臨床アプローチ

急性期呼吸理学療法

急性期呼吸理学療法

■編集 高橋 仁美
神津 玲
山下 康次

定価 4,400円(税込) (本体4,000円+税)
  • B5変型判  308ページ  2色(一部カラー),イラスト136点,写真146点
  • 2010年9月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-1130-4

急性期の呼吸ケアに携わる理学療法士必携の臨床ガイド

呼吸障害は呼吸器疾患だけでなく広範な疾患で起こりうる。呼吸障害を未然に防ぎ,また早期離床を目指すため,呼吸理学療法は急性期の人工呼吸管理下でも行うようになってきており,その重要性は高まる一方である。
ICUや病棟の急性期など特にリスクの高い状況でも,呼吸機能の回復を図るため,できるだけ早期に呼吸理学療法を開始するべきである。しかし術直後は麻酔の影響,不安定な全身状態,痛み,手術創,チューブ,ドレーンなど数多くの要因により,単なる体位排痰法や呼吸練習だけでは対応できない状況が多い。
本書はこの急性期呼吸理学療法について,臨床で活用できる知識と手技を網羅した。多職種との連携も視野に入れ,各項の冒頭には要点をまとめたほか,囲み記事「今すぐできる」「注意しよう」「ステップアップしよう」を設け,初学者でも注意すべき点やコツがわかる紙面となっている。
一部手技など,重要度の高い内容については写真をカラー掲載した。


序文

 近年,呼吸理学療法は,多くの施設で行われるようになり,その重要性も広く認識されてきている。特に,2006年4月の診療報酬の改定で「呼吸器リハビリテーション料」が新設され,さらに,2010年4月の改定における「呼吸ケアチーム加算」で理学療法士が必須の職種として認められたことは,臨床現場でいかに呼吸理学療法が期待されているかを如実に表しているものと思われる。
 呼吸理学療法の適応は,慢性期はもちろん,急性期の人工呼吸管理下の重症の患者さんなど非常に多岐にわたる。臨床現場においては,慢性期の患者さんに対する呼吸理学療法は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を中心としたガイドラインの他,さまざまな教科書やテキストなどが発行され,これらに基づいて実践できる環境が,書籍上,整ってきたと思われる。一方,急性期の患者さんに対しては,エビデンスに基づいたガイドラインはまだ確立されておらず,急性期呼吸理学療法に特化した書籍は非常に少ない。このように拠り所となる書物が不十分ななか,急性期の患者さんに対する呼吸理学療法の実践は,リスクもあるため,なかなか困難なように思われる。特に,経験の浅い理学療法士にとっては,急性期では各種のデータやモニターなどさまざまな情報をもとに適切な判断を迅速に求められるため,荷が重く,不得手とするところだと想像する。
 そこで,今回,比較的経験の浅い理学療法士を対象とした急性期呼吸理学療法の入門書を企画した。急性期の呼吸理学療法の実践には,外科的,内科的治療と並行しながら,病態の理解と適切なリスク管理のもと,他の医療職が実施する治療や処置を理解したうえで,介入することが必要不可欠となる。呼吸理学療法は,特殊なテクニックを習得しなければ実践できないわけでは決してない。大切なことは,まずは,患者さんの病態を正確に評価し,基本的な理学療法が行えることだと考える。
 本書は,呼吸理学療法の手技を解説するマニュアル本ではない。臨床現場では,決まりきったテクニックをルーチンに行うのではなく,フィジカルイグザミネーション,各種のデータ,胸部X線写真やCT,モニターなどにより,目の前にいる患者さんの状態を的確に把握して,根拠や妥当性を自分に問いかけ,自分のできる最も適切な理学療法を安全に実施することが重要である。そういった意図で,本書の執筆は,第一線の臨床現場でご活躍されている気鋭の先生方にご依頼した。日々多忙な診療のなかでご尽力いただいたことに深く敬意を表すとともに,本書が極めてレベルの高い内容になったことに心から感謝申し上げる。本書が,臨床の場で役立つことを望むとともに,呼吸理学療法を必要とする急性期の患者さんに最大限役立てられることを心から念願する。
 最後に,本書の編集に関して,多大なご尽力を賜ったメジカルビュー社編集部の間宮卓治氏に心から感謝を申し上げる。

2010年9月
高橋仁美
神津 玲
山下康次
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目次

1章 急性期の問題点と呼吸理学療法の基本的考え方   
 1 急性期の問題点  今中秀光
  急性呼吸不全 
 2 急性期呼吸理学療法の必要性  安藤守秀
  2つの急性期呼吸理学療法 
  集中治療室における超急性期の呼吸理学療法 
  呼吸器病棟などにおける急性期から回復期にかけての早期呼吸理学療法 
 3 急性期呼吸理学療法のリスク管理  高橋仁美,神津 玲,山下康次
  リスク管理のためのアセスメントのポイント 
  急性期呼吸理学療法におけるリスク管理の実際 
  人工呼吸器管理における理学療法の注意点 
  終わりに 

