胸腔鏡・腹腔鏡併用食道癌根治手術

手術から周術期管理まで

胸腔鏡・腹腔鏡併用食道癌根治手術

■編集 昭和大学消化器・一般外科学教室

定価 8,800円(税込) (本体8,000円+税)
  • A4判  136ページ  オールカラー,写真150点
  • 2016年7月19日刊行
  • ISBN978-4-7583-1524-1

昭和大スタッフ直伝! 「低侵襲」で「合併症の少ない」食道癌の鏡視下手術・管理とは?

合併症の少ない食道癌の胸腔鏡・腹腔鏡併用手術「昭和大方式」について解説した1冊。
昭和大学消化器・一般外科学教室で約20年間800例の臨床経験から築き上げた周術期管理,手術手技のノウハウを,豊富な術中写真・シェーマとともに余すことなく伝授。また,安全な手術の施行・術後管理の徹底にはチーム医療が重要だとの考えに基づき,術者や助手,麻酔科医,看護師の役割についても解説。「低侵襲」にこだわりぬいた工夫や考え方満載の1冊。


序文

刊行にあたって

 われわれは,食道癌に対して胸腔鏡下食道切除手術を1996年11月に初めて導入し,2016年6月までに約800例を経験した。筆者は外科医となって約35年が経過したが,入局当時の食道癌手術(標準的開胸・開腹手術)の印象は,患者にも外科医にもストレスが大きいもので,術後管理はICUを中心とした高度集中治療が必要で,早期離床とはほど遠いものであった。なかでも患者の苦痛度,合併症の多さはほかの消化管手術とは比較にならないもので,なんとかならないかと常に考えさせられたものである。患者の苦痛をより軽減させ,合併症の少ない手術を模索するなかで,低侵襲化を目的に内視鏡外科手術を導入したのが始まりである。本当に胸腔鏡下食道手術が低侵襲なのかどうかは,いまだ疑問視される部分もあるが,われわれの750例を超える経験の結果は,低侵襲性を支持しているものと考える。
 本書では,われわれの約20年,800例の臨床経験から築き上げた周術期管理,手術手技を詳細に記載した。いわゆるstandardとはかけ離れた部分が多くあることに気づかれるかと思われる。われわれは,胸腔鏡下食道手術を導入時,いわゆる食道外科医は1人もいない状況であった。内視鏡外科医として腹腔鏡下胆嚢摘出術,大腸切除術,胃切除術を数百例経験した集団が,腹腔鏡下手術のノウハウを胸腔鏡下手術に導入したものである。
 当時,食道専門医が始めた胸腔鏡下食道切除術が,従来法(開胸手術)の発展型として小開胸,倒立対面モニター法を採用したのと違い,われわれが術野展開を頭側ワンモニター法に初めて設定したのも,腹腔鏡下手術からの応用であった。胸腔鏡下手術を完全胸腔鏡下で実施できたのも同様な理由によるものであった。また,術後合併症の多くが感染症に伴うものであるという視点から,感染源になるものは一切排除しようという意識をもって,胃管,減圧チューブ,腹部ドレーン,腸瘻チューブの画一的挿入をやめた。そのなかで,ただ一つ胸腔ドレーンのみが必須のものとして残された。
 その結果,胸腔鏡下手術による創部痛の軽減化とともに術後の患者ドレーン留置による離床制限が改善され,早期離床が容易になったとものと考える。さらに,術後の中心静脈栄養用カテーテル挿入も感染源と考え,早期飲水・飲食開始が行われる結果となった。
 本法は,高難度手術とよばれ,食道内視鏡外科医の育成には,しっかりとした教育・トレーニング体制の充実も必須である。教室では,入局6年目以降に専門領域を決定しているが,それまでにはすべての領域の消化管腹腔鏡下手術に参加することが条件となっており,その間に内視鏡外科手術のノウハウを経験・取得でき,その後も独自の教育体制が確立されている。また,大動物による実習も大切であり,2000年より全国レベルで胸腔鏡下食道手術セミナーを毎年開催してきたが,食道内視鏡外科研究会が立ち上がり,講習会が開始されたのを契機に講習会に研修場所を移行した。
 この20 年間で施行錯誤した結果,現在の周術期管理・手術手技が完成されたが,過去6年間において,術後呼吸器合併症率7.4%・縫合不全率1.6%は当初の目的が達成されつつあるものと考えている。また,同時に他職種連携によるチーム医療体制の充実も重要であり,教室では胸腔鏡下食道癌手術導入初期よりクリニカルパスを作成し,看護師教育を精力的に行ってきた。手術がすべてを決めると考える外科医が多い印象だが,術後合併症の多くは術後管理に起因するものだという考えのもと,チーム医療としての大切さに重点をおいた昭和大学式治療体制を作り上げた。他施設間での周術期管理に対する意見交換の場として,数年前よりチーム医療からみた周術期管理実践セミナーを実施し,胸腔鏡下食道癌手術を中心に勉強会を行っている。
 導入当初,年間5例の食道癌手術を行っていた素人集団は,食道領域における日本内視鏡外科学会技術認定医3名を抱え,年間90例近くの食道癌症例を,胸腔鏡率100%で治療できる集団に成長した。その結果,開胸手術をまったく経験したことがない食道外科医が多く誕生したが,これも時代の流れと考えている。しかしながら,一つの集団で助けられる患者数は限られたものである。われわれの胸腔鏡下食道癌手術のすべてを本書で紹介することで,多くの胸腔鏡食道外科医・看護師の助けとなることができれば幸いである。

平成28年7月
昭和大学消化器・一般外科
教授 村上 雅彦
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目次

Ⅰ 胸腔鏡・腹腔鏡手術の特徴と注意点

Ⅱ 術前管理(準備)

Ⅲ 手術・手技の実際
使用機器
手術室準備
周辺機器の準備
麻酔
器械出しの注意点
胸部操作
腹部手術
再建術

Ⅳ 術中・術後管理
術中管理
ICU 管理
HCU 管理
病棟における管理

Ⅴ 外来における管理

Ⅵ 教育体制
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