ガイドラインを上手に使うための

消化器癌のひろがり診断スキル

治療アルゴリズムへの入り方

消化器癌のひろがり診断スキル

■監修 北野 正剛

■編集 白石 憲男
白下 英史

定価 8,250円(税込) (本体7,500円+税)
  • B5判  296ページ  オールカラー,イラスト50点,写真100点
  • 2016年2月29日刊行
  • ISBN978-4-7583-1521-0

「癌のひろがり診断」ができなきゃ始まらない! 消化器癌の治療アルゴリズムに「入る」ためのスキルと自信が身につく1冊。TNM分類に従ったひろがり診断ができる!

消化器癌の診療において,ガイドラインに示されている治療アルゴリズムは,治療方針の決定に大変役立つものである。しかしながら,アルゴリズムの出発点・分岐点では,「癌のひろがり診断」を行い,病期を判断することが求められる。
そこで本書では,食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵癌の各アルゴリズムに必要な「癌のひろがり診断」を項目として取り上げ,身につけるべき知識・スキルを,多くの画像やシェーマ,症例とともにQ&Aでわかりやすく解説している。また,すべての項目には著者オリジナルの「癌のひろがり診断のアルゴリズム」を完備。ガイドラインの治療アルゴリズムに入るためには何をどう診断したらいいのか,順序立てて整理することができ,明日からの診療に役立つ。
「癌のひろがり診断」に自信がない若き臨床医に,ぜひ手に取ってほしい1冊である。


序文

監修者ご挨拶

 近年,「 根拠に基づく医療(EBM:evidence based medicine)」 の概念の普及とともに,最新の医学研究の成果に関する知識の習得が,臨床医たちに求められるようになってきた。しかし,日常診療で忙しい臨床医にとって幅広い知識を身に付けることは,決して安易なことではない。定期的に更新される 「診療ガイドライン」 があれば,チーム医療を実践するスタッフとの最新の知識の共有のみならず,患者さんにも最新の情報を提供することが可能となり,診療方針を決定することの一助となる。さらに, 「診療ガイドライン」 は,病院間や地域における医療水準の格差も解消してくれる。それゆえ,1998年,厚生省の 「医療技術評価推進検討会」 において診療ガイドラインの作成が推奨された。驚くことに,これまでに消化器領域においても150 を超える 「診療ガイドライン」 や「 診療ガイド」 などが作成されている。
 このように 「診療ガイドライン」 は,医療において素晴らしい成果をもたらしてくれたことは言うまでもない。しかしながら,一方では,若き臨床医たちが, 「診療ガイドライン」 を的確に使用を行うことができず,むしろ混乱していることがある。この主な原因の一つとして,多くの「 診療ガイドライン」 の内容が,「 治療指針」「 治療アルゴリズム」 に集中しており,診断については読者である医師に任されていることに起因していることがあげられる。たとえば,「 消化器癌のガイドライン」 の「 治療アルゴリズム」 のスタートは,治療前の画像診断により評価されたTNM分類に沿って始められているものが多い。しかし,若き臨床医たちには,この術前診断で悩んでいる。多くの若き医師たちは,診断に関する十分な知識をまだ持ち合わせていないのであろう。
 これまで,消化器外科専門医に必要な知識の整理書である「 消化器外科専門医のためのminimal requirements」 やその実践書である 「消化器外科minimal requirements実践応用編」 を編集してきた大分大学医学部地域医療学センター(外科分野)の白石憲男教授は,常に学ぶ者や利用する者の立場に立って教科書を編集されてきた。本書「ガイドラインを上手に使うための消化器癌のひろがり診断スキル ―治療アルゴリズムへの入り方―」 は,若き臨床医たちが, 「消化器癌の診療ガイドライン」 の 「治療アルゴリズム」 を自らの力で適正に利用することができる診断力を習得してほしいとの思いから編集されたと伺っている。消化器癌の診断と治療を志す若き医師の 「癌のひろがり診断学」 のガイド書として,また,指導者による若き医師への指導書として,ぜひ一読いただければ幸いである。
 最後に,このような書物を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏,宮澤進氏,山田麻祐子氏に心から感謝いたします。

