妊娠初期超音波と新出生前診断

妊娠初期超音波と新出生前診断

■編著 室月 淳
原田 文
Kypros Nicolaides

定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
  • B5判  208ページ  オールカラー,イラスト20点,写真200点
  • 2014年3月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-1238-7

新しい出生前診断の時代に,より正確に診断するために妊娠初期超音波をしっかり学べる書籍

本書では,超音波によってfirst trimesterの早い時期に染色体異常や奇形などを形態学的にスクリーニングし,さらに確定診断までをめざす技術(first trimester screening)を解説。ダウン症をはじめとする染色体異常の胎児の超音波学的所見について系統的に理解し,診断のシステムを理解してもらうことと併せて,母体血液による新しい出生前診断(NIPT)が日本国内でも導入され始めており,それと関連した出生前診断についての考え方も解説している。


序文

 NT(nuchal tranlucency)という超音波サインの概念が日本に輸入されたのは1990年代の後半だったでしょうか。胎児の染色体異常に関係するということで,産科臨床の現場ではNTにたいする対応で多少の混乱をきたしてきました。近年では鼻骨の骨化やいくつかの血流異常などもくわえられ,さらにはPAPP-Aといった妊娠初期血清マーカーも組み合わされて胎児のリスク算定もなされるようになりました。また無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)ないしはセルフリーDNAテストが,2013年4月から国内の日本医学会認定15施設でいっせいに開始されました。社会的に大きな話題となり,検査開始についてさまざまな議論がなされてきたのは記憶に新しいところです。
 妊娠初期の超音波スクリーニング,妊娠初期母体血清マーカー,そしてNIPTなどといった出生前診断の新しい流れをまのあたりにしてきながら,実はこれまでこれらのことをとりあげた専門書がなかったことに気がついていまさらながら驚いています。妊娠初期のスクリーニングや診断を積極的にとりあげるにせよ,逆につよく批判していくにせよ,診断技術の体系をきちんと理解する必要があることはまちがいありません。
 周知のとおりこれらは遺伝学的検査といわれるものです。WHOやその他のガイドラインは,遺伝学的検査を一般の臨床検査と区別し,その実施には必ず専門的な遺伝カウンセリングを行うことを指示しています。これからの産婦人科医は臨床遺伝学と遺伝カウンセリングの基礎知識が要求されています。さらには学会研究会やメディア,あるいは検査会社の宣伝などをとおして,遺伝および遺伝学的検査についてさまざまな情報がながれるなかで,われわれはそれをうのみにせず,また目先の患者のニーズや利益のみにとらわれず,遺伝子医療の本質を理解し,その社会的,倫理的影響までを見抜く新しい能力が必要です。それがいまいちばん重要視されている「遺伝リテラシー」というものです。
 この本のおもな内容は,共著者の原田 文先生がKing’s College Hospitalに留学し,Prof. Nicolaidesのもとで学んだFetal Medicine Foundation(FMF)の妊娠初期スクリーニングプログラムの具体的な内容を紹介したものです。その後半にわたしが国内におけるNIPTの現況と問題,将来のみとおしについてまとめた文章をつけくわえました。この本が上記の「遺伝リテラシー」を身につける一助となってくれれば幸いです。
 最後に,むずかしい問題もはらむテーマの専門書を出版という形で世に現わしていただいた編集部の清澤まや氏,浅見直博氏の労にたいしてこころより感謝しお礼もうしあげたいと思います。

2014年2月
東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座胎児医学分野教授
宮城県立こども病院産科部長
室月 淳
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目次

1 妊娠初期における染色体スクリーニングの基礎知識
  スクリーニング検査の歴史および普及した背景
  first trimester screeningのその後の妊娠管理における役割

