運動療法に役立つ 単純X線像の読み方

運動療法に役立つ 単純X線像の読み方

■著者 浅野 昭裕

■監修 青木 隆明

定価 5,940円(税込) (本体5,400円+税)
  • B5変型判  360ページ  2色,イラスト182点,写真602点
  • 2011年8月31日刊行
  • ISBN978-4-7583-1135-9

理学療法士は単純X線像から何を読み取り,運動療法に役立てることができるのか?!

電子カルテの普及・チーム医療の促進など,近年,理学療法士が単純X線像を目にする機会が増えている。整形外科医は単純X線像を主に診断と経過観察に用いるが,理学療法士においては,骨折の形や程度以上に,受傷機転を元に損傷組織を把握し,運動療法にどのような影響を及ぼすのかを読み取れることが望ましい。骨が折れるほどの力が加わっているとき,筋や靱帯にも何らかの損傷を及ぼしていると考えられるためである。
本書は理学療法士が単純X線像を目にした際に「どう見てどう読むべきか」を,全3章立てで豊富な正常像/骨折像とともに解説している。1章 総論では,骨折を読むための基礎知識として,骨折分類や転位,インプラント含む固定状態,軟部組織,経過などの読み方を解説した。2章 各論では,肩/肘/上腕・手/股関節/大腿/膝/下腿/足の8部位に分けて,正常像と骨折像を計100種以上,詳細な解説とともに掲載した。3章 絵の描き方では,構造の理解を助け単純X線像を有効に利用するためのコツとして,代表的な画像の描き方を提案している。
骨だけでなく筋や靱帯の状態をも読み取り,臨床症状そして運動療法に結び付けて,患者の機能回復へ導くための一冊である。