2章 急性期呼吸理学療法に関連する基礎知識:ミニマム・エッセンス   
 1 急性期呼吸障害治療の基本的考え方  佐藤貴久,大石 奏,松本 剛,岡元和文
  呼吸障害の原因と症状 
  呼吸障害の病態 
  呼吸障害の治療 
 2 全身管理  竹田健太
  栄養管理 
  標準感染予防対策 
  人工呼吸器関連肺炎(VAP) 
  全身管理のための周辺機器 
  持続的血液透析 
 3 薬物治療  山下幸一
  鎮静に関して 
  鎮静薬の使用に関する注意事項 
  主に使用される鎮静薬とその特徴 
  鎮痛に関して 
  主に使用される鎮痛薬とその特徴 
  筋弛緩薬に関して 
  喘息発作に対する薬物療法 
 4 呼吸管理  長谷川隆一,丹羽雄大
  急性期理学療法における酸素療法 
  人工呼吸療法の基礎 
  気管吸引手技 
 5 循環管理  大塚将秀
  虚血性心疾患 
  うっ血性心不全 
  不整脈 
  高血圧症 
  動脈硬化症 
  血管内脱水 
  循環血液量過多 
 6 摂食・嚥下機能  神津 玲
  正常な摂食・嚥下のメカニズム 
  摂食・嚥下と呼吸の関係 
  摂食・嚥下障害の病態 
  急性呼吸障害に伴う摂食・嚥下障害の特徴とその影響 
 7 口腔ケアと誤嚥性肺炎  大野友久
  口腔ケアとは 
  誤嚥性肺炎と口腔ケア 
  口腔ケアの基礎知識 
  口腔ケア実施時のポイント 
 8 体位変換について  小松由佳
  はじめに 
  急性期における体位変換の目的 
  急性期呼吸理学療法における体位変換の重要性 
  急性期呼吸理学療法における体位変換の実際 
  高機能ベッドの活用 
  おわりに 

3章 患者のアセスメント   
 1 情報収集項目(画像・血液ガスも含む)  横山仁志
  情報収集の必要性 
  基本情報 
  画像所見 
  動脈血液ガス(ABG) 
  血液・生化学と他の関連評価・検査項目 
 2 モニタリング  尾野敏明
  はじめに 
  パルスオキシメーター 
  カプノメーター 
  人工呼吸器グラフィックモニター 
 3 フィジカルイグザミネーション  岸川典明
  視診 
  触診 
  聴診 
  打診 
 4 運動機能の評価  宮崎慎二郎
  急性期呼吸理学療法における運動機能評価の目的 
  運動機能の評価の実際:関節可動域 
  運動機能の評価の実際:筋力 
  人工呼吸管理中に注意すべき運動機能障害 
 5 換気およびガス交換のアセスメント  嶋先 晃
  換気評価の指標をどうみるか? 
  肺酸素化能の評価 
  人工呼吸中の換気力学的評価 

4章 適用される呼吸理学療法の基本的手技   
 1 リラクセーション  萩森康孝
  はじめに 
  リラクセーションの方法 
  リラクセーションの効果と適応 
  リラクセーションの評価 
  リラクセーションの基本手技 
 2 ポジショニング  山下康次
  ポジショニングの重要性 
  ポジショニングとは? 
  重力がポジショニングに与える影響 
  なぜポジショニングが必要なのか? 
  集中治療ではどのようなポジショニングが必要なのか? 
  体位管理を行ううえで注意しなければいけないこと 
  おわりに 
 3 呼吸練習  今川英俊
  開胸・開腹術が呼吸機能に及ぼす影響 
  術前呼吸練習 
  術後呼吸状態の特徴 
  術後呼吸練習 
 4 排痰法  武市梨絵
  排痰の基本 
  末梢気道からの分泌物の移動 
  中枢気道からの分泌物の移動 
 5 モビライゼーション  長谷川 聡
  モビライゼーションが身体に及ぼす影響 
  急性呼吸不全患者に対するモビライゼーションの効果 
  モビライゼーションに伴うリスク 
  モビライゼーションの基準・条件 
  モビライゼーションの実際 
  手術後症例に対するモビライゼーションの進め方 
 6 術前の指導  畠山和利
  術前呼吸理学療法はこのように考えよう 
  呼吸器合併症発生のリスクファクター 
  術前指導は何を行えばよいか? 
  術前呼吸理学療法の評価項目 
  術前呼吸理学療法の実際と指導のポイント 
  術前オリエンテーションのポイントは? 

