ロボット手術マニュアル

da Vinci手術を始めるときに読む本

ロボット手術マニュアル

■編 鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センター

定価 5,280円(税込) (本体4,800円+税)
  • B5変型判  208ページ  オールカラー,イラスト50点,写真260点
  • 2012年3月30日刊行
  • ISBN978-4-7583-1218-9

手術支援ロボットは何ができるのか? 導入前後に絶対役立つ入門書

外科領域の手術で今後大きな発展が期待されるのがロボット支援手術である。本書は,ロボット支援手術のためにセンターを設立し,各科で実地症例を積んでいる鳥取大学医学部附属病院低侵襲外科センター編によるロボット手術の入門書である。ロボット手術の導入・ライセンスの取得から産婦人科,泌尿器科,呼吸器外科,消化器外科,心臓外科,頭頸部外科の手術の実際,手術看護師・MEの役割,ロボット手術とコストの考え方までを幅広く解説。これからロボット手術に携わるすべての者必携の書である。


序文

刊行にあたって
低侵襲外科センターの社会的意義
鳥取大学医学部附属病院長 北野博也

 平成22年,手術支援ロボットda Vinci Sを用いた内視鏡外科手術を安全に行う目的で低侵襲外科センターを設立した。本センター設立の目的は,講座の枠にとらわれない自由な組織を創設することにある。本センターでは,手術を安全に行うため,術者や術式の認可,手術の妥当性についての評価,より安全な術式や新しい術式の開発,機器の開発,手術手技の教育,出版などを行うことにしている。また,重要な点は,患者の不利益となるとみなされた手術は,術中に従来法への変更ないしは中止を指示できる点にある。これまで,大学病院においては教授を中心にともすれば密室で行われていた手術を,衆人環視の下で行うようにした。現在,泌尿器科,婦人科,呼吸器外科,消化器外科が,お互い協力しながら手術を行い,心臓外科,頭頸部外科が全国に先駆けてロボット手術の導入に向け準備中である。
 また,現在のところda Vinci Sは1台であるが,随時新型を導入するとともに,平成24 年度にda Vinci S 専用手術室1 部屋,内視鏡用手術室2 部屋を新設する予定である。da Vinci S 専用手術室は見学者に十分配慮し,研修しやすい部屋を作る予定である。

低侵襲外科治療の必要性

 山陰地区は高齢先進地域であるが,図1 を見れば明らかなように,都市部においても近い将来山陰地区と同様の状態になる。すなわち,山陰地区で現在直面している問題に都市部でもいずれ遭遇することになる。高齢者に対する治療は若い人に対する治療とは異なり,体力的に劣っている場合や,ほかの疾病に罹患していることが多いので,より低侵襲な治療が望まれる。われわれの病院では,強度変調放射線治療をはじめとする機器を積極的に導入し,より低侵襲な治療を病院一体となり目指してきた。
 ところで,外科治療は侵襲が大きいと思われているが,必ずしもそうとは限らず,低侵襲外科治療の方がむしろ手術を行わない治療と比べ低侵襲となることもある。しかし,低侵襲手術は従来の手術方法とは類似しているが,新たな手術手技を獲得しなければならないことも多く,また低侵襲手術を行うことと
手術の安全性は相反することも多い。そこで,従来法と比べ,より安全・安心な低侵襲手術を行う必要がある。
 本邦で今から十数年前に腹腔鏡下手術での事故が多発したことは記憶に新しい。当時,da Vinciをはじめとする手術支援ロボットが開発され,わが国にも試験的に導入されたが,当時の内視鏡外科手術に対する厳しい世論や操作性の問題,わが国の医療機器認可に関わる煩雑な制度などが災いして最終的に本格導入されなかった。その間,米国をはじめとする諸外国では積極的にda Vinciを用いた手術法の開発を行った。わが国は内視鏡外科手術については進んでいるが,その発展系ともいえるロボット支援手術については,米国や韓国に大きく遅れる結果となった。2009 年末ようやく本邦でも手術支援ロボットda Vinci Sの使用が泌尿器科,婦人科,呼吸器外科,消化器外科領域などにおいて認可されることになった。しかし,諸外国で行われている頭頸部外科領域での使用が認められていないこと,超音波駆動凝固切開装置の使用が認められていないことなどの問題がある。また,使用に当たっては操作方法の研修を受けることや症例見学を行うことなどが義務化されている。しかし,研修費が高額であることや,これらの研修だけで手術が施行可能か否かという問題もある。そこで,当センターでは安全・安心な手術を行うため,患者に替わり手術内容を検証し,同時にスタッフの養成,社会への貢献を目指している。

