開時の大腿骨顆部骨折
   ボーンソーによる骨切り時の顆部骨折
   コンポーネント挿入時の顆部骨折,骨幹部骨折
   厚い脛骨インサート装着後の大腿脛骨関節整復時の脛骨顆部骨折
   膝蓋骨コンポーネント再置換時の膝蓋骨骨折
   
リハビリテーション
 術前・術後のリハビリテーション  黒瀬靖郎
  術前に行われるリハビリテーション
  術後に行われるリハビリテーション
  手術時の操作とインプラントによるリハビリテーション処方
   関節の展開と術後プログラム
   骨欠損に対し骨移植が行われた場合
  再置換の原因別リハビリテーションの実際
   再置換の原因
   術前・術後のリハビリテーション計画
   症例
  再置換術後のリハビリテーションのポイント
   
画像でみる再置換術
 感染が原因で再置換術の適応となった症例  三上 浩
  再置換術までのプロセス(左膝,75歳,女性)
  初回TKA後(75歳)
  再置換術の適応像(76歳)
  手術時のポイント
  術後経過(76歳)
 感染が原因で再置換術の適応となった症例  砂原伸彦
  再置換術までのプロセス(右膝,60歳,女性)
  初回TKA後(62歳)
  再置換術の適応像
  手術時のポイント
  術後経過(65歳)
 大腿骨側が原因で再置換術の適応となった症例  宮崎芳安
  再置換術までのプロセス(右膝,72歳,女性)
  初回TKA後(65歳)
  再置換術の適応像(69歳)
  手術時のポイント
  術後経過(71歳)
 脛骨/大腿骨側が原因で再置換術の適応となった症例  八木知徳
  再置換術までのプロセス(左膝,82歳,女性)
  初回TKA後(81歳)
  再置換術の適応像(82歳)
  手術時のポイント
  術後経過(82歳)
 脛骨側が原因で再置換術の適応となった症例  宮本隆司
  再置換術までのプロセス(右膝,当科受診当時73歳,女性)
  初回TKA後(68歳)
  再置換術の適応像(73歳)
  手術時のポイント
  術後経過(77歳)
 膝蓋骨脱臼が原因で再置換術の適応となった症例  高井信朗
  再置換術までのプロセス(右膝,72歳,女性)
  初回TKA後(72歳)
  再置換術の適応像(73歳)
  手術時のポイント
  術後経過(74歳)
 膝蓋骨が原因で再置換術の適応となった症例  宮本浩秀,木全則文
  再置換術までのプロセス(左膝,73歳,男性)
  初回TKA後(66歳)
  再置換術の適応像(73歳)
  手術時のポイント
  術後経過(77歳)
   
   索引 
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