序文

 私が臨床1年目のことです。職場の勉強会で症例検討を行った際,単純X線像を提示され,「浅野君,これ見て何が言えるかな?」と司会の整形外科医から尋ねられました。教科書以外に単純X線像をほとんど見たことのなかった私は,提示された慢性関節リウマチの手部の画像を見て,「MP関節,PIP関節が脱臼しています。手関節と手指が尺側偏位しています」と答えると,その医師は「それから……」と次の答えを促しましたが,私はそれ以上答えられませんでした。「コントラストが弱いでしょ,スカスカの骨ですね。手根部は関節軟骨がなくなって強直状態ですね。ほら,ここにはシストもありますね……」同じ画像を見ているのに,私には何も見えていませんでした。
 翌日私はその整形外科医の部屋を訪れ,「先生,単純X線像を読めるようになりたいのですが,何か良い本はありませんか?」と尋ねると,間髪入れず「ありません。」と答えが返ってきました。「ではどうやって勉強するのですか?」と聞くと,「1万枚の単純X線像を見なさい。それも健常者のものをね。外来に一杯ありますよ。」そうアドバイスをくれました。
 2年目の私は時間があれば単純X線像を眺める毎日を送りました。別に何を見るというわけでもなく,ただ眺めていました。おそらく数だけは数万枚に及んだと思います。3年目,現在の勤務先の碧南市民病院が開設となり,当時は整形外科医が一人という状況でスタッフは家族のように何でも話し合い協力し合いました。単純X線像についても医師と語り合えるようになり,その後研修医が来たときに画像を読めない彼らを見て,初めて自分が単純X線像を読めるのだと実感したものでした。しかしその頃になってもまだ,「いい本はないか?」と書店に寄っては単純X線像の読み方の本を探していました。医師は単純X線像を診断と経過観察のために用います。書店に並ぶ数多くの本はそのための本ばかりでした。
 臨床5年目だったでしょうか? 足関節脱臼骨折の患者の治療を経験した際,整復前の大きく転位した単純X線像を見て「これは大変だ!」と思い図書室へ向かいました。そこで出会ったのがLauge-Hansen分類でした。これを理解するのには少々の時間が必要でしたが,理解するに従い,この分類の意義の大きさを感じました。骨折線の特徴から受傷時の足部の肢位と距骨の運動方向とを判断し,骨の損傷以外に靱帯の損傷を推察するこの分類の理論に私は驚きました。そのとき,これと同じことが他の部位でも言えるのでは? と考え,単純X線像を見るたびに,どこにどの方向からどのような力が加わった結果骨が損傷したのかを考えるようになりました。そして次第に,骨折を「骨が折れた」と考えるのではなく「その人の骨が折れるだけの力が,その人の身体に加わった結果」と捉えるようになりました。つまり,「骨が折れるほどの力が加わっているのだから,他の組織が損傷していても何も不思議ではない」という考え方に変わっていったわけです。
 次の転機は臨床6年目に同級生である林 典雄先生と始めた研究会でした。症例検討を中心に継続した研究会で出会った多くの若い治療者たちが,私と同じように単純X線像を読めるようになりたがっていることを知ったのです。「1万枚見なさい。」「絵を描きなさい。」「受傷機転を考えなさい。」と受け売りのアドバイスを発する一方で,受傷機転を元に損傷組織を把握し,それらが運動療法にどのような影響を及ぼすのかを示す本を相変わらず探し続けていました。そして臨床10年を過ぎ,もはやこの手の本は自分達でつくるしかないのかという気持ちが生まれてきました。
 最後にこの本を書く決心をさせたのは,クリニカルパスの普及でした。大腿骨転子部骨折の患者を決められたパスに従って治療していくなかで,あるとき「頑張って! 足を上げて!」とSLRを促している熱心な病棟看護師の姿を見つけました。CHS術後数日の患者は懸命に脚を上げようと努力しているのですが,疼痛が強くまったく持ち上がりません。単純X線像を見てみると不安定型の骨折で小転子部の骨片が転位し,腸腰筋が機能しない画像でした。「この患者さんは,術後2週から3週でSLRができるようになるから,それまでは無理にSLRをさせないでいいですよ。」と言った通り,その患者の脚は術後2週過ぎに上がるようになりました。それを契機に整形外科病棟の看護師と“単純X線像を読める看護師”づくりを目標に勉強会を行い,彼らに単純X線像と臨床症状とを結び付ける目をもたせることができるようになりました。対象は大腿骨転子部骨折だけでしたが,これによって病棟看護師は,ただ決められたパスに従うだけでなく,患者ごとに適切な時期に適切な対応を行うことができるリハビリテーションナースへと成長したのです。診断ではなく,運動療法に役立つ単純X線像の本が必要だと感じた瞬間でした。
 局所で起こっている損傷と修復とを把握し,機能訓練や生活動作指導を実践していくことは患者の早期社会復帰に繋がります。単純X線像は早期社会復帰を可能とするたくさんの情報を含んでいます。その情報を正しく得るためには正常な骨の形と位置関係とを知る必要があります。しかし,それを知るだけでは十分に画像を読めないことを,私は学生の指導を通して知りました。彼らが画像を読めるようにするのに役立ったのは特徴に加え「絵の描き方」を知ることだったのです。第3章では四肢の主な関節の描き方を提示しました。絵を描けるようになることにで,間違いなく画像を読む能力は向上するでしょう。この本が整形外科領域の治療者に,よりよい治療法を選択させるヒントを与え,患者の機能回復の一助となることを期待します。
 最後に本書発行にあたり,私にこの本を書くことを勧め,何度も停滞していた私に励ましの声をかけてくれた林 典雄先生はじめ整形外科リハビリテーション学会の仲間たち,稚拙な文・図をチェックし,細部にわたってご指導いただいた岐阜大学の青木隆明先生,術後の画像の使用を快く了承くださった梅田仁視先生(現うめだ整形外科院長),碧南市民病院整形外科部長杉下英樹先生,X線像の撮影肢位について多くの指導をくださった碧南市民病院放射線技師荒武利男氏,誌面の作成にご尽力いただいたメジカルビュー社の間宮卓治氏,そして長い間私のわがままを許してくれた妻敬子にこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。

平成23年夏
浅野昭裕
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目次

keyword一覧
本書に掲載している骨折分類
本書の使い方
略語一覧

I 総論
単純X線像の運動療法への利用
骨を読む
 骨と骨折の基礎知識
 骨折の部位
 骨折の形
 安定型と不安定型
 転位の大きさに影響するもの
固定状態を読む
 整復状態を見る
 全体のアライメントと局所の整復
 ギプス固定
 インプラント(固定材料)
 創外固定
軟部組織を読む
 骨の形状と軟部組織
 筋
 腱
 靱帯
 皮膚
 血管
経過を読む
 骨癒合の読み方
 骨萎縮
 アライメント
 偽関節・遷延治癒
 骨壊死
 骨とインプラントの位置
変性疾患の合併