低侵襲外科センターの大学病院における役割

 初期臨床研修制度が導入されて以来,研修医の大学病院離れは特に地方において大きな問題となった。その影響で,地方での医療崩壊が一気に進んだ。都市部の大学においても,大学に入局し,その教室人事に従う割合は減少している。
 では,大学病院での研修が若い人たちにとって魅力的でない理由は何かを考える。諸外国の一流と言われている病院は医科大学との関連が強い。それは,次の世代を担う人を教育すると同時に,教育することでスタッフの水準も上がるためだと思われる。また,臨床研究や新技術の開発には多くの人員を要するので,大学との関連が必要である。大切なことは,大学人は自らの社会的重要性をよく自覚しているし,社会に対しての透明性もわが国と比べて高いように思われる。しかし,本邦では戦後,幾度か社会問題となった教授を頂点とする医局講座制は依然として残っており,大学病院の閉鎖性は改善していない。今回の,臨床研修制度の変更により,このような大学病院での研修に魅力を感じない多くの若い医師に,都会の大病院での就職の機会が増えたため,一気に地方大学病院では医師が減少したと考える。2011 年になると,今回の研修制度の問題点も明らかになり,急激に減少した地方大学出身の医師の都会への流れも改善しつつあるようである。しかし,大学医学部のもつ医局講座制の問題点は改善されたとはいえない。
 このような現状を鑑み,われわれの病院では医局講座制の大きな弊害の一つと思われる閉鎖性の打破を試みる目的で,低侵襲外科センターを創設した。同センターでは,各科教授の意向を無批判に受け入れたりするのではなく,医師以外のスタッフを含む多くの人の了解を得てすべてのことを決定している。われわれは,このような試みにより大学内での透明性や相互理解が深まることにより,実力のある教授であれば,真のリーダーとして信頼と尊敬を集めることができるようになると確信している。

最後に

 現在,多くの問題を抱えながら急速に普及していくと思われる手術支援ロボットを用いた手術ではあるが,その普及に当たっては安全・安心であることが何より大切であると思われる。その際,安全に行うための制度の創設,執刀医以外の職員の協力体制等が重要となると考え,鳥取大学におけるda Vinci 操作マニュアルを作成したので諸兄に供覧するとともに,ご批判いただければ幸いである。また,ロボット支援手術を一助として,われわれが試みている大学病院改革にご賛同いただければ幸甚である。
 最後に,この本を出版していただいたメジカルビュー社の関係者の方々に謝意を表する。
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目次

刊行にあたって 低侵襲外科センターの社会的意義

1章 ロボット手術の基礎
低侵襲外科センターの役割
  低侵襲外科センターの目的
  低侵襲外科センターの取り組み
     手術支援ロボットda Vinci使用手術に関する病院内規の制定/手術症例検討会/学術研究・教育・出版,
     手術機器・手術方法の開発
  今後の展望

ロボット手術の歴史
  ロボット開発の歴史
  手術支援ロボット da Vinci の歴史
  わが国におけるロボット手術の歴史
  今後の展望

ロボット手術に用いる機器と基本的操作法 
  ロボット本体
     サージョンコンソール/ペイシェントカート/ビジョンカート
  インストゥルメント
     着脱/インストゥルメントの種類
  トロカー
     挿入〜ドッキング
  外付けモニタ
  手術の流れ
  操作時のコツ・注意点
     基本的剥離,展開法/執刀医と助手のコミュニケーション/触覚の無さ/クラッチおよびカメラペダル
     の使用/結紮時の注意点/鉗子の特徴を理解する/バッティングの回避方法
ライセンスの取得
  ライセンス取得について
     オンライントレーニング/オンサイトトレーニング/オフサイトトレーニング/症例見学

ロボット手術のトレーニング
  オンライントレーニング
  オンサイトトレーニング
  オフサイトトレーニング
     動物(ブタ)を用いたトレーニング/ヒト屍体(カダバー)を用いたトレーニング
  da Vinciトレーナー
     基本スペック/特徴/トレーニングモジュール/実績評価/実際の使用例/使用上の注意点/導入実績
  今後の展開

ロボット手術のコスト
  da Vinci 購入と維持費
  各科の手術に係るコスト
  私費料金の設定について
     当院での料金設定方法/自費による診療分の計算
  先進医療制度について
  先進医療の申請について

2章 ロボット手術の実際
セッティング
  ドレーピング
     必要物品の準備/インストゥルメントアームの準備/インストゥルメントアームドレープの装着と可動
     確認/カメラアームドレープの装着と可動確認/アームのドレーピングの仕上げ/カメラヘッドのドレ
     ーピング/スコープとカメラヘッドコードの取り付け
  カメラ調整
     ホワイトバランス/フォーカス調整/ステレオエンドスコープアセンブリの較正/最終チェック/完成

