児頭下降度の評価と鉗子遂娩術

安全・確実な吸引・鉗子分娩のために

児頭下降度の評価と鉗子遂娩術

■編集 竹田 省
関 博之

定価 14,300円(税込) (本体13,000円+税)
  • i_dvd.jpg
  • B5判  128ページ  オールカラー,DVD-Video付き
  • 2015年3月26日刊行
  • ISBN978-4-7583-1246-2

児頭下降度を正しく評価して安全・確実に実施できる鉗子分娩手技。DVDに収録されたCG動画は必見!

鉗子遂娩術は,分娩経過に何らかの異常がみられたときの急速遂娩法のひとつであり,産科医にとってぜひ覚えておきたい手技である。歴史も古く世界中で施行されてきたが,昨今では吸引分娩や帝王切開が広く普及し選択の機会が減少している。しかし,児娩出までの時間が短く確実に娩出できるなどのメリットもあり,“適応と要約”を守れば安全・確実に実施可能である。成功に導くために最も重要なことは,児頭の下降度を正しく評価して実施することであり,本書では精緻なイラストにより詳しく解説している。また,鉗子分娩を行っていない施設の医師であっても,吸引分娩の際に役立つ内容が記述されている。
さらに,分娩時の児頭と母体骨盤の位置関係を,CG動画にまとめDVDとして添付し,分娩経過に沿った児頭の下降や回旋の様子がリアルに表現されており,鉗子遂娩手技の実際を目で見て学ぶことができる。


序文

 鉗子・吸引分娩は分娩全体の5〜15%を占め,分娩第2期の母児の危機回避を目的に行われており,産科医にとっては必須の習得すべき手技である。現在,吸引分娩が主流となっている一方で,吸引分娩の裁判事例は後を絶たず,産科医療補償制度原因分析委員会の報告でも鉗子遂娩術より吸引分娩による事例のほうが圧倒的に多い。考えられる理由として,児の状態が悪いにもかかわらず,吸引牽引を何回も行い,娩出に時間がかかり,さらに状態悪化をきたすこと,牽引力が弱いためクリステレル胎児圧出法を何回か併用するためさらに児の状態を悪化させる,結局娩出させられず,帝王切開になり,さらに娩出まで時間がかかる,などがある。また,鉗子分娩と異なり,比較的高い位置から試験的に牽引してみる事例もあり,下降してくればさらに牽引する,下降しなければ帝王切開を行う,という考えもみられる。鉗子分娩には分娩可能かどうか試しに牽引してみるというトライアル的概念はなく,鉗子適位にならない限りは施行できない。このため,正確な児頭下降の評価を行い,鉗子適位になければ,帝王切開術を施行するほかに手段はない。
 東京大学産科婦人科学教室は,一貫して鉗子遂娩術を教育することを伝統としてきた。著者らは故坂元正一教授のもと鉗子遂娩術の指導を受け,その技術を後輩に伝えてきたが,最も重要視してきた点は,鉗子技術そのものよりも内診が正確にとれ,児頭の最大周囲径の位置を正確に推定できること,かつその所見を説明でき,症例検討会などで症例を共有できることである。このため,より客観的実践的な内診所見が得られるように,児頭の下降度評価として従来のDeLeeのstationの概念ではなく,骨盤誘導軸に沿った概念を重視し,一部の指導医はこれに基づいて指導していたが,その概念をはっきり論文や総説で解説したものはなかった。
 筆者は,埼玉医科大学総合医療センターへの異動を契機にt-stationという概念にまとめ,使用してきた。数年前に,一緒に研修した故上妻志郎教授と東京大学産科婦人科学教室の児頭下降度の評価と鉗子遂娩術の良き伝統的教育法の解説書をつくろうと相談していたが,彼の体調不良によって実現しなかった。
 今回,上妻君との約束をバネに本書を企画・編集した。新しい内診技法は,埼玉で確立したもので,東京大学産科婦人科学教室の概念とは異なるかもしれず,また,鉗子技術も各著者により多少アレンジされていることをご了解いただき,本書を役立ててもらいたい。吸引分娩を行っている先生方にも参考になるものと確信している。参考にしていただき,ご批判を仰ぎたい。
 最後に本書を故上妻志郎君に捧げ,ご冥福を祈りたい。