5章 人工呼吸器と呼吸理学療法   
 1 自発呼吸と陽圧換気の違い  尾崎孝平
  はじめに 
  自発呼吸と陽圧人工呼吸の違い 
  不均等換気:肺胞レベル 
  不均等換気:横隔膜と胸郭の動き 
  無気肺の改善と質のよい自発呼吸 
  流量パターン(フローパターン) 
  変動性・定常性・自由度 
  自発呼吸の温存が不適当な場合 
 2 換気モードと呼吸理学療法  尾崎孝平
  はじめに 
  換気モードの成り立ち 
  強制換気と呼吸理学療法 
  トリガー(trigger) 
  最後に 
 3 NPPVと呼吸理学療法  尾崎孝平
  はじめに 
  NPPVの換気モード 
  NPPV専用機の機構 
  NPPVの適応条件 
  NPPVの利点と欠点 
  呼吸理学療法実施時のNPPVの注意点 
 4 人工呼吸中の呼吸理学療法  佐々木麻巳子,尾崎孝平,婦木亜紀子
  はじめに 
  人工呼吸中に呼吸理学療法が必要となる急性呼吸不全の病態と適応手技 
  肺胞低換気と虚脱・非閉塞性無気肺 
  気道分泌物の貯留と閉塞性無気肺 
  浸潤性肺病変 
  呼吸サイクルの異常 
  人工呼吸中のアセスメント 
  人工呼吸中のADLトレーニングと運動療法 
  最後に 
 5 人工呼吸器からの離脱と呼吸理学療法  婦木亜紀子,尾崎孝平,佐々木麻巳子
  人工呼吸器からの離脱の基本的な考え方 
  ウィーニング過程における換気運動能力と呼吸理学療法 
  ウィーニング過程の肺胞拡張性 
  ウィーニング中に実施するその他の呼吸理学療法 
  実際のウィーニング方法 
  最後に 

6章 多職種との連携   
 1 看護スタッフとの連携  清水孝宏
  急性呼吸不全管理における看護師の役割 
  呼吸理学療法は多職種との連携で進める 
  呼吸理学療法を看護に活かすためには 
 2 ICU(集中治療室)での理学療法  安達 拓
  ICUにおける呼吸理学療法 
  ICUを現場とする理学療法士に必要なこと 
  当院のICUでの多職種との連携 
 3 RST(呼吸サポートチーム)での理学療法士の役割  渡邉文子,長谷川隆一
  RSTについて 
  RSTの構成 
  RSTの活動内容と理学療法士としてのかかわり 
  理学療法士の役割 
 4 NST(栄養サポートチーム)での理学療法士の役割  大川貴正
  NSTとは 
  栄養管理の重要性 
  理学療法士の役割 

7章 代表的疾患へのアプローチ   
 1 COPDの急性増悪時  菅原慶勇
  COPDの急性増悪とは 
  増悪の重症度分類 
  増悪時の呼吸理学療法 
  退院後の呼吸理学療法 
 2 心不全  櫻田弘治
  心不全が呼吸に及ぼす影響 
  心不全と呼吸管理 
  モビライゼーション開始のタイミングと実際 
 3 胸部外科術後  垣添慎二,山内康太,島添裕史
  胸部食道癌手術・肺切除術における術後呼吸器合併症の発生過程 
  胸部食道癌手術・肺切除術における周術期管理 
 4 上腹部外科術後  花田匡利
  上腹部手術における周術期理学療法(術前) 
  上腹部手術における周術期理学療法(術後) 
 5 頸髄損傷  羽田晋也
  頸損者の捉え方 
  頸損者の呼吸障害 
  評価 
  呼吸理学療法の実際 
  頸髄不全損傷の呼吸理学療法 
 6 脳血管障害,脳外科術後  飯田有輝
  はじめに 
  脳損傷患者における呼吸器合併症とリスク因子 
  損傷脳における急性期の病態と管理 
  脳損傷患者に対する呼吸理学療法 
 7 多発外傷(胸部外傷を含む)  尾山陽平
  多発外傷と胸部外傷 
  胸部外傷の治療 
  胸部外傷に対する呼吸理学療法 
 8 熱傷(気道熱傷)  高橋正浩
  熱傷の病態と循環動態 
  呼吸器系への影響 
  気道熱傷 
  熱傷の急性期呼吸理学療法 
 9 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)  笹沼直樹
  病態 
  臨床症状と呼吸機能障害 
  呼吸管理と呼吸理学療法 
 10 誤嚥性肺炎  俵 祐一
  誤嚥性肺炎とは? 
  誤嚥性肺炎に対する評価 
  誤嚥性肺炎へのアプローチの実際 
  おわりに 
 11 新生児呼吸障害  稲員恵美
  新生児・小児呼吸障害の特徴 
  小児の体位管理 
  小児における呼吸理学療法手技 

8章 付録   
 1 急性期呼吸不全における重要な指標と正常値  福岡敏雄
  酸素化の指標 
  二酸化炭素排出効率の指標 
  陽圧呼吸下における換気力学的指標(Cst,Raw) 
 2 急性期呼吸理学療法における臨床研究の進め方  福岡敏雄
  臨床研究には手順がある 
  研究において「してはいけない」こと 
  研究の課題はどこにあるか 
  研究のために課題を具体化する 
  急性期呼吸理学療法における臨床研究計画の注意点 
  研究計画書作成と研究の承認について 
  介入試験などの事前登録について 
  研究の実施とその後 
  まとめ 
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