II 各論
1 鎖骨・肩
 □鎖骨 前後像
 □鎖骨 斜位像
 □肩関節 前後像・斜位像
 □肩関節 軸位像
 □肩甲骨 軸位像
 ■鎖骨中央1/3の骨折
 ■鎖骨遠位端骨折
 ■肩甲骨関節窩骨折
 ■肩上方懸垂複合体(SSSC)損傷
 ■肩鎖関節脱臼
 ■上腕骨大結節骨折
 ■上腕骨外科頸骨折
 ■肩関節前方脱臼
 ■肩関節直立脱臼
2 上腕・肘
 □上腕骨 前後像
 □上腕骨 側面像
 □肘関節 前後像
 □肘関節 側面像
 □肘関節 軸位像
 ■上腕骨ラセン楔状骨折・横骨折・屈曲楔状骨折
 ■上腕骨骨幹部横骨折(1)
 ■上腕骨骨幹部横骨折(2)
 ■上腕骨顆上骨折
 ■肘頭骨折
 ■肘頭横骨折
 ■Hume骨折
 ■橈骨頭骨折
 ■肘関節脱臼と橈骨頸部骨折
 ■橈骨頸部骨折(1:保存例)
 ■橈骨頸部骨折(2)
3 前腕・手
 □前腕 後前像
 □前腕 側面像
 □手関節 後前像
 □手関節 側面像
 □指 後前像・側面像
 □手根管
 ■橈骨骨幹部骨折・尺骨骨幹部骨折
 ■橈尺骨骨幹部骨折
 ■橈骨遠位端骨折・尺骨骨幹部骨折
 ■橈尺骨遠位端骨折
 ■橈骨遠位端骨折(1:Colles骨折)
 ■橈骨遠位端骨折(2:Smith骨折)
 ■橈骨遠位端骨折(3:Barton骨折)
 ■橈骨遠位端骨折(4:掌側プレート固定)
 ■指節骨底裂離骨折
 ■小指基節骨横骨折
4 股関節
 □骨盤 前後像
 □股関節 前後像
 □股関節 軸位像(ラウエンシュタイン像)
 ■恥骨上下枝骨折と恥骨結合離開
 ■股関節周辺の裂離骨折
 ■大腿骨転子間骨折(1:安定型)
 ■大腿骨転子間骨折(2:不安定型)
 ■大腿骨転子間骨折(3:小転子骨折を伴うCHS施行例)
 ■大腿骨転子間骨折(4:小転子骨折を伴う)
 ■大腿骨転子間骨折(5:頸部短縮)
 ■大腿骨転子間骨折(6:小転子転位例)
 ■大腿骨転子下骨折(接合部での回旋変形)
 ■大腿骨大転子骨折
 ■大腿骨頸部骨折(1:Garden stageIV)人工骨頭置換術
 ■大腿骨頸部骨折(2:Garden stageII)CCHS
 ■大腿骨頭壊死後の人工股関節全置換術
5 大腿
 □大腿骨 前後像
 □大腿骨 側面像
 ■大腿骨転子下ラセン骨折(1)
 ■大腿骨転子下ラセン骨折(2)
 ■大腿骨骨幹部横骨折
6 膝
 □膝関節 前後像
 □膝関節 側面像
 □膝蓋骨 軸位像
 ■膝蓋骨骨折(1)
 ■膝蓋骨骨折(2:tension band wiring法)
 ■膝蓋骨粉砕骨折
 ■大腿骨顆上骨折
 ■脛骨粗面裂離骨折
 ■脛骨顆間隆起骨折
 ■脛骨高原骨折
 ■外側スプリット型骨折に対するロッキングプレート
 ■内側スプリット型骨折に対するコンプレッションスクリュー
 ■脛骨内側顆・外側顆粉砕骨折
7 下腿
 □下腿 前後像
 □下腿 側面像
 ■脛骨骨幹部遠位1/3ラセン骨折
8 足
 □足関節 前後像
 □足関節 側面像
 □足部 前後像
 □足部 斜位像
 ■足関節脱臼骨折(1:PA stageI)
 ■足関節脱臼骨折(2:PA stageIII)
 ■足関節脱臼骨折(3:SA stageI)
 ■足関節脱臼骨折(4:SA stageII)
 ■足関節脱臼骨折(5:SER stageII)
 ■足関節脱臼骨折(6:SER stageIV 整復前)
 ■足関節脱臼骨折(7:SER stageIV 整復後)
 ■足関節脱臼骨折(8:PER stageIV 術前)
 ■足関節脱臼骨折(9:PER stageIV 術後)
 ■足関節上方脱臼
 ■下腿軸を中心に距骨が外旋されて生じる骨折
 ■脛骨下腿粉砕骨折
 ■脛骨天蓋骨折(1:Pilon/Profond骨折)
 ■脛骨天蓋骨折(2)
 ■脛骨天蓋骨折(3:術後)
 ■踵骨裂離骨折
 ■距骨舌型骨折
 ■距骨頸部骨折(1:術前)
 ■距骨頸部骨折(2:術後)
 ■第5中足骨底部裂離骨折
 ■第3中足骨骨幹部骨折

III 絵の描き方
 肩関節 前後像
 肩関節 軸位像
 肘関節 前後像
 肘関節 側面像
 手関節 後前像
 手関節 側面像
 股関節 前後像
 股関節 軸位像(ラウエンシュタイン像)
 膝関節 前後像
 膝関節 側面像
 足関節 前後像
 足関節 側面像

付録
 文献
 X線像を読むうえで基本となる数字(角度)
 索引
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