2015年2月吉日
竹田 省
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目次

1章 産科鉗子の歴史 藤井知行
 産科鉗子の発明
 わが国独自の急速遂娩用具(和製産科鉗子)
 わが国への西洋産科鉗子の紹介
 わが国への産科鉗子の伝来

2章 産科鉗子の種類,構造,東大式ネーゲリ鉗子 藤井知行
 鉗子の種類
  一般的な鉗子
  特殊な鉗子
   回旋鉗子
   後続児頭鉗子
 鉗子の構造
 東大式ネーゲリ鉗子

3章 児頭下降度の評価と内診法 竹田 省
 吸引・鉗子分娩の適位について
 児頭最大周囲径
  前方後頭位
  前方前頭位
  正軸進入・不正軸進入
 胎児位置と先進部の表記法(東大式表記法)
 station(DeLee)
 骨盤誘導軸に基づいたtrapezoidal station(t-station)
 日本産科婦人科学会の骨盤区分と総合的児頭下降度の評価法
 ACOG との鉗子表記法の差異

4章 吸引分娩との差異 関 博之
 吸引分娩の問題点 —文献的考察の視点から
 吸引分娩の問題点 —産科医療補償制度・医療訴訟の視点から
  1 児頭の高さを考慮せず,安易に吸引分娩を行っていること
  2 何度も滑脱しているにもかかわらず,他の急速遂娩法を選択しないこと
  3 その結果,長時間にわたり胎児にストレスをかける結果となること
  4 急速遂娩術として吸引分娩を行っていながら娩出できないため,再度経過観察となること
 ガイドラインの問題点
 吸引分娩の高さと適応(要約を含む)
 クリステレル胎児圧出法
 吸引分娩と鉗子分娩の比較に関する報告

5章 鉗子分娩の特性・特徴 関 博之
 鉗子の力学
 鉗子分娩の適応と要約
 鉗子遂娩の準備
  器機
  点滴
  麻酔
   陰部神経遮断麻酔
   硬膜外麻酔
 中在鉗子の確実性
 分娩の見通し

6章 鉗子手術の手技:正常編 前方後頭位 関 博之
 鉗子の構造と名称
 鉗子手術を行う前に —内診の重要性
 鉗子手術の実際
  1 鉗子の擬持
  2 鉗子の挿入
  3 鉗子の合致
  4 児頭の牽引
  5 鉗子の抜去
  6 母児双方の合併症の確認

7章 鉗子手術の手技:異常編 前方前頭位 関 博之

8章 鉗子手術の手技:異常編 斜径,横径の鉗子,後続児頭鉗子 竹田 省
 斜径/横径
  用手回旋
  斜径
   矢状縫合45 度以下の斜径
   矢状縫合45 度以上の斜径
  横径
 後続児頭鉗子

9章 キーラン回旋鉗子手技 亀井良政
 キーラン鉗子の特徴
 キーラン鉗子の手技
  1 前処置
  2 内診
  3 鉗子の擬持
  4 鉗子の挿入
   第1横定位の場合
   第2横定位の場合
   斜径の場合
  5 鉗子の接合
  6 鉗子の把持
  7 試験牽引
  8 回旋・牽引
  9 鉗子の抜去

10章 鉗子手術の合併症・問題点 竹田 省
 軟産道裂傷
 分娩時出血増加
 まれな合併症
 児の合併症

11章 困難例と対処法 竹田 省
 不成功例(failed forceps)
 挿入困難例
 牽引困難・滑脱例

12章 鉗子技術の指導・教育法 竹田 省
 内診
  1 自分の内診指を知ろう!
  2 t-station の実測
  3 産科的真結合線の推定
 正常分娩経過の理解と模型による体得
 鉗子の特性の理解
 鉗子遂娩術には試験的施行(トライアル)がない

付属DVDについて

動画DVD「CGで見る鉗子手技の実際」
 鉗子分娩 手あり(正面)(第2前方後頭位:東大式ネーゲリ鉗子使用)
 鉗子分娩 手あり(側面)(第2前方後頭位:東大式ネーゲリ鉗子使用)
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