泌尿器科
  手術の適応と限界
  初期症例の条件と第1例目までのタイムスケジュール
     第1例目までのスケジュール
  手術手順
     患者体位/ポート位置/術者・助手・モニタ等の配置/ロボットドッキング/コンソール手術操作の
     手順/アンドッキング,臓器摘出,閉創
  手術助手の役割
     第1助手の使用する鉗子類,手術器具および助手の位置について/コンソール手術中の第1助手の役割
  合併症とその対策
  今後の展望

呼吸器外科
  手術の適応と限界
  初期症例の条件
  第1例目までのタイムスケジュール
  術前準備/処置
  手術機器
     ロボット手術鉗子/エネルギーデバイス/自動縫合器
  手術の実際
   胸腺疾患に対する3アームによる手術の実際
     手術室のレイアウト/体位とポート位置/ da Vinciのドッキング/鉗子の選択/手術手順と手技/
     術後管理
   肺癌に対する3アームによる手術の実際
     手術室のレイアウト/体位とポート位置/ da Vinciのドッキング/鉗子の選択/手術手順と手技/
     術後創部
   肺癌に対する4アームによる手術の実際
     手術室のレイアウト/体位とポート位置/ da Vinciのドッキング/鉗子の選択/手術手順と手技
   症例提示
   手術助手の役割
   合併症とその対策
  今後の展望

産婦人科 ロボット支援子宮全摘出術
  手術の適応と限界
  初期症例の条件
  第1例目までのタイムスケジュール
  術前準備/処置
  手術機器
  手術の実際
     患者体位/子宮マニピュレーター留置/ポート作成/術者・助手・モニタ等の配置/ da Vinciのドッキ
     ング/手術手順と手技/手術助手の役割/合併症とその対策
  今後の展望

消化器外科① 胃癌の手術
  手術の適応と限界
  初期症例の条件
  第1例までのタイムスケジュール
  術前準備/処置
  手術機器
     手術器具一式/組織切離器具/吸引凝固,洗浄装置/バイポーラ/ガーゼ
  手術の実際
     患者体位/ポートの位置/術者,助手,モニタ等の配置/da Vinciのドッキング/手術手順と手技/
     注意点/手術助手の役割/合併症とその対策
  今後の展望
     D2リンパ節郭清がしやすい/新しい技術の獲得に利用

消化器外科② 大腸癌の手術
  手術の適応と限界
  初期症例の条件
  第1例までのタイムスケジュール
  術前準備/処置
  手術機器
     手術器具一式/組織切離器具/吸引装置
  手術の実際
     患者体位/ポートの位置/術者,助手,モニタ等の配置/da Vinci のドッキング/手術手順と手技/
     手術助手の役割/合併症とその対策
  今後の展望
     骨盤深部での精緻な操作/新しい手術法

頭頸部外科
  手術の適応と限界
  初期症例の条件
  第1例目までのタイムスケジュール
  術前準備/処置
  手術機器
     甲状腺葉峡切除術ないしは片葉切除術/経口的咽喉頭切除術
  手術の実際
     患者体位/ポート位置/術者・助手・モニタ等の配置/da Vinci のドッキング/手術手順と手技/手術
     助手の役割/合併症とその対策
  今後の展望

心臓外科
  適応
  手術手順
     da Vinciを用いた僧帽弁膜症手術/ da Vinciを用いた冠動脈バイパス手術
  ロボット心臓手術の今後の展望

麻酔科
  ロボット手術の麻酔
     内視鏡下手術生体反応と合併症/麻酔法と使用薬剤
  ロボット手術における麻酔管理上の注意点
     手術室における各種装置の配置/体位/二酸化炭素ガスによる気胸と気腹/一側肺換気/人工心肺/
     モニタ/輸液ライン/術後鎮痛/その他
  麻酔管理上の要点
  麻酔科のロボット手術開始までの準備

手術室看護師の役割
  教育体制
  術前準備
     情報収集・術前訪問/部屋準備・器械準備/ドレーピング,カメラ調整
  手術中の外回り看護
     手術中体位への介入/体温管理
  器械出し看護
  その他

MEの役割
  準備
     チェックリスト/前日準備/当日準備
  手術開始〜ロールイン,ドッキング
     映像/ロールイン/ドッキング
  手術中
  ロールアウト・片付け
  トラブル対応
     停電時の対応/開腹・開胸への移行/トラブル事例/インストゥルメント関連エラーと対応/インス
     トゥルメント交換時の注意点

ロボット(da Vinci S)手術 主な機器・機材・術語
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