2 first trimester screeningの実際
 CRL
  CRLの計測の仕方
  経腹超音波と経腟超音波
 NT(nuchal translucenty)
  NTとは
  NTを計測するとき
  どのようにNTを計測するのか
  NT計測時の注意点
  NTの正常範囲について
  21トリソミー,18トリソミー,13トリソミーのNTとは
  NT増加がめられる胎児に可能性がある異常
  NT増加のある胎児の管理
 鼻骨の有無,静脈管波形,三尖弁逆流
  鼻骨の有無
  静脈管血流波形の測定
  三尖弁逆流の測定
  鼻骨欠損,静脈管a波の逆流,三尖弁の逆流がみられた場合の説明および管理法
  染色体異常のスクリーニング検査における鼻骨,三尖弁逆流および静脈管血流波形の測定値の取り入れ方
  胎児心拍数と胎児染色体異常の関係について
 母体血清マーカー
  free β-hCGおよびPAPP-Aに影響する因子
  MoM
  胎児染色体異常でのfree β-hCGおよびPAPP-Aのパターン
  妊娠週数の母体血清マーカーの精度への影響
  その他の胎児染色体異常に関連のある母体血清マーカー
 スクリーニングの理論とリスク計算
  背景リスクと尤度比
  計測されたマーカーはどのようにリスク計算に反映されるのか
  染色体異常と関係の深い解剖学的異常とリスク計算
  リスク値のキャップ
  最終リスク値をふまえてどのようにカウンセリングを行うか
  精度でみるスクリーニング検査のこれまでと今後
 cell free DNAテスト
  cell free DNAとは
  cell free DNAテストの種類
  CSS
  SNP-based NIPT
  fetal fraction rateについて
  cell free DNAテストの限界
  染色体異常別におけるcell free DNAテストの成績
  cell free DNAテストについての理解に役立つ知識
  cell free DNAテストの臨床応用
  DNAテストの臨床応用の実際

3 妊娠初期における染色体異常胎児の超音波上の特徴
  21トリソミー
  18トリソミー
  13トリソミー
  Turner症候群
  triploidy

4 妊娠初期における胎児異常スクリーニング
 first trimester anomaly scanについての基礎知識
  なぜfirst trimesterでanomaly scanを行うのか
  妊娠週数によるanomaly scanの完遂率の限界
  どのように異常を診断でき,その診断率は疾患によりどのような違いがあるか
 first trimester anomaly scanの実際
  頭部および脳
  顔面
  脊椎
  心臓
  胸部
  腹部
  四肢
 先天性心疾患のスクリーニングと診断
  first trimesterで心奇形をスクリーニングおよび診断する意義
  どのような人を対象に行い,ハイリスクとして扱うのはどのような場合か
  どのような疾患が診断できるか
  どのように胎児心エコーを行うか
  胎児心エコーの実際
  診断の限界
  first trimesterでの異常症例
  大血管のbi-directional flowについて
 脳の見方と二分脊椎のスクリーニング
  正常胎児における脳神経超音波
  intracranial translucencyとは
  二分脊椎の胎児に現れる脳の異常とはどのようなもので,どのようにスクリーニングを行うか
 その他の頭部および脳の疾患について,first trimesterにはどのように観察されるか
  無頭蓋症
  全前脳胞症
 妊娠初期で診断が可能なその他の重要な疾患
  横隔膜ヘルニア
  臍帯ヘルニア
  腹壁破裂
  巨大膀胱
  骨系統疾患
  body stalk anomaly
  口蓋裂
  四肢の異常

5 妊娠初期における双胎妊娠
 双胎妊娠における染色体異常スクリーニング
  二絨毛膜(DD)双胎におけるリスク計算
  一絨毛膜(MD)双胎におけるリスク計算
 妊娠初期におけるTTTS(early sign of TTTS)

6 新型出生前診断の意義
 母体血による非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)について
  NIPTに関連する名称
  cell free DNAを用いた診断
  NIPTの「精度」について
  日本における導入の経緯と現状
 NIPT検査の実際
  遺伝カウンセリングの手順
  採血と検体の取扱いに関する注意
  NIPTの倫理的問題
  望まれることはすべて実現化しなければいけないか?
  選択的中絶の是非について
 first trimester screeningの今後の展望
  first trimester screeningの今後の展望
  NIPTの検査対象の拡大
  日本における現状と今後の展望

付録
・King’s College Hospitalでのプロトコール
・standard letter(患者へのレポートに記載されるコメントの一例)
・胎児心エコー
・FMFに関するその他の情報
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