平成28年1月
大分大学長 北野 正剛
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 消化器癌の診断学は実に面白い。消化器癌の診療においては,これまで「 早期発見,早期治療」 が求められ,より小さな病変をみつけるための 「存在診断学」 が発展してきた。一方,消化器外科領域では,「 根治切除」 や「 拡大切除」 の追求により,「 ひろがり診断学」が発展してきた。これらの発展を支えてきたものは,診断医の研鑽のみならず,消化器内視鏡やCT検査,MRI検査などの画像検査の驚くべき発展によるところが大きい。
 そのようななか,1990年の後半から,根拠に基づく医療(EBM)の実践を目指して,消化器診療に関する研究成果が 「診療ガイドライン」 「診療ガイド」 としてまとめられてきた。驚くべきことに,すでに150以上の疾患や病態にわたる書物が発刊されており,「 診療ガイドライン」 は,実際の診療現場に欠かすことのできない指針書として定着している。
 数年前のことである。数多くの消化器癌の診療を実践している若き医師たちに 「消化器癌の診療を行ううえで困っていることや自信のないことは何ですか?」 というアンケート調査を行った。その結果, 「消化管癌の深達度診断に自信がない」 とか 「消化器癌のひろがり診断ができない」 という回答が最も多かった。 「診療ガイドライン」 に示されている「 治療アルゴリズム」 の多くは,いわゆる治療前のTNM分類に沿った診断に基づいて始まっている。それゆえ, 「ひろがり診断」 に自信のない若い医師たちは,どのくらいの精度で治療アルゴリズムを利用できているのかが不安なのである。
 そこで,若き医師の指導者としての役割をこれから担う消化器外科専門医を取得したばかりの医師たちと消化器癌の 「ひろがり診断学」 の勉強会を始めた。勉強会の目標は,若き医師たちが,「 消化器癌のガイドライン」 を上手く利用できるようになり,「 治療アルゴリズム」 に自信を持って入れるように指導できるようになることである。発表されている論文に基づいて検討し, 「ひろがり診断のアルゴリズム」 を創作することを試みた。本書「 ガイドラインを上手に使うための消化器癌のひろがり診断スキル―治療アルゴリズムへの入り方―」 は,これらの勉強会の集積であり,専門家の先生方からみれば,ご批判も多いことかもしれない。しかしながら,この書籍をきっかけにして,多くの若き医師たちに消化器癌の「 ひろがり診断学」 に興味を持っていただき,この領域がさらに発展することとなれば幸いである。
 最後に,情熱を失わず,ともに勉強してきた著者7名の指導医に感謝いたします。また,学術的なアドバイスをいただいた大分大学消化器・小児外科学講座教授の猪股雅史先生をはじめ,ご協力いただいた先生方,および事務業務やイラスト描きを手伝ってくれた教室秘書の衞藤千鶴さんや元教室秘書の佐藤愛さんに心から感謝いたします。また,本書を出版していただいたメジカルビュー社編集部の吉田富生氏,宮澤進氏,山田麻祐子氏に心から感謝申し上げます。

平成28年1月
編者 白石 憲男,白下 英史
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目次

Ⅰ 序論
1. 上手な治療アルゴリズムへの入り方
2. 消化器癌のひろがり診断学

Ⅱ 消化器癌ガイドラインの上手な使用をめざして
ガイドラインを理解するために−エビデンスレベルの分類/推奨度の分類とは?

Ⅲ 各論:治療アルゴリズムへの入り方
A.食道癌のひろがり診断
食道癌(特に食道表在癌)の深達度を,どう診断するか?
食道癌のリンパ節転移を術前にどう診断するか?
食道癌の他臓器(特に大動脈,気管・気管支)浸潤を術前にどう診断するか?

B.胃癌のひろがり診断
胃癌(特に早期胃癌)の深達度を,どう診断するか?
胃癌のリンパ節転移を術前にどう診断するか?
胃癌の他臓器(特に膵臓)浸潤を術前にどう診断するか?
胃癌の腹膜播種転移を術前にどう診断するか?

C.大腸癌のひろがり診断
大腸癌(特に早期大腸癌)の深達度を,どう診断するか?
大腸癌(特に結腸癌)の壁外浸潤を術前にどう診断するか?
大腸癌のリンパ節転移を術前にどう診断するか?
下部直腸癌の前方浸潤(泌尿器科系,婦人科系臓器)を術前にどう診断するか?
(補足)直腸癌の尿管浸潤や仙骨浸潤を術前にどう診断するか?
大腸癌の腹膜播種転移を術前にどう診断するか?
大腸癌の肝転移や肺転移を術前にどう診断するか?

D.肝臓癌のひろがり診断
3cm以下の肝腫瘍を術前にどう診断するか?
肝細胞癌の脈管侵襲・腫瘍栓を術前にどう診断するか?

E.胆道癌のひろがり診断
胆道癌の胆管浸潤(水平進展)の範囲をどう評価するか?
胆管癌(特に肝門部胆管癌)の脈管浸潤(垂直進展)をどう評価するか?
胆嚢癌の画像上の鑑別診断は,どのように行うか?
十二指腸乳頭部癌の膵浸潤や十二指腸浸潤を術前にどのように診断するか?

F.膵癌のひろがり診断
膵癌の脈管浸潤の診断は,どのように行うか?
膵癌の大動脈周囲リンパ節転移を術前にどのように診断するか?
膵癌の腹膜転移を術前にどのように診断するか?
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